婚約破棄ですね、わかりました。

7

10日が過ぎた。

あれから、
軍は速やかに撤収し、すでに領内に帰還している。
独身で行った隊員が家族を作って帰ってきていたりもする。
お嫁さんの一族を連れ帰った猛者も中にはいた。

私にはジルコン王子からは婚約破棄の破棄を求める手紙が、
お父様には国王陛下から再度の婚約を求める使者が来た。

お父様は、
再度の婚約を求めるからには誠意を、と
使者にジルコン王子あての私の手紙を渡して返した。
私の手紙には
婚約破棄の慰謝料として
優遇していた分の関税と交通料、
軍を派遣した際の派遣費用の負担、
無償提供させられていた塩の代金を一括請求。
そのうえ、破棄を破棄したいなら自らやってこい。
といった内容を書いてやった。

もちろん、お父様承諾済み。

無理だろうけどね。
浮いた分は王族の贅沢に使われて国庫にはほとんど入ってないって聞いてたからね。

使者を見送る、といい、例の橋を渡らせた後、
使者が渡り終えるギリギリのところで橋を落として見せた。
本当は使者がくる前に落とすつもりだったが、
予想より早く来たため、こうなった。

ちなみに、この橋
落とされたときはつり橋だったため、
王家が直したものの、予算をケチってまたつり橋。
馬車が一台ギリギリ通れるレベルのショッボイ橋。
ここが一番の近道ではあるものの、
他の他領地へ行くための道はどれだけ整備してもここだけは整備しなかったため、そのままつり橋だった。
なので、落とすことも簡単だった。
少し遠回りにはなるものの、他に通っている道を整備したため、
正直、この道はすでに廃れつつある。

なので、落としたところでこちらとしては周辺住民が多少不便になる程度のもの。

今のオブライエン領と王家との関係みたいねぇ。

商会の方も
王都での高級品を売っていた店はすべて店じまいさせ、
庶民相手の店だけを開けている。
他領の高級品店も王都周辺は店じまい。
少し遠い領では販売を続けているものの、販売数量と値上げをしている。

販売員については元々高級店はオブライエン領内で雇った人材を派遣する割合が高く、
地元での販売員はあまり採用していなかったため、
庶民用の店へ地元の販売員を回し、
ほとんどは領内へと引き上げた。

こちらも、派遣した人たちは独身が多かったが、
王都で家族を作って、連れて帰ってきた。
隊員たちと同じで、お嫁さんの一族を連れて帰ってきた猛者もいる。
てか、お嫁さんの一族を商会に就職させて帰ってきてるため、
戻ってきても仕事がない、なんてことがないようにしてあるので恐ろしい。

そして・・・

「僕の顔に何かついてる？」

「いいえ。なぜこのようなことになったのか、不思議に思っておりますの」

目の前で優雅にお茶を飲む青年。

「あぁ、何度でも言うよ。
　ネージュ・オブライエン嬢、僕と結婚してください」

「お断りいたします。
　シェレンベルク・リスダール様。
　わたくし、婚約破棄の直後で傷心中ですの」

「即答だね。
　でも大丈夫。僕は何年でも待つから
　なんなら、僕は婿入りしてもかまわないわけだしね
　薬草の研究ができればそれはそれで満足だし」

帰ってきた直後からやってきたのはシェレンベルク・リスダール
リスダール国第三王子。
知識を学びにきた薬師団の中にいたらしい。
王子の中でも変わり者といわれるものの、
流行病の時に大量の薬草をお父様が持ち帰れたのは、
彼の働きかけがあってこそだった、とは聞いている。

うん。
今まで黒死病の特効薬なんてなかったのに、
薬草が用意できたら即作れるように薬のレシピ、お父様に渡したからね。
薬草をそろえるまでが大変だっただけで、
作り方自体はそれほど難しいものでもなかった。
普通に薬師を名乗っていて、ある程度薬を調合したことある人なら普通にできる。
器用な人なら教わりながらでもできるレベルだったりしたもんだから。
見事食いついてくれて、援助してもらったわけだが。

そして、戻った直後から一日一回プロポーズとお断りを繰り返している。

うーん・・・
シェレンベルク・リスダール王子。
銀髪、紫の目をした、細身だけど多少鍛えているようで、なよっとはしていない。
薬草王子と言われ、国内でも珍しい薬草があると聞くと飛んで行っていたらしい。
周囲の評判も特に悪いところはない。
むしろ、優良物件としておすすめされることが多い今日この頃。

どうしてこうなった・・・。