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42 侯爵令嬢《エミリア》side

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やりたいようにしていたわ。
それでも文句を言われたことはない。

やりたくないことはしなかった。
例えばいくら家庭教師に言われてもつまらない勉強なんてしなかった。

それでも《私》は誰からも叱られたことはないのよ?
お母様に優しく諭されるくらいだった。

唯一、邪魔な存在はうちより格上の公爵家の令嬢リリローズだったけど。
彼女を含めた王太子殿下の婚約者候補の中で、王太子殿下に望まれたのは《私》だった。

そうなると思っていたのよ。
だから婚約者候補を集めたお茶会で、リリローズに嫌味たっぷりな挨拶をしてやっておいて良かったと思ったわ。

これで本当に誰も《私》には敵わない。
やっぱり《私》はお母様が言っていたように《特別な子》なのよ。

そう思ったのに。
お兄様が言った《特別な子》じゃないなんて嘘だとしか思えなかったのに。


―――何故《私》がこんな目にあわなくちゃいけないのよ!


《私》が王太子殿下に望まれた婚約者じゃない、ですって?
王太子殿下が婚約者にと本当に望んだのはあいつですって?

嘘よ。あいつなんてただの《私》の身代わりじゃないの!

王宮へ訴えに行こうと思っても行かせてもらえない。
それどころか、何をするかわからないからと屋敷から一歩も出してもらえない!


悔しい、悔しい、悔しい、悔しい!!


頼みのお母様は人形のようになってしまわれたし、お父様は話にならないし。
仕方がないからお兄様に《私》とあいつをどうにかして入れ替えてよとお願いしたら鼻で笑われたわ。まだわからないのかって。

その上、言われたわ。

お父様が実の子だと認め、正式に侯爵家の娘だと手続きした以上、あいつの立場は《私》たちと変わらないって。
むしろ不貞の果ての子でも両親共に爵位を持っていたあいつの方が上かもしれないって。
しかも、あいつは公爵家の養女になったからもう手は出せないって。

なによ、それ!
どうして《私》があいつより格下にならなくちゃいけないの?


お父様があいつを実の子だと認めたせいよ!


……そうよね。あいつはお父様の可愛い娘だものね。
よくお母様がお父様を怒っていたわ。
「貴方は私たちの《エミリア》よりあのエミリアの方が可愛いのよ!」って。

やっぱりその通りだったのね。
いいえ。それ以上よ。

同じ屋敷で暮らしていても、お父様は《私》のことなんて見もしなかった。

お父様は《私》よりあいつの方が可愛いんじゃない。
あいつだけが可愛いのよ。

あいつはお父様が本当に愛していたエレノーラの娘で
《私》はお父様とエレノーラを引き裂いたお母様の子だから。

だけど、それがなんだって言うの!
そんなの《私》になんの関係があるのよ!

《私》だってお父様の娘でしょう?!


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