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四十八話 「力の発散の影響力」
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ダンジョンに入りアッシュ達がセグエンテで最初に出くわしたのは樹木の姿をした魔物トレントだった
トレントは自身の枝や地中に埋まっている根を鞭のようにしならせて攻撃を繰り出してくる
今まで相手してきた魔物は主に近距離戦を仕掛けてきたのでトレントの変則的な攻撃に苦戦するが、アッシュとクウでその攻撃を防ぎアレッサが火魔法の攻撃を浴びせる
『アレッサ!お願い!』
『ファイア・ボール!』
アレッサの魔法が直撃したトレントは焼き尽くされ動きを止める
やはり植物系の魔物に対して火の魔法は効果覿面のようだ
ただ周りの樹々に燃え移らないよう配慮しなくてはいけないのが難点である
『どう?何か掴めた?』
『うーん、いまいちピンとこないな』
戦闘をしつつクウ達の能力がどのように付与されているのか確かめたかったが、流石に一度の戦闘だけで解明することはできなかった
クウやベルの能力を考えると身体的なものの線は薄い
となったら魔法かと思ったが、使ったことのない魔法なんて突然発動できるはずもなかった
その後もダンジョンの奥へ進んでいきトレントを倒し続けたが、きっかけを掴むことはできなかった
引き続き検証は行うとして、このダンジョンに入ってから数十分が経過して不可解な点があることに気づいた
アレッサもそれに気づいていたのかアッシュにその疑問を投げかけてくる
『アッシュ君、なんだか想像していたよりも魔物の数が少なくない?』
『アレッサもそう思う?入口からそこそこ歩いてきたはずなのに数回程度しか魔物と遭遇しないのは変だよね』
まだ序盤だろうからそこまで数は多くないんだろうがそれにしたって少なすぎる
もっと頻繁に魔物がくることを予想していたので肩透かしをくらっていると、単独行動をしていたベルが戻って来た
『ふぃー楽しかった』
『おかえりベル、少しは発散できた?』
『おう、雑魚い魔物しかいなかったから不完全燃焼ではあるけど数は多かったから体は動かせたし幾らかスッキリしたぜ』
久しぶりに体を動かせたことで上機嫌なベルは羽休めにとアレッサの元に抱かれに行く
そんなベルの言葉に引っかかったアッシュはまさかと思い恐る恐る問いかけた
『あのぉベルさん?一体どれ位の数の魔物を倒してきたんですかね?』
『ん?せいぜい百か二百位だぞ。本当はもっと狩りたかったんだけど主の言いつけを守ったぞ。偉いだろ?』
その言葉を聞いて恐らく、いや十中八九魔物が出てこないのはベルのせいだろうというのが分かった
ベルが戦闘を繰り広げている音がこちらから殆ど聞こえてこなかったということは多分魔物に反撃させる猶予すら与えず葬っていったのだろう
他の冒険者に迷惑をかけていないだろうか・・・
アッシュの悪い予感は見事的中した
魔物と中々接敵することができなかったので早めに切り上げ、魔石の換金をしに冒険者組合に戻ってきた
するとそこには組合長のウィリアムが頭を抱えていてアッシュ達を見るや否やこちらに向かってきた
『アッシュさん、少しよろしいですか?』
『あ、はい・・・』
ウィリアムに連れられこの前の部屋へと通される
内容は予想していた通りダンジョンの魔物を狩りすぎてしまった件についてだ
ダンジョンにいた他の冒険者から大量の魔物が倒された痕跡があり、それをやったのが例のドラゴンだという報告があったそうだ
基本冒険者達の間には先に魔物を見つけた方がその魔物を狩ることができるという暗黙の了解みたいなのがある
なのでこの件に関して何か咎められるようなことはない
だが他の冒険者もいるのでできれば今後はもう少し控えてれないかと言われてしまった
『すみませんでした!』
前回に続いてまたもや他の冒険者から反感を買うような結果を招いてしまったのは、ベルの力量を考えず軽い気持ちで許可をしたのは自分なのでベルを責めることはできない
アッシュ平謝りして冒険者組合をあとにした
『はぁ・・・ダンジョンで戦ってる時より疲れる』
『ちょっと狩っただけなのに大袈裟な奴らだな。明日になればまたうじゃうじゃ湧いてるだろダンジョンの魔物なんて』
『僕達だけの場所じゃないから皆ある程度他の人に配慮しなくちゃいけないんだよ』
『そんな細かい事いちいち気にしなくちゃいけないなんて人間て面倒臭ぇな』
発散してある程度機嫌がいい状態だったからそれ以上何か言ってくることはなかった
これからもこういう機会を設けて適度にガス抜きをさせてあげたいがやり方を考えないとなとアッシュは反省する
宿に到着するとベルが何か思い出したのかポンと手を叩いた
『そうだクウ。お前にいい土産があったんだった』
『土産?』
『ほらよ、魔石だ』
そう言うとベルはどこからともなく今日狩ってきた魔物の数だけ魔石をベッドの上に撒き散らした
『魔物は魔石を取り込むことでベルアップすることができるんだぞ。魔物本体を喰らってもいいけど魔石の方が効率がいいからな』
以前から魔物を吸収して成長しているとは思っていたがどうやら魔石の方がより早く成長することができるらしい
けど魔石は生活費を稼ぐのにも必要なので全てをクウにあげることはできない
あげるにしても少量ずつになるだろう
『というかベル、当たり前の様に魔石が出てきたけど今それどこから出したの?』
『収納魔法だけど?』
『ははは、そっかぁ収納魔法かぁ。ベルは凄いなぁ~』
もうベルがどんな魔法を使っても驚くことがなくなったアッシュは平然とそれを受け流した
トレントは自身の枝や地中に埋まっている根を鞭のようにしならせて攻撃を繰り出してくる
今まで相手してきた魔物は主に近距離戦を仕掛けてきたのでトレントの変則的な攻撃に苦戦するが、アッシュとクウでその攻撃を防ぎアレッサが火魔法の攻撃を浴びせる
『アレッサ!お願い!』
『ファイア・ボール!』
アレッサの魔法が直撃したトレントは焼き尽くされ動きを止める
やはり植物系の魔物に対して火の魔法は効果覿面のようだ
ただ周りの樹々に燃え移らないよう配慮しなくてはいけないのが難点である
『どう?何か掴めた?』
『うーん、いまいちピンとこないな』
戦闘をしつつクウ達の能力がどのように付与されているのか確かめたかったが、流石に一度の戦闘だけで解明することはできなかった
クウやベルの能力を考えると身体的なものの線は薄い
となったら魔法かと思ったが、使ったことのない魔法なんて突然発動できるはずもなかった
その後もダンジョンの奥へ進んでいきトレントを倒し続けたが、きっかけを掴むことはできなかった
引き続き検証は行うとして、このダンジョンに入ってから数十分が経過して不可解な点があることに気づいた
アレッサもそれに気づいていたのかアッシュにその疑問を投げかけてくる
『アッシュ君、なんだか想像していたよりも魔物の数が少なくない?』
『アレッサもそう思う?入口からそこそこ歩いてきたはずなのに数回程度しか魔物と遭遇しないのは変だよね』
まだ序盤だろうからそこまで数は多くないんだろうがそれにしたって少なすぎる
もっと頻繁に魔物がくることを予想していたので肩透かしをくらっていると、単独行動をしていたベルが戻って来た
『ふぃー楽しかった』
『おかえりベル、少しは発散できた?』
『おう、雑魚い魔物しかいなかったから不完全燃焼ではあるけど数は多かったから体は動かせたし幾らかスッキリしたぜ』
久しぶりに体を動かせたことで上機嫌なベルは羽休めにとアレッサの元に抱かれに行く
そんなベルの言葉に引っかかったアッシュはまさかと思い恐る恐る問いかけた
『あのぉベルさん?一体どれ位の数の魔物を倒してきたんですかね?』
『ん?せいぜい百か二百位だぞ。本当はもっと狩りたかったんだけど主の言いつけを守ったぞ。偉いだろ?』
その言葉を聞いて恐らく、いや十中八九魔物が出てこないのはベルのせいだろうというのが分かった
ベルが戦闘を繰り広げている音がこちらから殆ど聞こえてこなかったということは多分魔物に反撃させる猶予すら与えず葬っていったのだろう
他の冒険者に迷惑をかけていないだろうか・・・
アッシュの悪い予感は見事的中した
魔物と中々接敵することができなかったので早めに切り上げ、魔石の換金をしに冒険者組合に戻ってきた
するとそこには組合長のウィリアムが頭を抱えていてアッシュ達を見るや否やこちらに向かってきた
『アッシュさん、少しよろしいですか?』
『あ、はい・・・』
ウィリアムに連れられこの前の部屋へと通される
内容は予想していた通りダンジョンの魔物を狩りすぎてしまった件についてだ
ダンジョンにいた他の冒険者から大量の魔物が倒された痕跡があり、それをやったのが例のドラゴンだという報告があったそうだ
基本冒険者達の間には先に魔物を見つけた方がその魔物を狩ることができるという暗黙の了解みたいなのがある
なのでこの件に関して何か咎められるようなことはない
だが他の冒険者もいるのでできれば今後はもう少し控えてれないかと言われてしまった
『すみませんでした!』
前回に続いてまたもや他の冒険者から反感を買うような結果を招いてしまったのは、ベルの力量を考えず軽い気持ちで許可をしたのは自分なのでベルを責めることはできない
アッシュ平謝りして冒険者組合をあとにした
『はぁ・・・ダンジョンで戦ってる時より疲れる』
『ちょっと狩っただけなのに大袈裟な奴らだな。明日になればまたうじゃうじゃ湧いてるだろダンジョンの魔物なんて』
『僕達だけの場所じゃないから皆ある程度他の人に配慮しなくちゃいけないんだよ』
『そんな細かい事いちいち気にしなくちゃいけないなんて人間て面倒臭ぇな』
発散してある程度機嫌がいい状態だったからそれ以上何か言ってくることはなかった
これからもこういう機会を設けて適度にガス抜きをさせてあげたいがやり方を考えないとなとアッシュは反省する
宿に到着するとベルが何か思い出したのかポンと手を叩いた
『そうだクウ。お前にいい土産があったんだった』
『土産?』
『ほらよ、魔石だ』
そう言うとベルはどこからともなく今日狩ってきた魔物の数だけ魔石をベッドの上に撒き散らした
『魔物は魔石を取り込むことでベルアップすることができるんだぞ。魔物本体を喰らってもいいけど魔石の方が効率がいいからな』
以前から魔物を吸収して成長しているとは思っていたがどうやら魔石の方がより早く成長することができるらしい
けど魔石は生活費を稼ぐのにも必要なので全てをクウにあげることはできない
あげるにしても少量ずつになるだろう
『というかベル、当たり前の様に魔石が出てきたけど今それどこから出したの?』
『収納魔法だけど?』
『ははは、そっかぁ収納魔法かぁ。ベルは凄いなぁ~』
もうベルがどんな魔法を使っても驚くことがなくなったアッシュは平然とそれを受け流した
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