(第2章連載中)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。

水無月あん

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第一章

プレゼント

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「それでね、今日は、リリアンヌさんに、お渡ししたいものがあるの」
王妃様がそう言うと、ミスリルさんが、キャスター付きのテーブルを私の目の前に運んできた。
本が20冊ほど積まれている。

「どうぞ、みて」
と、王妃様が微笑んだ。

手に取ってみる。…え?! まさか?!! 

「うわあ、全部、マクシミリアン先生の本! しかも、絶版本ばっかり!!」
驚きすぎて、大声をあげてしまった。

王妃様とミスリルさんが、微笑んでいる。

「これは…? いったい…?」
と、私がつぶやくと、

「リリアンヌさん、マクシミリアンさんの本が、特にお好きでしょ?」

「ええ、一番大好きです!」

「ふふふ、やっぱりね!」
と、王妃様は、嬉しそうに笑った。

「リリアンヌさんの集められた本を読んでいて、多分そうだと思ったの。でも、最近の本は全部あるのに、以前の本が全然ないから何故かしらと思ったら、今は絶版で手に入りにくいそうね」

「そうなんです! 読んでみたくて、ずっと古書店を探してるんですが、全然、出会えなくて。多分、ファンの人も手放さないんだろうし。もう、何度、出版社に再版していただけるよう、お手紙を送ったことか! それくらい、読んでみたかった本なんです!」
もう、貴族令嬢のかけらも残っていない素の状態で、一気にまくしたてた。

「良かったですわね、王妃様!」
と、ミスリルさん。

「ほんと、探したかいがあったわ。私たちは先に読んだので、リリアンヌさんに贈呈するわね。エルザやアイシャにも後で読ませてあげて」

「もちろんです! 本仲間で読ませていただきます! もう、一生分の誕生日プレゼントをいただいたほど、嬉しいです! ありがとうございます!」
そう言って、貴族令嬢はしないだろうけど、感謝の気持ちで、がばっと頭を下げた。

顔をあげると、
「なんだか、リリアンヌさんって、見た目とのギャップがすごいわねえ…。おもしろいわあ。ねえ、私もリリーさんって呼んでいい?」
と、王妃様。

「もちろんです! なんとでもお呼びください」

なんてったって、マクシミリアン先生の絶版本をいただいたんだもの!
もう、勝手ながら、私のなかでは、王妃様は、私たち本仲間の名誉会員に燦然と輝いている!

「そういえば、本仲間って、エルザとアイシャ以外にもいるの?」
と、王妃様が聞いてきた。

「はいっ。先日、トルイド家のジャンさんが加入してくれました。…そして、仮メンバーが若干一名…」

「あ、トルイド伯爵も読書家なのよ。息子さんたちは、皆、優秀だと聞いているわ」
そう言いながら、アイシャの方を見た。

「ええ、ジャンは、私と同級生だけど、信用できる人だし、とっても優秀よ」
アイシャの言葉に、うなずかれる王妃様。

「それで、もう一人の仮メンバーはだれなの?」
と、聞いてこられた。

「…あ、ラルフです」

「あら? ラルフ? あの子、こういう感じの本を読むの? エルザからも聞いたことないし、意外ね」
と首をかしげられる王妃様。

すると、アイシャが、
「ラルフは、動機が不純なのよ。ジャンが入ってきたから、焦って、無理やり加入してきたの。本も読まないくせに」
と、不満いっぱいの口調で言った。

ん? 動機が不純? そうともいうのかな? でも、ちょっとよくわからないから、私も補足しとこ。

「ラルフは、なぜか、本仲間に入らないと損をするみたいに、勘違いしてるんです。でも、今、エルザおばさまイチオシの、糖度高め、上級者向けトキメキ本を貸してますので、入りたい気持ちも、すぐに失せると思います。絶対、苦手そうだから。なので、一応、仮メンバーということにしてあります」

すると、アイシャが、
「苦手な本を読んだところで、その意図が、肝心のリリーに伝わってないなんて、ラルフったら笑えるわ。…フフ」
そう言って、極上の笑みを見せた。

「あら、アイシャ! その笑顔、悪役令嬢みたいでいいわよ!」
と、悪役令嬢もののお話が好きな王妃様が、嬉しそうに声をあげた。

確かに! 思わず、私も力強くうなずく。

「それにしても、なんか、楽しそうなことになってるのね! そんなラルフ、見てみたいわ! 今度、呼びつけてみましょ」
と、王妃様は、いたずらっぽい顔で笑った。

その時、
「お話し中のところ、申し訳ありません。王太子様の使いの方が来られてるのですが、いかがいたしましょう」
と、護衛の騎士らしき方が言われた。

「なにかしら? 通して」
王妃様はそう伝えると、私に向かって、「ちょっと、ごめんなさいね」と、おっしゃられた。

めっそうもないです。

すると、
「失礼します。王妃様」
そう言って入ってきた男性は、…あっ! あの危ない人、ロイさん!!

条件反射で、一方後ろに下がってしまう。
見知らぬ人のふりをしておこう。

「こちらが、王太子様から渡すように頼まれた明日の会議の資料になります。何か、ご質問がありましたら、いつでもおっしゃってください」

そう言って、王妃様に礼をとる。

ん? 普通の人だ。むしろ、仕事ができる感じが漂っている。
あのロイさんと、顔は似てるだけで違う人なのかもしれないね。

はあ、良かった!

と、思ったら、
「あれ? アイシャと、リリーちゃん! どうしてここにいるの?!」
と、一気にくだけた雰囲気で、その人物が笑いかけてきた。

ああ、やっぱり、あのロイさんだったのね…。
まさか、また、会うとは。
なんだか、嫌な予感しかないんだけど…。

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