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【三章】技術大国プラセリア

25.金色孔雀

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「な……んだ、ありゃ……?」

 いよいよ第二選考が始まり、俺たちはほぼ魔動人形を起動して、だだっ広い会場へと入場した。
 しかしお互いの機体を見る暇もなく、否応なしに視線が一点へと集められる。

 視線の先には、今回の対戦相手であろう魔動人形が佇んでいた。

 その容貌を一言で表すのならば『過美かつ歪』。装甲は直視するのをためらうほどのまばゆい金色、そして宝石のような装飾が各所にちりばめられている。
 
 ……そこまではいい。だが機体のシルエットは人の形を大きく逸脱していた。
 下半身は無限軌道が付いた戦車のようなもので、上半身は巨大な人形。
胴体と思わしきパーツがあちらこちらにのだ。

 それは木の枝のように広がり、正面から見たら扇を広げているようにも見える。

(まるで孔雀だな……)

 パッと見では鈍重そうな印象だが、どんな機能があるのかがわからない。もしかしたら過度な装飾にも何らかの効果があるのではと思わされる。

「あー、んー、ンンッ! あーあー」

「……ん?」

 マイクテストでもしているのだろうか、咳払いなどで声のチューニングをしているのが聞こえた。
 
「いらっしゃ~い! ワタシの実験会場へようこそ! 待ってたわよ、実験台ちゃんたち!」

「え゛」

 思わず変な声が漏れてしまった。なぜなら、しゃべり方は完全に女性の口調であるのに、声色は男性のものだったからだ。いわゆるオネエってやつだろう。

 咳払いなどをしている時の低音と比べると、だいぶ頑張って声を作っているものの、いかんせんベースの声色が低すぎるのだ。男性としか思えないが……言及しないほうがよさそうだ。

「あちゃー、最悪な相手だねこりゃ……」

「どういうことですか、アイシャさん?」

「アイツはパヴォローヌ。GODSの第二開発部の部長なんだけどね、あいつが試験官をしたコンペティションでは、通過者が毎回ゼロなのさ」

「ええっ!? そ、それじゃあ俺たちはもう……!?」

 なんてこった。よりにもよって俺たちの相手がそんな厳しい試験官だったなんて。
 
「あらあら……人聞きが悪いわねぇ。ワタシは公正に審査してるわよぉ。ただ、今まではワタシの眼鏡にかなう美しさを持つ魔動人形が存在しなかったってだけよ」

「う、美しさ……!?」

 戦闘能力ではなく美しさが選考基準なのだろうか。
 今までの選考形式は知らないが、今回も同じだとしたらちょっと自信無いな。

「……フン、そんなの関係ない。ただぶっ倒しゃいいんだ」

「ははっ、キールの言うとおりじゃわい。撃破すれば問題なかろう」

「――あらぁ、言うじゃないの。今回の参加者は活きが良いわねぇ……そういうの嫌いじゃないわよ。いいわ、約束してあげる。もしワタシの魔動人形『ピーコックキマイラ』を倒すことができたら、全員合格にしてあげるわぁん」

 台詞の最後に、ブチュっと投げキッスでもしたのであろう音が聞こえた。映像がなくてよかった、もし映像付きだったら吐き気を催していたかもしれない。

「……さぁ、たった今から開始よぉ、いつでもかかってきなさいな。美しく……ね!」

 コンペティション第二選考、一対五の非対称型の対決が、今幕を開けた。
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