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本編
レティシア婚活開始!(中)
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お父様の元に伝令を送って、久しぶりに公爵家に帰宅したら、予想通り、お父様だけでなく、お兄様もいらっしゃいましたわ。
「レティシア~大変だったね~!」
「お兄様…」
お父様に挨拶する前にお兄様が涙目で抱きついてきた。あいかわらず空色の髪はサラサラで女顔負けの美形だわ。
「わっ、わたくしは大丈夫ですわ。マリアンヌ様とフィリップ様のご婚約を心から歓迎しておりますのよ?」
わたくしの言葉にお兄様の後ろでお父様が腕を組んでうなずいておられる。
「ブラッドストーン家と王家の約束を守ろうというお前の姿勢を尊敬するぞ。こんなに心も姿も美しいレティシアを振るなんて殿下もどうかしておられる。そう思いますよね?父上?」
「うむ。とりあえず、食事でも取りながら、ゆっくり話をしよう」
涙目の空色のお兄様の瞳を見つめるお父様の緑の瞳は少し冷たい。
「ありがとうございます。お兄様、お父様」
ブラッドストーン公爵家は王家の婚約者候補になるだけあって、お屋敷も王族のちょっとした避暑地という風の豪華で馬鹿でかいサイズのものが領地と王都に2つある。
王都の方は少し小さめですけれど、領地の方はお城と見間違うほどの規模ですわ。
お兄様は優しげにわたくしを見つめて、隣の席に着かれましたわ。
わたくしはお父様と向かい合うようにして座る。
給仕の者が次々に前菜のサラダやスープを運んでくる。
「この度は大変だったな。レティシア。生まれた時から殿下の婚約者候補として努力してきたのに」
お父様がわたくしに労いの言葉をかけてくださった。
「お父様、わたくし、殿下のことは尊敬しておりましたが、お慕いしていたわけではありませんの」
「そっ、そうなのか?」
「わたくしの気持ちというより、殿下のお気持ちが優先されますから、わたくし何も言いませんでしたけれど」
「誰か好きな人が他にいるんだよね?」
わたくしの気持ちに薄々気がついているお兄様が助け舟を出してくれる。この間の夜会のわたくしの様子を見て、何かを悟ってくれたみたい。
「ええ。今日は、その事でお父様にご相談しようと思って参りましたの」
「ほお、その相手は誰だい?」
「アリステア・シャルトル様ですわ。初めてお会いした時から、わたくしの心はあの方のものです」
一瞬部屋の中が静かになったけれど、
「あの方は王位継承権第2位の方だったな」
「ええ、父上。当家と王家の約束実行にもふさわしい相手かと」
「うむ」
「アリステア様はとてもお優しい方で、わたくしあの方のもとに嫁ぎたいと思っていますわ」
「当家としては異存はないが?」
「お父様もご存知の通りたまに遠乗りに出かけたりして、親しくしていただいていたんですけれど、リチャード様の件から連絡が取れませんの」
「それは、問題だな」
「ええ。誤解を説明しようにも顔を合わすこともなくて」
「シャルトル家は領地のゴタゴタで、今当主が家を空けているから、その代わりに色々代行で忙しいのもあるのでしょうね」
たまにお父様のお仕事の代行をしているお兄様がいう。
「そうなんですの?」
「ああ」
「一旦、事が落ち着いたらこちらの方から打診してみよう」
「お父様!それはっ!」
「別に家から婚姻を提案しても問題あるまい?シャルトル家の領地が有する鉱物や金は我が家にとっても魅力的だし。我が領地が持つ魔法石やオリハルコンは向こうにとっても手が出るほど欲しいだろう?幸い領地も隣り合わせのため仕事もやりやすくなる。あの家の男なら浮気をする事もない。安心してお前を任せられる。シャルトル家との婚姻が決まれはけしからん噂も消えるだろう」
あとでわかったのですけれど、「けしからん噂」とはわたくしが他国の王族や貴族を手玉の取っている悪女の為、男爵令嬢のマリアンヌが王太子の婚約者として指名されたのだという噂が社交界で流れていることですの。
わたくしは近頃あまり夜会に顔を出さなかったからわからなかったのですけれど。
お父様はこうと決めたら実行の人だ。なのでわたくしはこれ以上反論する事なく、運ばれてきた魚のムニエルを食することにしましたわ。
「そうと決まったら、することはたくさんあるぞ、レティシア」
食事を終えて、ほっこりしていたわたくしに渡されたのは「アリステア様と婚姻を結ぶ為にするべきこと」が綴られたリストでしたわ。
わたくしはそれを見て、真っ赤になって卒倒しそうになったのですけれど…。
「レティシア~大変だったね~!」
「お兄様…」
お父様に挨拶する前にお兄様が涙目で抱きついてきた。あいかわらず空色の髪はサラサラで女顔負けの美形だわ。
「わっ、わたくしは大丈夫ですわ。マリアンヌ様とフィリップ様のご婚約を心から歓迎しておりますのよ?」
わたくしの言葉にお兄様の後ろでお父様が腕を組んでうなずいておられる。
「ブラッドストーン家と王家の約束を守ろうというお前の姿勢を尊敬するぞ。こんなに心も姿も美しいレティシアを振るなんて殿下もどうかしておられる。そう思いますよね?父上?」
「うむ。とりあえず、食事でも取りながら、ゆっくり話をしよう」
涙目の空色のお兄様の瞳を見つめるお父様の緑の瞳は少し冷たい。
「ありがとうございます。お兄様、お父様」
ブラッドストーン公爵家は王家の婚約者候補になるだけあって、お屋敷も王族のちょっとした避暑地という風の豪華で馬鹿でかいサイズのものが領地と王都に2つある。
王都の方は少し小さめですけれど、領地の方はお城と見間違うほどの規模ですわ。
お兄様は優しげにわたくしを見つめて、隣の席に着かれましたわ。
わたくしはお父様と向かい合うようにして座る。
給仕の者が次々に前菜のサラダやスープを運んでくる。
「この度は大変だったな。レティシア。生まれた時から殿下の婚約者候補として努力してきたのに」
お父様がわたくしに労いの言葉をかけてくださった。
「お父様、わたくし、殿下のことは尊敬しておりましたが、お慕いしていたわけではありませんの」
「そっ、そうなのか?」
「わたくしの気持ちというより、殿下のお気持ちが優先されますから、わたくし何も言いませんでしたけれど」
「誰か好きな人が他にいるんだよね?」
わたくしの気持ちに薄々気がついているお兄様が助け舟を出してくれる。この間の夜会のわたくしの様子を見て、何かを悟ってくれたみたい。
「ええ。今日は、その事でお父様にご相談しようと思って参りましたの」
「ほお、その相手は誰だい?」
「アリステア・シャルトル様ですわ。初めてお会いした時から、わたくしの心はあの方のものです」
一瞬部屋の中が静かになったけれど、
「あの方は王位継承権第2位の方だったな」
「ええ、父上。当家と王家の約束実行にもふさわしい相手かと」
「うむ」
「アリステア様はとてもお優しい方で、わたくしあの方のもとに嫁ぎたいと思っていますわ」
「当家としては異存はないが?」
「お父様もご存知の通りたまに遠乗りに出かけたりして、親しくしていただいていたんですけれど、リチャード様の件から連絡が取れませんの」
「それは、問題だな」
「ええ。誤解を説明しようにも顔を合わすこともなくて」
「シャルトル家は領地のゴタゴタで、今当主が家を空けているから、その代わりに色々代行で忙しいのもあるのでしょうね」
たまにお父様のお仕事の代行をしているお兄様がいう。
「そうなんですの?」
「ああ」
「一旦、事が落ち着いたらこちらの方から打診してみよう」
「お父様!それはっ!」
「別に家から婚姻を提案しても問題あるまい?シャルトル家の領地が有する鉱物や金は我が家にとっても魅力的だし。我が領地が持つ魔法石やオリハルコンは向こうにとっても手が出るほど欲しいだろう?幸い領地も隣り合わせのため仕事もやりやすくなる。あの家の男なら浮気をする事もない。安心してお前を任せられる。シャルトル家との婚姻が決まれはけしからん噂も消えるだろう」
あとでわかったのですけれど、「けしからん噂」とはわたくしが他国の王族や貴族を手玉の取っている悪女の為、男爵令嬢のマリアンヌが王太子の婚約者として指名されたのだという噂が社交界で流れていることですの。
わたくしは近頃あまり夜会に顔を出さなかったからわからなかったのですけれど。
お父様はこうと決めたら実行の人だ。なのでわたくしはこれ以上反論する事なく、運ばれてきた魚のムニエルを食することにしましたわ。
「そうと決まったら、することはたくさんあるぞ、レティシア」
食事を終えて、ほっこりしていたわたくしに渡されたのは「アリステア様と婚姻を結ぶ為にするべきこと」が綴られたリストでしたわ。
わたくしはそれを見て、真っ赤になって卒倒しそうになったのですけれど…。
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