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序章
新たな仲間、風神雷神!
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おおよそ人間が体験しないような速度で幻獣の森を、風の如く吹き抜けて森の最奥を通り越して、木もない森の外れへと降り立った。
まるでクレーターだな。
しかしリニアモーターも蒼白するような速度で森を通過するとは思っても見なかった。
なにせ実質空を飛んでいた時間は3分から4分程度だ。
しかし、3分から4分間も野晒しで、リニアモーター張りの速度で飛んだらどうなるか。
答えは、地面について早々膝をつきながら手を押さえている俺を見れば、馬鹿でもわかるだろう。
「気持ち悪い・・・」
『ヒューマンの三半規管がこれほど低いとは思いませんでした。申し訳ありませんリアス』
「いや・・・いいさ、次は気をつけてくれな。それで雷神は一体どこに?」
『この時間なら、ここで眠っているはずです』
先程高速で移動していたとは思えないほど、テトテト歩くカマイタチのクレセント。
こうみると愛玩動物にしか見えないんだけどなぁ、まぁ鋭い刃のついた尻尾を見たら、可愛いとは程遠いことがわかる。
クレーターができてる壁には大人ひとりは入れるような無数の穴が存在し、クレの案内の元で奥へ奥へと進んでいく。
俺はまだ子供なので余裕があるけど。
「なんか地下トンネルみたいだな」
『言われてみればそうですね。確かに荒れていますが、ダンジョン化はしてないので、地下トンネルですね。まぁ家の長い廊下みたいなものですけど』
しばらく道のりを歩いていくと、これまた小さなドアがある。
雷神っていうのは一体どんな生物なんだろう?
風神がカマイタチだから、雷神は狸とか?
はたまたネズミとか!?
ないか。
『ミライ~!起きてますか?』
「・・・返事がないな」
『寝ているのでしょう。少々お待ちくださいね』
ドアに触れると魔法陣が浮かび上がってきた。
ただの木のドアなのにな。
見た目とは裏腹にかなり厳重なんだろう。
ゲームでもこう言ったギミックがあったけど、ボタンを長押しくらいしかしてないからどれくらい強固なモノなのかは知らない。
『開きましたよ』
「まるで泥棒だな」
『自分の家を開けるようなものです!あ・・・少し離れててください』
「は?」
『来ます!』
ドゴンジリジリという音の後に、扉が大爆発し、電撃が当たり構わず飛び交う。
こんなの聞いてねぇ!
9歳のロクな食べ物を食べてないこの身体じゃ、避けるのも不可能に近い!
不可能ではないから避けてるんだけど、それでもあちこちバチバチと、火花が立ち上がり服が燃える。
「先に言えよ!ただでさえ布切れに近い服が、もうほとんどないじゃねーか!」
『当たり前です!普通に入れると思いましたか?残念でした!仮にも神の真名を持つ精霊の寝床が、あんな施錠魔法程度の守りなわけないでしょう!』
そう言われたらそうだ。
睡眠とは一番に無防備を晒す時間。
そんな時間に奇襲に遭えば、たちまち命を落とすだろう。
ここは日本ではないのだ。
寝込みを襲われればひとたまりもない。
それが先程、俺に倦怠感を与えるほどの異常な魔法を使ったクレと連なる精霊だったらなおのことだ。
でもさ、でもだ!
「クレ、お前!『あ』とか言ってたじゃねぇか!ぜってぇ誤作動だろ!」
『ミスは誰にでも起こるものです。そんなみみっちぃこと言ってると、モテませんよ?』
「余計なお世話だ!」
でもなんか、怒るどころか一周回ってなんだか面白くなってきたな。
まぁ感電死の危機感に怯えながら雷撃を避けるなんて、
「それで、この雷撃はいつになったら止むんだ?」
『雷神が目を覚まして内側から、魔法陣を砕いてくれるまでですね。まぁ気長に待ちましょう』
そんな待ってられるか!
先に<狂戦士の襟巻き>取ってきてからでもいけるぞこれ!
俺は知ってる。
これは侵入者をどうにかする罠なのに、9歳である俺が簡単に避けれるはずがない。
つまりクレがなんらかの方法で攻撃をいなしてる。
それにミスが本当だとしても、なんらかの起こす方法があるはずだ。
何故ならここに来るのが初めてなはずがないから。
なら俺の選択は一つ!
「よしっ!出直すか!」
驚愕の表情をあらわにする。
俺はニヤリと、してやったりの顔をクレへと向ける。
クレとしてはなるべく早く契約して欲しいはずだからな。
本気で出直す気はなかった
『はぁ、わかりましたよ。無理やり起こしてほしいのでしょう?』
「お前、この状況楽しんでたろ?」
『いいえ。あなたを配慮していたんですよ。耳、塞いでてください』
「え、あぁ、わかった」
俺は言われた通り両手で耳を塞いだ。
ここで後悔する。
こいつは本当に俺を配慮していたことに、すぐに気づいたからだ。
「スゥゥゥゥウ!キュゥゥゥウウウウウウウウウ!!」
「い〝っァァァァァア!いっでぇぇぇええ!」
なんだこれなんだこれ!?
クレの鳴き声?
耳をつんざぐ音が、身体の芯にまで到達して内部から破裂しそうな音だ。
脳震盪まで起こしそうになる。
危うく意識が飛びかけたところで、ようやくクレが音を発するのをやめた。
鼻水やらよだれやら涙やらで、顔面ぐちょぐちょだ。
『だから言ったでしょう。顔が酷いことになってますよ』
「ホントに俺をいたわってたんだな。疑って悪い」
『いえ。そもそも私が罠の解除に失敗したのが原因ですので』
もう着てるかどうかわからない服を脱いで顔を拭き、そのまま投げ捨てる。
『その格好で会う気ですか?』
「いやもうかわらんだろ。大事なトコロだけはちゃんと隠してるし」
『はぁ、まぁいいです。ほら来ましたよ』
ひょっこり顔を出した少女のエバグリーンの髪が、暗闇だというのに部屋から漏れ出る僅かな光で天使のわっかが作られている。
その色はどこか落ち着いていて、雷の形をしたヘアピンがとてもよく似合っていた。
胸元に着いてるピンクのリボンは、来ているうす水色のドレスとマッチしていて、とてもかわいらしかった。
扉から出てきたのは、動物じゃなかった。
人間の少女だ。
「クレセントおじさん?」
『そうですよ』
「そっちの人は?」
『こちらは・・・』
「初めまして。自分はリアス・フォン・アルゴノートと申します。以後お見知りおきを」
『堅いですよ!』
そんなこと言われても、日本に居た頃の社会人の性分が出てしまったんだから仕方ない。
それに初対面ならこのくらいが普通だろう。
『はぁ、なんかそのムカつく顔をしている当たり、間違ってないと思っているんでしょうね』
「ムカつくってなん------」
「あ、あの、リアスさん。ボクはミライって言います。そ、その人間さんと話すのは初めてなんですけど、おじさんが連れてきた人だしいい人だと思います!あの、あの、仲良くして下さい!」
なんだこの可愛い生き物は。
ボクっ娘は現実で初めて見た。
俺はこの子の頭をこねくり回す。
俺の人生において、前世でも今生でも見たことのない可愛い年下の女の子だ。
前世での妹は物心ついたときから生意気で、今生は最早妹と思っていないクズの義妹がいるが、そのどれとも違う。
「あ、あの、や、やめてほしい、です」
「うりゃうりゃ」
『やめなさいリアス。女の子の髪は繊細なのですよ。あぁ、もうほらボサボサ』
「悪かったな。ほら、ちょっと待ってな」
俺は前世で妹にしていたように、前髪を少しだけ三つ編みにしてやる。
近くに鏡はないから見せられないけど。
『ほほぉ、少しは女性のことをわかっているようですね。これが前世の知識とやらですか。この世界のヒューマンの女性ではそんな髪型してる人はいませんよ?』
「へぇ、じゃあ時代の最先端を行ってるな」
当人が知らないところで、お互いに彼女を褒め回す。
あたふたしてるところがまた可愛い。
花そその世界にこんなに可愛い子が居るなんて。
基本的に貴族の女性は高飛車で化粧が濃いし。
主人公は綺麗事ばかりでイライラしっぱなしだったし。
「それにしても精霊に人型なんているんだな」
「え、ボク人間ですよ。半分はですが・・・」
半分は人間?
でもこの子は雷神なんだよな。
あ、でも待てよ?
雷神の娘って言ってたから、この子が雷神とは限らないのか?
いや雷神って言ってたな。
雷神の力を受け継いだから半分だけ人から精霊になったとか?
その答えはすぐにクレが教えてくれた。
『ミライは半精霊ですよ。ヒューマンと精霊のハーフとでも言いましょうか』
「あぁなるほど!ってそんなことあんの?」
半精霊なんて聞いたこともなかった。
いや正確には、人と精霊の関係性が主人と配下みたいな感じで、同列に扱われてる模写がない。
だから無意識にその可能性を否定していた。
「ダメだな。この世界は現実だ。わかっているのにどうしてもゲームとして当てはめちまう」
『仕方ないですよ。まだ前世の記憶が蘇ったばかりなのでしょう?前世の知識に引っ張られるのは仕方の無いことです』
「げぇむ?なんですかそれ?それに前世って・・・」
「あぁ、まずはそのことについて話すか。これから契約するのに、なにも知らないんじゃ、信用できないもんな」
『ですね』
「待って、契約ですか?誰が?もしかしてボク?」
話が付いてるわけもないよな。
だって、クレと俺が出会ったのはついさっきだし。
でもそう考えたら、どうしてクレがここまで俺のことを信用してくれるんだろうか?
「あぁ。まぁ契約はミライが本気で嫌ならしない。まぁその前に俺の前世について話すな。俺にはリアスとして生まれる前に、別の世界で人間として生きた記憶がある。リアスの記憶を漁る限り、この世界よりは少しだけ文明が発達していたな。でも魔法と言うのは存在してなかった」
「魔法がない世界なんてあるんだ。あ、それじゃあそれじゃあ前世では人ってどんな暮らしをしてたの?あ、ですか?」
こっちが本来のミライかな。
一応百年以上生きてるクレが連れてきた奴だから、敬語を使っていたってところか?
「喋りやすい話し方で良いよ。こっちの世界では俺は9歳だからな」
「そ、それじゃ遠慮無く・・・てか同い年!?それにしては背が高いね」
栄養失調で、成長は遅い方なんだけどな。
でもたしかにミライが9歳だとは思わなかった。
俺の身長が大体150cmあるかないかだとすると、ミライは120cmくらいだ。
これってかなり小さい方?なのか?
この世界の基準はイマイチわからない。
母さんと暮らしてた村には子供が俺しかいなかったし。
『ミライ、それはあなたの成長が遅いだけですよ。一応半精霊なので、これからも身長は伸びないでしょう』
「え、嘘!?ボク、これ以上成長しないのか・・・」
『残念がることありません。あなたは魅力的です。それに、将来の伴侶もこの歳でこの背丈なのは致命的です。良くて170cm行くか行かないでしょう』
「だろうなぁ、栄養が足りてないんだよ。っておいまて。今なんつった!?」
『良くて170cm行くか行かないか、ですか?』
「その前だよ!伴侶って言ったか!」
『言いましたよ?』
「聞いてないぞ!」
『言ってないですからね』
ミライの方を見ると、これまたぽかーんと口を開けていた。
そりゃいきなり伴侶って言われたら驚くよな。
伴侶って、要するにこの子と結婚しろってことか?
まだ出会って数分しか経ってないのに!?
どうしてそこまで信用できるんだ!?
「俺はお前ともミライとも、出会ってちょっとしか経ってないんだぞ!?それに、お前ミライの事が大事なのに------」
『大事だからあなたに託すのです。私を余り侮らないでください。前世と合計しても、あなたの倍以上は生きているんですよ。あなたの人となりとか、言っていることが嘘か本当かくらいわかります』
「俺がかなり演技が上手い策士だったらどうするんだ!」
『それを言う時点で安心ですね。それに、嘘かホントか見抜けないなら、あなたが言った前世というものを信じるのはおかしいと思いませんでしたか?だって、ミライは子供だからともかく、私は百年も生きているので、ある程度常識を身につけています。普通なら馬鹿なことをと言って、捨て置くでしょう?何よりあなたは命の恩人だ。しかも善意で助けてくれた恩人を疑うなんて余り私を見くびらないでもらいたい。』
たしかに言われてみればそうだ。
この世界にゲームは存在しないし、この世界ない物を百年も生きたクレの常識が、そんなことありえないと絶対に否定するはずだ。
滑稽無刀なことを言っている罵るまであったはず。
それをしなかったのは、俺の心の内を見透かされていたに他ならない。
ははっ、さすがは百年生きた精霊様ってところか。
何より俺は失礼だった。
相棒って言ったのに、相棒のことをまるで何もわかっていない。
「すまない、お前の言うとおりだ。でもこれに関してはミライの意思を尊重したい。出会って間もないミライにはその権利があるはずだ」
『それはそうですね。そこまでは考えが至りませんでした。ミライはどうですか?』
「え、ボク!?あ、えっと、リアスくんはいい人だと思うけど、出会ってすぐに結婚って言われても、ちょっと困るかな」
ミライがまともでよかった。
この世界には政略結婚って言うのもあるが、俺はそんなものに縛られるつもりはない。
そしてそれを人には絶対押しつけたくない。
なにより、契約してやるから身体を差し出せみたいに言ってるようで、俺の気持ち的には嫌だ。
『はぁ、仕方ないですね。ミライがそう言うなら是非もありません。しかし二人には契約はしてもらいます』
「あぁそうだな」
俺はここが乙女ゲーの世界で、六年後は雷神という存在がいないことから、ミライには何らかの形で世界から排除された可能性があると言うことを話した。
さすがは女の子と言うところか、王子様と平民の少女がウェディングドレスを着て挙式を上げたという話は、目を輝かせて食いつくように話を聞いていた。
「そっかー、未来でボクは死んでるか、もしくはここにずっと閉じこもってるのかー。多分魔力に関係してるんだろうね。契約してくれるのはこっちとしてもありがたいんだけど、リアスくんはボクの魔力って耐えきれるの?」
精霊と契約するには魔力を消費する。
正確には壌土という形で、上限が消費するっぽいが、細かいことはよくわからない。
『そこは大丈夫です。彼は私と契約して8割以上魔力を残しています』
「え、クレセントおじさんとも契約してるの!?す、すごい!つまり、お母さん以上の魔力の持ち主なんだ」
「お母さん?」
「うん!お母さんはお父さんと結契してたんだ!雷神との契約はかなり魔力を消費するらしくって、1割しか残ってなかったらしいんだけど、それでも人の身でそれだけの魔力を保有してるのはすごいことだって、お父さん言ってた!」
『えぇ、ガランの奴、本当に、本当にウザったらしいくらい自慢げに話してましたね。あの時のどや顔はイライラしたので、派手にぶちかましてやりましたけど』
「クレセントおじさんとお父さんとの喧嘩で、ここにクレーターできちゃったしね」
ミライのお父さんの名前はガランって言うのか。
しかし、聞いた感じだと娘思いの愛妻家だったのだろう。
「良いお父さんだったんだな」
「うん。二年前も、ボクを逃がすためにお父さんとお母さんは------」
少し悲しげな表情をするミライ。
いきなり染みっぽい話になっちまった。
空気を変えないとな。
「それで契約の方はいいか?」
「ボクからお願いしたくらいだよ。ボクの魔力はもう、ほとんど尽きかけていてどうしようもなかったんだ。多分未来のボクは生きていようと、命が尽きていようとここから出られなかったと思う」
「あぁそうか。精霊は魔力が回復しないらしいな。それで、さっきも言ったがもしかしたら俺の家の人間に何か言われたり教われたりする可能性がある。それでも俺と契約してくれるか?」
クレとミライと目を合わせてぱちくりさせてる。
そして次には二人で笑い始めた。
なんだ、俺おかしな事言ったか?
『ふふっ、何を馬鹿なことを言ってるんですかね』
「風神と雷神を契約している人間で、更にはそれでもおそらく5割以上は魔力が残している人間をどうにかできるなんて、そんなのもう、人間じゃなくてタダの化け物だよ」
『私達のような神の真名を持つ精霊は、最上位の精霊です。同系統の精霊を使役することはおそらく不可能に近い。更に加えて、あなたの魔力はそんな最上位の精霊を二体以上は使役することができる魔力の持ち主なのですよ?』
「それは薄々感じてはいるよ。ゲームの常識を引っ張るようじゃないが、主人公ですら1/4しか余ってなかったみたいだしな。でも使役って言葉は嫌だな」
『それもあなたらしいと言えばあなたらしいです。では相棒、あるいは友に慣れるのはと言い変えましょう』
「あぁ。でもそうか、たしかに言われてみるとそうだな。俺自身も強くなるつもりだし、お前らを守れるくらいには。今はまだ守られる側だと思うけど」
「うん!リアスくんのことはボクが守るよ!」
頼もしいな。
でも前世の記憶を取り戻してからまだ四時間も経ってないんだな。
「じゃあ、あの失礼して」
「ん?」
間違いじゃなければ俺の頬にミライの唇が当たってると思うんだが。
え、つまり俺は頬にキスをされたってことか?
「え、えっと。一応、ファーストキスなんだよ・・・ど、どう?嬉しい?」
顔を真っ赤に腫らして上目遣いでこちらをもじもじと見つめる姿は、ロリコンじゃない俺からしても姦しいものを感じた。
要するに、ほの字が灯っても何らおかしくないと言うことだ。
俺、一応30手前の精神なんだけどなぁ。
「どうしよう。本気で嫁にほしくなっちまうよクレ」
『いいですよ。私としてはそちらの方がありがたいです』
「も、もう!二人ともからかわないで!」
俺の左手の甲に模様が刻まれていた。
あ、これ契約魔法の行使だったんだ。
だったら別に頬じゃなくても良かったんじゃ?
しかしそれを言うような野暮ったいことはしない。
俺は朴念仁になるつもりはないのだ。
「これからがんばってミライを攻略してくからな!覚悟しておけよ!」
「ふぇ、ふぇぇえ!?」
『幸先が良いですね。さて、ではリアスの目的である<狂戦士の襟巻き>を取りに行きましょうか。帝都まで飛ばしますよ』
「あ、久々におじさんの浮遊魔法に乗れるんだ。魔力切れでしばらく乗ってなかったもんね」
「え・・・」
「どうしたの青い顔してリアスくん?あ、まさか怖いの?」
「い、いやそんなことないし!」
『ふふっ、それではまた全力で飛ばしますね』
あ、余計なことを口走った。
でもミライの前でかっこ悪いところは見せたくなかったので、これは致し方ない。
帝都に着く頃には、泡を吹いて、それ以上にかっこ悪いところを見せることになるのだが、そんなのは知らない。
まるでクレーターだな。
しかしリニアモーターも蒼白するような速度で森を通過するとは思っても見なかった。
なにせ実質空を飛んでいた時間は3分から4分程度だ。
しかし、3分から4分間も野晒しで、リニアモーター張りの速度で飛んだらどうなるか。
答えは、地面について早々膝をつきながら手を押さえている俺を見れば、馬鹿でもわかるだろう。
「気持ち悪い・・・」
『ヒューマンの三半規管がこれほど低いとは思いませんでした。申し訳ありませんリアス』
「いや・・・いいさ、次は気をつけてくれな。それで雷神は一体どこに?」
『この時間なら、ここで眠っているはずです』
先程高速で移動していたとは思えないほど、テトテト歩くカマイタチのクレセント。
こうみると愛玩動物にしか見えないんだけどなぁ、まぁ鋭い刃のついた尻尾を見たら、可愛いとは程遠いことがわかる。
クレーターができてる壁には大人ひとりは入れるような無数の穴が存在し、クレの案内の元で奥へ奥へと進んでいく。
俺はまだ子供なので余裕があるけど。
「なんか地下トンネルみたいだな」
『言われてみればそうですね。確かに荒れていますが、ダンジョン化はしてないので、地下トンネルですね。まぁ家の長い廊下みたいなものですけど』
しばらく道のりを歩いていくと、これまた小さなドアがある。
雷神っていうのは一体どんな生物なんだろう?
風神がカマイタチだから、雷神は狸とか?
はたまたネズミとか!?
ないか。
『ミライ~!起きてますか?』
「・・・返事がないな」
『寝ているのでしょう。少々お待ちくださいね』
ドアに触れると魔法陣が浮かび上がってきた。
ただの木のドアなのにな。
見た目とは裏腹にかなり厳重なんだろう。
ゲームでもこう言ったギミックがあったけど、ボタンを長押しくらいしかしてないからどれくらい強固なモノなのかは知らない。
『開きましたよ』
「まるで泥棒だな」
『自分の家を開けるようなものです!あ・・・少し離れててください』
「は?」
『来ます!』
ドゴンジリジリという音の後に、扉が大爆発し、電撃が当たり構わず飛び交う。
こんなの聞いてねぇ!
9歳のロクな食べ物を食べてないこの身体じゃ、避けるのも不可能に近い!
不可能ではないから避けてるんだけど、それでもあちこちバチバチと、火花が立ち上がり服が燃える。
「先に言えよ!ただでさえ布切れに近い服が、もうほとんどないじゃねーか!」
『当たり前です!普通に入れると思いましたか?残念でした!仮にも神の真名を持つ精霊の寝床が、あんな施錠魔法程度の守りなわけないでしょう!』
そう言われたらそうだ。
睡眠とは一番に無防備を晒す時間。
そんな時間に奇襲に遭えば、たちまち命を落とすだろう。
ここは日本ではないのだ。
寝込みを襲われればひとたまりもない。
それが先程、俺に倦怠感を与えるほどの異常な魔法を使ったクレと連なる精霊だったらなおのことだ。
でもさ、でもだ!
「クレ、お前!『あ』とか言ってたじゃねぇか!ぜってぇ誤作動だろ!」
『ミスは誰にでも起こるものです。そんなみみっちぃこと言ってると、モテませんよ?』
「余計なお世話だ!」
でもなんか、怒るどころか一周回ってなんだか面白くなってきたな。
まぁ感電死の危機感に怯えながら雷撃を避けるなんて、
「それで、この雷撃はいつになったら止むんだ?」
『雷神が目を覚まして内側から、魔法陣を砕いてくれるまでですね。まぁ気長に待ちましょう』
そんな待ってられるか!
先に<狂戦士の襟巻き>取ってきてからでもいけるぞこれ!
俺は知ってる。
これは侵入者をどうにかする罠なのに、9歳である俺が簡単に避けれるはずがない。
つまりクレがなんらかの方法で攻撃をいなしてる。
それにミスが本当だとしても、なんらかの起こす方法があるはずだ。
何故ならここに来るのが初めてなはずがないから。
なら俺の選択は一つ!
「よしっ!出直すか!」
驚愕の表情をあらわにする。
俺はニヤリと、してやったりの顔をクレへと向ける。
クレとしてはなるべく早く契約して欲しいはずだからな。
本気で出直す気はなかった
『はぁ、わかりましたよ。無理やり起こしてほしいのでしょう?』
「お前、この状況楽しんでたろ?」
『いいえ。あなたを配慮していたんですよ。耳、塞いでてください』
「え、あぁ、わかった」
俺は言われた通り両手で耳を塞いだ。
ここで後悔する。
こいつは本当に俺を配慮していたことに、すぐに気づいたからだ。
「スゥゥゥゥウ!キュゥゥゥウウウウウウウウウ!!」
「い〝っァァァァァア!いっでぇぇぇええ!」
なんだこれなんだこれ!?
クレの鳴き声?
耳をつんざぐ音が、身体の芯にまで到達して内部から破裂しそうな音だ。
脳震盪まで起こしそうになる。
危うく意識が飛びかけたところで、ようやくクレが音を発するのをやめた。
鼻水やらよだれやら涙やらで、顔面ぐちょぐちょだ。
『だから言ったでしょう。顔が酷いことになってますよ』
「ホントに俺をいたわってたんだな。疑って悪い」
『いえ。そもそも私が罠の解除に失敗したのが原因ですので』
もう着てるかどうかわからない服を脱いで顔を拭き、そのまま投げ捨てる。
『その格好で会う気ですか?』
「いやもうかわらんだろ。大事なトコロだけはちゃんと隠してるし」
『はぁ、まぁいいです。ほら来ましたよ』
ひょっこり顔を出した少女のエバグリーンの髪が、暗闇だというのに部屋から漏れ出る僅かな光で天使のわっかが作られている。
その色はどこか落ち着いていて、雷の形をしたヘアピンがとてもよく似合っていた。
胸元に着いてるピンクのリボンは、来ているうす水色のドレスとマッチしていて、とてもかわいらしかった。
扉から出てきたのは、動物じゃなかった。
人間の少女だ。
「クレセントおじさん?」
『そうですよ』
「そっちの人は?」
『こちらは・・・』
「初めまして。自分はリアス・フォン・アルゴノートと申します。以後お見知りおきを」
『堅いですよ!』
そんなこと言われても、日本に居た頃の社会人の性分が出てしまったんだから仕方ない。
それに初対面ならこのくらいが普通だろう。
『はぁ、なんかそのムカつく顔をしている当たり、間違ってないと思っているんでしょうね』
「ムカつくってなん------」
「あ、あの、リアスさん。ボクはミライって言います。そ、その人間さんと話すのは初めてなんですけど、おじさんが連れてきた人だしいい人だと思います!あの、あの、仲良くして下さい!」
なんだこの可愛い生き物は。
ボクっ娘は現実で初めて見た。
俺はこの子の頭をこねくり回す。
俺の人生において、前世でも今生でも見たことのない可愛い年下の女の子だ。
前世での妹は物心ついたときから生意気で、今生は最早妹と思っていないクズの義妹がいるが、そのどれとも違う。
「あ、あの、や、やめてほしい、です」
「うりゃうりゃ」
『やめなさいリアス。女の子の髪は繊細なのですよ。あぁ、もうほらボサボサ』
「悪かったな。ほら、ちょっと待ってな」
俺は前世で妹にしていたように、前髪を少しだけ三つ編みにしてやる。
近くに鏡はないから見せられないけど。
『ほほぉ、少しは女性のことをわかっているようですね。これが前世の知識とやらですか。この世界のヒューマンの女性ではそんな髪型してる人はいませんよ?』
「へぇ、じゃあ時代の最先端を行ってるな」
当人が知らないところで、お互いに彼女を褒め回す。
あたふたしてるところがまた可愛い。
花そその世界にこんなに可愛い子が居るなんて。
基本的に貴族の女性は高飛車で化粧が濃いし。
主人公は綺麗事ばかりでイライラしっぱなしだったし。
「それにしても精霊に人型なんているんだな」
「え、ボク人間ですよ。半分はですが・・・」
半分は人間?
でもこの子は雷神なんだよな。
あ、でも待てよ?
雷神の娘って言ってたから、この子が雷神とは限らないのか?
いや雷神って言ってたな。
雷神の力を受け継いだから半分だけ人から精霊になったとか?
その答えはすぐにクレが教えてくれた。
『ミライは半精霊ですよ。ヒューマンと精霊のハーフとでも言いましょうか』
「あぁなるほど!ってそんなことあんの?」
半精霊なんて聞いたこともなかった。
いや正確には、人と精霊の関係性が主人と配下みたいな感じで、同列に扱われてる模写がない。
だから無意識にその可能性を否定していた。
「ダメだな。この世界は現実だ。わかっているのにどうしてもゲームとして当てはめちまう」
『仕方ないですよ。まだ前世の記憶が蘇ったばかりなのでしょう?前世の知識に引っ張られるのは仕方の無いことです』
「げぇむ?なんですかそれ?それに前世って・・・」
「あぁ、まずはそのことについて話すか。これから契約するのに、なにも知らないんじゃ、信用できないもんな」
『ですね』
「待って、契約ですか?誰が?もしかしてボク?」
話が付いてるわけもないよな。
だって、クレと俺が出会ったのはついさっきだし。
でもそう考えたら、どうしてクレがここまで俺のことを信用してくれるんだろうか?
「あぁ。まぁ契約はミライが本気で嫌ならしない。まぁその前に俺の前世について話すな。俺にはリアスとして生まれる前に、別の世界で人間として生きた記憶がある。リアスの記憶を漁る限り、この世界よりは少しだけ文明が発達していたな。でも魔法と言うのは存在してなかった」
「魔法がない世界なんてあるんだ。あ、それじゃあそれじゃあ前世では人ってどんな暮らしをしてたの?あ、ですか?」
こっちが本来のミライかな。
一応百年以上生きてるクレが連れてきた奴だから、敬語を使っていたってところか?
「喋りやすい話し方で良いよ。こっちの世界では俺は9歳だからな」
「そ、それじゃ遠慮無く・・・てか同い年!?それにしては背が高いね」
栄養失調で、成長は遅い方なんだけどな。
でもたしかにミライが9歳だとは思わなかった。
俺の身長が大体150cmあるかないかだとすると、ミライは120cmくらいだ。
これってかなり小さい方?なのか?
この世界の基準はイマイチわからない。
母さんと暮らしてた村には子供が俺しかいなかったし。
『ミライ、それはあなたの成長が遅いだけですよ。一応半精霊なので、これからも身長は伸びないでしょう』
「え、嘘!?ボク、これ以上成長しないのか・・・」
『残念がることありません。あなたは魅力的です。それに、将来の伴侶もこの歳でこの背丈なのは致命的です。良くて170cm行くか行かないでしょう』
「だろうなぁ、栄養が足りてないんだよ。っておいまて。今なんつった!?」
『良くて170cm行くか行かないか、ですか?』
「その前だよ!伴侶って言ったか!」
『言いましたよ?』
「聞いてないぞ!」
『言ってないですからね』
ミライの方を見ると、これまたぽかーんと口を開けていた。
そりゃいきなり伴侶って言われたら驚くよな。
伴侶って、要するにこの子と結婚しろってことか?
まだ出会って数分しか経ってないのに!?
どうしてそこまで信用できるんだ!?
「俺はお前ともミライとも、出会ってちょっとしか経ってないんだぞ!?それに、お前ミライの事が大事なのに------」
『大事だからあなたに託すのです。私を余り侮らないでください。前世と合計しても、あなたの倍以上は生きているんですよ。あなたの人となりとか、言っていることが嘘か本当かくらいわかります』
「俺がかなり演技が上手い策士だったらどうするんだ!」
『それを言う時点で安心ですね。それに、嘘かホントか見抜けないなら、あなたが言った前世というものを信じるのはおかしいと思いませんでしたか?だって、ミライは子供だからともかく、私は百年も生きているので、ある程度常識を身につけています。普通なら馬鹿なことをと言って、捨て置くでしょう?何よりあなたは命の恩人だ。しかも善意で助けてくれた恩人を疑うなんて余り私を見くびらないでもらいたい。』
たしかに言われてみればそうだ。
この世界にゲームは存在しないし、この世界ない物を百年も生きたクレの常識が、そんなことありえないと絶対に否定するはずだ。
滑稽無刀なことを言っている罵るまであったはず。
それをしなかったのは、俺の心の内を見透かされていたに他ならない。
ははっ、さすがは百年生きた精霊様ってところか。
何より俺は失礼だった。
相棒って言ったのに、相棒のことをまるで何もわかっていない。
「すまない、お前の言うとおりだ。でもこれに関してはミライの意思を尊重したい。出会って間もないミライにはその権利があるはずだ」
『それはそうですね。そこまでは考えが至りませんでした。ミライはどうですか?』
「え、ボク!?あ、えっと、リアスくんはいい人だと思うけど、出会ってすぐに結婚って言われても、ちょっと困るかな」
ミライがまともでよかった。
この世界には政略結婚って言うのもあるが、俺はそんなものに縛られるつもりはない。
そしてそれを人には絶対押しつけたくない。
なにより、契約してやるから身体を差し出せみたいに言ってるようで、俺の気持ち的には嫌だ。
『はぁ、仕方ないですね。ミライがそう言うなら是非もありません。しかし二人には契約はしてもらいます』
「あぁそうだな」
俺はここが乙女ゲーの世界で、六年後は雷神という存在がいないことから、ミライには何らかの形で世界から排除された可能性があると言うことを話した。
さすがは女の子と言うところか、王子様と平民の少女がウェディングドレスを着て挙式を上げたという話は、目を輝かせて食いつくように話を聞いていた。
「そっかー、未来でボクは死んでるか、もしくはここにずっと閉じこもってるのかー。多分魔力に関係してるんだろうね。契約してくれるのはこっちとしてもありがたいんだけど、リアスくんはボクの魔力って耐えきれるの?」
精霊と契約するには魔力を消費する。
正確には壌土という形で、上限が消費するっぽいが、細かいことはよくわからない。
『そこは大丈夫です。彼は私と契約して8割以上魔力を残しています』
「え、クレセントおじさんとも契約してるの!?す、すごい!つまり、お母さん以上の魔力の持ち主なんだ」
「お母さん?」
「うん!お母さんはお父さんと結契してたんだ!雷神との契約はかなり魔力を消費するらしくって、1割しか残ってなかったらしいんだけど、それでも人の身でそれだけの魔力を保有してるのはすごいことだって、お父さん言ってた!」
『えぇ、ガランの奴、本当に、本当にウザったらしいくらい自慢げに話してましたね。あの時のどや顔はイライラしたので、派手にぶちかましてやりましたけど』
「クレセントおじさんとお父さんとの喧嘩で、ここにクレーターできちゃったしね」
ミライのお父さんの名前はガランって言うのか。
しかし、聞いた感じだと娘思いの愛妻家だったのだろう。
「良いお父さんだったんだな」
「うん。二年前も、ボクを逃がすためにお父さんとお母さんは------」
少し悲しげな表情をするミライ。
いきなり染みっぽい話になっちまった。
空気を変えないとな。
「それで契約の方はいいか?」
「ボクからお願いしたくらいだよ。ボクの魔力はもう、ほとんど尽きかけていてどうしようもなかったんだ。多分未来のボクは生きていようと、命が尽きていようとここから出られなかったと思う」
「あぁそうか。精霊は魔力が回復しないらしいな。それで、さっきも言ったがもしかしたら俺の家の人間に何か言われたり教われたりする可能性がある。それでも俺と契約してくれるか?」
クレとミライと目を合わせてぱちくりさせてる。
そして次には二人で笑い始めた。
なんだ、俺おかしな事言ったか?
『ふふっ、何を馬鹿なことを言ってるんですかね』
「風神と雷神を契約している人間で、更にはそれでもおそらく5割以上は魔力が残している人間をどうにかできるなんて、そんなのもう、人間じゃなくてタダの化け物だよ」
『私達のような神の真名を持つ精霊は、最上位の精霊です。同系統の精霊を使役することはおそらく不可能に近い。更に加えて、あなたの魔力はそんな最上位の精霊を二体以上は使役することができる魔力の持ち主なのですよ?』
「それは薄々感じてはいるよ。ゲームの常識を引っ張るようじゃないが、主人公ですら1/4しか余ってなかったみたいだしな。でも使役って言葉は嫌だな」
『それもあなたらしいと言えばあなたらしいです。では相棒、あるいは友に慣れるのはと言い変えましょう』
「あぁ。でもそうか、たしかに言われてみるとそうだな。俺自身も強くなるつもりだし、お前らを守れるくらいには。今はまだ守られる側だと思うけど」
「うん!リアスくんのことはボクが守るよ!」
頼もしいな。
でも前世の記憶を取り戻してからまだ四時間も経ってないんだな。
「じゃあ、あの失礼して」
「ん?」
間違いじゃなければ俺の頬にミライの唇が当たってると思うんだが。
え、つまり俺は頬にキスをされたってことか?
「え、えっと。一応、ファーストキスなんだよ・・・ど、どう?嬉しい?」
顔を真っ赤に腫らして上目遣いでこちらをもじもじと見つめる姿は、ロリコンじゃない俺からしても姦しいものを感じた。
要するに、ほの字が灯っても何らおかしくないと言うことだ。
俺、一応30手前の精神なんだけどなぁ。
「どうしよう。本気で嫁にほしくなっちまうよクレ」
『いいですよ。私としてはそちらの方がありがたいです』
「も、もう!二人ともからかわないで!」
俺の左手の甲に模様が刻まれていた。
あ、これ契約魔法の行使だったんだ。
だったら別に頬じゃなくても良かったんじゃ?
しかしそれを言うような野暮ったいことはしない。
俺は朴念仁になるつもりはないのだ。
「これからがんばってミライを攻略してくからな!覚悟しておけよ!」
「ふぇ、ふぇぇえ!?」
『幸先が良いですね。さて、ではリアスの目的である<狂戦士の襟巻き>を取りに行きましょうか。帝都まで飛ばしますよ』
「あ、久々におじさんの浮遊魔法に乗れるんだ。魔力切れでしばらく乗ってなかったもんね」
「え・・・」
「どうしたの青い顔してリアスくん?あ、まさか怖いの?」
「い、いやそんなことないし!」
『ふふっ、それではまた全力で飛ばしますね』
あ、余計なことを口走った。
でもミライの前でかっこ悪いところは見せたくなかったので、これは致し方ない。
帝都に着く頃には、泡を吹いて、それ以上にかっこ悪いところを見せることになるのだが、そんなのは知らない。
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