【改稿版】旦那様、どうやら御子がおデキになられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉ 

Hinaki

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第一章  突然の訪問者

【2】

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 空耳?
 それはまぁ最近……と言いますか、そろそろそれらしき兆候があっても可笑しくはないでしょうけれど。


「いえ、奥方様断じてお耳の病等ではなく、確実にもう一人ここにおりますわ!!」
「あ、あらそう……ってまあジョナス、何故あなたがここに?」

 シンディーの背後で何時もよりも若干落ち付かない様子の、明るい茶色ライトブラウンの髪と大きな緑の瞳を持つ青年が控えていましたわ。

 彼はジョナス。
 わたくしがこの家へ嫁ぐ前よりハウス・スチュワードのダレンの下で副執事アンダー・バトラー、一言で言えば執事見習いとして日々ダレンより厳しく躾けられているのです。
 生まれは平民ですがとても可愛らしい青年ですよ。少々自信なさ気で頼りない感じは否めませんが、シンディーと共にわたくしが可愛いと思う者の一人なのです。

 ですが悲しい事に貴族社会において平民出の執事と言う立場は、とても辛い事が多いのもまた事実です。
 それ故将来立派な、誰からも後ろ指を指されない為にしっかりとした執事へなるよう、ダレンは敢えて厳しく躾けているようです。

 ふふ、何時もは四角四面な無表情のダレンにも人間らしい細やかな愛情があるのだと、ジョナスを見ているととても伝わってきますもの。
 しかしです。
 何時もならばジョナスはダレンの傍で彼の指示を受けて働いている筈なのに、どうして今わたくしの元にいるのでしょう。

 
 その答えはこの後直ぐに、否応なく知る事となりました。
 えぇあの様に大きな声で叫ばれては日頃静かな屋敷なのですもの。
 わたくしのいるエントランスより少し離れた厨房にまで、ほらしっかりと聞こえてきましてよ。


「ちょっとあんた達っ、さっさと私の!! 愛しのリーヴァイ様に逢わせて頂戴!! 今私のお胎の中には彼との愛の結晶がいるんですからね!!」


 ――――⁉
 
 一瞬、えぇほんの一瞬だけわたくしは言葉を失いましたわ。
 旦那様の妻であるわたくしにとってのクリティカルヒットとなったのは言うまでもありません。
 ですがそれと同時に酷く納得もしたのです。

「シンディー……」
「お、奥方様。お、お願いに御座いますからこの私めに一言お命じ下さいませ」

 あら、何をかしら?

「……はいっ、あの阿婆擦れを一思いにっ、いいえ塵一つすら残さずそこは極秘裏に、二度と奥方様のお美しい瞳に映らせない様確実にっ、闇の中へと処分してみせますわ!!」
「し、シンディー⁉」
「し、しし、シンディー様⁉」

 まぁある意味今の一言も結構な衝撃を受けましたわね。でもわたくしにとって最も重要なのは目の前にいるわたくしの可愛い娘が何気に犯罪へ手を染めようとしている事なのです。

 シンディーの生家であるジプソン子爵家は言わば武門お家柄で、建国当時より有能な騎士達を多く輩出している事で知られています。
 きっとその所為なのでしょうか。この娘はとても心根の優しいのですが、何かにつけて力で抑え込もうとしてしまう所が時折ありますの。

 勿論それは毎日ではありませんわ。

 そうです……ね。

 二、三日に一度だった、それとも……一日おきかしら?

 でも特に気にしなければ問題はないとわたくしはそう思いますのよ。
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