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6.王宮への招待

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「お嬢様、その、すみませんでした。適切な距離を取るべきだったのに批判される口実を作ってしまって」

 会場を出て廊下の隅まで来ると、サイラスは申し訳なさそうに言った。

「あなたが謝ることなんてないわ。むしろ、私のほうがくっつき過ぎてたみたい」

 眉根を寄せて私も謝った。批判されても仕方ない距離感だった自覚はある。

 でも私の言い分も聞いて欲しい。

 自分のせいで死んでしまった人が再び目の前に現れたら、周りが見えなくなってしまうのも仕方ないのではなかろうか。


「ごめんなさいね。今度からべたべたしたいときは、人目につかないところですることにするわ」

「はい。私も気をつけま……え!?」

 反省しながら神妙な顔で謝ったら、サイラスは目を見開いた。

 あからさまに動揺している様子だったけれど、私が笑顔で首を傾げたら静かになった。


***


 しばらく廊下で休んだ後、再びパーティー会場に戻ることにした。

 そろそろ二人が入場する時間だ。不本意だが、王太子のジャレッド王子とその婚約者であるカミリアが会場に入る際に席を外しているなんてことは許されない。

 二人に挨拶を済ませたらすぐにダンスが始まるから、と自分に言い聞かせる。

 そうだ、今日はサイラスと踊れるのだ。サイラスと踊るのなんて、小さい頃にダンスの練習を手伝ってもらったとき以来だ。

 こんな機会でもなければ、サイラスはきっと遠慮して相手をしてくれないだろう。そう思うと楽しみになってくる。

 そんなことを考えながら中に入ると、会場がやけに騒がしかった。


「あら……? どうしましょう。もう殿下たちが入場してしまったのかしら。ちょっとのんびりし過ぎたわ」

「急いだほうがいいかもしれませんね。……しかし、少し様子がおかしくありませんか?」

 サイラスの言う通り、中の雰囲気はどこか殺伐としていた。

 足を進めると、人だかりが見えてくる。きょろきょろ辺りを見回しながらそちらへ近づいた。


「兄上、信じてください! 俺は神具を盗んでなどいません!」

 人だかりに近づくと、その真ん中からパーティー会場にはふさわしくない切羽詰まった声が聞こえてきた。

 目を向けると、そこには顔を青ざめさせて立つミリウスと、そんな彼を冷たい目で見据えるジャレッド王子がいる。

 王子の隣には困り顔をしたカミリアがぴたりと張りついていた。彼らから少し離れた場所には、制服を着た役人らしき人物が控えている。


「なら、これをどう説明する。お前の部屋から出てきたそうではないか。この神具は十日前に神殿から盗み出されたものだろう」

 ジャレッド王子はそう言いながら、後ろの役人を見た。役人は神妙な顔で「間違いありません」とうなずく。

「それは……。誰かがきっと俺を陥れるために部屋に置いたのです!」

 ミリウスは普段の不遜な態度からはかけ離れた態度で弁明している。いつもミリウスについている二人の従者も困惑顔だ。

 ジャレッド王子はそんなミリウスの姿にも、眉一つ動かさない。
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