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ついにお茶会当日となってしまった。
昨日は一日休みだったけど、疲れが溜まってたのか丸一日寝ちゃったわ。
マヤには昨日一日私の身の回りの世話をやってもらったから早速修練を出した。
魔力のコントロールをする為に、右手で絵を描きながら左手で同じ文字を転写してもらっている。
右手と左手を別に動かすような物だからね魔法の魔力操作って。
「でもマヤも連れてくるべきだと少し後悔したわ」
「そんなに怖いんですの?」
「怖いわ。貴族令嬢の何から何まで怖い」
私はお茶会、と言うよりは社交会にに慣れていない。
伊達に友達がいないわけではないのよ。
「大丈夫ですのよ。今日はワタクシの事をよく思ってくれてる方しか読んでないですわわ。魔力無しでも色眼鏡なしで見れる人達ですわよ」
「でも知人止まりなのよね?」
「そうですわね。社交界以外の場で交流はないですわ」
「マリアはすごいわ。私なんてそんな人達居たら吹き飛ばしちゃうもの」
「そ、そうですわねー」
マリアが目を逸らした。
まさか本当に吹き飛ばした?
いや拳でぶっ飛ばしたわね。
「マリア、貴女」
「そんな呆れた目で見ないでおくんなまし!ワタクシにぶん殴られた知人達は喜んでくださったのよ!」
「え、それって・・・」
背筋がゾクっとした。
それって飛んだ被虐趣味の持ち主達じゃない!
だってマリアはそれなりの護身術に魔法で強化された身体の私と、身体強化魔法無しで互角の体術の使い手よ!?
「その人達大丈夫?」
「えぇ。彼女達はちゃんと治癒魔法が使えますので、身体に傷は残ってないはずですわ!」
「心配してるのは頭の方なんだけど」
「彼女達は頭はそれなりにいいですわよ?」
そう言うことじゃないのよ。
と言うか頭いいって余計に怖いんだけど。
頭いい人は頭おかしな人も多いって本当なのかしら?
オリバー様もそうだし。
「ふふっ」
「何よマリア」
「緊張、ほぐれました?」
「あ、え?う、うん。ありがとう」
そっか、マリアが私の緊張をほぐすために作った話だったんだ。
ひとまずは胸をなでおろした。
「流石に貴族令嬢が被虐趣味の持ち主なんてありえないわよね」
「・・・そうね」
あ、マリア目をそらした。
作り話ってわけでもないのね。
憂鬱な気持ちでお茶会に挑むことになりそうね。
お茶会の会場であるモーセ家の庭へと案内される。
昨日の夜も少し下見したので、馴染みのある景色とは言えないが見知らぬ土地ではないからそこに緊張はない。
会場には三人の令嬢が居た。
「鬼嫁のマリア様、ごきげんよう。初めまして稲妻のルルシア様、わたくし、メルクール侯爵家のサラ・フォン・メルクールと申します」
「同じくパウローマ侯爵家の長女ルカ・フォン・パウローマと申します」
「伯爵家次女、ヨハネ・フォン・ビザンチと申します」
サラ様は年上の白銀の髪に艶々なロングへアな美麗な貴婦人。
ルカ様はピンクブロンドのお淑やかな令嬢。
ヨハネはゴールドブロンドだけど、所々日焼け跡が見える元気な少女って感じね。
でも皆さん貴族としての雰囲気は感じるわ。
とても被虐趣味があるとは思えない。
「ごきげんよう皆さん。私はルルシア・フォン・イガラシと申します。よろしくお願いしますね」
「え、イガラシ!?待ちまして、貴女ついにグレン様とご結婚なさったって言いますの!?」
「ちょ、マリア!?皆さん見てるのよ!?」
「関係ありませんわ!どうして言ってくださらなかったんですのぉ!」
三人とも微笑んでこちらを見てる。
これって日常なの!?
マリア、結構気負ってたのに、これは社交界じゃないわよ!?
これが通じるなら先に言いなさいよ!
「結婚してないわ。グレンがそう名乗っていいって言うから甘えさせてもらったのよ。ほら、私ってランダール家出てるから名前を名乗るわけにもいかないじゃない?」
「それってもうほとんど既成事実じゃないですの!皆さんもそう思いますわよね!?」
三人とも頷いてしまった。
既成事実ってほどでもないでしょうに。
「そういえばサラ様はラフィール様と同じ姓ですね。もしかしてーーー」
「あぁ、ルルシア様はあの子と同じ遠征先でしたね。旦那様がお世話になりました」
「あ、いえこちらこそお世話になりました。ラフィール様には魔法の勉強を色々とさせてもらいまして感謝しております」
「そうですか、流石は旦那様です。旦那様には本当に感謝しております」
その顔はとても眩しく見えた。
なるほど、これが恋をするってことなのかしら?
極度のシスコンって聞いてたけど、ちゃんと相思相愛なのかしらね?
「ルルシア様。ルルシア様はマリア様と互角の力量とお聞きしました!どんなお仕置きをしてくれるのか私達楽しみで今日は眠れませんでしたの!」
「そうだわ!わたくしも今日に備えて恥ずかしながらお尻のマッサージをして来ました!」
ルカ様とヨハネ様の口から、彼女たちの容姿からは想像もできない言葉が紡がれた。
言葉遣いは優雅なのに、内容がなんていうかーーー
マリアを見るとそれはもう目を泳がせていた。
「マリア・・・」
「ワタクシだってこうなるとは思っていませんでしたもの!でも頼まれたらやるしかないじゃないんですの!」
「貴女、この子達に責任を取る必要があるわよ?」
「彼女達の婚約者は二人ともこの変わり方を喜んでいましたわ!」
そういう問題じゃないってば。
というか彼女達の婚約者も喜んでいるのね・・・
「そういえば例の保護した彼女はどこ?」
「まだ来てませんわね」
マザーコアの人間だし命を狙われたりしないかしら?
一応ドレスの胸の詰め物の裏にヴァルカンは連れてきてるけど。
そう思って警戒を少しだけ強めた矢先、屋敷の入り口から走ってくる令嬢をみた。
「あ、来ましたわ。彼女が例の・・・」
「見た目は普通の令嬢に見えるわね」
「遅れてすいま、ぁあああああああああ!」
しかし途中で躓いたのか、顔面から地面にダイブしてしまう。
私は急いで彼女の下に駆け付ける。
「す、すびばぜん・・・」
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがどぉ~」
涙や鼻血でぐちゃぐちゃになった彼女の顔をハンカチで拭った。
驚いたことに、鼻血が出ている以外はほとんどケガがなかった。
これがマザーコアの力?
昨日は一日休みだったけど、疲れが溜まってたのか丸一日寝ちゃったわ。
マヤには昨日一日私の身の回りの世話をやってもらったから早速修練を出した。
魔力のコントロールをする為に、右手で絵を描きながら左手で同じ文字を転写してもらっている。
右手と左手を別に動かすような物だからね魔法の魔力操作って。
「でもマヤも連れてくるべきだと少し後悔したわ」
「そんなに怖いんですの?」
「怖いわ。貴族令嬢の何から何まで怖い」
私はお茶会、と言うよりは社交会にに慣れていない。
伊達に友達がいないわけではないのよ。
「大丈夫ですのよ。今日はワタクシの事をよく思ってくれてる方しか読んでないですわわ。魔力無しでも色眼鏡なしで見れる人達ですわよ」
「でも知人止まりなのよね?」
「そうですわね。社交界以外の場で交流はないですわ」
「マリアはすごいわ。私なんてそんな人達居たら吹き飛ばしちゃうもの」
「そ、そうですわねー」
マリアが目を逸らした。
まさか本当に吹き飛ばした?
いや拳でぶっ飛ばしたわね。
「マリア、貴女」
「そんな呆れた目で見ないでおくんなまし!ワタクシにぶん殴られた知人達は喜んでくださったのよ!」
「え、それって・・・」
背筋がゾクっとした。
それって飛んだ被虐趣味の持ち主達じゃない!
だってマリアはそれなりの護身術に魔法で強化された身体の私と、身体強化魔法無しで互角の体術の使い手よ!?
「その人達大丈夫?」
「えぇ。彼女達はちゃんと治癒魔法が使えますので、身体に傷は残ってないはずですわ!」
「心配してるのは頭の方なんだけど」
「彼女達は頭はそれなりにいいですわよ?」
そう言うことじゃないのよ。
と言うか頭いいって余計に怖いんだけど。
頭いい人は頭おかしな人も多いって本当なのかしら?
オリバー様もそうだし。
「ふふっ」
「何よマリア」
「緊張、ほぐれました?」
「あ、え?う、うん。ありがとう」
そっか、マリアが私の緊張をほぐすために作った話だったんだ。
ひとまずは胸をなでおろした。
「流石に貴族令嬢が被虐趣味の持ち主なんてありえないわよね」
「・・・そうね」
あ、マリア目をそらした。
作り話ってわけでもないのね。
憂鬱な気持ちでお茶会に挑むことになりそうね。
お茶会の会場であるモーセ家の庭へと案内される。
昨日の夜も少し下見したので、馴染みのある景色とは言えないが見知らぬ土地ではないからそこに緊張はない。
会場には三人の令嬢が居た。
「鬼嫁のマリア様、ごきげんよう。初めまして稲妻のルルシア様、わたくし、メルクール侯爵家のサラ・フォン・メルクールと申します」
「同じくパウローマ侯爵家の長女ルカ・フォン・パウローマと申します」
「伯爵家次女、ヨハネ・フォン・ビザンチと申します」
サラ様は年上の白銀の髪に艶々なロングへアな美麗な貴婦人。
ルカ様はピンクブロンドのお淑やかな令嬢。
ヨハネはゴールドブロンドだけど、所々日焼け跡が見える元気な少女って感じね。
でも皆さん貴族としての雰囲気は感じるわ。
とても被虐趣味があるとは思えない。
「ごきげんよう皆さん。私はルルシア・フォン・イガラシと申します。よろしくお願いしますね」
「え、イガラシ!?待ちまして、貴女ついにグレン様とご結婚なさったって言いますの!?」
「ちょ、マリア!?皆さん見てるのよ!?」
「関係ありませんわ!どうして言ってくださらなかったんですのぉ!」
三人とも微笑んでこちらを見てる。
これって日常なの!?
マリア、結構気負ってたのに、これは社交界じゃないわよ!?
これが通じるなら先に言いなさいよ!
「結婚してないわ。グレンがそう名乗っていいって言うから甘えさせてもらったのよ。ほら、私ってランダール家出てるから名前を名乗るわけにもいかないじゃない?」
「それってもうほとんど既成事実じゃないですの!皆さんもそう思いますわよね!?」
三人とも頷いてしまった。
既成事実ってほどでもないでしょうに。
「そういえばサラ様はラフィール様と同じ姓ですね。もしかしてーーー」
「あぁ、ルルシア様はあの子と同じ遠征先でしたね。旦那様がお世話になりました」
「あ、いえこちらこそお世話になりました。ラフィール様には魔法の勉強を色々とさせてもらいまして感謝しております」
「そうですか、流石は旦那様です。旦那様には本当に感謝しております」
その顔はとても眩しく見えた。
なるほど、これが恋をするってことなのかしら?
極度のシスコンって聞いてたけど、ちゃんと相思相愛なのかしらね?
「ルルシア様。ルルシア様はマリア様と互角の力量とお聞きしました!どんなお仕置きをしてくれるのか私達楽しみで今日は眠れませんでしたの!」
「そうだわ!わたくしも今日に備えて恥ずかしながらお尻のマッサージをして来ました!」
ルカ様とヨハネ様の口から、彼女たちの容姿からは想像もできない言葉が紡がれた。
言葉遣いは優雅なのに、内容がなんていうかーーー
マリアを見るとそれはもう目を泳がせていた。
「マリア・・・」
「ワタクシだってこうなるとは思っていませんでしたもの!でも頼まれたらやるしかないじゃないんですの!」
「貴女、この子達に責任を取る必要があるわよ?」
「彼女達の婚約者は二人ともこの変わり方を喜んでいましたわ!」
そういう問題じゃないってば。
というか彼女達の婚約者も喜んでいるのね・・・
「そういえば例の保護した彼女はどこ?」
「まだ来てませんわね」
マザーコアの人間だし命を狙われたりしないかしら?
一応ドレスの胸の詰め物の裏にヴァルカンは連れてきてるけど。
そう思って警戒を少しだけ強めた矢先、屋敷の入り口から走ってくる令嬢をみた。
「あ、来ましたわ。彼女が例の・・・」
「見た目は普通の令嬢に見えるわね」
「遅れてすいま、ぁあああああああああ!」
しかし途中で躓いたのか、顔面から地面にダイブしてしまう。
私は急いで彼女の下に駆け付ける。
「す、すびばぜん・・・」
「大丈夫ですか?」
「あ、ありがどぉ~」
涙や鼻血でぐちゃぐちゃになった彼女の顔をハンカチで拭った。
驚いたことに、鼻血が出ている以外はほとんどケガがなかった。
これがマザーコアの力?
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