8 / 106
一章
桜が舞う季節
しおりを挟む
桜が舞う季節。
俺、リアス・フォン・アルゴノートは今日で15歳になる。
いよいよあと1ヶ月で乙女ゲーム「花咲く季節☆君に愛を注ぐ」の本編が始まる、レイアーノ魔術学園が入学式だ。
俺は当初この学園に通う気はなかった。
転生してから6年間の間は契約した精霊で相棒のクレセント、クレの願いの元で俺は精霊と無理矢理契約する儀式、精霊契約の儀に着いて調べていたことで方向転換を決意した。
精霊契約の儀は本来9歳でしか行うことが出来ないらしく、俺は9歳を過ぎたため精霊契約の儀の現場を見ることができなかったのだ。
当然グレコ、義母はこってり絞めた。
「レイアーノ魔術学園に入学するのは仕方ないけど、花そそのシナリオには絶対関わらない」
俺は魔法の練習をしながら、ぼそりと呟いた。
入学するから取って、花そそのシナリオに関わる必要はない。
それで何か変わると言うこともないだろう。
なにせ俺はガヤポジションだ。
精霊契約の儀について解決したら、俺は愛する人と慎ましく平穏に辺境で暮らすんだ!
隣りにいるイタチが申し訳なさそうに頭を下に向ける。
『申し訳ないです。本来であればアルゴノート家からも出家しているはずでしたのに・・・』
「謝るなよ相棒。クレが魔法を教えてくれたおかげで、この家で俺はかなり快適に暮らせたんだから」
この6年間でアルゴノート男爵家は大きく変わった。
6年前までは庶民に傲慢だった男爵家は、今や領地に暮らす人々のために懸命に領主としての仕事をこなしていた。
『笑いましたよ。ヒューマン、人間はあそこまで変われるものなのですね』
「俺も驚いたよ。まぁあいつら、平民と貴族は同じ人間じゃないって貴族の常識で育っただけで、実際はそうじゃなかったってわかった途端、徐々に歩み寄ろうとしてるんだから良いことだろう」
アルジオ、グレコ、アルナは本当に傲慢で、小さな領地とはいえ領民達の不満は恐ろしくたまっていた。
それこそあと少しで暴動が起きていたんじゃないかと思うほどだった。
さすがにこれはまずいと思って、前世の知識とクレやミラにナスタの力を借りて解決した。
今でこそ経済が回ってるが、最初は経済なんて気にする余裕すらなかった。
「雨不足によって井戸は乾いていたし、飢餓蔓延で栄養失調を起こして命を落とす者までいた。まぁそんな中で、領主が無駄な税を貪ってたら暴動も起きるよな」
「まぁそこはリアスくんがいち早く気づいたからいいじゃない」
そこに歩いてきたのは、俺と契約していた雷神のミライ。
6年前から少しだけ成長して130cmに至っていた。
それでも15歳で言えば小柄な方だけど。
でも綺麗だ。
この6年間で、俺とミラの契約は解消された。
そして新たに結契と言う、契約を結んだ。
まぁ早い話、婚約したようなもんだ。
「正直誰でも気づけた事だと思うけどな。飢餓に苦しんでる中あんな豪勢な食事が出てれば。ミラ、ナスタ、おはよう」
『おはようございます、リアスさん』
「おはようリアスくん。あなたの義両親は頭は悪いからね。自分の利益の出ることしか頭になかったんだよ。でもリアスくんがちょっとだけ教育したら、あんなに変わるんだもん。びっくりしたよ」
「あぁ、今ではそこそこ家族中も良好だと思うけどな。よっと」
俺はライトニングスピアを使い、木を彫刻した。
一瞬でこんな物作れるから魔法はすごいよな。
ライトニングスピアは、雷属性の上級魔法だ。
殺傷能力が高い。
それ故、花そその本編では学園内では使用ができなかった。
実際、一瞬で生えていた木を彫刻できるほどの切れ味だ。
俺はこういった魔法でできる細かな作業をこなして、下級、中級、上級魔法までは制御して見せた。
『上級魔法までは完璧に使いこなしていますね。それこそナスタは当然、私やミラよりも上級魔法までは完璧です』
「まだその上の最上級魔法と、大規模範囲攻撃魔法は使えないけどな」
最上級魔法は貴族でも公爵家くらいしか使えないらしい。
まぁそれも精霊の恩恵が強いだけなんだろうけど。
大規模範囲攻撃は、花そそで帝国が滅んだ核撃魔法をはじめとした、相手を殺すことだけを考えた魔法だ。
俺は万が一、花そそのシナリオの火の粉が俺に飛んでこないように大規模範囲攻撃魔法を覚えておきたかった。
まぁ大規模範囲攻撃魔法はクレやミライは覚えているけど魔力関係上使えないらしいから、ラスボスだった悪役令嬢は恐ろしい魔力の持ち主だったという事がわかる。
俺とどっちが高いのかねぇ。
「別に攻撃魔法は無理して覚えなくてもいいでしょ。発動する前にボクが気絶させてあげる!」
「心強いよ。俺は最上級魔法は魔力の制御が出来なくて発動ができないし、切り札の<狂戦士の襟巻き>は制御不可能だし」
狂戦士の襟巻きは何度か装備して制御を試みたが、6年間で一度も制御ができなかった。
つまり、装備すれば大事な人であろうが、悪人だろうが関係なく殺しに行ってしまう。
『仕方ないです。使わなきゃいけない状況になれば、必ず私が襟巻きを外しますので安心を』
「助かるよクレ」
「おーい坊ちゃん!」
「リアス様、お食事をお持ち致しました」
「メルセデス、イルミナ」
メルセデスは俺の専属料理係で6年間ずっと俺の食事を用意してくれている。
こいつがいたおかげで、今じゃすっかり健康体で筋肉で身体を引き締めることができた。
イルミナは領地で俺が保護した同い年の侍女だ。
彼女もレイアーノ魔術学園に入学するのは決まっている。
羽根の生えた豚の見た目をした風の精霊と契約したために、飢餓に苦しめられて居て余裕もない中、虐げられていたところを保護したのだ。
「イルミナ、前から言ってるけど、敬語は使わなくていいんだぞ」
「大丈夫です。自分はこの話し方が一番しっくりきますので」
「そう?まぁそう言うなら良いけど」
「おい坊ちゃん、今日は朝は特製のサンドイッチだ」
サンドイッチか。
バスケットに入っていて、中にはカツサンドやレタスとハムを挟んだサンドチッチなど様々だ。
ミラは嬉しそうにカツサンドを手に取った。
ちょっと朝から重いと思ったんだけど・・・さすが。
「うん~!今日もメルセデスの料理は美味いよ!」
「お嬢にそう言って貰えると、俺も腕を振るった冥利に尽きる!」
「難しい言葉を無理して使うなよ。まぁうまいぞメルセデス」
「ひひっ!」
鼻を擦って照れ隠しする癖は6年間で変わっていない。
フェリーがメルセデスのポケットから顔を出してくる。
『ナスタ!今日こそあの岩燃やして灰にするぞ!』
『うん!フェリー負けないよ!』
ナスタとフェリーは、同じ火の精霊って事もあっていつも仲良しだ。
だけど、岩はどう頑張っても灰にならないと思うんだ。
俺は二人が持ってきてくれた食事を食べ終えると、再び魔法の練習を始める。
ミラは俺に寄りかかって昼寝を始めた。
食べた後寝ると牛になるというが、こいつは食べる割りに太る気配が全くない。
精霊とエルフのハーフだからか?
「兄貴、こんなところに居た!」
そんな幸せな空間をぶち壊す声はアルナか。
俺の愚妹で、時期アルゴノート家当主だ。
絶対に俺は家系を継ぐ気は無いからと何度も何度もあの義両親に訴えかけ、無事彼女が次期当主だ。
当初はあの義両親は俺を殺そうとしていたが、俺の手腕で領地が豊かに変わり、魔力の高さと契約した精霊の規模から、是非にと俺を領主に推してきた。
まぁそれは別に構わなかったんだが、アルナの顔も立てる必要があるわけだし、アルナがとんでもない婚約者を連れてこないでもない限りは彼女が次期党首だ。
「どうしたアルナ」
「国境に遠征中のお父様から伝書よ」
「なんで俺なんだ。めんどくさいなアルジオの奴」
「もうっ!お父様は兄貴のお父様でもあるのよ!」
「だなー、お前は腹違いの俺の妹だなー。ハイハイ。それで、中身は見たんだろ?なんて書いてあったんだ」
「むっきぃぃぃ!庶民の癖に生意------」
「お前、まだそんなこと言おうとしてんのか・・・」
「ご、ごめんなさい!」
こいつらは庶民達の形相の目を見たから知っているのだ。
貴族も庶民に押しつぶされれば負けてしまうと言うことを。
不満が溜まっていた領民達に俺は彼らを突き出した。
それはもう酷い有様で、殺してしまうんじゃないかという勢いだ。
手を出す手前まで来たところで、俺は領民達を止めた。
恐怖に駈られたこいつらを俺は民と共に働かせたのだ。
そして自分達が私腹を費やした税がどのようにして出るかを知った彼らは、心が変わったように領地経営を始めたのだ。
あれは本当に驚いた。
ミラやクレですら驚くんだから、相当だろう。
「どうしても子供の頃からの口癖が根付いてるのよね・・・」
「それは仕方ないが絶対に直せよ。お前のそのドレスを買う金は、誰がどれだけ苦労して手に入れているかを知っているんだから、その言葉はどれだけ自分が恥ずかしいことを言っていたかもわかってるだろ?」
「えぇ。本当に恥ずかしいわ。お母様と社交界にも出ることで、貴族の令嬢とお茶会をする機会も増えたけど、誰も彼も領民を摂取する対象としか見てないわ。その点では兄貴には感謝してる」
「その点?すべてに感謝しろよ」
「えぇそうね。中身は見てないわ。それよりも6年前、お母様に何かしたでしょ!」
「はて、何のことだ?」
俺は義理の母グレコに俺は殴って治癒魔法をかけるを繰り返す、屈指の外道プレイで恐怖を植え付けた。
そのおかげもあって、領民達に差し出したときの彼女の絶望した顔は最高だった。
俺はやるときはやるって一人だけ知っていたからな。
今も一人そのことで怯えている事だろう。
「とぼけちゃって」
「嘘は吐いていないさ。それよりお前もレイアーノ学園に入学するのか?」
アルジオの手紙に書いてあったのは。アルナもレイアーノ魔術学園に婿捜しのために入学するから、警護をして欲しいとの内容だった。
ミラのことは領民も含めた全員が俺の婚約者と言うことで最初から通していたので、アルジオもミラの邪魔にならない範囲でいいから頼むとのことだった。
元々は家の中で魔力が高い俺がレイアーノ魔術に入学するだけでよかった。
そしてアルナの婿に学園出身者を抱え込めば、アルナは当主として成り立つことができるため、死と隣り合わせの学園に無理して入学する必要はなかった。
「えぇ、学園に通った方がいいのはワタクシが進言しましたのよ。だって婿が好き勝手領地をめちゃくちゃにするかもしれないじゃないの」
それは一理ある。
俺が何もしなければ、アルゴノート家だって好き勝手してたと思う。
アルナがまだ完全に貴族色に染まってなかったこともあって、娘可愛さからアルジオが変わっていたのが大きいところだろう。
そう言ったきっかけでもない限り、男爵に釣り合うまともな婿養子なんて早々見つからないだろう。
だったら人となりがわかった方が多少でも可能性があるし、アルナの選択は正しいと言える。
「まぁいいわ。これから後宮でお茶会があるの。ワタクシはそれに出席するから、これで失礼致しますわ」
そう言うとそのまま踵を返して屋敷に戻ろうとする。
これから準備をするのだろう。
後宮って事は皇帝自らが開いたお茶会か。
興味深いな。
エルーザ・フォン・ティタニア皇帝陛下の子は第一、第二、第三王子ともう嫁いだ第一王女の四人だけだったはずだ。
つまり開催したのは皇帝と言うことになる。
「待てアルナ!」
「何よ兄貴」
「俺もその茶会に出席ってできるか?」
正直招待されたわけじゃないから、出れるかどうかわからない。
本来であれば男爵家が呼ばれないようなお茶会だ。
実際今まで呼ばれたことないしな。
何故なら皇族主催では、公爵家、侯爵家、伯爵家など、家格がそれなりに高い家系しか呼ばれないからだ。
ここ最近の男爵領の税が極端に上がったことから、特別枠で招待された可能性が高い。
「どうだろう・・・兄貴の功績が大きいのはたしかだし、いけなくもないのかな?」
「使用人は連れて行ってもいいのか?」
別に兄としていく必要は無い。
その茶会に出席することが大事だ。
皇帝に一目会って見たかったしな。
皇太子ルートで、一度だけウェディングルートの時に登場したきりだ。
「あ、使用人として連れてくのはアリだと思う。それに兄貴以上に護衛としての適任はいないでしょうし」
「ならいいな。よし早速支度をしよう」
「リアスくんも行くんだ。ボクも行くよ。お茶会って多分帝都だよね?帝都で観光して見たかったんだ」
「ミライちゃんも行くの?最早過剰戦力・・・」
ミラと俺は、3年ほど前にアルゴノート領で畑を荒らしていた魔獣を退治するために、アルナと共に領外れにある森に行った。
その時に俺達の力を目の辺りにしたのだ。
畑を荒らしていた魔獣を食べている化け物と遭遇した。
ジャイアントベアと言う名前の通り巨大な熊だ。
花そそでも中ボスくらいの立ち位置で、ダンジョン内ではボス部屋前に居たレベルだ。
それを二人で瞬殺したもんだからまぁ、俺には絶対逆らっては駄目だって気持ちと、同じ女子として憧れを感じているところもあるだろう。
最初は俺のことを虐げてたアルナのことを嫌ってたミライも、ここまで潤沢な目を向けられて、腹違いとは言え俺との血縁者を無下にもできなかったこともあって今では仲良しだ。
「良いだろう別に。次期領主であるお前に過剰戦力は十分過ぎると思うけど?」
「わ、わかった。お母様にも伝えてくるわ」
そう言うと今度こそ屋敷の中に入っていった。
「じゃあ俺達も着替えないとな」
「うん。ナスタリウム行こう」
『かしこまりです』
「イルミナ、ミラは帝都で観光だからなるべく派手じゃない服を用意してやってくれ」
「わかりました」
そう言ってミラとイルミナも屋敷へと向かった。
俺はスーツにジャケットでいいだろう。
幸い俺は領地では有名だが、帝都には名前が知られてないしバレないだろう。
『帝都、6年ぶりですか』
「あぁ、あんときはスラムにしか行ってないが」
『図書館で精霊の儀の資料を調べたいですね。アルゴノート領の図書館では限界がありますから』
「時間があったら行こうか。入学前に知識を得るための機会が来るのはありがたいな」
『ですね。ところでなんでお茶会に行こうと思ったんです?』
俺は自分の部屋の窓に乗り移り、それに倣ってクレも着いてくる。
「あぁ皇帝に一度会ってみたかったんだ」
『花そその登場人物ですね。たしか皇太子を攻略したときに結婚式の祝いの席に登場した以来、登場してないんですよね』
「あぁ、登場しない理由は何かあるだろう。だとすればミラの様に何らかの理由が------」
『いや学園モノなのでしょう?リアスからこれまでゲームについて、日本に着いて色々聞きましたけど、皇帝が登場しないのは皇太子の親だからですよ。学校になんか朽ちだしてくるのは、モンスターペアレントと言う奴でしょうから、普通の良い親じゃないですかね』
「悪役令嬢との婚約破棄イベントにも登場しないんだ。何らかの理由があるんじゃないか?」
皇子ルートの婚約破棄イベントを俺は思い出す。
皇太子には婚約者の公爵令嬢が存在しており、皇太子が主人公ばかり気にするから、取り巻き達が嫌がらせなどを数多く行った。
取り巻き達は単純にそう言う大義名分の元、平民をいじめてたぽいが、それを公爵令嬢に押しつけた。
そうじゃなくても婚約者が別の奴に目が行ってたら嫉妬するのは当然。
寧ろ愛されてるんだ。
なのに皇子ときたらまぁ、俺は恋を知っただの、何の罪も無い令嬢をいじめるなんておかしいとか、胸くそ悪い。
立場上、皇子に文句なんて言えるはずもない、婚約者の言葉に一度も耳を貸さなかった。。
自分が皇子と自覚した状態で言葉には責任を持てよな。
イジメが悪だということで、公爵令嬢は斬首刑にされ命を落とすが、その怨嗟で再び現世へと舞い戻り、一周目のボスとして立ちはだかる。
そしてどう頑張っても帝国が滅ぶルートだ。
無実の罪で斬首させられて恨まない人間なんかいないし、誰も公爵令嬢の言うことを聞かなかったんだ。
良い末路だと思う。
まぁこの世界が二周目の可能性もあるし、そのイベント自体が起こるかはわからない。
実際二周目は悪役令嬢の婚約者を探すレベルまで、仲は進展しては居る。
でもそれは入学するまでわからない。
『たしかに聡明と名高いエルーザが、子供同士のイジメで首謀者だけを斬首刑にするってちょっとおかしい気がします』
「だろ?あの皇帝は傲慢じゃない。愚者でもない。もし斬首にするとしたら全員をしたはずだ。何か裏があるかもしれないだろ?」
『ふむ。そうですね。そのためのお茶会出席ですか』
「そういうことだ」
公爵令嬢には悪いが、俺はシナリオに関わる気は無い。
これまで集めた資料によると、精霊契約の儀はどうやら帝国でしか行われていないのだ。
つまり、帝国がこの魔法を作った可能性が高く、俺達にとっては滅んでくれると寧ろありがたいって結論になった。
ミラは人の犠牲なしでなんとか解決したそうだったが、そもそも魔法が成立してしまってる以上、誰も精霊契約の儀を行えなくしなければ、誰かまた別の人間が精霊契約の儀をやり始めるかも知れない。
結局繰り返されるなら、大元を断絶して解決しようということになった。
俺は着替えを済ませて門のトコロに行く。
もうミラとアルナは門の前に居た。
ミラは動きやすい格好でYシャツにズボンだった。
ショートヘアなのでボーイッシュな感じがまた良い。
「ミラ、良い感じだ」
「もう、良い感じってなに!」
「ボクっ子にボーイッシュ、最高だよ」
「ハイハイそうですか」
「もう惚気てないで乗りましょう。早くしないと遅れてしまうわ」
俺達は馬車に乗り込み、お茶会会場である帝都へ向けて馬車が進み出す。
帝都に着くまでミラとアルナは俺の肩に頭を乗せてすやすやと眠っていた。
ミラはいいけど、アルナ、重たいぞてめぇ!
俺、リアス・フォン・アルゴノートは今日で15歳になる。
いよいよあと1ヶ月で乙女ゲーム「花咲く季節☆君に愛を注ぐ」の本編が始まる、レイアーノ魔術学園が入学式だ。
俺は当初この学園に通う気はなかった。
転生してから6年間の間は契約した精霊で相棒のクレセント、クレの願いの元で俺は精霊と無理矢理契約する儀式、精霊契約の儀に着いて調べていたことで方向転換を決意した。
精霊契約の儀は本来9歳でしか行うことが出来ないらしく、俺は9歳を過ぎたため精霊契約の儀の現場を見ることができなかったのだ。
当然グレコ、義母はこってり絞めた。
「レイアーノ魔術学園に入学するのは仕方ないけど、花そそのシナリオには絶対関わらない」
俺は魔法の練習をしながら、ぼそりと呟いた。
入学するから取って、花そそのシナリオに関わる必要はない。
それで何か変わると言うこともないだろう。
なにせ俺はガヤポジションだ。
精霊契約の儀について解決したら、俺は愛する人と慎ましく平穏に辺境で暮らすんだ!
隣りにいるイタチが申し訳なさそうに頭を下に向ける。
『申し訳ないです。本来であればアルゴノート家からも出家しているはずでしたのに・・・』
「謝るなよ相棒。クレが魔法を教えてくれたおかげで、この家で俺はかなり快適に暮らせたんだから」
この6年間でアルゴノート男爵家は大きく変わった。
6年前までは庶民に傲慢だった男爵家は、今や領地に暮らす人々のために懸命に領主としての仕事をこなしていた。
『笑いましたよ。ヒューマン、人間はあそこまで変われるものなのですね』
「俺も驚いたよ。まぁあいつら、平民と貴族は同じ人間じゃないって貴族の常識で育っただけで、実際はそうじゃなかったってわかった途端、徐々に歩み寄ろうとしてるんだから良いことだろう」
アルジオ、グレコ、アルナは本当に傲慢で、小さな領地とはいえ領民達の不満は恐ろしくたまっていた。
それこそあと少しで暴動が起きていたんじゃないかと思うほどだった。
さすがにこれはまずいと思って、前世の知識とクレやミラにナスタの力を借りて解決した。
今でこそ経済が回ってるが、最初は経済なんて気にする余裕すらなかった。
「雨不足によって井戸は乾いていたし、飢餓蔓延で栄養失調を起こして命を落とす者までいた。まぁそんな中で、領主が無駄な税を貪ってたら暴動も起きるよな」
「まぁそこはリアスくんがいち早く気づいたからいいじゃない」
そこに歩いてきたのは、俺と契約していた雷神のミライ。
6年前から少しだけ成長して130cmに至っていた。
それでも15歳で言えば小柄な方だけど。
でも綺麗だ。
この6年間で、俺とミラの契約は解消された。
そして新たに結契と言う、契約を結んだ。
まぁ早い話、婚約したようなもんだ。
「正直誰でも気づけた事だと思うけどな。飢餓に苦しんでる中あんな豪勢な食事が出てれば。ミラ、ナスタ、おはよう」
『おはようございます、リアスさん』
「おはようリアスくん。あなたの義両親は頭は悪いからね。自分の利益の出ることしか頭になかったんだよ。でもリアスくんがちょっとだけ教育したら、あんなに変わるんだもん。びっくりしたよ」
「あぁ、今ではそこそこ家族中も良好だと思うけどな。よっと」
俺はライトニングスピアを使い、木を彫刻した。
一瞬でこんな物作れるから魔法はすごいよな。
ライトニングスピアは、雷属性の上級魔法だ。
殺傷能力が高い。
それ故、花そその本編では学園内では使用ができなかった。
実際、一瞬で生えていた木を彫刻できるほどの切れ味だ。
俺はこういった魔法でできる細かな作業をこなして、下級、中級、上級魔法までは制御して見せた。
『上級魔法までは完璧に使いこなしていますね。それこそナスタは当然、私やミラよりも上級魔法までは完璧です』
「まだその上の最上級魔法と、大規模範囲攻撃魔法は使えないけどな」
最上級魔法は貴族でも公爵家くらいしか使えないらしい。
まぁそれも精霊の恩恵が強いだけなんだろうけど。
大規模範囲攻撃は、花そそで帝国が滅んだ核撃魔法をはじめとした、相手を殺すことだけを考えた魔法だ。
俺は万が一、花そそのシナリオの火の粉が俺に飛んでこないように大規模範囲攻撃魔法を覚えておきたかった。
まぁ大規模範囲攻撃魔法はクレやミライは覚えているけど魔力関係上使えないらしいから、ラスボスだった悪役令嬢は恐ろしい魔力の持ち主だったという事がわかる。
俺とどっちが高いのかねぇ。
「別に攻撃魔法は無理して覚えなくてもいいでしょ。発動する前にボクが気絶させてあげる!」
「心強いよ。俺は最上級魔法は魔力の制御が出来なくて発動ができないし、切り札の<狂戦士の襟巻き>は制御不可能だし」
狂戦士の襟巻きは何度か装備して制御を試みたが、6年間で一度も制御ができなかった。
つまり、装備すれば大事な人であろうが、悪人だろうが関係なく殺しに行ってしまう。
『仕方ないです。使わなきゃいけない状況になれば、必ず私が襟巻きを外しますので安心を』
「助かるよクレ」
「おーい坊ちゃん!」
「リアス様、お食事をお持ち致しました」
「メルセデス、イルミナ」
メルセデスは俺の専属料理係で6年間ずっと俺の食事を用意してくれている。
こいつがいたおかげで、今じゃすっかり健康体で筋肉で身体を引き締めることができた。
イルミナは領地で俺が保護した同い年の侍女だ。
彼女もレイアーノ魔術学園に入学するのは決まっている。
羽根の生えた豚の見た目をした風の精霊と契約したために、飢餓に苦しめられて居て余裕もない中、虐げられていたところを保護したのだ。
「イルミナ、前から言ってるけど、敬語は使わなくていいんだぞ」
「大丈夫です。自分はこの話し方が一番しっくりきますので」
「そう?まぁそう言うなら良いけど」
「おい坊ちゃん、今日は朝は特製のサンドイッチだ」
サンドイッチか。
バスケットに入っていて、中にはカツサンドやレタスとハムを挟んだサンドチッチなど様々だ。
ミラは嬉しそうにカツサンドを手に取った。
ちょっと朝から重いと思ったんだけど・・・さすが。
「うん~!今日もメルセデスの料理は美味いよ!」
「お嬢にそう言って貰えると、俺も腕を振るった冥利に尽きる!」
「難しい言葉を無理して使うなよ。まぁうまいぞメルセデス」
「ひひっ!」
鼻を擦って照れ隠しする癖は6年間で変わっていない。
フェリーがメルセデスのポケットから顔を出してくる。
『ナスタ!今日こそあの岩燃やして灰にするぞ!』
『うん!フェリー負けないよ!』
ナスタとフェリーは、同じ火の精霊って事もあっていつも仲良しだ。
だけど、岩はどう頑張っても灰にならないと思うんだ。
俺は二人が持ってきてくれた食事を食べ終えると、再び魔法の練習を始める。
ミラは俺に寄りかかって昼寝を始めた。
食べた後寝ると牛になるというが、こいつは食べる割りに太る気配が全くない。
精霊とエルフのハーフだからか?
「兄貴、こんなところに居た!」
そんな幸せな空間をぶち壊す声はアルナか。
俺の愚妹で、時期アルゴノート家当主だ。
絶対に俺は家系を継ぐ気は無いからと何度も何度もあの義両親に訴えかけ、無事彼女が次期当主だ。
当初はあの義両親は俺を殺そうとしていたが、俺の手腕で領地が豊かに変わり、魔力の高さと契約した精霊の規模から、是非にと俺を領主に推してきた。
まぁそれは別に構わなかったんだが、アルナの顔も立てる必要があるわけだし、アルナがとんでもない婚約者を連れてこないでもない限りは彼女が次期党首だ。
「どうしたアルナ」
「国境に遠征中のお父様から伝書よ」
「なんで俺なんだ。めんどくさいなアルジオの奴」
「もうっ!お父様は兄貴のお父様でもあるのよ!」
「だなー、お前は腹違いの俺の妹だなー。ハイハイ。それで、中身は見たんだろ?なんて書いてあったんだ」
「むっきぃぃぃ!庶民の癖に生意------」
「お前、まだそんなこと言おうとしてんのか・・・」
「ご、ごめんなさい!」
こいつらは庶民達の形相の目を見たから知っているのだ。
貴族も庶民に押しつぶされれば負けてしまうと言うことを。
不満が溜まっていた領民達に俺は彼らを突き出した。
それはもう酷い有様で、殺してしまうんじゃないかという勢いだ。
手を出す手前まで来たところで、俺は領民達を止めた。
恐怖に駈られたこいつらを俺は民と共に働かせたのだ。
そして自分達が私腹を費やした税がどのようにして出るかを知った彼らは、心が変わったように領地経営を始めたのだ。
あれは本当に驚いた。
ミラやクレですら驚くんだから、相当だろう。
「どうしても子供の頃からの口癖が根付いてるのよね・・・」
「それは仕方ないが絶対に直せよ。お前のそのドレスを買う金は、誰がどれだけ苦労して手に入れているかを知っているんだから、その言葉はどれだけ自分が恥ずかしいことを言っていたかもわかってるだろ?」
「えぇ。本当に恥ずかしいわ。お母様と社交界にも出ることで、貴族の令嬢とお茶会をする機会も増えたけど、誰も彼も領民を摂取する対象としか見てないわ。その点では兄貴には感謝してる」
「その点?すべてに感謝しろよ」
「えぇそうね。中身は見てないわ。それよりも6年前、お母様に何かしたでしょ!」
「はて、何のことだ?」
俺は義理の母グレコに俺は殴って治癒魔法をかけるを繰り返す、屈指の外道プレイで恐怖を植え付けた。
そのおかげもあって、領民達に差し出したときの彼女の絶望した顔は最高だった。
俺はやるときはやるって一人だけ知っていたからな。
今も一人そのことで怯えている事だろう。
「とぼけちゃって」
「嘘は吐いていないさ。それよりお前もレイアーノ学園に入学するのか?」
アルジオの手紙に書いてあったのは。アルナもレイアーノ魔術学園に婿捜しのために入学するから、警護をして欲しいとの内容だった。
ミラのことは領民も含めた全員が俺の婚約者と言うことで最初から通していたので、アルジオもミラの邪魔にならない範囲でいいから頼むとのことだった。
元々は家の中で魔力が高い俺がレイアーノ魔術に入学するだけでよかった。
そしてアルナの婿に学園出身者を抱え込めば、アルナは当主として成り立つことができるため、死と隣り合わせの学園に無理して入学する必要はなかった。
「えぇ、学園に通った方がいいのはワタクシが進言しましたのよ。だって婿が好き勝手領地をめちゃくちゃにするかもしれないじゃないの」
それは一理ある。
俺が何もしなければ、アルゴノート家だって好き勝手してたと思う。
アルナがまだ完全に貴族色に染まってなかったこともあって、娘可愛さからアルジオが変わっていたのが大きいところだろう。
そう言ったきっかけでもない限り、男爵に釣り合うまともな婿養子なんて早々見つからないだろう。
だったら人となりがわかった方が多少でも可能性があるし、アルナの選択は正しいと言える。
「まぁいいわ。これから後宮でお茶会があるの。ワタクシはそれに出席するから、これで失礼致しますわ」
そう言うとそのまま踵を返して屋敷に戻ろうとする。
これから準備をするのだろう。
後宮って事は皇帝自らが開いたお茶会か。
興味深いな。
エルーザ・フォン・ティタニア皇帝陛下の子は第一、第二、第三王子ともう嫁いだ第一王女の四人だけだったはずだ。
つまり開催したのは皇帝と言うことになる。
「待てアルナ!」
「何よ兄貴」
「俺もその茶会に出席ってできるか?」
正直招待されたわけじゃないから、出れるかどうかわからない。
本来であれば男爵家が呼ばれないようなお茶会だ。
実際今まで呼ばれたことないしな。
何故なら皇族主催では、公爵家、侯爵家、伯爵家など、家格がそれなりに高い家系しか呼ばれないからだ。
ここ最近の男爵領の税が極端に上がったことから、特別枠で招待された可能性が高い。
「どうだろう・・・兄貴の功績が大きいのはたしかだし、いけなくもないのかな?」
「使用人は連れて行ってもいいのか?」
別に兄としていく必要は無い。
その茶会に出席することが大事だ。
皇帝に一目会って見たかったしな。
皇太子ルートで、一度だけウェディングルートの時に登場したきりだ。
「あ、使用人として連れてくのはアリだと思う。それに兄貴以上に護衛としての適任はいないでしょうし」
「ならいいな。よし早速支度をしよう」
「リアスくんも行くんだ。ボクも行くよ。お茶会って多分帝都だよね?帝都で観光して見たかったんだ」
「ミライちゃんも行くの?最早過剰戦力・・・」
ミラと俺は、3年ほど前にアルゴノート領で畑を荒らしていた魔獣を退治するために、アルナと共に領外れにある森に行った。
その時に俺達の力を目の辺りにしたのだ。
畑を荒らしていた魔獣を食べている化け物と遭遇した。
ジャイアントベアと言う名前の通り巨大な熊だ。
花そそでも中ボスくらいの立ち位置で、ダンジョン内ではボス部屋前に居たレベルだ。
それを二人で瞬殺したもんだからまぁ、俺には絶対逆らっては駄目だって気持ちと、同じ女子として憧れを感じているところもあるだろう。
最初は俺のことを虐げてたアルナのことを嫌ってたミライも、ここまで潤沢な目を向けられて、腹違いとは言え俺との血縁者を無下にもできなかったこともあって今では仲良しだ。
「良いだろう別に。次期領主であるお前に過剰戦力は十分過ぎると思うけど?」
「わ、わかった。お母様にも伝えてくるわ」
そう言うと今度こそ屋敷の中に入っていった。
「じゃあ俺達も着替えないとな」
「うん。ナスタリウム行こう」
『かしこまりです』
「イルミナ、ミラは帝都で観光だからなるべく派手じゃない服を用意してやってくれ」
「わかりました」
そう言ってミラとイルミナも屋敷へと向かった。
俺はスーツにジャケットでいいだろう。
幸い俺は領地では有名だが、帝都には名前が知られてないしバレないだろう。
『帝都、6年ぶりですか』
「あぁ、あんときはスラムにしか行ってないが」
『図書館で精霊の儀の資料を調べたいですね。アルゴノート領の図書館では限界がありますから』
「時間があったら行こうか。入学前に知識を得るための機会が来るのはありがたいな」
『ですね。ところでなんでお茶会に行こうと思ったんです?』
俺は自分の部屋の窓に乗り移り、それに倣ってクレも着いてくる。
「あぁ皇帝に一度会ってみたかったんだ」
『花そその登場人物ですね。たしか皇太子を攻略したときに結婚式の祝いの席に登場した以来、登場してないんですよね』
「あぁ、登場しない理由は何かあるだろう。だとすればミラの様に何らかの理由が------」
『いや学園モノなのでしょう?リアスからこれまでゲームについて、日本に着いて色々聞きましたけど、皇帝が登場しないのは皇太子の親だからですよ。学校になんか朽ちだしてくるのは、モンスターペアレントと言う奴でしょうから、普通の良い親じゃないですかね』
「悪役令嬢との婚約破棄イベントにも登場しないんだ。何らかの理由があるんじゃないか?」
皇子ルートの婚約破棄イベントを俺は思い出す。
皇太子には婚約者の公爵令嬢が存在しており、皇太子が主人公ばかり気にするから、取り巻き達が嫌がらせなどを数多く行った。
取り巻き達は単純にそう言う大義名分の元、平民をいじめてたぽいが、それを公爵令嬢に押しつけた。
そうじゃなくても婚約者が別の奴に目が行ってたら嫉妬するのは当然。
寧ろ愛されてるんだ。
なのに皇子ときたらまぁ、俺は恋を知っただの、何の罪も無い令嬢をいじめるなんておかしいとか、胸くそ悪い。
立場上、皇子に文句なんて言えるはずもない、婚約者の言葉に一度も耳を貸さなかった。。
自分が皇子と自覚した状態で言葉には責任を持てよな。
イジメが悪だということで、公爵令嬢は斬首刑にされ命を落とすが、その怨嗟で再び現世へと舞い戻り、一周目のボスとして立ちはだかる。
そしてどう頑張っても帝国が滅ぶルートだ。
無実の罪で斬首させられて恨まない人間なんかいないし、誰も公爵令嬢の言うことを聞かなかったんだ。
良い末路だと思う。
まぁこの世界が二周目の可能性もあるし、そのイベント自体が起こるかはわからない。
実際二周目は悪役令嬢の婚約者を探すレベルまで、仲は進展しては居る。
でもそれは入学するまでわからない。
『たしかに聡明と名高いエルーザが、子供同士のイジメで首謀者だけを斬首刑にするってちょっとおかしい気がします』
「だろ?あの皇帝は傲慢じゃない。愚者でもない。もし斬首にするとしたら全員をしたはずだ。何か裏があるかもしれないだろ?」
『ふむ。そうですね。そのためのお茶会出席ですか』
「そういうことだ」
公爵令嬢には悪いが、俺はシナリオに関わる気は無い。
これまで集めた資料によると、精霊契約の儀はどうやら帝国でしか行われていないのだ。
つまり、帝国がこの魔法を作った可能性が高く、俺達にとっては滅んでくれると寧ろありがたいって結論になった。
ミラは人の犠牲なしでなんとか解決したそうだったが、そもそも魔法が成立してしまってる以上、誰も精霊契約の儀を行えなくしなければ、誰かまた別の人間が精霊契約の儀をやり始めるかも知れない。
結局繰り返されるなら、大元を断絶して解決しようということになった。
俺は着替えを済ませて門のトコロに行く。
もうミラとアルナは門の前に居た。
ミラは動きやすい格好でYシャツにズボンだった。
ショートヘアなのでボーイッシュな感じがまた良い。
「ミラ、良い感じだ」
「もう、良い感じってなに!」
「ボクっ子にボーイッシュ、最高だよ」
「ハイハイそうですか」
「もう惚気てないで乗りましょう。早くしないと遅れてしまうわ」
俺達は馬車に乗り込み、お茶会会場である帝都へ向けて馬車が進み出す。
帝都に着くまでミラとアルナは俺の肩に頭を乗せてすやすやと眠っていた。
ミラはいいけど、アルナ、重たいぞてめぇ!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
52
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる