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4-1 セックス≠オナニー
しおりを挟む今日は仕事が長引いてしまい、帰宅がいつもよりも遅くなった。
帰ってドアを開けると、寝落ちしていたのかソファに座っていた彩綾が眠そうに「おかえり」と俺に言って、それに俺が「ただいま」と返すと嬉しそうにとろんとした顔で笑う。
先に寝ててと言っても、健気に俺の帰りを待っている。以前もずっとそうやって俺のことを待っていてくれんだろうなと思うと、自分のクソさをまた自覚した。
けれどもう絶対に離してなんてやれない。
同棲を切り出したのは俺の方からだった。彩綾と一緒に住みたい、そして結婚したいと思った。でも彩綾はまだ俺のことを信用しきれていないから、俺には彩綾だけだとちゃんと態度で示して行かないといけないと思った。同棲すれば俺の彩綾に対する気持ちをもっと伝えられるかと、そう思った。
そして、彩綾にとっても俺だけだと彼女にわからせる必要性も感じた。身体に教えるのが1番早いとは思ったのだが、セックスは『彩綾がしたいって言うまで我慢する』と言ってしまった手前ずっと出来ていない。
しかもセックスはおろか、自分で抜くことさえもままならない。2人で過ごす時間をなるべく作っているので、1人でいる時間はほとんどないからだ。深夜の寝静まった夜、1人で抜いていると、隣に生身の彩綾がいるのに手も足も出せない俺がとても惨めに思えてならなかった。
このまま真夜中に寂しく1人抜き続けるのかと考えたら気が滅入った。同時に、しっかりと彩綾を繋ぎ止めておかないとまた出て行ってしまうのではないかと不安になった。なんで彩綾がしたいと言うまで我慢するんなんてカッコつけてしまったのか。その時の俺をぶん殴りたい。
だが俺は考えた。
もんもんとした頭を捻って考え抜いて、最善策を思いついた。
2人で暮らす生活にもお互いに慣れてきて、遅くなってもいつも、寝る前に最後一杯だけ付き合って貰うのが日課になっている。
彩綾が準備しようとするのを、俺が飲みたくて付き合ってもらってるんだから、と言って帰ってきてすぐにグラスとお酒を用意する。
俺はビールを好むが、彼女が飲むのは甘いお酒。最近は梅酒がお気に入りなのでグラスに氷と梅酒を注いで渡す。
お互いに一杯だけソファに座って2人で飲んで、最後におやすみのキスをして彩綾は先にベッドに入る。
それをスーツ姿で後ろから見送った後、グラスを傾けて残っていたビールをゆっくりと喉奥に注いでいく。飲み干して、彩綾のグラスを確認すると、彼女は梅酒を全て飲み干していた。
グラスの底には混ざりきっていない白い粉状のものがほんの少しだけ残っていた。
これだけ飲んだら朝まで起きないかな……。
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