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酷い有様だった。
訓練施設のあちこちがボロボロだ。
しかし肝心のマーティンが見当たらない。
マリアとマヤとマーラはこちらに一緒に連れてきた。
さすがにマザーコア二人を護衛無しでほっとくのはまずい。
「でもこれは結構凄惨だわ」
「マヤ、マーラ、貴女達は国の来賓ですけど救護の手伝いお願いできますの?」
「はい!」
「わ、わかりました」
あちこちに人が横たわっている。
でも治療が必要な人は多分そんなにいないと思う。
魔導師団で魔力がない人は多分いない。
でも魔力を感じないってことは、もう息はないんだわ。
「あ、叔母様だわ」
「行きましょうマリア」
少し走っていくとマリアの叔母さんと思われるマリアにそっくりな人が見えた。
誰かを抱えてるわね。
でも抱えられている方は、もうほとんど虫の息だった。
「マリア・・・」
「叔母様!」
「マリア、だれか治癒魔法を使える人はいない!?団長が・・・」
第四師団長と思われる人の右腕と右わき腹に大きな傷ができてる。
たぶん顔立ちからして女性だろうけど、これを生み出したのがマーティンだとすると容赦がないわね。
放置してたら助からないだろう傷だろうけど、ここにいる人たちが治療魔法使えないのかしら?
いやよくみたらほとんどの人の魔力が微小しかない。
闘いはそんなに過激だったのね。
とりあえず駆け寄って魔法をかける。
「貴女は?」
「初めまして。ルルシア・・・稲妻のルルシアです」
「貴女が稲妻。わたしはエリザベト・フォン・テーゼ。ありがとう」
「いえ、このくらい当然です」
右腕を再生するほどの高度な魔法は使えないただの治癒魔法で、傷をふさぐことしかできなかった。
それこそ超級魔法でしか無理よね。
でもこのままほっとけるはずもなく、傷をふさいだ。
「ごめんなさい、右腕を治せるほどの技量はないんです」
「いえ、命を救ってもらっただけでもありがたいわ。よかった・・・」
彼女は本当に師団長のことを慕っているのだろう。
治った彼女を抱えながら涙を流している。
「ルルシア様。生存者はほぼ治療できました」
「早いわね。ってことはやっぱり・・・」
「はい、ほぼ生存者はいませんでした」
「こ、こっちも生きてる人いませんでしたぁ」
マーラさんのほうはゼロって師団をほぼ壊滅させたってことよね。
しかも抵抗された状態でこの現状を作ったとしたら、マーティンの実力は想像を絶するんじゃないの?
「くっ・・・ここは」
「団長!」
「エリザベト・・・そうだ!マーティンのやつはっ、あれ私の右腕・・・」
「すいません。わたしが不甲斐ないばかりに・・・」
あったはずの腕を触ってないことを確認すると、第四師団の団長は青い顔をする。
それは当然だろう。
四肢のどれか一つでも欠損すればそんな顔するわよね。
「ごめんなさい。わたしの実力では治療ができませんでした」
「貴女は・・・帝国の稲妻ルルシアか」
「どこかでお会いしたことが?」
「いやないよ。ただエリザベトの姪の近くに入れる見知らぬ女性で、治療魔法が使えそうな人が君しか思いつかなった」
さっきまで意識を失ってたのに、そこまでの観察力はすごいわね。
しかもマーティンの不意打ちだって言ってたのに、マーティンの裏切りに気付いているんだ。
さすがに師団長に選ばれるだけはあるわ。
「さすがに腹に穴をあけられたときは終わったと思ったが、それよりも奴の魔装があれほどの力を持っているとは」
「魔装?」
え、魔装って師団長しか配られてないんじゃないの?
いやそんなこと誰も言ってなかった。
単純に持ってるのがグレン以外師団長しかいないから勝手にそう思い込んでたわ。
「それはわたしから説明します。団長はゆっくり休んでいてください」
「しかし・・・」
「マヤ、彼女のサポートお願い」
「わかりました」
さすがに腕が片方なくなるだけで歩くこと自体にバランスが悪くなるはずだもの。
介護は必要だわ。
「マーティンの魔装は、ランス型だった。刺した相手の魔力を吸収して魔法を発動するという凶悪なものだったわ」
「刺した相手の魔力を吸収・・・なら不意打ちで一番魔力が高そうな師団長を狙うのも作戦としては当然ってわけね」
「正直、それからは恐ろしかったわ。次々と倒されていく仲間たち、魔力が生きてる人間がいる限り無限に吸収できるわけで、あまりの圧倒的戦力差にわたし達は手も足もでなかった」
「そしてワタクシ達が駆け付けた時にはもうこうなっていた。マーティンも逃走済みってわけですのね」
「えぇ。悔しいわね。マーティンは魔装なしならそこまで強い奴と思ってなかった。魔道具もバンバン使ってきてたからね。だからここまで強いと思ってなかったのよ」
「むしろ魔道具を使われたから、彼の魔力消費が減ったことでここまでの惨状を作り出したのでは?」
「ルル!」
「いいのよマリア。魔道具使いは未熟。その考えが師団壊滅を産んだのは間違いないわ。第四師団はエリート達が集まる師団だから、思いあがってたのよ。反省したところで命を落とした人が戻ってくるわけじゃないけどね」
そこまでは知らなかったけど、魔道具使い未熟って風潮は絶対にあると思った。
帝国に魔法を使うことに反対する奴らが頭が固いと思ってたけど、王国でそういう頭の固い時代錯誤が生まれるとしたらそれくらいだものね。
魔道具が強力というよりも、今回は吸収との相性がよかっただけだわ。
「おいおい、なんだよこれ」
「生存者は少ないな。というかほかに来てるのか?」
「グレン、ガウリ様!」
二人とも駆け付けたんだ。
でも現状はこれだし、医療活動はもう終わった。
あとは二人にも現場の現状確認だけしてもらおう。
訓練施設のあちこちがボロボロだ。
しかし肝心のマーティンが見当たらない。
マリアとマヤとマーラはこちらに一緒に連れてきた。
さすがにマザーコア二人を護衛無しでほっとくのはまずい。
「でもこれは結構凄惨だわ」
「マヤ、マーラ、貴女達は国の来賓ですけど救護の手伝いお願いできますの?」
「はい!」
「わ、わかりました」
あちこちに人が横たわっている。
でも治療が必要な人は多分そんなにいないと思う。
魔導師団で魔力がない人は多分いない。
でも魔力を感じないってことは、もう息はないんだわ。
「あ、叔母様だわ」
「行きましょうマリア」
少し走っていくとマリアの叔母さんと思われるマリアにそっくりな人が見えた。
誰かを抱えてるわね。
でも抱えられている方は、もうほとんど虫の息だった。
「マリア・・・」
「叔母様!」
「マリア、だれか治癒魔法を使える人はいない!?団長が・・・」
第四師団長と思われる人の右腕と右わき腹に大きな傷ができてる。
たぶん顔立ちからして女性だろうけど、これを生み出したのがマーティンだとすると容赦がないわね。
放置してたら助からないだろう傷だろうけど、ここにいる人たちが治療魔法使えないのかしら?
いやよくみたらほとんどの人の魔力が微小しかない。
闘いはそんなに過激だったのね。
とりあえず駆け寄って魔法をかける。
「貴女は?」
「初めまして。ルルシア・・・稲妻のルルシアです」
「貴女が稲妻。わたしはエリザベト・フォン・テーゼ。ありがとう」
「いえ、このくらい当然です」
右腕を再生するほどの高度な魔法は使えないただの治癒魔法で、傷をふさぐことしかできなかった。
それこそ超級魔法でしか無理よね。
でもこのままほっとけるはずもなく、傷をふさいだ。
「ごめんなさい、右腕を治せるほどの技量はないんです」
「いえ、命を救ってもらっただけでもありがたいわ。よかった・・・」
彼女は本当に師団長のことを慕っているのだろう。
治った彼女を抱えながら涙を流している。
「ルルシア様。生存者はほぼ治療できました」
「早いわね。ってことはやっぱり・・・」
「はい、ほぼ生存者はいませんでした」
「こ、こっちも生きてる人いませんでしたぁ」
マーラさんのほうはゼロって師団をほぼ壊滅させたってことよね。
しかも抵抗された状態でこの現状を作ったとしたら、マーティンの実力は想像を絶するんじゃないの?
「くっ・・・ここは」
「団長!」
「エリザベト・・・そうだ!マーティンのやつはっ、あれ私の右腕・・・」
「すいません。わたしが不甲斐ないばかりに・・・」
あったはずの腕を触ってないことを確認すると、第四師団の団長は青い顔をする。
それは当然だろう。
四肢のどれか一つでも欠損すればそんな顔するわよね。
「ごめんなさい。わたしの実力では治療ができませんでした」
「貴女は・・・帝国の稲妻ルルシアか」
「どこかでお会いしたことが?」
「いやないよ。ただエリザベトの姪の近くに入れる見知らぬ女性で、治療魔法が使えそうな人が君しか思いつかなった」
さっきまで意識を失ってたのに、そこまでの観察力はすごいわね。
しかもマーティンの不意打ちだって言ってたのに、マーティンの裏切りに気付いているんだ。
さすがに師団長に選ばれるだけはあるわ。
「さすがに腹に穴をあけられたときは終わったと思ったが、それよりも奴の魔装があれほどの力を持っているとは」
「魔装?」
え、魔装って師団長しか配られてないんじゃないの?
いやそんなこと誰も言ってなかった。
単純に持ってるのがグレン以外師団長しかいないから勝手にそう思い込んでたわ。
「それはわたしから説明します。団長はゆっくり休んでいてください」
「しかし・・・」
「マヤ、彼女のサポートお願い」
「わかりました」
さすがに腕が片方なくなるだけで歩くこと自体にバランスが悪くなるはずだもの。
介護は必要だわ。
「マーティンの魔装は、ランス型だった。刺した相手の魔力を吸収して魔法を発動するという凶悪なものだったわ」
「刺した相手の魔力を吸収・・・なら不意打ちで一番魔力が高そうな師団長を狙うのも作戦としては当然ってわけね」
「正直、それからは恐ろしかったわ。次々と倒されていく仲間たち、魔力が生きてる人間がいる限り無限に吸収できるわけで、あまりの圧倒的戦力差にわたし達は手も足もでなかった」
「そしてワタクシ達が駆け付けた時にはもうこうなっていた。マーティンも逃走済みってわけですのね」
「えぇ。悔しいわね。マーティンは魔装なしならそこまで強い奴と思ってなかった。魔道具もバンバン使ってきてたからね。だからここまで強いと思ってなかったのよ」
「むしろ魔道具を使われたから、彼の魔力消費が減ったことでここまでの惨状を作り出したのでは?」
「ルル!」
「いいのよマリア。魔道具使いは未熟。その考えが師団壊滅を産んだのは間違いないわ。第四師団はエリート達が集まる師団だから、思いあがってたのよ。反省したところで命を落とした人が戻ってくるわけじゃないけどね」
そこまでは知らなかったけど、魔道具使い未熟って風潮は絶対にあると思った。
帝国に魔法を使うことに反対する奴らが頭が固いと思ってたけど、王国でそういう頭の固い時代錯誤が生まれるとしたらそれくらいだものね。
魔道具が強力というよりも、今回は吸収との相性がよかっただけだわ。
「おいおい、なんだよこれ」
「生存者は少ないな。というかほかに来てるのか?」
「グレン、ガウリ様!」
二人とも駆け付けたんだ。
でも現状はこれだし、医療活動はもう終わった。
あとは二人にも現場の現状確認だけしてもらおう。
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