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本編
リチャード様の失恋
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マリアンヌ様がフィリップ様の正式な「婚約者候補」なって変わったことといえば、リチャード様をランチの席で見かけることが少なくなったことかしら?
「マリアンヌ、次の夜会では私の相手として出席してくれるか?」
「私で、いいのですか?私、ダンスもまだよく踊れないし…」
「そんなものは私が手取り足とり教えてあげるから、何も心配しなくて大丈夫だ」
「はい」
夜会の相手は大抵婚約者候補に一人ずつ巡ってくるのだけれど、1年前にお相手を務めたわたくしの次が、最も新しい婚約者候補であるマリアンヌ様になったことは予想していた通りですけれど、やはりこの出来事がリチャード様にはかなりこたえたようですわ。
食事の間中、張り付いたような笑顔を浮かべてらっしゃったけれど、
「おめでとう、マリアンヌ。フィリップ様」
とおっしゃった他は始終無言でしたわ。
わたくしが同じ立場でも、笑顔と相槌で精一杯でしょうね。
リチャード様に続いて、アリステア様とサロモン様がお祝いの言葉を述べ、わたくしの番になりましたわ。
「マリアンヌ様、おめでとうございます」
わたくしが、お祝いの言葉を述べると、続いて、エルメリア様とリーシア様も同じ言葉をかけられましたわ。
わたくしたちの祝福の言葉に勝ち誇ったように微笑んだだけで、返礼を返したのは、
「ありがとう、レティシア、君がマリアンヌを認めてくれて嬉しいよ」
という嬉しそうなフィリップ様のお言葉でしたけれど。
それから、たまにチャード様はランチに顔を出されましたけれど、あまりマリアンヌ様とフィリップ様の周りにいるのを見かけることはなくなりましたわ。
******
リチャード様を次にわたくしがお見かけしたのは、週末にたまにボランティアで出かけている孤児院に向かう町の中でしたの。
「まあ、リチャード様?こんなところで偶然ですわね?」
「これは、ブラッドストーン公爵令嬢、あなたこそこんなところで何をしているんですか?」
「わたくしは、これを孤児院に届けるところですの」
実家から寮に送られてくる食料品はわたくし一人で食べきれる量ではなく、余った分を孤児院に寄付してはどうかというサラスの提案に従って、毎月2回ほど孤児院に食料を届けに行くことにしているんですの。
「お嬢様、急がないと約束の時間に遅れてしまいますよ?」
荷物運びの男とサラスがわたくしの後ろについていたのだけれど、リチャード様と話しているうちに抜かれてしまったようですわ。
「ええ、今行きます。それでは、リチャード様、先を急いでいますので、御機嫌よう」
「町の中で歩き回るのは危ない。僕もお供しましょう」
と騎士道精神を発揮したリチャード様も一緒に孤児院に行くことになったのですけれど、そこで、彼の子供好きなところや意外と面白い面を見てびっくりいたしました。
孤児院の子供達にすっかり懐かれて、また今度も一緒に来ることを約束させられてしまったのですけれどね。
わたくしは、食料を届けた後は、本を読み聞かせたりしてあげるだけで、男の子たちが好きな激しい遊びはできなかったから、リチャード様は子供達の大人気でしたわ。
マリアンヌ様とフィリップ様の件以来、リチャード様の笑顔を見ることがなかったものですから、わたくしも嬉しくなりました。
「今日は、わたくしの所用にお付き合いくださって、ありがとうございます」
「ブラッドストーン公爵令嬢、僕も久しぶりに楽しかった。やはり子供といると心が洗われる。それにあなたの意外な一面も知ることができた。僕は、あなたを誤解していたようだ」
「えっ?」
「これからはアリステアやフィリップ様のようにレティシアとお呼びしてもいいですか?」
「わたくしがリチャード様とお呼びしているのに名前で呼んでいただける方が嬉しいですわ」
わたくしの言葉にリチャード様が頷かれた。
「偶然、あなたに会えてよかった。最近、マリアンヌはどうしていますか?」
「相変わらずお元気そうですわ。いつも通り」
「そう。良かった」
そういって微笑まれた赤い瞳。わたくしの胸が痛むぐらい切ない微笑みでしたけれど…
「レティシアは、強いですね」
「えっ、わたくしが?」
「フィリップ様の新しい婚約者候補が増えても平然としている」
わたくしが平然としているのはわたくしの心がアリステア様に向いているからで、フィリップ様とマリアンヌ様がくっつくのは大歓迎なんですけれどね。
「選択権はあくまでフィリップ様にありますから。わたくしは王家を支える貴族としてフィリップ様の幸せを祝福するのみですわ」
「そうだね。僕もそう思うからこそ、マリアンヌと距離を置くことにした」
わたくしたちの間に沈黙が流れる。
「また、一緒に孤児院に行ってもいいかな?」
「ええ。子供達と約束もしましたし、リチャード様と一緒なら町中も安全ですし、喜んで」
こうしてわたくしとリチャード様は一緒に孤児院を訪れることになりましたの。
まさかこれがリーチャード様との出来事の発端になるなんて思ってもいなかったのですけれどね。
「マリアンヌ、次の夜会では私の相手として出席してくれるか?」
「私で、いいのですか?私、ダンスもまだよく踊れないし…」
「そんなものは私が手取り足とり教えてあげるから、何も心配しなくて大丈夫だ」
「はい」
夜会の相手は大抵婚約者候補に一人ずつ巡ってくるのだけれど、1年前にお相手を務めたわたくしの次が、最も新しい婚約者候補であるマリアンヌ様になったことは予想していた通りですけれど、やはりこの出来事がリチャード様にはかなりこたえたようですわ。
食事の間中、張り付いたような笑顔を浮かべてらっしゃったけれど、
「おめでとう、マリアンヌ。フィリップ様」
とおっしゃった他は始終無言でしたわ。
わたくしが同じ立場でも、笑顔と相槌で精一杯でしょうね。
リチャード様に続いて、アリステア様とサロモン様がお祝いの言葉を述べ、わたくしの番になりましたわ。
「マリアンヌ様、おめでとうございます」
わたくしが、お祝いの言葉を述べると、続いて、エルメリア様とリーシア様も同じ言葉をかけられましたわ。
わたくしたちの祝福の言葉に勝ち誇ったように微笑んだだけで、返礼を返したのは、
「ありがとう、レティシア、君がマリアンヌを認めてくれて嬉しいよ」
という嬉しそうなフィリップ様のお言葉でしたけれど。
それから、たまにチャード様はランチに顔を出されましたけれど、あまりマリアンヌ様とフィリップ様の周りにいるのを見かけることはなくなりましたわ。
******
リチャード様を次にわたくしがお見かけしたのは、週末にたまにボランティアで出かけている孤児院に向かう町の中でしたの。
「まあ、リチャード様?こんなところで偶然ですわね?」
「これは、ブラッドストーン公爵令嬢、あなたこそこんなところで何をしているんですか?」
「わたくしは、これを孤児院に届けるところですの」
実家から寮に送られてくる食料品はわたくし一人で食べきれる量ではなく、余った分を孤児院に寄付してはどうかというサラスの提案に従って、毎月2回ほど孤児院に食料を届けに行くことにしているんですの。
「お嬢様、急がないと約束の時間に遅れてしまいますよ?」
荷物運びの男とサラスがわたくしの後ろについていたのだけれど、リチャード様と話しているうちに抜かれてしまったようですわ。
「ええ、今行きます。それでは、リチャード様、先を急いでいますので、御機嫌よう」
「町の中で歩き回るのは危ない。僕もお供しましょう」
と騎士道精神を発揮したリチャード様も一緒に孤児院に行くことになったのですけれど、そこで、彼の子供好きなところや意外と面白い面を見てびっくりいたしました。
孤児院の子供達にすっかり懐かれて、また今度も一緒に来ることを約束させられてしまったのですけれどね。
わたくしは、食料を届けた後は、本を読み聞かせたりしてあげるだけで、男の子たちが好きな激しい遊びはできなかったから、リチャード様は子供達の大人気でしたわ。
マリアンヌ様とフィリップ様の件以来、リチャード様の笑顔を見ることがなかったものですから、わたくしも嬉しくなりました。
「今日は、わたくしの所用にお付き合いくださって、ありがとうございます」
「ブラッドストーン公爵令嬢、僕も久しぶりに楽しかった。やはり子供といると心が洗われる。それにあなたの意外な一面も知ることができた。僕は、あなたを誤解していたようだ」
「えっ?」
「これからはアリステアやフィリップ様のようにレティシアとお呼びしてもいいですか?」
「わたくしがリチャード様とお呼びしているのに名前で呼んでいただける方が嬉しいですわ」
わたくしの言葉にリチャード様が頷かれた。
「偶然、あなたに会えてよかった。最近、マリアンヌはどうしていますか?」
「相変わらずお元気そうですわ。いつも通り」
「そう。良かった」
そういって微笑まれた赤い瞳。わたくしの胸が痛むぐらい切ない微笑みでしたけれど…
「レティシアは、強いですね」
「えっ、わたくしが?」
「フィリップ様の新しい婚約者候補が増えても平然としている」
わたくしが平然としているのはわたくしの心がアリステア様に向いているからで、フィリップ様とマリアンヌ様がくっつくのは大歓迎なんですけれどね。
「選択権はあくまでフィリップ様にありますから。わたくしは王家を支える貴族としてフィリップ様の幸せを祝福するのみですわ」
「そうだね。僕もそう思うからこそ、マリアンヌと距離を置くことにした」
わたくしたちの間に沈黙が流れる。
「また、一緒に孤児院に行ってもいいかな?」
「ええ。子供達と約束もしましたし、リチャード様と一緒なら町中も安全ですし、喜んで」
こうしてわたくしとリチャード様は一緒に孤児院を訪れることになりましたの。
まさかこれがリーチャード様との出来事の発端になるなんて思ってもいなかったのですけれどね。
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