【本編完結】マリーの憂鬱

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8章

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    「リンシア王女!もう少しだけ声を小さくお願いします!」

    「そ、そんな事言われてもつい大きくなっちゃいますわ!!どうしたんですマリエル様!?殿下はそんなに我慢が出来ないんですの?あぁでも……」

    リンシアは何か思い当たる事があるようだ。

    「“でも”?でも何ですか?」

    マリーが身を乗り出すようにして聞くと、リンシアは気まずそうに話し始めた。

    「…あの…これは我がダレンシアの…戦ってばかりの男達が話していた冗談というか…まぁそれをちょっと聞いただけなのですが…」

    「リンシア王女、大丈夫です!何でも教えて下さい!」

    「……今回のように命懸けの戦いの後なんかは男性は特にその…したくなるのだそうですよ?興奮が収まらないそうで…。」

    そうなのか!だからユーリあの時あんなに…!戦いの後で疲れているのかと思ったのにあんなになったのはそういう事だったのね。

    「リンシア王女?ユーリがとても辛そうで何とかして楽にしてあげたいんです。どうかお知恵を貸して下さい…!」

    「これは…未経験の私では荷が重いですわ。でも幸いと言いますか、侍女の何名かは子供がいますの。ちょっと彼女達を呼びますわね。」

    リンシア王女が呼んだのは二十代後半の女性二人だった。当然と言うべきなのか彼女達の夫もダレンシアに忠誠を誓う兵士だという。

    「懐かしいですわ。そういった問題で悩んだ事もありましたわね…やはり若い男性に十月もの間閨事を我慢させるのは酷ですわ。」 

    懐かしそうに語ってくれたのは侍女の一人マーサさん。

    「うちの旦那なんて私の妊娠中に浮気したんですよ!!その時の事は今でも腸が煮えくり返る思いですわ!!妊娠、出産の時の遺恨は一生ものですからね。問題は無いに越したことがありません!」

    握り拳で鼻息荒く言うのはノーラさん。お互い二人の子を持つ母だ。

    「あのー、それでなんですが…」

    内容が内容だけに少し言い辛い私の心を汲んでくれたのか

    「わかってますわ!!ご安心下さいませマリエル様!今から安全に殿方を満足させる方法をお教え致します!!」

    二人とも気合い十分に引き受けてくれた。

    そして私と、将来確実に役に立つため聞く気満々のリンシア王女は二人の先生の前で姿勢を正したのだった。



    ***




    「…ユーリ、起きてる?」

    薄暗い室内で目を凝らすとベッドの上で横になるユーリの姿が見える。

    「遅いから迎えに行こうかと思ってたところだよ。」

    手を広げて迎え入れてくれた。
    ユーリの体温で温まった敷布が冷たい足に嬉しい。

    「ごめんなさい…。ユーリ髪下ろしてるのね。」

    サラサラと流れる銀の髪。こんな暗がりでもとても綺麗だ。

    「これとももう少しでお別れだ。」

    「え?どうして?切っちゃうの?」

    「…子供ができたら邪魔になるだろう?きっと思いきり引っ張られて、口に入れられて、涎だらけにされてしまう。」

    「ふふ…そうね。でも少し淋しいわ。私の知ってるあなたはいつも髪が長かったもの。」

    少年の頃も、肩くらいの長さだった。

    「切ったら切ったで惚れ直すかもしれないよ?」

    「すごい自信…でもそうね。新しいあなたをまた好きになってしまうわ。」

    ユーリの手が優しく頬を撫でる。

    「さぁ…もう寝よう。」

    ユーリは毛布を引き寄せ二人の身体を包む。
    力の抜けたユーリとは反対に、私の身体はガチガチに固まっていた。それというのもさっき習った事を実行しようとソワソワドキドキしていたからである。
    (どうしよう…私に出来るかしら…。)

    「……マリー……?」

    かけてくれた毛布をはいでそろそろとユーリの足元へ行き、深呼吸をする。
    はしたないと思う心に負けそうになったが勇気を出してユーリの服に手を掛けた。
    止められるかと思ったがユーリは驚きながらも私のする事を黙ってじっと見ていた。服の下にはやはりその存在を主張するかのように大きく昂るユーリ自身が。
    傷付けないようにそっと触れると薄い皮膚の上にくっきりと浮かぶ血管が脈打っている。
    (こ、これを口に……?)
    こんなに大きいのに本当にそんな事出来るのだろうか。チラリとユーリを見ると切なそうだけど期待の混じったような表情をしている。
    けれど緊張で脳内が大変な事になっている私が可哀想になったのか

    「…マリー、気持ちだけで十分だよ…」

    そう言って私を自分の元へ引き寄せようとする。

    「だ、駄目。無理じゃないの。無理なんてしてない。…私がユーリを愛してあげたいの…。」

    「マリー……。」

    薄桃色に染まった美しい彼自身の先端に口付けると、彼の身体がビクンと跳ねた。
    丁寧に丁寧にその形をなぞるように舌を這わせるたびその質量は増していく。
    (…大きい…それにすごく熱い……)
    夢中で舐めるうちにだんだんとユーリの息遣いが荒くなる。

    「…っマリー!それ以上は…んん!!」 

    大きい彼の昂りが収まるように口を開け、柔らかい舌で誘うように中に迎え入れると我慢しきれなかったのかユーリは小さく声をあげた。
    優しく手を添えて、歯を立てないよう舌をあてる。そして彼がいつも私を愛してくれる時の腰の動きや速さを思い出しながら上下に口を移動させるとユーリの身体に力が入る。

    「駄目だマリー…!もう口を離して…!!」

    その瞬間昂りは一際大きく膨らんで、咥内に彼の欲望が吐き出された。


    【いいですかマリエル様、殿方のそれは本当に人それぞれなんです。中には吐き気がするほどまずい味の持ち主もいますから、無理せず我慢せず、近くの布にべーっと出しちゃいましょうね。】
    そうマーサ先生が言っていた……けど………


    全っ然まずくないです。
    確かに独特の味と匂いではあるけれど、大丈夫だ。サラサラしてて、気持ちも悪くない。
    ゴクン!!とはしたなくも大きな音を立てて飲み込んだ私にユーリは今まで見たこともないようなひどい顔をして狼狽えた。

    「ちょ、ちょっとマリー!!駄目!!早く出しなさい!!」

    出す?なんで?もう残ってないし。

    「ぜ、全部飲んじゃったの!?」

    コクンと頷くと彼の顔は更に青くなった。

    「そんなまずいもの飲んじゃ駄目だマリー…こっちへおいで、口の中を洗おう?」

    私の手を引いて水差しの方へと連れて行こうとするが、サラサラだったせいか別に洗うほど口の中にはもう残っていない。喉が乾いたからお水だけは飲みたいなと思うけど…。
    今度はそんな私にユーリは顔を抑えて赤くなった。青くなったり赤くなったりとても忙しい。

    「…マリー…もしかしてこの事を聞きに行ってたの?」

    「……バレちゃった……?」

    “もう!!”とユーリは私を掻き抱く。

    「我慢出来るって言ったでしょ?」

    「うん……でもね、私がユーリを愛したかったの。ほんとは一つになりたかったけど、まだ不安でとてもそれはできないから…。」

    伝わっただろうか。私の気持ち。

    「当たり前だよ…こんな…こんな事君以外には許したりしない…。」

    …そうか。これが敵の罠だったりしたら命を失いかねない急所だ。本当に信じてる私だから許してくれたんだ……。

    「…また愛させてね…。大好きよユーリ…。」


    私の満足気な顔と言葉に困ったようにユーリは笑った。
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