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7章
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しおりを挟む目が覚めるとベッドの上だった。
「マリー!」
声のする方へ目をやると、ユーリが私の手を握っている。その目は心配そうに揺れていた。
「……ユーリ…………。」
いつの間にか着ていたドレスは着替えさせられている。やはりあのまま倒れて意識を失ってしまったのだ。
「ごめんね…心配させて。もう大丈夫だから…」
起き上がろうとする私をユーリは止める。
「ユーリ………?」
私を真っ直ぐに見つめる目が涙で潤んでいる。
「どうしたの…?」
ユーリの頬に手を伸ばすと、彼は私の手を取り口付ける。
「マリー……愛してるよ。」
額に、頬に、何度も何度も優しいキスが降ってくる。一体どうしたのだろう。そんなに心配をかけてしまったのだろうか。
「もう気分は悪くない?」
そう言われるとほんの少し胃の辺りが落ち着かない感じだが、先程の吐き気に比べればマシな方だ。
「……マリー。落ち着いて聞いて欲しい。マリーのお腹の中には新しい命が宿ってる。」
「………え………?」
新しい命って…まさか……赤ちゃんが………?
思わず手が下腹部へと伸びる。
「月のものはちゃんと来ていたかい?今月はまだ来ていなかったのでは?」
そう言えば………でも今までにも遅れる事はたくさんあったからそんなに気にしていなかったけど、確かに今月はまだ来ていない。
「君が眠ってる間に医師に診てもらったんだ。間違いない。あの日……私達が初めて愛し合ったあの夜に授かった命だ。」
え…………。
まさか、あの時に…?
だって初めてだったのに。何もかもが。
ユーリは驚く私をとろけるような笑顔で見つめてる。
でも……こんな時に良いのだろうか……。
こんな大変な時に私…ただでさえ何の役にも立たない私が……。
「マリー?」
ユーリは私の様子がおかしい事に気付いたのか椅子から立ち上がりベッドの上に乗ってきた。
そして私の隣に寝そべり、顔を覗き込む。
「……どうしたのマリー?もしかして………不安なの?」
……不安じゃないと言ったら嘘になる。
でも、でもそれよりも今は……
「……嬉しい……」
ユーリの赤ちゃんが私の中にいる。
私と、ユーリの愛が溶け合った証が。
「ユーリ、いいの?私……赤ちゃんを産んでも本当にいいの?」
ユーリはまるで“何を言っているんだ”と言うような顔をする。
「当たり前でしょ。私の妻は君だけだって何回言ったら理解してくれるの?」
「だってユーリ………」
「だってじゃないよマリー。」
ユーリは優しく私を自分の腕の中に抱き込み、頭を撫でてくれる。
「…君が倒れた時にね、心配するのと同時に頭の中にもしかして……って思った。」
「もしかして…って、赤ちゃんの事…?」
「うん。」
すごい。何でそんな事わかるの?
私なんて自分の事なのに全然気付かなかった。
「ここのところずっと眠そうにしてたでしょう?最初は疲れてるのかなと思ってたんだけど…あとはマリーの身体に触れる度に体温の高さも気になってね。」
「…そんなに熱かった?」
「うん。熱があるってほどではないんだけど……でもナカも凄く熱かったから……。」
ナカ………ナカってナカですか!?
真っ赤になる私を見てユーリがまた微笑む。
「…夢みたいだ………」
「………ユーリ?」
ユーリはぎゅうっと私を抱き締める。
「初めて好きになった女の子と結ばれて、子供まで授かった……本当に、夢を見てるみたいに幸せだよ……。」
それは私の方だ。
孤独の中から救ってくれた。それもまるでお伽噺の世界に出てくるようなとびきり美しい王子様がだ。国中の女性誰もが恋に堕ちるほどの端正な顔立ち。こんな人が一途に私だけを望んでくれた。
「マリー、何にも心配しないで。私が君を守るから。君は自分とお腹の子の事を第一に考えながら私の側にいなさい。」
「はい………。」
不安はたくさんある。
でもユーリの側にいればきっと大丈夫。
「マリー。お腹の子の事………嬉しいって言ってくれてありがとう………。」
ユーリは震える声でそう言った。
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