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【第4章】
■第70話 : 下衆の極み
「まずは自己紹介でもしとくか。
俺は鴻上ってんだ。
鴻上健自。よろしくな」
「……」
「アンタの自己紹介はいいや。もうわかってっからさ」
「……どういうことなんだよ? 最初から説明してくれよな!
それに、大体なんなんだよ、『勝負の依頼』をしてるわけじゃないってのは?
勝負するのは『強制』だとでも言いたいのか?」
「まあ……そういうことになるな」
「は? なんで俺がお前の言うとおりに動かなきゃなんないんだっ?」
「強がるなって。
なんで俺の言うとおりにしなきゃいけないか、もう薄々わかってんだろ?
察しのいい夏目優司君だもんなぁ」
鴻上の言うとおり、もちろん推測はできていた。
しかし、テレビドラマじゃあるまいし、まさかそんなことが自分の身に降りかかるなどとはいまいち信じられなかったのだ。
そう、元彼女をエサにして自分をどうのこうのしようなどという人間が現れるなど。
「お前の言うことを聞かないと、飯島が……ってことか?」
おそるおそる口にする優司。
鴻上は、両手を打ちながらおどける。
「ご名答! 早い話がそういうことだよ。
もしお前がこの話を断れば、あの女は今後まともな生活を送れなくなると思っておいた方がいいぜ」
優司の顔色が変わる。
「お前……なんなんだよそれ……
信じられない最低野郎だな……」
エサにする、といっても、「俺に勝ったら別れて、おまえに譲る」とくるのか、「勝負しないと女に危害を加える」とくるのかがわからなかったが、これではっきりとした。
優司としては、当然前者であって欲しかった。
譲られても、自分のところに戻ってくるかどうかまではわからないが、少なくともそれで大きな問題に発展することはない。
しかし、危害を加えると公言されては、オオゴトに発展するのは目に見えている。
「へっ、最低野郎で結構。
ってかお前さ、俺の名前を聞いたことないか?
お前のお友達の日高とか真鍋なら知ってっかもなぁ」
「……」
「俺の生業は、女に食わしてもらうことでね。要はヒモだよ。
でも、そんじょそこらの甘っちょろいヒモとは違う。
俺はもっと徹底してるからな。最後まできっちりとしゃぶりつくす。手を抜かずにな。
この街だけでも、俺に関わったせいで今大変なことになってる女は何人いるかなぁ?」
「お前…………マジか…………?」
「やっと状況がわかってきたみたいだな。
これで理解できただろ? 『依頼』じゃなく『強制』だってことが」
「…………」
「今やお前とはなんら関係ない女だろうと、お前の判断一つで女一人が味わわなくてもいい苦痛を味わうことになるんだぜ?
黙って勝負を受けときゃ、なんも問題ないんだからな」
不気味な薄ら笑いを浮かべながら、鴻上は終始冷淡な口調で話す。
優司は、そんな鴻上をただただ黙って睨み続けている。
「で、どうすんだ夏目?
それでも勝負を拒否するか?
まあ、別に俺はそれでもいいけど。
あの女、なかなか上玉だから、風俗にでも行かせれば結構な金になりそうだし」
「ふ、ふざけんなッ! そんなことさせるかよッ!
その前に、飯島にお前の正体を全部ぶちまけてやるよ!
ふん、バカみたいに調子に乗ってペラペラ喋ってくれたおかげで、未然に防げるから助かったぜ!」
「わかってないなぁ」
「何ッ?」
「数年ぶりに会った元カレと現役の彼氏、どっちが信用されると思う?」
「ぐっ……」
「ましてや俺はヒモだ。
金銭的な世話を全部してもらうってのは、かなり信用させて、俺に入れ込ませないとダメなんだぜ?
ま、さっきみたいに、必要に応じてチョコパフェくらいはオゴることもあるけどさ」
「……」
「つまり、あの女を救いたければ、お前は黙って俺と勝負するしかないんだよ。わかったか?」
「飯島は……そんなバカな女じゃない……。
そう簡単にお前ごときに陥れられたりなんて……」
「そう思うんなら放置しておけよ。
後々、面白いモンが見れるかもしれないぜ?」
「…………」
実際にヒモとして、飯島の懐に潜り込んでいる鴻上。
確かに鴻上の言いなりになってしまう可能性が高いと優司は考えた。
「さぁ、どうする?
勝負するか? やめとくか?」
「……どうせ、ただ普通に勝負する、ってんじゃないんだよな」
「ご名答! そりゃねぇ、ただ勝負するだけならこんな回りくどいことしなくていいわけだしな。
大体、俺ってスロの腕は全然大したことないんだよねぇ~。
高設定なんてどうやって掴むの?って感じだよ。 へへへッ!」
「俺が勝っちゃいけない勝負……ってことだよな」
「いちいちそこまで言わすなよ。わかるだろ? 女々しいぜ夏目」
「……わかった。
ただし、その前に一回飯島と話をさせてくれ。
いろいろ確認させてもらう」
「まあ、いいけど。
それで納得すんなら自由にしろよ」
「……」
「じゃ、行こうぜ。
女との話が済んだ後は、勝負日程とかホールとか決めるからそのつもりでな」
そう言ってベンチから立ち上がり、飯島を待たせてある喫茶店へと向かう鴻上。
そんな鴻上を後ろから睨みつけながら、優司もあとに続く。
(嘘だろ……?
飯島を救うには、俺がパチスロ勝負で負けるしかないのか……?
ここまで積み上げてきたものを、全部捨てろっていうのかよ…………)
俺は鴻上ってんだ。
鴻上健自。よろしくな」
「……」
「アンタの自己紹介はいいや。もうわかってっからさ」
「……どういうことなんだよ? 最初から説明してくれよな!
それに、大体なんなんだよ、『勝負の依頼』をしてるわけじゃないってのは?
勝負するのは『強制』だとでも言いたいのか?」
「まあ……そういうことになるな」
「は? なんで俺がお前の言うとおりに動かなきゃなんないんだっ?」
「強がるなって。
なんで俺の言うとおりにしなきゃいけないか、もう薄々わかってんだろ?
察しのいい夏目優司君だもんなぁ」
鴻上の言うとおり、もちろん推測はできていた。
しかし、テレビドラマじゃあるまいし、まさかそんなことが自分の身に降りかかるなどとはいまいち信じられなかったのだ。
そう、元彼女をエサにして自分をどうのこうのしようなどという人間が現れるなど。
「お前の言うことを聞かないと、飯島が……ってことか?」
おそるおそる口にする優司。
鴻上は、両手を打ちながらおどける。
「ご名答! 早い話がそういうことだよ。
もしお前がこの話を断れば、あの女は今後まともな生活を送れなくなると思っておいた方がいいぜ」
優司の顔色が変わる。
「お前……なんなんだよそれ……
信じられない最低野郎だな……」
エサにする、といっても、「俺に勝ったら別れて、おまえに譲る」とくるのか、「勝負しないと女に危害を加える」とくるのかがわからなかったが、これではっきりとした。
優司としては、当然前者であって欲しかった。
譲られても、自分のところに戻ってくるかどうかまではわからないが、少なくともそれで大きな問題に発展することはない。
しかし、危害を加えると公言されては、オオゴトに発展するのは目に見えている。
「へっ、最低野郎で結構。
ってかお前さ、俺の名前を聞いたことないか?
お前のお友達の日高とか真鍋なら知ってっかもなぁ」
「……」
「俺の生業は、女に食わしてもらうことでね。要はヒモだよ。
でも、そんじょそこらの甘っちょろいヒモとは違う。
俺はもっと徹底してるからな。最後まできっちりとしゃぶりつくす。手を抜かずにな。
この街だけでも、俺に関わったせいで今大変なことになってる女は何人いるかなぁ?」
「お前…………マジか…………?」
「やっと状況がわかってきたみたいだな。
これで理解できただろ? 『依頼』じゃなく『強制』だってことが」
「…………」
「今やお前とはなんら関係ない女だろうと、お前の判断一つで女一人が味わわなくてもいい苦痛を味わうことになるんだぜ?
黙って勝負を受けときゃ、なんも問題ないんだからな」
不気味な薄ら笑いを浮かべながら、鴻上は終始冷淡な口調で話す。
優司は、そんな鴻上をただただ黙って睨み続けている。
「で、どうすんだ夏目?
それでも勝負を拒否するか?
まあ、別に俺はそれでもいいけど。
あの女、なかなか上玉だから、風俗にでも行かせれば結構な金になりそうだし」
「ふ、ふざけんなッ! そんなことさせるかよッ!
その前に、飯島にお前の正体を全部ぶちまけてやるよ!
ふん、バカみたいに調子に乗ってペラペラ喋ってくれたおかげで、未然に防げるから助かったぜ!」
「わかってないなぁ」
「何ッ?」
「数年ぶりに会った元カレと現役の彼氏、どっちが信用されると思う?」
「ぐっ……」
「ましてや俺はヒモだ。
金銭的な世話を全部してもらうってのは、かなり信用させて、俺に入れ込ませないとダメなんだぜ?
ま、さっきみたいに、必要に応じてチョコパフェくらいはオゴることもあるけどさ」
「……」
「つまり、あの女を救いたければ、お前は黙って俺と勝負するしかないんだよ。わかったか?」
「飯島は……そんなバカな女じゃない……。
そう簡単にお前ごときに陥れられたりなんて……」
「そう思うんなら放置しておけよ。
後々、面白いモンが見れるかもしれないぜ?」
「…………」
実際にヒモとして、飯島の懐に潜り込んでいる鴻上。
確かに鴻上の言いなりになってしまう可能性が高いと優司は考えた。
「さぁ、どうする?
勝負するか? やめとくか?」
「……どうせ、ただ普通に勝負する、ってんじゃないんだよな」
「ご名答! そりゃねぇ、ただ勝負するだけならこんな回りくどいことしなくていいわけだしな。
大体、俺ってスロの腕は全然大したことないんだよねぇ~。
高設定なんてどうやって掴むの?って感じだよ。 へへへッ!」
「俺が勝っちゃいけない勝負……ってことだよな」
「いちいちそこまで言わすなよ。わかるだろ? 女々しいぜ夏目」
「……わかった。
ただし、その前に一回飯島と話をさせてくれ。
いろいろ確認させてもらう」
「まあ、いいけど。
それで納得すんなら自由にしろよ」
「……」
「じゃ、行こうぜ。
女との話が済んだ後は、勝負日程とかホールとか決めるからそのつもりでな」
そう言ってベンチから立ち上がり、飯島を待たせてある喫茶店へと向かう鴻上。
そんな鴻上を後ろから睨みつけながら、優司もあとに続く。
(嘘だろ……?
飯島を救うには、俺がパチスロ勝負で負けるしかないのか……?
ここまで積み上げてきたものを、全部捨てろっていうのかよ…………)
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