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【三章】技術大国プラセリア

26.乱れ撃ち

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「よーし、まずはアタイからいかせてもらうよっ!」

 開戦と同時に最後尾にいたアイシャさんの機体が射撃体勢を取る。

 事前に聞いた説明によると、アイシャさんの機体は『カタラクト・トーラス』という砲撃特化型の魔動人形だ。
 まだ距離がある今、遠距離攻撃は挨拶代わりとしてはもってこいだろう。

「デカイの一発、任せたぞい!」

 俺を含め、他の魔動人形もカタラクト・トーラスの射線上から退く。

 アイシャさんの魔動人形は、砲撃特化の名に恥じず両肩に計四門の大型砲を装備しており、見た目だけでも火力の高さがうかがえる。

「オーケイ! まずは五割の出力で……カタラクトキャノン、シュートッ!」

 四つん這いの体勢をとり、肩の砲門に魔力の収束に数秒の時間を要していたが、ピーコックキマイラは微動だにしなかった。
 あの図体では仕方ないことだろうが、やはり機動力に難があるのだろう。

(いや……回避が難しいなら迎撃をするはずだ。その素振りすらないということは、撃たせても問題ないという自信があるのか……?)

 結果はすぐにわかるだろう。砲門より収束された魔力が迸る。
 魔力はまるで激流の如く敵に襲いかかるが、直撃しようかという刹那、見えない壁のようなものに弾かれ、魔力が拡散してしまう。

「なっ……!? バリアか!?」

「オーマイガー……!」

 アイシャさんの放った攻撃は、俺が先の戦いで無効化したハンドガンタイプの銃による攻撃とはレベルが違う。
 サイクロプスがエーテルコーティングを重ねていたとしても、あれほどの攻撃を受けたらタダでは済まないだろう。

 しかし敵機はそれを微動だにせず無効化した。あのバリアのようなものを破る方法を見つけない限り、遠距離攻撃は無意味だろう。

「あらあらぁ……そんなものかしら? 美しさが足りないわよ。じゃあ、次はこっちからいくわよ?」

 ピーコックキマイラの本体から枝分かれした不気味なパーツが光を帯びていく。おそらく魔力を収束させているのだろうが、その数が尋常ではなかった。

「ひとつ、ふたつ……全部で十だって!?」

 なんだか嫌な予感がする。ここは回避に専念しよう。

「みんな! 何かくるぞっ!」

 スラスターを噴かして回避行動をとった瞬間、眩い光とともに攻撃が放たれた。

 しかし飛来する攻撃は十発どころではなかった。十の砲門から不規則に何発も魔力弾が放たれる。
 狙いはつけていないようだが、その数が尋常ではない。広範囲に無数の弾が飛び交っている。

「ぐっ!」

 俺の操縦技術では全て避けきれるわけもなく、数発被弾してしまうが、エーテルコーティングのおかげか、致命傷には至らなかった。
 だがダメージはしっかりと残っている。あれほどの量を撃っているにも関わらず、威力はハンドガンを超えているようだ。

 永遠とも思えた数秒間を終え、土煙が辺りを包む。

「終わった……のか? くっ、みんな無事か!?」

「ふう……なんとか無事じゃわい」

「――こっちは問題ない」

 ゴードンじいさんとキールからは返事があった。しかし残る二人からは反応が無かったので、辺りを見回すと、カタラクト・トーラスを守るようにゴリさんの機体が盾を構えているのが目に入った。

「ゴリさん!? 大丈夫ですか!?」

「……ああ、問題ない。これしきでこのヘビーディックは沈まん」

 ゴリさんの機体ヘビーディックは、かなりマッシブな体型だ。サイクロプスも増加装甲やらでかなり太い印象だが、その一回り上をいく。
 その見た目どおり装甲は分厚いらしく、あの攻撃を正面から受けきれたみたいだ。

「すまないねゴリヌス。アタイの機体は動きが鈍いうえに、魔力を消費したばかりでろくに防御もできなかったんだ、助かるよ」

「……いい。俺の機体も動きが遅い」

 ゴリさん渋いっス。
 
(――っと、感心してる場合じゃないか)

 あれだけの攻撃だ、かなり魔力を消費しているはず。今ならバリアも展開できないに違いない。
 
 サイクロプスをベースとした新たな俺の機体、フルアーマードサイクロプス。
 胴体以外のパーツは全て新しく作っており、各部には俺とリンのアイデアを盛れるだけ盛ってある。
 武装も搭載できるだけ載っけているので、その火力は以前の比ではない。

 今が好機と、メインウェポンである大型ライフルを構えた。魔力量の都合で連射はできないが、その分一撃の破壊力が高い。

 ゴードンじいさんとキールの二人も、俺と同じ考えに至ったのだろう。三機は一斉に敵機へと攻撃を放つのだった。
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