鳥籠姫は夢を見る

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第二章

16

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    「「ぶにゃー……(もうやめてやれよ…)」」


    見るに見かねた二匹が太く短い前足で止めに入ったのは、エルフィリアが自棄になってシュミーズを脱ごうとしたその時だった。
    むにっと前足をめり込まされたエルフィリアは少し冷静になり、目の前で自分の手を止めようと必死になっているアンリに気付いた。

    「……どうして…してくれないの?」

    私が子供だから?まだ女としての魅力を感じない?
    …ファルサは美しかった。女性らしい曲線を描く身体には豊かな乳房も…。

    「…私がまだ胸もぺったんこ…まではいかないけどささやかすぎるから?」

    「…違うよ。」

    「じゃあ…顔とか色々…アンリ様の好みじゃなかった…?」

    「そんな事あるわけがない。あなたの容姿を嫌がる男なんて、それはよほど女性の趣味が変わってる奴だけだよ。」

    それならどうしてしてくれないの。
    さすがにこんなに拒まれては立ち直れないくらいショックだ。

    「…そうじゃないんだエルフィリア。ちゃんとあなたを女性として見てる。…さっきだって自分を抑えるのに大変だった。私だって愛し合いたいよ。身体ごとすべて。」

    「じゃあ何で…?」

    「エルフィリアはまだ私を受け入れる準備が整っていない。」

    「そんな事ないわ!もう月のものだってとっくに来ているし、子供だって産めるのよ?」

    「身体だけの事じゃないんだ。心の方もだよ。」

    「心?」

    心の準備なら出来たわ。アンリ様と一つになりたいもの。後悔なんてしないもの。

    「あなたが私に眠れないほどに焦がれて、私を想うとどうしようもなく身体が疼いて、触れたくてたまらなくて…そんな風に思えた時に初めて結ばれたいんだ。」

    …その条件…ほとんど当てはまってますけど…

    「さっき…私の身体を自由にしてあげたいとか、そんな気持ちがまったく無かったと言える?」

    「それは……」

    あった。どうせするなら早い方が…とかいう一石二鳥的な考えが。

    「それじゃ嫌なんだ。普通の恋人同士として愛し合いたい。」

    「…もうアンリ様の心の準備は出来ているの?」

    眠れないほど焦がれて、私を想うと身体が疼いて、触れたくてたまらないと…そう思ってくれているの?

    「出来ているよ。だから余計エルフィリアにも心と身体両方で私を求めて欲しいと思うんだ。」

    「心と身体両方でアンリ様を……。」

    「「ぶにゃぶにゃ(そうそう、それよ)」」

    …少しだけ、いたしてしまえば心から繋がれるのかと思ってた。それとファルサへの嫉妬。
    そんな気持ちでするのはよくないってアンリ様は教えてくれたのね。

    「…ごめんなさい…。でもねアンリ様、私、アンリ様と一つになりたいと思ってるわ。」

    「エルフィリア…。」

    「だから…アンリ様の言うような時が私に訪れたらもう一度言うから、お願いだからその時は嫌って言わないで?」

    “お願い”と目を見て伝えると、彼は柔らかに微笑んだ。

    「その時は私も自分を抑えたりしない。思い切り愛し合おう。待ってるよエルフィリア…」

    アンリ様の唇がそっと重なる。
    “今日はごめんね”の気持ちも入っているのだろうか。とっても優しくて、ゆっくりとお口の中を愛してくれる。

    「……アンリ様…このまま力をあげてもいい……?」

    唇を離して伝えると、“離れないで”と言うようにまたすぐ重なる。そして優しくクッションの上に寝かせてくれた。
    身体を繋げる事は出来なかったけど、今日の事で心は今までよりもっと繋がった気がする。
    有り余る力を持って生まれてくる事ができて本当によかった。どうかこの先もあなたの命を潤すのが私だけでありますように……。


    長い長いキスのあと、二人は額を合わせて微笑み合った。
    アンリはいつものようにエルフィリアをすっぽりと包み込むように抱く。いつの間にか枕元(アンリ寄り)にはすっかりおねむな二匹もいる。

    「そうだアンリ様。私、アンリ様に聞きたい事があったの!」

    「聞きたい事?」

    私は昼間あった出来事を順を追って説明した。するとだんだんとアンリ様の顔は険しくなる。

    「…シャグランの民の話しは聞いたことがある。けれど誰もその姿を見た者はいない。だからローゼンガルドでは迷信だと思われ、その谷が実在するのかさえ謎だ。だがあの方は……」

    「あの方?」

    「ギャレットの母君カテリーナ様だ。出身はローゼンガルドのはずなのだが…頻繁に国外から客人が訪れている。」

    「国外から?でもローゼンガルドは閉鎖されているのよね?」

    「だから不思議なんだ。そしてその客の足取りを調べさせても手がかりすら掴めない。」

    「どうして?後を付けても駄目なの?」

    「…後を付けさせた者は皆変わり果てた姿で帰ってきた。けれど死体には外傷がまったく無い。まるで呪い殺されたようにね…。」









    
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