15 / 25
4-1 セックス≠オナニー
しおりを挟む今日は仕事が長引いてしまい、帰宅がいつもよりも遅くなった。
帰ってドアを開けると、寝落ちしていたのかソファに座っていた彩綾が眠そうに「おかえり」と俺に言って、それに俺が「ただいま」と返すと嬉しそうにとろんとした顔で笑う。
先に寝ててと言っても、健気に俺の帰りを待っている。以前もずっとそうやって俺のことを待っていてくれんだろうなと思うと、自分のクソさをまた自覚した。
けれどもう絶対に離してなんてやれない。
同棲を切り出したのは俺の方からだった。彩綾と一緒に住みたい、そして結婚したいと思った。でも彩綾はまだ俺のことを信用しきれていないから、俺には彩綾だけだとちゃんと態度で示して行かないといけないと思った。同棲すれば俺の彩綾に対する気持ちをもっと伝えられるかと、そう思った。
そして、彩綾にとっても俺だけだと彼女にわからせる必要性も感じた。身体に教えるのが1番早いとは思ったのだが、セックスは『彩綾がしたいって言うまで我慢する』と言ってしまった手前ずっと出来ていない。
しかもセックスはおろか、自分で抜くことさえもままならない。2人で過ごす時間をなるべく作っているので、1人でいる時間はほとんどないからだ。深夜の寝静まった夜、1人で抜いていると、隣に生身の彩綾がいるのに手も足も出せない俺がとても惨めに思えてならなかった。
このまま真夜中に寂しく1人抜き続けるのかと考えたら気が滅入った。同時に、しっかりと彩綾を繋ぎ止めておかないとまた出て行ってしまうのではないかと不安になった。なんで彩綾がしたいと言うまで我慢するんなんてカッコつけてしまったのか。その時の俺をぶん殴りたい。
だが俺は考えた。
もんもんとした頭を捻って考え抜いて、最善策を思いついた。
2人で暮らす生活にもお互いに慣れてきて、遅くなってもいつも、寝る前に最後一杯だけ付き合って貰うのが日課になっている。
彩綾が準備しようとするのを、俺が飲みたくて付き合ってもらってるんだから、と言って帰ってきてすぐにグラスとお酒を用意する。
俺はビールを好むが、彼女が飲むのは甘いお酒。最近は梅酒がお気に入りなのでグラスに氷と梅酒を注いで渡す。
お互いに一杯だけソファに座って2人で飲んで、最後におやすみのキスをして彩綾は先にベッドに入る。
それをスーツ姿で後ろから見送った後、グラスを傾けて残っていたビールをゆっくりと喉奥に注いでいく。飲み干して、彩綾のグラスを確認すると、彼女は梅酒を全て飲み干していた。
グラスの底には混ざりきっていない白い粉状のものがほんの少しだけ残っていた。
これだけ飲んだら朝まで起きないかな……。
103
あなたにおすすめの小説
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
好きな男子と付き合えるなら罰ゲームの嘘告白だって嬉しいです。なのにネタばらしどころか、遠恋なんて嫌だ、結婚してくれと泣かれて困惑しています。
石河 翠
恋愛
ずっと好きだったクラスメイトに告白された、高校2年生の山本めぐみ。罰ゲームによる嘘告白だったが、それを承知の上で、彼女は告白にOKを出した。好きなひとと付き合えるなら、嘘告白でも幸せだと考えたからだ。
すぐにフラれて笑いものにされると思っていたが、失恋するどころか大切にされる毎日。ところがある日、めぐみが海外に引っ越すと勘違いした相手が、別れたくない、どうか結婚してくれと突然泣きついてきて……。
なんだかんだ今の関係を最大限楽しんでいる、意外と図太いヒロインと、くそ真面目なせいで盛大に空振りしてしまっている残念イケメンなヒーローの恋物語。ハッピーエンドです。
この作品は、他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりhimawariinさまの作品をお借りしております。
ハイスぺ幼馴染の執着過剰愛~30までに相手がいなかったら、結婚しようと言ったから~
cheeery
恋愛
パイロットのエリート幼馴染とワケあって同棲することになった私。
同棲はかれこれもう7年目。
お互いにいい人がいたら解消しようと約束しているのだけど……。
合コンは撃沈。連絡さえ来ない始末。
焦るものの、幼なじみ隼人との生活は、なんの不満もなく……っというよりも、至極の生活だった。
何かあったら話も聞いてくれるし、なぐさめてくれる。
美味しい料理に、髪を乾かしてくれたり、買い物に連れ出してくれたり……しかも家賃はいらないと受け取ってもくれない。
私……こんなに甘えっぱなしでいいのかな?
そしてわたしの30歳の誕生日。
「美羽、お誕生日おめでとう。結婚しようか」
「なに言ってるの?」
優しかったはずの隼人が豹変。
「30になってお互いに相手がいなかったら、結婚しようって美羽が言ったんだよね?」
彼の秘密を知ったら、もう逃げることは出来ない。
「絶対に逃がさないよ?」
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり
鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。
でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる