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孤独な錬金術師
第五話 不老不死の引きこもり
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「……やっぱり気乗りしないな」
俺は正面に座るレームを見ずに、そう呟いた。
簡単に言うなら怖いのだ。見ず知らずの他人は俺にとって恐怖の対象だった。
レームやイチカのようなホムンクルスは俺を奇異の目で見たりはしない。
だが人間は違う。
山奥にこもる前、俺は怪しい錬金術師として評価されていた。
この世界の花形は魔術師だ。優秀な魔術師は英雄のように扱われるが、錬金術師はそうではない。
はっきり言って地味、それは否定できない。
錬金術がもたらした恩恵は市民にも還元されているが、あまりにも身近すぎてすごさは伝わらないのだ。
一般的に使われている電灯も、アクセサリーを作る時の彫金技術も、はたまた日常で使うような刃物の鍛冶技術も、すべて錬金術の恩恵なのだが、市民にはあまり関係がなかった。
外で派手な魔法を放ち、敵を撃滅する魔術師とは違い、錬金術師は研究室にこもり研究をするのがメインの仕事だ。
ましてや『賢者の石』に代表される錬金術の奇跡をなした人物はいない。
人造人間ホムンクルスも、エリクサーも、それどころか金を創ることさえ誰も実現していないのだ。
それゆえに世間的には何もしていない連中、といった評価を受けているのだ。
そして、俺もそう評価される人物の一人だ。
今俺たちが乗っているのは馬車ではなく、俺が作った自動で動く四輪車である。
馬車の荷台部分だけが走っているような見た目だ。ちなみに、装飾は地味なものだ。目立つことを避けたかった。
目的地まで基本的にノンストップで走行する。動力は賢者の石を簡易にしたようなものである。
どんなに荒れた路面であっても、殆ど揺れなく走行することができる。
錬金術を用いた高度なサスペンションを搭載しており、この仕組みを販売するだけでも世界は一変するだろう。
「たまには外出もしませんと。お体を悪くしますよ」
そんなことはあり得ないと知っているが、レームは微笑みながら俺に言った。
「不老不死なんだぞ。病気にもならんさ」
「お心の問題です。城ばかりにいては元気をなくしてしまいますよ」
「……それもお前がいるから問題ない」
レームはそれを聞き顔を真っ赤にして、はにかむようにこちらを見ている。
俺も赤い顔をしていただろう。それでも思わず言ってしまった。
「……嬉しいです♡ ご主人様にこんなに愛していただけるなんて♡」
「……レーム」
俺は名前を呼ぶ。正面に座っていたレームが俺の膝の上に移動してくる。
太ももには暖かな体温と柔らかな感触が、心地いい重みとともにやってきた。
声のニュアンスで察しているのだろう、俺が彼女を求めていることを。
レームの存在感のある大きなおっぱいが顔の前でふるふる揺れている。
俺はそれに顔をうずめた。勿論服は着ている。だがその柔らかさはとろけるようだった。
甘く、柔らかな香りが鼻孔から脳を犯してくる。
どれだけ膨大な知識を持てど、その全てはこれだけで消え失せてしまう。
レームは顔をうずめる俺を、そのままの状態で抱きしめる。
顔は見えないが恐らくはうっとりとした表情で。
別にこのように創ったわけじゃなかった。
そもそも性格はいじれない。だがレームは母性のようなものが強い。
俺の方が主人だというのに、レームといると立場が逆転してしまうときがある。
まさにこういう状況だ。
なんでかは分からないが、心が解かされるように甘えてしまう。
「甘えん坊さんですね、イチカには見せられないくらい♡」
「う、確かに」
俺の癒しが。
「もしかすると、これが最後の二人きりの状態かもしれませんね……」
顔を上げてレームを見ると、その表情は少し寂しそうではある。
それでもイチカはレームが望んだ存在だ。
結婚の経験はないが、子供ができた時はこんな気持ちにもなるのだろうか、と感じる。
愛する妻を独占できなくなるのだから。
レームは腰を俺の股間に押し付ける。
すでに臨戦態勢に入っており、こすりつけられている彼女の股間にもシミが見える。
俺は服を脱ぐ。この服は一張羅であるため汚れてほしくはない。それに何より今から買い物に行くのだ。その時に体液まみれというのはあまりにもみっともない。
室内をあまり汚せないので、レームには口でしてもらうことにした。
本当ならば買い物を中断して、車を止めてでもレームと愛し合いたいが、城にはいまだ服のないイチカがいる。それを放置するわけにもいかないので、ここは我慢だ。
「ごひゅじんしゃま♡ ろうぞ♡」
レームは口を開いたまま、座っている俺の足元に座り込みそういった。
ご主人様、どうぞと言いたいのだろうが、口を開いたままだと正確な発音ができない。
口内では真っ赤な舌がれろれろと動き、透明なよだれが光に反射して、淫靡に見える。
そんな姿を見せられて我慢できるほど俺は我慢強くない。
ぽっかりと開いたレームの口に、はちきれんばかりのチンポを近づける。
レームはその先端を舌先で優しく舐める。もどかしいような、そんな鋭い快感に俺は身を任せた。
全体を優しくなぞるように、レームの舌が這いまわる。
暖かく、ザラザラとした刺激に思わず腰が浮く。
レームはうっとりとした表情で続ける。
レームの技術は単純な経験からくるものだ。如何に万能の錬金術師と言えど、流石にそこまではホムンクルスに反映できない。幾度となく俺の性欲を受け止めてくれているレームだからこその技術だ。
俺のチンポが半分ほどレームの口の中に引きずり込まれる。
口をすぼめ、ぴっちりと吸い付く。唾液のぬるぬるした感触と、舌のザラザラ感。
それに口の上のコリコリとした感触が相まって、全体が刺激される。
「う、うう、レーム、レーム」
思わず名前を呼んでしまう。それには意味は込められていない。
頭を上下し俺を気持ちよくしてくれているレームを見て、思わず口にしただけだ。
だがレームはそう思わなかったようで、目にハートでも浮かべているような顔で、より一層激しく刺激する。
「も、もう出てしまう。ぐ、う!」
びゅるる、びゅるる!
いつものように頭を押さえ、最後の一滴までレームの口内で射精する。
レームは鼻息を荒くしながら、ごくごくと俺の精液を飲んでいた。
何度でも出したくなるような表情に、欲情してしまう。
だが一回出した分多少冷静になり、この後買い物に行くのだと思い出す。
「このまま続きをしたい……が、この後は買い物があるから、そのあと相手をしてくれるか?」
帰りの車の中では遠慮はいらない。俺がそうであるように、レームも明らかに発情している。
そしてレームにその質問は必要なかったようだ。
街に着く前に車を降りて、それを隠す。
この技術は隠匿すべきだ。というよりは俺の技術、知識は世界にあるべきではない。
錬金術師の苦悩を解消してやりたい気持ちもあるのだが、やはり危険だと判断する。
知識は力だ。正しい資質を持たないものが知るべきではない。
俺がそれを持っているかはわからないが、少なくとも乱用しようとは思っていない。
今の俺にかなう存在はいない。
かつて滅ぼされた『魔王』も、今の俺からすればその辺の雑兵と大差ない。
古代に滅びた凶悪な魔法、『古代禁呪』も知っているし、使用もできる。
『古代禁呪』とは天体や世界に干渉するような魔法だ。まさに神の領域と言えるもので、それを使える人間は古代でもそうそういなかったようだ。そしてそれを恐れた人間たちが使用できる人間を滅ぼしたのだという。案外『魔王』という存在のルーツなのかもしれない。
魔術師ならば誰でも使えるような魔法でも、『賢者の石』で出力を上げるだけで、世界を滅ぼしかねない力を持たせることもできる。
本職でない俺でさえこのレベルなのだ。悪意を持つ者の手に渡るだけでどうなるかは誰でも想像がつくだろう。
それに不老不死、そしてエリクサーも『死の概念』を根底から覆してしまう。
だから俺は公表しない。そういう存在に憧れてはいたものの、いざそうなると危険だということを自覚してしまった。
街に入ると、俺たちは通行人の目を引いた。
正確に言うと、俺ではなく隣のレームが目を引いたのだが。
レームは美人だ。それは言うまでもないことだが、先ほどの行為のせいで、余計に色気を振りまいているような状態になっている。
男たちは一様に熱い視線を投げかけ、一言も発しない。
中には中腰のような体勢で勃起を隠しているものさえいる。
レームは自身の体が男を惑わすなど考えていないのだろう。隣にいる俺でさえ時折その胸に目が行くというのに。
(何見てるんだ! レームは俺の女だぞ)
と思ったが当の本人はその視線など気にもしていないようだった。
他の男に目移りしていないことに安心と優越感を覚える。
レームは生まれて初めて見る街の景色に夢中だった。
考えてみれば、城と菜園くらいしか彼女は見たことがないのだ。
俺の城は自給自足が成り立っている。
人と関わりたくないため、昔から自分で畑を耕し生活していたのだ。
肉が食べたいと思えば山を散策し、錬金術を用いた罠でとらえていた。
その生活は今も変わらない。
「ご主人様、あれはなんでしょう?」
レームは俺の袖を遠慮がちに引っ張り、一軒の店を指さす。
やはり不安なのだろう、街に入ってからはずっと袖を握っている。
ああ、可愛いな、と思い、それについては黙っていた。悪い気分ではない。
「ああ、あれは甘味処だな。行ってみるか?」
レームはぴんと来ていない。確かに城で口にすることはないものな、と思う。
自分も久しぶりに甘いものを食べたいと思ったので、レームを引っ張り店に入る。
店に入り、様々な果物がのったプレートと、アイスを頼む。
レームはきょろきょろと店内を見回していた。彼女からすればすべてが新鮮なのだろう。
かくいう俺もこういうところに入ったの初めてなのだが。
いつもは雑貨屋に寄るくらいだった。生活に必要なものを少々買い込むくらいで、何かを食べるという発想はなかった。なにせ一人で入るというのは苦行に他ならない。
ああ、これがデートなのか、と俺は今更にしてそう思った。
思わずにやけてしまう。まさか自分がそのようなことをすることになるとは思っていなかったのだ。
注文した果物とアイスを見て、レームは怪訝な表情を浮かべる。
恐らくは食べ物として認識していないのだ。なんとなく自分の生活に合わせていたことに罪悪感を覚える。
「食べてみろ。初めてだろうけど、おいしいぞ」
そういって、俺はアイスを口に入れる。問題ない、ということを示すには一番いい方法だからだ。
レームは恐る恐るアイスに口をつける。
突如表情が変わる。それは驚きと喜びが混じったもので、その後にこちらを見る。
「お、おいしいです! これは畑でも作れるんですか!?」
素っ頓狂な質問に、思わず笑ってしまう。
レームの中では食料は畑で取れるものなのだ。
「ははは、違うよ。これは作るものなんだ。料理だよ」
最近ではレームが料理を作ることも多いが、このような嗜好品は作っていない。
発想も材料もないのだから仕方ないのだが。
レームの幸せそうな表情を見て、思わず口元が緩む。
ああ、こういう人生を送りたかったんだな、俺は。
手に入らない幻想だと思ってバカにしていただけで、本当は憧れていたのだと今更になって気づいた。
俺は正面に座るレームを見ずに、そう呟いた。
簡単に言うなら怖いのだ。見ず知らずの他人は俺にとって恐怖の対象だった。
レームやイチカのようなホムンクルスは俺を奇異の目で見たりはしない。
だが人間は違う。
山奥にこもる前、俺は怪しい錬金術師として評価されていた。
この世界の花形は魔術師だ。優秀な魔術師は英雄のように扱われるが、錬金術師はそうではない。
はっきり言って地味、それは否定できない。
錬金術がもたらした恩恵は市民にも還元されているが、あまりにも身近すぎてすごさは伝わらないのだ。
一般的に使われている電灯も、アクセサリーを作る時の彫金技術も、はたまた日常で使うような刃物の鍛冶技術も、すべて錬金術の恩恵なのだが、市民にはあまり関係がなかった。
外で派手な魔法を放ち、敵を撃滅する魔術師とは違い、錬金術師は研究室にこもり研究をするのがメインの仕事だ。
ましてや『賢者の石』に代表される錬金術の奇跡をなした人物はいない。
人造人間ホムンクルスも、エリクサーも、それどころか金を創ることさえ誰も実現していないのだ。
それゆえに世間的には何もしていない連中、といった評価を受けているのだ。
そして、俺もそう評価される人物の一人だ。
今俺たちが乗っているのは馬車ではなく、俺が作った自動で動く四輪車である。
馬車の荷台部分だけが走っているような見た目だ。ちなみに、装飾は地味なものだ。目立つことを避けたかった。
目的地まで基本的にノンストップで走行する。動力は賢者の石を簡易にしたようなものである。
どんなに荒れた路面であっても、殆ど揺れなく走行することができる。
錬金術を用いた高度なサスペンションを搭載しており、この仕組みを販売するだけでも世界は一変するだろう。
「たまには外出もしませんと。お体を悪くしますよ」
そんなことはあり得ないと知っているが、レームは微笑みながら俺に言った。
「不老不死なんだぞ。病気にもならんさ」
「お心の問題です。城ばかりにいては元気をなくしてしまいますよ」
「……それもお前がいるから問題ない」
レームはそれを聞き顔を真っ赤にして、はにかむようにこちらを見ている。
俺も赤い顔をしていただろう。それでも思わず言ってしまった。
「……嬉しいです♡ ご主人様にこんなに愛していただけるなんて♡」
「……レーム」
俺は名前を呼ぶ。正面に座っていたレームが俺の膝の上に移動してくる。
太ももには暖かな体温と柔らかな感触が、心地いい重みとともにやってきた。
声のニュアンスで察しているのだろう、俺が彼女を求めていることを。
レームの存在感のある大きなおっぱいが顔の前でふるふる揺れている。
俺はそれに顔をうずめた。勿論服は着ている。だがその柔らかさはとろけるようだった。
甘く、柔らかな香りが鼻孔から脳を犯してくる。
どれだけ膨大な知識を持てど、その全てはこれだけで消え失せてしまう。
レームは顔をうずめる俺を、そのままの状態で抱きしめる。
顔は見えないが恐らくはうっとりとした表情で。
別にこのように創ったわけじゃなかった。
そもそも性格はいじれない。だがレームは母性のようなものが強い。
俺の方が主人だというのに、レームといると立場が逆転してしまうときがある。
まさにこういう状況だ。
なんでかは分からないが、心が解かされるように甘えてしまう。
「甘えん坊さんですね、イチカには見せられないくらい♡」
「う、確かに」
俺の癒しが。
「もしかすると、これが最後の二人きりの状態かもしれませんね……」
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それでもイチカはレームが望んだ存在だ。
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レームは腰を俺の股間に押し付ける。
すでに臨戦態勢に入っており、こすりつけられている彼女の股間にもシミが見える。
俺は服を脱ぐ。この服は一張羅であるため汚れてほしくはない。それに何より今から買い物に行くのだ。その時に体液まみれというのはあまりにもみっともない。
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本当ならば買い物を中断して、車を止めてでもレームと愛し合いたいが、城にはいまだ服のないイチカがいる。それを放置するわけにもいかないので、ここは我慢だ。
「ごひゅじんしゃま♡ ろうぞ♡」
レームは口を開いたまま、座っている俺の足元に座り込みそういった。
ご主人様、どうぞと言いたいのだろうが、口を開いたままだと正確な発音ができない。
口内では真っ赤な舌がれろれろと動き、透明なよだれが光に反射して、淫靡に見える。
そんな姿を見せられて我慢できるほど俺は我慢強くない。
ぽっかりと開いたレームの口に、はちきれんばかりのチンポを近づける。
レームはその先端を舌先で優しく舐める。もどかしいような、そんな鋭い快感に俺は身を任せた。
全体を優しくなぞるように、レームの舌が這いまわる。
暖かく、ザラザラとした刺激に思わず腰が浮く。
レームはうっとりとした表情で続ける。
レームの技術は単純な経験からくるものだ。如何に万能の錬金術師と言えど、流石にそこまではホムンクルスに反映できない。幾度となく俺の性欲を受け止めてくれているレームだからこその技術だ。
俺のチンポが半分ほどレームの口の中に引きずり込まれる。
口をすぼめ、ぴっちりと吸い付く。唾液のぬるぬるした感触と、舌のザラザラ感。
それに口の上のコリコリとした感触が相まって、全体が刺激される。
「う、うう、レーム、レーム」
思わず名前を呼んでしまう。それには意味は込められていない。
頭を上下し俺を気持ちよくしてくれているレームを見て、思わず口にしただけだ。
だがレームはそう思わなかったようで、目にハートでも浮かべているような顔で、より一層激しく刺激する。
「も、もう出てしまう。ぐ、う!」
びゅるる、びゅるる!
いつものように頭を押さえ、最後の一滴までレームの口内で射精する。
レームは鼻息を荒くしながら、ごくごくと俺の精液を飲んでいた。
何度でも出したくなるような表情に、欲情してしまう。
だが一回出した分多少冷静になり、この後買い物に行くのだと思い出す。
「このまま続きをしたい……が、この後は買い物があるから、そのあと相手をしてくれるか?」
帰りの車の中では遠慮はいらない。俺がそうであるように、レームも明らかに発情している。
そしてレームにその質問は必要なかったようだ。
街に着く前に車を降りて、それを隠す。
この技術は隠匿すべきだ。というよりは俺の技術、知識は世界にあるべきではない。
錬金術師の苦悩を解消してやりたい気持ちもあるのだが、やはり危険だと判断する。
知識は力だ。正しい資質を持たないものが知るべきではない。
俺がそれを持っているかはわからないが、少なくとも乱用しようとは思っていない。
今の俺にかなう存在はいない。
かつて滅ぼされた『魔王』も、今の俺からすればその辺の雑兵と大差ない。
古代に滅びた凶悪な魔法、『古代禁呪』も知っているし、使用もできる。
『古代禁呪』とは天体や世界に干渉するような魔法だ。まさに神の領域と言えるもので、それを使える人間は古代でもそうそういなかったようだ。そしてそれを恐れた人間たちが使用できる人間を滅ぼしたのだという。案外『魔王』という存在のルーツなのかもしれない。
魔術師ならば誰でも使えるような魔法でも、『賢者の石』で出力を上げるだけで、世界を滅ぼしかねない力を持たせることもできる。
本職でない俺でさえこのレベルなのだ。悪意を持つ者の手に渡るだけでどうなるかは誰でも想像がつくだろう。
それに不老不死、そしてエリクサーも『死の概念』を根底から覆してしまう。
だから俺は公表しない。そういう存在に憧れてはいたものの、いざそうなると危険だということを自覚してしまった。
街に入ると、俺たちは通行人の目を引いた。
正確に言うと、俺ではなく隣のレームが目を引いたのだが。
レームは美人だ。それは言うまでもないことだが、先ほどの行為のせいで、余計に色気を振りまいているような状態になっている。
男たちは一様に熱い視線を投げかけ、一言も発しない。
中には中腰のような体勢で勃起を隠しているものさえいる。
レームは自身の体が男を惑わすなど考えていないのだろう。隣にいる俺でさえ時折その胸に目が行くというのに。
(何見てるんだ! レームは俺の女だぞ)
と思ったが当の本人はその視線など気にもしていないようだった。
他の男に目移りしていないことに安心と優越感を覚える。
レームは生まれて初めて見る街の景色に夢中だった。
考えてみれば、城と菜園くらいしか彼女は見たことがないのだ。
俺の城は自給自足が成り立っている。
人と関わりたくないため、昔から自分で畑を耕し生活していたのだ。
肉が食べたいと思えば山を散策し、錬金術を用いた罠でとらえていた。
その生活は今も変わらない。
「ご主人様、あれはなんでしょう?」
レームは俺の袖を遠慮がちに引っ張り、一軒の店を指さす。
やはり不安なのだろう、街に入ってからはずっと袖を握っている。
ああ、可愛いな、と思い、それについては黙っていた。悪い気分ではない。
「ああ、あれは甘味処だな。行ってみるか?」
レームはぴんと来ていない。確かに城で口にすることはないものな、と思う。
自分も久しぶりに甘いものを食べたいと思ったので、レームを引っ張り店に入る。
店に入り、様々な果物がのったプレートと、アイスを頼む。
レームはきょろきょろと店内を見回していた。彼女からすればすべてが新鮮なのだろう。
かくいう俺もこういうところに入ったの初めてなのだが。
いつもは雑貨屋に寄るくらいだった。生活に必要なものを少々買い込むくらいで、何かを食べるという発想はなかった。なにせ一人で入るというのは苦行に他ならない。
ああ、これがデートなのか、と俺は今更にしてそう思った。
思わずにやけてしまう。まさか自分がそのようなことをすることになるとは思っていなかったのだ。
注文した果物とアイスを見て、レームは怪訝な表情を浮かべる。
恐らくは食べ物として認識していないのだ。なんとなく自分の生活に合わせていたことに罪悪感を覚える。
「食べてみろ。初めてだろうけど、おいしいぞ」
そういって、俺はアイスを口に入れる。問題ない、ということを示すには一番いい方法だからだ。
レームは恐る恐るアイスに口をつける。
突如表情が変わる。それは驚きと喜びが混じったもので、その後にこちらを見る。
「お、おいしいです! これは畑でも作れるんですか!?」
素っ頓狂な質問に、思わず笑ってしまう。
レームの中では食料は畑で取れるものなのだ。
「ははは、違うよ。これは作るものなんだ。料理だよ」
最近ではレームが料理を作ることも多いが、このような嗜好品は作っていない。
発想も材料もないのだから仕方ないのだが。
レームの幸せそうな表情を見て、思わず口元が緩む。
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