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49話 学園祭最終日
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学園祭三日目。
学園祭はそもそも三日間開催されるので今日が最終日となる。
ちなみにこのクラスの出し物での「指揮」という役割はほとんど雑務雑用だったため、別に僕やユナがやる必要はないような気もしたが……。
でも、それでもこのイベントを成功させようと一丸となってやっていたわけだし雑務や雑用でも障害物を取り除いて円滑に作業を進められたという点ではある程度手慣れた人がやったことが良かったのかもしれない。
出し物には沢山の人が来てくれて、一日二百人くらいペースで来たと入店担当の人が言っていた。
主に本を読みに、もしくは買いに来た人がその中でも割合は高かったものの、案外なことに待ち合わせ場所の代わりにとか、待ち時間を有効に使うためとかそういった理由で来店してくれている人も居た。
三日目も繁盛することが予想されるが、翌日から学校はセリーナ感謝祭で二週間ほどのお休みに入るので早めの閉店をして片付けをしなければならない。
片づけと言えば雑務雑用のトップとも言える仕事である。つまり、僕とユナは午前中は自由に遊び、午後は割と大変なスケジュールである。
というわけで、一日目二日目には人が多かったりして入りづらい演劇の出し物に入っていった。
本日一回目の上演で真っ先に入っていったので先頭の席を取ることができた。
「人に恋をした妖精、上演いたします」
証明が暗くなり、スポットライトが壇上に当てられる。ザワザワとしていた観客席も今はとても静かだ。
「おい、あそこに魔物がいるぞ!」
「大変だ、誰か襲われている!」
二人の男性が魔物の方へ走っていく。魔物は、ドンドン、と音を立てて恐怖を煽っているようだった。
一人の男性が魔物に攻撃すると、その刃が跳ね返され魔物は男性たちの方へ向いた。
「かかってこい!」
男性はそう言うと、魔物を切りつけようとするが、その硬い牙に阻まれてしまう。
魔物が剣を払おうと首を振ると、彼も少し後ろに飛び退く。
「くそ、こいつ硬すぎる!攻撃が全然当たらない」
もうひとりの男性が剣を抜こうとするが、それは魔物と対峙している男性に阻まれた。
「無駄に犠牲者を出したくない!お前はこいつに勝てない」
「でも!」
「逃げろ!お前には家族だっているだろう?ここは俺がなんとかする」
「でも!後ろに!」
魔物はその間にも男性に忍び寄ってきたのだ。そして、男性に向かって噛み付いてこようとする。
男性はそれと同時に剣を刺した。
「さ、刺し違えた!」
男性の剣は魔物の口の中から頭の方を貫いていた。同時に、男性も右肩を鋭い牙で貫かれている。
男性はさらに切迫した声で言った。
「早く!逃げろ……!」
段々と声は弱々しくなっていく。壇上は暗くなり、そしてまたスポットライトが当てられた。
そこにいたのは、白い服に羽をはやした妖精。彼女は、目を瞑って両手を天にかかげる。
「どうか、勇敢な彼に救いをお恵みください。彼は、私を助けてくれたのです」
透き通った、美しい声。妖精にあたるスポットライトがどんどん光を増していく。
またしても暗くなり、今度は妖精が男性を見つめていた。
男性は目を覚ます。
「これは、一体……?」
「私はあなたの名前を知りません。ですけど、魔物に襲われている私を勇敢にも救っていただいて、ありがとうございます」
「よかった。無事だったんですね」
「あなたが助けてくださらなければ今頃……」
「いいんだ。君のような美しい人が命を落としてしまうくらいなら、僕の命のほうが何倍も安い。あと、名前はミシュタル」
「勇敢なるミシュタル様。私にはなんと言ったらいいのか分かりません。ですが、私はあなたに惹かれてしまったようなのです」
妖精は、男性の手を優しく両手で握った。
「そうしてこの妖精は男性と共に過ごすことを決意しました。そして、彼女たちは末永く幸せに暮らしたのでした」
と物語は締めくくられる。
「なんというか、凄かったね。私、壇上に目を奪われちゃったみたいに見入っちゃった」
「すごい演技力だったね。目の前で本当に起きているみたいだった」
僕とユナは感想を言い合いながら会場を後にした。
そうして、僕たちは高揚した気分のままクラスへと戻っていった。
相変わらず繁盛している書店だったが、そろそろ閉店準備をしなければならないからだ。
学園祭はそもそも三日間開催されるので今日が最終日となる。
ちなみにこのクラスの出し物での「指揮」という役割はほとんど雑務雑用だったため、別に僕やユナがやる必要はないような気もしたが……。
でも、それでもこのイベントを成功させようと一丸となってやっていたわけだし雑務や雑用でも障害物を取り除いて円滑に作業を進められたという点ではある程度手慣れた人がやったことが良かったのかもしれない。
出し物には沢山の人が来てくれて、一日二百人くらいペースで来たと入店担当の人が言っていた。
主に本を読みに、もしくは買いに来た人がその中でも割合は高かったものの、案外なことに待ち合わせ場所の代わりにとか、待ち時間を有効に使うためとかそういった理由で来店してくれている人も居た。
三日目も繁盛することが予想されるが、翌日から学校はセリーナ感謝祭で二週間ほどのお休みに入るので早めの閉店をして片付けをしなければならない。
片づけと言えば雑務雑用のトップとも言える仕事である。つまり、僕とユナは午前中は自由に遊び、午後は割と大変なスケジュールである。
というわけで、一日目二日目には人が多かったりして入りづらい演劇の出し物に入っていった。
本日一回目の上演で真っ先に入っていったので先頭の席を取ることができた。
「人に恋をした妖精、上演いたします」
証明が暗くなり、スポットライトが壇上に当てられる。ザワザワとしていた観客席も今はとても静かだ。
「おい、あそこに魔物がいるぞ!」
「大変だ、誰か襲われている!」
二人の男性が魔物の方へ走っていく。魔物は、ドンドン、と音を立てて恐怖を煽っているようだった。
一人の男性が魔物に攻撃すると、その刃が跳ね返され魔物は男性たちの方へ向いた。
「かかってこい!」
男性はそう言うと、魔物を切りつけようとするが、その硬い牙に阻まれてしまう。
魔物が剣を払おうと首を振ると、彼も少し後ろに飛び退く。
「くそ、こいつ硬すぎる!攻撃が全然当たらない」
もうひとりの男性が剣を抜こうとするが、それは魔物と対峙している男性に阻まれた。
「無駄に犠牲者を出したくない!お前はこいつに勝てない」
「でも!」
「逃げろ!お前には家族だっているだろう?ここは俺がなんとかする」
「でも!後ろに!」
魔物はその間にも男性に忍び寄ってきたのだ。そして、男性に向かって噛み付いてこようとする。
男性はそれと同時に剣を刺した。
「さ、刺し違えた!」
男性の剣は魔物の口の中から頭の方を貫いていた。同時に、男性も右肩を鋭い牙で貫かれている。
男性はさらに切迫した声で言った。
「早く!逃げろ……!」
段々と声は弱々しくなっていく。壇上は暗くなり、そしてまたスポットライトが当てられた。
そこにいたのは、白い服に羽をはやした妖精。彼女は、目を瞑って両手を天にかかげる。
「どうか、勇敢な彼に救いをお恵みください。彼は、私を助けてくれたのです」
透き通った、美しい声。妖精にあたるスポットライトがどんどん光を増していく。
またしても暗くなり、今度は妖精が男性を見つめていた。
男性は目を覚ます。
「これは、一体……?」
「私はあなたの名前を知りません。ですけど、魔物に襲われている私を勇敢にも救っていただいて、ありがとうございます」
「よかった。無事だったんですね」
「あなたが助けてくださらなければ今頃……」
「いいんだ。君のような美しい人が命を落としてしまうくらいなら、僕の命のほうが何倍も安い。あと、名前はミシュタル」
「勇敢なるミシュタル様。私にはなんと言ったらいいのか分かりません。ですが、私はあなたに惹かれてしまったようなのです」
妖精は、男性の手を優しく両手で握った。
「そうしてこの妖精は男性と共に過ごすことを決意しました。そして、彼女たちは末永く幸せに暮らしたのでした」
と物語は締めくくられる。
「なんというか、凄かったね。私、壇上に目を奪われちゃったみたいに見入っちゃった」
「すごい演技力だったね。目の前で本当に起きているみたいだった」
僕とユナは感想を言い合いながら会場を後にした。
そうして、僕たちは高揚した気分のままクラスへと戻っていった。
相変わらず繁盛している書店だったが、そろそろ閉店準備をしなければならないからだ。
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