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【三章】技術大国プラセリア

30.辛勝

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 戦いを終えた俺は、ひと息つくため控え室へと戻った。

 戦闘の緊張感で疲労した体でゆっくりと扉を開けると、そこには一足先に離脱していた仲間たちが待ち構えていた。

「オゥ! ヒーローの登場だよ!」

「ホッホッ、魅せてくれるのう坊主」

「見事だったぞ」

「……フン」

 約一名を除き、俺の活躍を喜んでくれている。
 あの時は必死だったけど、全部うまくいってなによりだ。
 
「しっかりと役目を果たせたのでホッとしてますよ」

「またまたぁ! あんな切り札があったなんてアタイはビックリしたよ。まさか腕を飛ばすだなんてね!」

「はは、飛ばした腕は帰ってこないんで、一発限りの技ですけどね」

 ロケットパンチを放ったあと、飛ばした腕が自動で戻ってきたりはしない。そういった機能を付与する方法がまったく思い付かなかったのだ。
 なので正真正銘、一回限りの最後の切り札だ。

「なんであれ勝ちに変わりなかろう。パヴォローヌの言っていたことが真実であれば、これでワシらは全員選考を突破したんじゃ。めでたいこった」

 そうだったな。始まる前にパヴォローヌはそう約束した。彼が約束を反故にしない限りは俺たち全員が次の選考へと進めるはずだ。

「そうね! 祝杯をあげたいところだけど……アタイたちは次会うときはライバルだから、そういうのは全部終わった後にお預けだね」

「うむうむ。既にワシらは戦友、事が終われば改めて飲み明かそうぞ」

「……そうだな。キール、お前も来い」

「ヘッ、本番はこれからだってのに呑気な奴らだぜ。……まあ、考えておいてやるよ」

「ハハッ! まったく、キールったら素直じゃないんだからぁ!」

 アイシャさんがキールの背中をバシバシと叩いているが、不思議とキールは嫌そうではない。

 ほほう……この二人まさかそういう感じなのか?



「それじゃあ……また会場で会えるのを楽しみにしてますよ」

「うむ、その時は手加減はせんぞ?」

「はは、望むところですよ。それじゃ!」

 しばらくの間談笑していた俺たちだったが、やがて解散する流れとなった。
 次に会えるとしたら、選考会場で合間見えることになるだろう。お互いの健闘を祈りながらそれぞれが帰路に着く。

 短い時間だったとはいえ、共闘している中で確かな絆が芽生えたのを感じた。皆普通にいい人たちだったし、できればまた会いたいな。

「さて、リンとカティアが待ってるだろうし、ぱぱっと帰りますか」

 選考結果については後日運営側より通達があると聞かされた。しかし口約束だったとはいえ、合格は確約されているようなものだ。
 良い結果を二人に報告しようと、ウキウキ気分でキャッツシーカーへ向かう帰り道を早足で進む。

 ――その背後に潜む、黒い影に気が付かないまま。
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