深夜バイトでノンケ食いのリーマンに美味しくいただかれてしまった話

いとい乃衣

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「はぁ……スッキリした。ここってシャワーある?」
「あ、はい。泊りの従業員用のが奥に」
「借りるよ」

 あっさり普段通りの態度に戻った坂崎さんに、部屋に満ちていた狂気じみた空気が遠のいていく。
 時間を見れば、もう朝の五時をちょっとまわったところだ。
 仮眠を取ったら、すぐに新規タイトルの棚の入れ替えと、フロアの掃除にいかなくてはならない。
 シャワーを浴びた坂崎さんは、皺になったシャツを文句を言いながら着込んで、セックスの余韻もなにもなく早朝の町へと消えて行った。

 坂崎さんを送り出した、従業員用の出入り口に呆然と立ち尽くす俺は、夢でもみていたのかと思う。だってノンケの俺が、顔見知り程度の常連客の男とセックスしてしまうだなんて、どう考えても現実味が薄い。それなのに、脳裏に浮かんでくる坂崎さんの痴態と、俺を包み込んでくれていた体温を思い出せば、すぐにそれが紛れもなく自分の身に起きたことなんだと嫌でも思い知る。

「眠っ……」

 夜通しセックスをしていたせいで、身体はひどく疲れていた。一度でも目を閉じてしまえば、深い眠りに誘われてしまうのは確実だ。
 せめてやることはやってからと、ドロドロになったシーツを剥がして洗濯機に放り込んだ。ついでに、俺もシャワーを浴びる。熱めのお湯を頭からかぶると、眠気も少しは落ち着く。

 俺がシャワーを使う前から濡れていたボディーソープのボトルに手が触れて、そういえばここを使った先客がいたのだと思ってしまったらもうダメだった。
 ここで、同じソープを泡立てて、坂崎さんも俺の精液まみれになった身体を洗い流したのだ。そう不意に思い立って、カッと全身が熱くなった。

(あの人、今は俺と同じ匂いすんのか)

 坂崎さんはそのまま出勤なんてズボラなことはしないだろうから、もうあと数時間もすればあの人に残ったこの部屋での痕跡は綺麗さっぱり消えてしまうのだろう。
 清潔な洗いざらしのワイシャツに腕を通して、仕立ての良いスーツを着て、上品な大人の男の香りの香水をふりかける。そうして何食わぬ顔で今日もあの人は、欲にまみれた顔を隠して、職場の男たちの中で仕事をこなすのだ。
 そんなことには一切興味ありません、なんて涼しい顔して頭ん中はエロいことでいっぱいとか、すごく興奮する。

「今日も来てくれるかな……」

 深夜三時のひと気の無い、寂れたレンタルビデオ店のカウンターで、今夜も俺はその人を待つだろう。
 綺麗で可愛くていやらしい、俺の初めての男のひとを――。
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