天使かと思ったら魔王でした。怖すぎるので、婚約解消がんばります!

水無月あん

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魔王化?

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「ところで、いまさらだが、ロイ坊と高貴なかたがたは、この市場で何をしてるんだ?」
師匠がたずねてきた。

「第二王子殿下に、この町を見ていただくべく、ご案内しているところです」
と、ロイドがきっちりと答える。

「それで、市場以外にはどこへ行った?」

「いえ、ここが初めてです」

「じゃあ、次はどこへ行く予定なんだ?」

「町の教会に、お連れしようかと考えております」

「ふーん。まあ、ロイ坊らしい真面目なルートだが、つまらんな」

あー、ロイド、あの教会に連れて行くつもりなのね。
確かに歴史のある教会だけれど、私的にはねえ…。

だって、毎月、行ってるんだもの。王女の役割として。
しかも、今週、行く予定だよ。なので、他の場所がいいなあ。

だから、続きは私にまかせてね!

「じゃあ、師匠が、この町で一番好きな、おすすめの場所はどこですか?」
私はたずねてみた。

「一番のお気に入りは、もちろん…、おっと、お姫さんには言えねえな」
と、意味ありげに笑った。

「え、なんで?」

「うーん、そうだなあ。男のロマンが、」
と言いかけたところで、ロイドの手刀が師匠の頭におちた。

うん、なんだかすごい音だけど? 大丈夫かしら?

「い…、いってえな! 師匠になんてことするんだ。加減しろよ、この馬鹿力!」
師匠が頭をおさえて、ロイドをにらむ。

「師匠でも関係ありませんよ。アデル王女様のお耳を汚すようなら、つぶすのみ」
ロイドが凍りつくような目で師匠をにらんでいる。

つぶす?! え、ちょっと、何言ってるの?

師匠が、ぶるっと、ふるえている。
そして、マルクもぶるぶるっと、ふるえている。

一気に、ここらへんが寒くなったよ、ロイド。
あなたの天敵のだれかさんみたいになってるよ。

私は、そこで、とんでもない秘密に気づいてしまった。
もしや、魔王って、うつるんじゃない?
どんどん魔王化していくとか…。

だって、ここにもいるものね、本物が! そう、デュラン王子!

マルクと私は、ユーリで耐性がついているから大丈夫。
ロイドはすでに魔王化の兆しが見えてるから、どうにもならない。
ということは、危ないのは、あと師匠だけ。逃げて!

と、私の想像がひろがっているところを、師匠の声でひきもどされた。

「ほんと、ロイ坊は、お姫さんのこととなると容赦ないな。あいかわらず」

あいかわらず? どういう意味かしら?

私の顔を見て、疑問を察した師匠が説明しはじめた。

「こいつね、一度だけ、怒り狂って、大暴れしたことがあってな。あの時は、部屋中のものが壊されるし、びっくりしたガキたちが、泣きわめくし、まさに地獄だったな…」
と、師匠は遠い目でどこかを見た。

ええ?! このロイドが? 怒るところなんて、想像がつかないんだけれど?

「何があったんですか?」

きっと、よっぽどのことよね?!

「それが、お姫さんの悪口を言われたのがきっかけらしい」

なんですって! 私の悪口?

クールなロイドが怒り狂うほどの私の悪口って、一体、なにかしら? 恐ろしいわね。
聞きたくないけれど、気になる…。

覚悟を決めて聞いてみよう。

「…なんて言ったのかしら?」

「ちび」

「それから?」

「それだけだ」

「えー!! それって、悪口じゃなく、事実じゃない!」
思わず、自分で即答してしまった。悲しい…。

「とんでもない。アデル様はお小さいですが、ちびでは断じてありません。事実無根の誹謗中傷です! 今、聞いても、怒りがわいてきます」
ロイドが、厳しいまなざしで、きっぱりと言った。

ん? また、なにかロイドが変なことを言ってるわね?!

「ブッ…。お姫さんが関わると、くそ真面目なロイ坊が、とたんに、おもしろくなるな」
師匠が笑いだす。

「そのままのアデルで、かわいいよ」
すかさず、デュラン王子が、わけのわからない甘いフォローをいれてくる。

「アデル、これ食べる? 気持ちが満たされるよ」
と、甘いものを差し出してくるマルク。

いえ、さっきももらったから、さすがにいいわ。
…っていうか、マルク、食べ過ぎよ!

身長のことは、全く気にしていないのに、不思議ね。
みんなが、なんか言えば言うほど、よくない気持ちが心にたまっていくんだけれど…。

ということで、背のことは、もう、ほっといてください!!



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