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2章
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しおりを挟む夜会まであと一週間に迫ったある日、フォンティーヌ家に王家から二台の馬車が遣わされてきた。
一台目は第一王子を表す三日月の旗章が。
二台目には第二王子を表す星の旗章が掲げられている。
おそらく貴族出身であろう身のこなしの洗練された使者が、恭しく礼をした。
「本日はフォンティーヌ公爵家ご令嬢マリエル様に見参できて大変光栄にございます。第一王子ユリシス殿下、そして第二王子シャルル殿下の命により、マリエル様へのご祝儀のお品をお届けに参りました。」
そして、目の前に積まれた品々に卒倒しそうになる。
「あの…これ全部私にですか……??」
「はい。そうでございます。」
使者は目録を取り出し、私に品物の確認を促した。
そこからはもう目が飛び出るほどに驚く事ばかりだった。
一目見ただけで上質とわかる碧の布地に、銀の糸で華やかに刺繍がされたドレス。裾はたっぷりと優雅に広がり、チラリと見えるチュールレースは編み目がとても美しく上品だ。
ドレスと揃いの色で作られた華奢な靴には中央に透き通る碧の宝石が煌めいている。
その他にも絹のストッキングにレースの手袋……し、下着まで…………!!
しかもサイズがバッチリなのは何故だ…!
「ユリシス殿下からの贈り物は以上でございます。」
凄すぎる……さすが第一王子様……。
こんなに質の良い品は、素材を手に入れる事も難しいだろうに。こんな短期間でこれだけの数を揃えられるなんて。
「では続きましてシャルル殿下からのお品になります。」
使者の言葉と共にテーブルへ並べられたのは、まばゆいばかりに光輝く宝飾品の数々。
白金の台座に大粒の碧い石がはめ込まれたイヤリング。
まるでレースのリボンのように複雑に連なるデザインで、幾重にもカットされた碧と七色に光を放つ透明な石が散りばめられたネックレス。
華奢な白金のチェーンに泪型の碧い石のついたブレスレット。
ユリシス様からはドレスを贈ると言われてたけど……シャルル様からも!?
こ…こんなすごい宝石見たこともない…。
一体これ全部でいくらするんだろう。
「くっ……くくっっ。」
私の後ろで成り行きを見守っていたオデットがたまらずと言った感じで吹き出している。
「いやもう笑えるったらないわ。二人とも自分の色しか身に付けさせないなんて……くくっ。どんだけ独占欲強いのよ。しかも下着は純白のレース付きって……さりげなく性癖織り込んでくるあたりが……ぶふふっっ。」
使者の手前抑えて笑っているのだろうが丸聞こえだ。失礼すぎるから本当に勘弁して欲しい。
この品々がどのようにして一緒に届く事になったのか、おそらくその経緯を何らかの形で知っていると思われる使者は、オデットの笑いに困り顔で微笑んでいる。
「このように過分な贈り物をいただき、両殿下に心よりお礼申し上げます。使者の方も御足労いただき本当にありがとうございました。」
使者の方は私の言葉ににこりと微笑むと
「マリエル様のお言葉、必ず両殿下にお伝えいたします。そして、なにか不足な物がありましたら遠慮なくお申し付け下さい。」
そう告げて王宮へと引き返して行った。
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