(第2章連載中)だれか溺愛見せてください。ちなみに、溺愛を見たいだけで、溺愛してもらいたいわけではありません。

水無月あん

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第一章

あれ? おかしいな

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ロイさんが、窓の外を見ながら、
「あの御令嬢は、グラン国の第三王女、ルーシェ様だよ。ラルフより3歳年上かな」

「グラン国といえば、この国と交流がない国ですよね?」

ロイさんがうなずいた。
「今まではね。グラン国は小さな国で、あまり他国と交流しない国だ。うちとは離れてるしね。でも、異常気象で、主食の穀物が不作だったらしくてね、他国から買うしかなくなった。うちの国、穀物が豊富でしょ。なので、取引を求めてきたんだ」

「そうだったんですね。あまり、グラン国のことは知らなくて…」

言語も違うし、読める本が流通してないんだよね。好きな作家さんのいる国とか、好きな物語の舞台になっている国なら、興味があるんだけど…。
本以外知らないことばかりで、反省…。

「そりゃ、そうだよ。王太子の側近の中でも、ぬきんでて優秀で、将来有望なぼくでさえ、グラン国のことは、表面的なことしか知らないんだからね。今、裏から手をまわして急いで調べてるんだ。今から図書室に行くのも、グラン国関係の資料をとりに行くの」

「はあ、そうなんですか…」
ロイさん、自分のほめかたが、すごいね? しかも、途中、ブラックな発言も…。 
ほら、護衛騎士さんがひいた目で見てるよ…。

「しかも、急に、グラン国の第二王子が少人数の交渉団を率いて、密かに来たんだ。交渉に関係ない第三王女まで連れてね。なんなんだろ? 交渉団のお飾り? いや、広告塔? あわよくば、うちの王太子狙いなのか、その思惑は、全然よくわからないんだけどね」
と、ロイさんは、ちょっと不満そうな表情をうかべた。

「でも、そんな方と、なんでラルフが一緒にいるんですか?」
と、私が聞くと、

ロイさんは、
「ほら、交渉に関係ない第三王女様は、いわゆる暇なわけ。しかも、うちの国の言葉は話せない。逆に、グラン国の言葉を話せる人も、王宮にそんなにいないんだ。ぼくは少し話せるけど、交渉で忙しいし、外交の職に就いている人たちも同じく。で、ラルフに白羽の矢がたったわけ」

「えっ! ラルフって、グラン国の言葉が話せるんですか?!」

「あ、知らなかった? 日常会話ぐらいなら話せるよ。言語に関しては、ラルフは天才的なところがあるからね」

「えええ?! 優秀だとは思ってたけど、言語に関して天才的って、うらやましすぎる…。私にそんな才能があるなら、好きな他国の作家さんで、まだ翻訳されてない本を読みまくるのに。のどから手がでるほど、欲しいわ! その才能!」

あっ、驚きすぎて、全部言葉にでてた…。

護衛騎士さんが、びっくりした目で私を見てる。
そして、ロイさんは、大笑いしはじめた。

「もうー、リリーちゃんったら、おもしろすぎ! やっぱ、ほしいな、リリーちゃん。…本いっぱい用意するよ。うちに来ない?」

あ、まずい。また、あぶないロイさんが出現。

と、思ったら、護衛騎士さんが、ロイさんと私との間にすばやく立った。

そして、
「はい、そこまで。正気に戻りなさい。いや、戻れ!」
と、冷たい声で言い放った。

「もう、失礼だよ、ルドルフ。人を変質者みたいに…」
ぶつぶつ言う、ロイさんに、

「それで、ラルフの話は?」
と、私が、先をうながす。

「あ、そうそう。ラルフのことね。グラン国の言葉がわかるラルフに頼み込んで、話し相手をしてもらってるの。他の人より、ラルフのほうが、王女、喜ぶんだよねー」
と、ロイさん。

改めて、王女様を見てみると、少し短めの丈のドレスが、異国風で新鮮。
長くて赤い髪、ぬけるような白い肌が遠目からもわかる。
すごくきれいな人。
身長もすらりとして、ラルフと並んだ姿は、とってもお似合い。

王女は、笑いながら、ラルフと何かを話している。
まさに、物語のような二人ね。

ん? これは、ついにラルフが、ヒーローになるチャンスが来たのでは?!

異国からきた王女は、言葉がわからない。そこで、唯一、言葉がわかる公爵令息。
二人は、話しをしながら、一気にひかれていく。
でも、帰る日が近づいてきた。でも、離れがたい二人…。

妄想がどんどんひろがっていく。いいわ! 
ついに、ラルフが溺愛ヒーローになる日がきたのかも?! 
相手に不足なし。いいんじゃない?!

と、その時、ラルフが王女に微笑み返すのが見えた。

ラルフが女性に笑うのって珍しい。
と思った瞬間、急に、体の奥がズキッとした。

あ、いたた…。
あれ、おかしいな? これって、おなかが痛いのかな? 

「どうしたの? リリーちゃん」
ロイさんが、私の顔をのぞきこんできた。

「ちょっと、一瞬、おなか?かな、よくわからないけど、痛くなって…。でも、治りました」

「大丈夫? 保健室、行く?」
と、真面目な顔になったロイさんが聞いてきた。

「いえいえ、大丈夫です! それより、図書室へ連れてってください!」
と、大きな声で答える。

おなかよりも、図書室よ! あこがれの図書室で、緊張したのかもね。

ロイさんが、笑いながら、
「本当に、リリーちゃんは、本が好きなんだね。では、いきましょうか」
そう言うと、歩きはじめた。

わたしも一緒に歩きはじめる。
もう一度、窓の外の二人を目に焼き付けようと思ったけれど、なぜだか、首が動かなかった。




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