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【最終章 地炎激突】

逃げることなど許されない

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「アァァァァァッッ!! いってェな! チクショウ!」

 フレアルドはその手に掴んだ二人の部下を地面へと投げ捨てた。
 咄嗟に近くにいた部下を鷲掴みにし、それを盾にすることで直撃を免れていたのだ。
 しかし膨大な雷の奔流は人を盾にした程度では完全に防ぎきれず、フレアルドに少なくないダメージを与えていたが、戦闘には支障ない程度のものだった。
 逆に、盾にされた隊員は防御姿勢を取ることもできず、無防備な状態で砲撃を受けてしまったため、完全に気を失っていた。

「なんてことを……! おい、大丈夫か!?」

 すぐさま投げ捨てられた部下の元へと駆け寄るゴラウン。
 彼は咄嗟の障壁展開に間に合い、受けたダメージは軽微であった。
 ゴラウンが倒れた隊員の状態を確認しながら辺りを見回すと、フレアルドに盾にされた者も含めおよそ半数の隊員が倒れているのが確認できる。

「……フレアルド様、部隊の被害は甚大です。ここは一時撤退するべきです」

 極度の疲労に栄養失調、加えて麻痺状態が重なり、倒れている者が戦線復帰するのは、少なくともこの戦闘中には不可能だ。
 そう判断したゴラウンは撤退を提案するが、憎き敵であるアースを目の当たりにしたフレアルドには、撤退という選択肢は最初から無い。
 
「却下だ! 相手の兵器は俺様が破壊した。今のが奴らの切り札だろう。今が攻め時だろうが! 突撃しろ!」

 当然の如くゴラウンの提案は聞き入れられず、戦闘を継続することを強いられる。
 確かに槍の投擲で敵兵器を破壊したのは見事だったが、相手がここまで用意周到であったことを考えると、事前に自分達がここに攻め入ることを知っていたとしか思えない。
 つまり、他にもまだ何かあって然るべき、撤退も視野に入れるべきだとゴラウンは考えていたのだが、指示を出すフレアルドはそんなことはお構いなしだ。

「……了解しました」

 しかし、現状ゴラウンには従う他に選択肢は無い。
 あれこれと口を出すことは、フレアルドの怒りを買う原因になりかねないのだ。
 ただでさえ敵にいいようにやられた後なのだ、これ以上刺激するのは控えた方がいいと判断した。
 
「数名ここに残って倒れた隊員の看護を頼む。他の者は私に続け!」

「しかし、隊長! この状況では……!」

「すまんが従ってくれ……いざとなったら私が責任を取る」

「隊長……了解しました」

 ゴラウンに続き、まだ動ける隊員が街へと走り出す。
 その数は本来の隊員総数の約3分の1、10名まで減っていた。

「フン、ゴタゴタ言ってたみてェだが、ようやく行ったか」

 ゴラウンらの後ろを、少し間隔を開けてフレアルドが続く。
 もし奇襲を受けても、フレアルド自身には被害が及ばないように囮や盾にしようと考え先行させたのだった。
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