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エピローグ 泣き虫令嬢は今日も婚約者の前から姿を……消さない!

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「まずは……俺が不用意に返事をした事によりカロを傷つける事になってしまって……ごめん」

学園全体が舞台となって追いかけっこを繰り広げたカロリーナとライオネル。

ようやく二人きりになれてすぐに、ライオネルは謝罪の言葉を口にしたのであった。

「それに……学園でクリステルとの事を色々と言われているとわかっていて、カロリーナに何の説明もしなかった事も、本当にすまなかった……」

「私……入学式の時に他の人からライオネル様がクリステル様と自由恋愛をしているって聞いて……悲しかった……でも、仕方ないなって、図書館でライオネル様の理想はクリステル様のような方だと聞いていたし、私はこんなだし、だからライオネル様が学生の間だけは理想の女性と恋愛したいと思っても我慢しなきゃと思ったの……」

カロリーナは寂しそうな表情を浮かべ、その大きな瞳から涙を一粒零した。
それを見てライオネルは慌てる。

「違うっ、俺の理想はカロリーナだ。さっきも走りながら言ったが、俺はお前の全てが可愛くて大好きだ……でも……そう思わせたのは俺の所為だよな……ごめん、カロリーナ、本当にごめん……」

ライオネルはそう言って同じソファーに座るカロリーナの肩に額を付けた。

「ライオネル様……」

「……俺がどれほどカロの事を愛しているか分かって貰えるよう、今度城に来たら全部よ」

?」

自分への愛は可視化出来るものなのか?
カロリーナは要領が得られずに首を傾げる。
それを見てライオネルは少し情けない顔をしながら言った。

「その時は……引かないでいてくれると助かる。俺が暴走してカロリーナを怖がらせないようにするためには必要だったんだ。王家の威信にも関わる事だしな……」

「???」

なんの謎々ナゾナゾだろう。聞けば聞くほどわからない。
でも今はそれよりもまず、

「ライオネル様はこんなおデブな私でもいいの?」

「デブじゃないな、ムチムチというんだ。最高に可愛いよ」

「ライオネル様…ムチ専?」

「言っとくけど、カロならガリガリでも好きだからな」

「そ、そうなんですか……」

ストレートなもの言いに恥ずかしくなるカロリーナだった。

「俺が一年生の終わり頃に、クリステルとの関係を俄かに噂されるようになった。俺にはカロリーナがいるし、クリステルも婚約者を想っている。だからそれぞれずっと噂を否定し続けたんだ。絶対に二人きりになるような事もしなかったし、それなのに噂は無くなるどころかどんどんエスカレートしてゆく。おまけにそれを恋物語として盲信するような生徒まで出て来て、これは何か裏があると思ったんだ」

ライオネルはその後も詳しく説明してくれた。

今回の件で、ライオネルは先ず噂の出所を探したらしい。
それが数名の生徒から発せられた事がわかると、次に奇妙な実態が露見したそうだ。

噂を口にした生徒が皆、口裏を合わせたような、定型分を読み上げたような、そんな同じ内容の話を口にしたというのだ。

噂を広めた場所も時間も違うのなら、その内容に多少のズレや語弊が生じたり私見が入っていたりするものだが、それが全く無く気持ち悪いくらいに同じ事を口にしていたらしい。

これはその噂を聞いた者が侍従長や騎士団上層部の子女であった為に王子に関わる事としてしっかりと記憶してくれていたおかげで明らかになった内容だ。
彼らは示し合わせて自主的にそれぞれ噂を口にした相手に聞きに行き、最初に自分が聞いた話と全く同じであるとわかったというのだ。
そして、その噂話をしていた生徒は皆、イコリス王国出身であった。

これも偏に噂の出始めであった事が幸いしたのだろう。
学園中に広まってしまっては、噂の出どころに辿り着く事は容易ではない。

噂の内容は下手すればライオネルもそうだがクリステルの不貞を謳うもの。

一万歩譲って自由恋愛が認められている学園内の恋愛だとしても、次期王妃妃となる身にはあまりにも相応しくない行いだ。

噂を流したのがイコリスの民であった事を鑑みても、誰かが意図的に噂を流しクリステルを王太子の婚約者の座から引き摺り落とそうとしているのは明白であった。

ライオネルはクリステルに、この件が自国に知られたくないと思うならモルトダーン側で処理しても良いと告げたそうだ。

しかしクリステルは第三者からこの事がイコリス王家の耳に入るよりは自分の口から告げた方がよいと考え、まずは西方大陸屈指の実力を誇るイコリス騎士団で団長を勤める実父に相談した。

騎士団のブレーンと言わしめるクリステルの父親は娘からこの話を聞きすぐに動いたらしい。

そしてクリステルの婚約者である王太子と連携して噂を陰で操る張本人を炙り出し、動かぬ証拠を掴んだ上でその背景も含めて根絶する。

その旨をイコリスの王太子自らモルトダーン第二王子であるライオネルに向けて伝えてきたそうなのだ。

モルトダーン側にも迷惑をかけるのは重々承知しているが、これを機にクリステルを廃しようとする勢力を叩き潰したい。
申し訳ないが静観しておいていて欲しいと、王太子直筆の書状には書かれていたらしい。


「あちらの国の願いであり、今後の外交面からもその要望を呑むのは仕方のない事ではあったのだが、それによりカロを傷つけてしまって本当にすまなかった……」

カロリーナが入学する頃には、一部の生徒を除いてある程度噂は沈静化していたのだ。

それなのに入学式で他の新入生からダイレクトにカロリーナの耳に入るとは……。

聞けばその生徒はパゥエルの従弟とか。
従弟にまで話していたとは。その従弟共々本当に口の軽い奴らである。

「噂を流した真犯人はイコリスの伯爵家の令嬢で、その者は元々は第三王子の婚約者候補であったそうだ。いくら騎士団長令嬢とはいえ同じ伯爵位の娘が王太子の婚約者になれるなら自分でもいい筈だと高慢な考えを抱き、クリステルの醜聞を広めて将来の王妃には相応しくないと騒ぎ立てるつもりだったらしい。懸念された生家の関与はなく、令嬢一人で画策した事だったみたいだな。まぁだからこそ予め作られたシナリオを読み上げるような間抜けな人間しか使えなかったわけだ。その生徒たち全員下級貴族の子女で、その者達には自分が王太子妃になった暁には格別に取り立ててやると言っていたらしいよ」

「まぁ……」

ーーそんな私利私欲の為に、確約出来ない餌で人を釣り操るなんて……

そんな者が将来は国母になるなんてイコリス国民は絶対に嫌だろう。
その野望が潰えてくれて良かった、カロリーナは心からそう思った。

話の最初から既に泣いていたカロリーナが大判ハンカチーフで目元を拭いながらライオネルに言う。

「ぐすっ…事情はよくわかりました……でもそれならそうと話してくださってもよかったのに……」

「それは……ごめん。嘘とはいえ他の女性とそんな噂になっている事をカロリーナに話し辛かったんだ……」

「あらま……ズズッ…ライオネル様ったらヘタレさん……」

「面目ない。そしてその結果、カロに嫌な思いをさせただけだった」

「まぁ、そうですわね…ぐすっ…」

「本当にごめん……」

辛そうに謝罪するライオネルを見て、ただ謝罪を受け入れるだけではきっとダメなんだろうなぁとカロリーナは思った。

涙をしっかりハンカチーフで拭い、カロリーナは言った。

「では……一発殴らせてください」

「え?」

「殴らせてくれたらチャラにします」

「……わかった。俺もその方がいい。思いっきり殴ってくれ」

ライオネルはそう言って、上半身をカロリーナの方へ向けて目を閉じた。

「お顔はやめておきますわね、ワトソン伯爵家がお取り潰しに遭いますから」

「そんな事はさせない」

「ではお腹に一発。私のパンチは祖父のお墨付きですよ?」

「うっ……いや構わんっ!遠慮なくやってくれっ!」

「はいもちろん、ではいきますよ」

「ああ」

目を閉じてその時を待つライオネルの顔をカロリーナはじっと見つめた。

そして……

「!?」

カロリーナはライオネルの頬にキスをした。
もとより殴るつもりなんてなかったのだ。
ちょっと意趣返しとして脅してやりたかっただけ。

驚いたライオネルが目を開けてカロリーナを見る。

「最初から話してくれなかった事は残念だけど、現実を知るのが怖くて逃げ回っていた私も悪いわ。逃げていないでライオネル様に直接聞けば良かったのにそれをせずにライオネル様を避けた。私たちはどちらも間違えちゃったのね」

「カロリーナ……」

「ライオネル様は必死で私を追いかけてくれた。いつも凛々しく泰然としてるライオネル様が形振なりふり構わず髪を乱して追いかけてくれた。そして私の事が大好きだと、こんな私でも大好きだと叫んでくれた。もうそれだけで……充分です。ありがとうライオネル様」

「カロリーナっ……!」

そう言って微笑むカロリーナをライオネルは掻き抱いた。

「カロっ……カロリーナっ……」

「ライオネル様、私もあなたが大好きです。あなたのお嫁さんになれるなんて本当に幸せです」

カロリーナがそう告げるとライオネルは苦渋に満ちた顔をした。

「ダメだカロリーナっ……今そんな事言われたら抑えがきかなくなるっ……」

「抑え?」

ーーなんの抑えかしら?おトイレに行きたいのかしら?

それは体に良くないと、カロリーナはライオネルに言った。

「我慢はよくないわライオネル様。どうぞ遠慮なく?」

「っ!!」

その瞬間、カロリーナの唇は奪われた。

「!?」

当然カロリーナは目を剥くほど驚く、が、子どもの頃から大好きなライオネルとの初めての口づけにすぐに夢中になった。

最初は軽く啄むような優しい口づけが徐々に深いものになってゆく。

トイレにと言ったつもりだったのにこんな事になるなんて……。

ジャスミンが耳打ちしてきたキスのおねだりをしなくてもされちゃった、とカロリーナは思った。


結局その後すぐ、頃合いを見計らって部屋に戻るよう指示されていたであろう(誰からの指示とは言わない)マーティンがノックの後に入室してきた事により、二人の初めての口づけは終わりを告げたのであった。

ライオネル曰く、カロリーナの唇はアップルサイダーの香りがしたそうな。
アップルサイダー1ガロン分のキスの味だ。


それからくだんの令嬢がどうなったのかと言うと……
自国に強制送還された後、でっち上げた嘘の噂で他者を扇動し王太子の婚約者を貶めた罪により痛罰刑の上、戒律の厳しい修道院送りとなったそうだ。
まぁ本人の更生次第では還俗は許されるらしい。

令嬢の生家である伯爵家は全くの無関係ではあったが、監督不行き届きとして罰金刑には処せられたそうだ。

生家が被った罰も噛み締めて、令嬢には若気の至りとして片付けずに是非大いに反省し、そして真っ当な人間になって貰いたいものである。

それから令嬢に唆され噂をばら撒いた生徒は学園内で卒業までの奉仕活動を申し付けられた。
自由恋愛を盲信してカロリーナに難癖をつけた生徒たちもだ。

トイレや学舎の清掃や学園の庭の手入れ、ゴミ拾い、グラウンドの整備その他諸々を用務員さん達にこき使われる事になった。
その奉仕活動は学園のみに留まらず周辺の街にも及んだそうだ。
当然他の生徒たちや街の人の目にも晒されながらの奉仕作業。
下級とはいえ貴族の子女には耐え難いものがあるだろう。
だがこれらの罰を通じて人を貶めて美味しい蜜を吸うという考えを持つ事や、自分たちの価値観を他者に押し付けるような真似を二度としないように努めて欲しいところである。

こうして、一連の騒動に終止符が打たれた。

後にはこれにより更に絆を深めた、モルトダーン第二王子とその婚約者。
そしてイコリス王太子とその婚約者のラブラブ度が増したという結果が残ったのであった。

後日、イコリス王国からカロリーナ宛にお礼とお詫びを兼ねてA 5ランクのイコリスビーフ1トンが贈られた。

クリステルは学園卒業後すぐに王太子と結婚式を挙げるとの事で、ライオネルとカロリーナに結婚式への招待状も肉と共に添えられていたそうな。



「まぁ結果的には良かったんじゃない?殿下と想いを確かめ合えたんでしょ?」

ワトソン家の朝の食卓でまたまた里帰り中のジェイミーが言った。
ジェイミーは日々魔力コントロールが上達し、転移魔法を頻繁に使えるようになってきた。末恐ろしい14歳である。

朝食のエッグベネディクトにナイフを入れながらカロリーナが答えた。

「うん。おかげでライオネル様に大好きって言って貰っちゃった!でも今までも言われていたらしいんだけど私、覚えがなくて……」

「それはきっと殿下のタイミングが悪かったんだよ、姉さんが美味しい食事に夢中になってる時とかお腹が空いて心ここに在らずの時とかさ」

「なるほど、そうかもしれないわね。さすがはジェイミー、頭がいいわ!」

その会話を聞いていた祖父のハンターがテーブルをダンッと叩いて同意する。

「そうじゃな!ジェイミーもカロリーナも二人ともワシの自慢の孫じゃっ!」

「お父様、お食事中にテーブルを叩かないでください」

「すまん」

母キャメロンに注意されてしおっとなる祖父を見てカロリーナもジェイミーも微笑んだ。

「ふふ。お祖父ちゃまったら」

「でも姉さん、殿下がまた何かやらかしたらいつでも消えてやったらいいんだよ。魔術師資格を得たら姉さんに認識阻害魔法を掛けてあげられるし」

「ありがとうジェイミー!でも私はもうライオネル様の前から姿を消す事はしないわ。これからはなんでも、どんな些細な事も話し合ってゆこうと約束したもの」

カロリーナのその言葉を聞き、キャメロンが微笑みながら頷いた。

「それでいいわカロリーナ。婚約者同士だからこそ、ちゃんと自分の気持ちを伝えないとね」

「そうだよ。そうすれば父さんと母さんみたいにいつまでもラブラブでいられるからね」

母にぞっこんである父がうっとりとしながら言った。
母より父の方が繊細で乙女なところがあるのだ。

祖父のハンターが負けていられないと言った。

「ワシだってカロル(カロリーナの祖母)が天に召されても愛する気持ちは変わらんぞ!」

「お父様、お食事中に立ち上がって叫ばないでください」

「あ、はい」

「ぷ……」「ふふふ」

また小さく萎れる祖父を見てカロリーナとジェイミーは笑った。



「でも僕はいつだって姉さんの味方だ。困った事があったら真っ先に頼って欲しい。僕は姉さんのために魔術師になるんだからね」

そう言ってジェイミーは転移魔法にて自身が通う魔法学園へと戻って行った。

「ありがとう、ジェイミー。私の自慢の弟、大好きよ」

ジェイミーを見送り、そう呟くカロリーナに侍女のエッダが声を掛けてきた。

「お嬢様、急がれませんと遅刻しますよ」

そして通学鞄を渡してくれる。

「大変!スクール馬車に乗り遅れちゃう」

「お嬢様、馬車の用意が出来ております。お早く」

家令のバーモントが玄関の扉を開けてくれた。

カロリーナは笑顔で二人に言う。

「二人とも、いつもありがとう。では行ってまいります!」

「「いってらっしゃいませカロリーナお嬢様」」

そう言ってエッダとバーモント、二人も笑顔で応え見送ってくれたのであった。



◇◇◇


「おはようジャスミン!」

スクール馬車の停車場にて、馬車の到着を待っていた親友のジャスミンにカロリーナが声をかけた。

「おはようカロリーナ~。今日も元気ね~」

「うん。ジェイミーと一緒に食べた朝食が最高に美味しくて」

「それは良かったわね~」

二人でたわいもない話をしているうちに学園に到着した。
先に馬車を降りたジャスミンがカロリーナに言う。

「カロリーナ~、将来の旦那さまが待ってるわよ~」

「え?ライオネル様が?」

そう言いながらカロリーナも馬車を降りると学園の停車場でマーティンと二人で立っているライオネルの姿を見つけた。

他の生徒の挨拶を受けながらもその目は一心にカロリーナを見つめている。

「おはようございますライオネル様。どうしてこちらに?」

カロリーナが言うとライオネルは少し逡巡した様子を見せた。

それを見てジャスミンが言う。

「わざわざ捕まえに来なくてももう殿下の前から姿を消したりしませんよ~、ねぇ?カロリーナ」

カロリーナは頷いた。

「ええ。だってもうそうする必要はないもの」

カロリーナがそう言うと、ライオネルではなく側近のマーティンが答えた。

「いえ、そうではなく殿下は心配になられたようなのです。それでカロリーナ様の様子を見にこちらへ」

「心配?何を~?」

ジャスミンが訊くとマーティンはカロリーナにそっと耳打ちした。

「カロリーナ様は昨日、王城にてをご覧なられたでしょう?殿下はカロリーナ様に嫌われたのではないかと……」

「あ、ああ。それでなのね」

「アレって何~?カロリーナは何を見たの~?」

ジャスミンの質問にカロリーナは笑みを浮かべて答えた。

「私が正式に王子妃になって、ジャスミンが私の側付きとしてお城に上がった時に教えるわね」

「え~、ちょっと先の話よね~。まぁいいけど~」


ジャスミンは冷静かつ頭のキレの良さとカロリーナマスターである事を王妃に認められ、カロリーナ妃の側付きとなる事が決まった。

子爵家の末娘で、結婚願望どころか結婚して夫に縛られる人生なんて真っ平だと思っていたジャスミンは喜んでその役目に飛びついたのだ。

「私は一生、カロリーナ妃殿下の側で~王城でのびのび生きるわ~」

とジャスミンは言った。

(ライオネルは兄王子が国王に即位した後も臣籍には降りず、王弟として宰相の地位に就き生涯国政に携わってゆく事が決まっている)


カロリーナは少し気まずそうにしているライオネルに手を差し出した。
そして優しく微笑み彼に告げる。

「ライオネル様。教室までエスコートしてくださるのでしょう?」

その笑みと差し出された手を見て、ライオネルは心底安堵したような顔をした。

「あ、ああ。もちろんだ可愛いカロリーナ」

「大丈夫よライオネル様。を見せられてびっくりしたけど引いたり嫌いになんかなったりしないわ」

「本当かっ?……良かったぁ……やっぱり見せるべきではなかったと後悔してたんだ」

「まぁ、ふふふ」

カロリーナへの愛を示すものとして、
ライオネルは昨日カロリーナに自身のカロリーナグッズを披露(暴露)した。

妃教育で用いた教本やペンやインク。
お茶をいただく時に使用したナフキンやティースプーンなど、カロリーナが直に手にした品がコレクションされて収納されていたのだ。

若干、いやかなり驚いたが生来人間として器の大きな(物理的な意味ではなく)カロリーナはそれをすんなり受け入れた。

自分が使用した物でも愛しいと感じてくれるなんて、本当に愛されているのだと嬉しいと感じたらしい。

まぁこれ以上物が増えたら収納場所に困ってしまうので結婚後は収集はやめてくれと頼んだが。

「カロ……キミはなんて大らかな女性なんだ」

「ふふ。体と心の広さは比例するのかもしれないわね」

「結婚式が待ち遠しくて仕方ないよカロリーナ」

「私もですライオネル様」


そう言いながら仲良く校舎へと入って行く二人。
マーティンとジャスミンもその後に続いた。

「なんやかんやとお似合いの二人よね~」

二人の後ろ姿を見ながらジャスミンがそう言うとマーティンも頷いた。

「まったく同感だ。あの殿下に相応しい女性は西方大陸広しといえどカロリーナ様しかおられないだろうな」

「まぁ今回の事は雨降って地固まる~?婚姻前で良かったわね~」

「それも同感だ」


結婚後に妃が夫から逃げ回るような事になれば大変な問題となるところであった。
今回の事でライオネルとカロリーナ、二人の絆はさらに深まったといえよう。

事実二人は婚姻後も非常に仲睦まじく、モルトダーン王室においてはじつに珍しく三男四女の子宝に恵まれた大所帯となった。

まぁ今はようやく楽しい学生生活を送れるようになった二人にはまだ想像もつかない事であろうが。

その子ども達の中の一人が次時代のモルトダーン国王となる事も、
カロリーナの弟ジェイミー=ワトソンが筆頭魔術師として生涯その治世を支えるという事もまだ何も知らないカロリーナとライオネルであった。


「カロリーナ。今日のランチは一緒に食べられるからカフェテリアで落ち合おう」

「嬉しい!今日のオススメ、AランチもBランチもCランチも楽しみにしてたの。ライオネル様と一緒に食べられるなら余計美味しく感じられそうだわ」

「カフェテリアのメニュー全制覇といこうか」

「うん!」


カロリーナの楽しく美味しい学園生活は始まったばかりである。





             おしまい






ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



これにて完結です。
結局文字数の暴力!!

今作もお付き合い頂きありがとうございました!
初めてイラストを作中でご紹介してのもドキドキの作品となりました。

読者様が作者のTwitterにお寄せ頂いた素晴らしいファンアートの数々を皆さまにもお楽しみ頂けたなら幸いです。

沢山の感想、エールをありがとうございました!
投稿の励み、ご褒美となりました。
本当にありがとうございます!!


さて次回作です。

次は、ん?次も?独自の道を爆走するヒロインが登場します。

タイトルは
『ポンコツ娘は初恋を諦める代わりに彼の子どもを所望する』
です。

タイトルまんまの内容となっております。
しかしこのヒロイン、男性から子種を貰って子どもが出来るという事は知っていても、それがどのような手段で結実するのかは知らないという……。

そこはかとなく漂ってくる面倒くさい感!!

それにも負けず読んでみたろ☆と思っていただけましたら是非お付き合いくださいませませ♡

投稿は土曜の夜からです。

よろしくお願いします!


では最後にフェスのご案内と締めを飾ってくれるイラストの紹介を。

今回もフェスを開催しますよ!
ゲストはもちろん、余計な事言いの従兄弟たちと自由恋愛盲信者たち、そして噂をばら撒いた奴らです。
ライオネルの説教部屋もあるようです。
皆さま、奮って(釘バットを振るって)ご参加くださいませ。


それでは最後にイラストのご紹介を。

カロリーナとライオネルのウェディングのイラストを届けて頂きました。

素敵なイラストをお寄せ頂いた皆さま、本当にありがとうございました!






















皆さまに心からの感謝を込めて。











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みんなの感想(395件)

こいぬ
2024.05.06 こいぬ

カロリーナの後日談のご計画はありますか?すごく楽しかったので結婚後も読みたいです、ぜひともよろしくお願いいたします!

キムラましゅろう
2024.05.06 キムラましゅろう

この作品に関してはちと、今はノーコメント…ということで察していただければ…💦
よろしくお願いいたします💕

解除
こいぬ
2024.05.06 こいぬ

読み返ししてイイねを押させていただきました。楽しかった!マーティンとジャスミン、いいカップルになりそうですが、どうですかねえ?ましゅろう先生の作品はよみかえしたくなります。他の作品も読みに行きます。

キムラましゅろう
2024.05.06 キムラましゅろう

嬉しいです✨ありがとうございます🥰✨💕
マーティンとジャスミン…ふふふたしかにいずれは王子と王子妃の側近同士として近付きそうですね…🤭💕

解除
dragon.9
2023.06.30 dragon.9

完結お疲れ様です!


フェスのご案内でーす(笑)

スタッフA
『フェス参加の皆様へご案内でーす\(^o^)/
今回のフェスは入口が4つございます!

入口1番、真正面からどつき回すゾ!コース
入口2番、背後からシバキ回すゾ!コース
入口3番、暗部としてシバく、どこ?どこからくるの?
ハラハラ 、ドキドキコース
入口4番、魔法ぶちかまします!コース

それぞれ時間制になっておりますので、
入口で開始時間をご確認の上、整理券をもらって
くださいませ。

開始時間までは、
屋台、カフェ、温泉など多数ご用意しておりますので
おくつろぎくださーい!』


とか、、(笑)(((o(*゚▽゚*)o)))


キムラましゅろう
2023.06.30 キムラましゅろう

最高までお読みいただきありがとうございました😊💕
おっとぉ!?
入口が4つも!!
ではましゅろうは3番の入り口から入ろうかな😁✨
暗部としてしばくなんてカッコいい😆💕
順番が来るまで温泉浸かってカフェ行って屋台を食べ尽くしてますから、呼んでくださいね〜💕
何このフェス、もう最高じゃないですか!!

解除
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