主人公なんかに、なってほしくはなかった

onyx

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私は、独り、帰ってきた

わたしは、ひとり、かんがえる

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自分の部屋に戻り、ベッドへ身体を投げ出す。いつの間にか整えられていたから、母がやってくれたのだろう。

大きく息を吸い込むと慣れ親しんだ匂いがして、強ばっていた身体が解けていくのが分かった。

何となく息苦しくてゴロンと転がり仰向けになる。

この村が好きだ。決して豊かとは言えないけれど、不便を感じたことは無かった。いじわるをされた事はあるけれど、命に関わるような事では無かったし、困っていたら誰かが助けてくれる。それに私にはヴィーとアシェルがいた。

大好きな優しくて、暖かな私の世界。ヴィーがいなければ外を知らずにこの村で一生を終えただろう。だってここには両親がいて、リアムおじいちゃんがいて、親友がいる。生きていけるだけの蓄えがあって、あまり魔物や害獣が出ない平和な村だから、ちょっと退屈だけど、別段不満も無く、都会はどんな所だろうなんて想像しながらお父さんの狩りについて行ったりお母さんと畑を耕したりして過ごしていくのだ。まぁ、その前に狼に食べられていたかもしれないけど。

でも、私はヴィーに出会ってしまった。あの日、あの森で、可愛くて強くて優しい女の子に。過酷な中でも前を向いて輝く彼女と友達になれた事は、私の最大の幸福だった。だから、一緒に村の外へ出た事を私は後悔していない。

楽しい事なんて少ししかなくて、何度も帰りたいと思うような辛い事が沢山あったけれど、その度にヴィーが1人じゃなくてよかったって、マリーが一緒でよかったって言ってくれたから、私は笑う事が出来た。

ただの荷物待ちみたいな私と比べてヴィーはやらなきゃいけない事が沢山あって時には理不尽な事だってあった。でもヴィーはいつだって私に笑いかけてくれるから、ホッとしたように私を呼んでくれるから、私は少しでもヴィーが穏やかに過ごせるように頑張りたいと思うのに、私には力がないからただ傍にいる事しか出来なかった。

マリーがいるだけで頑張れる、なんて、嬉しい筈なのに苦しくて、何も出来ない自分が嫌になる。役立たずの私でも、ヴィーが笑ってくれる事だけが、唯一の幸いだった。

旅に出た事を後悔していない。後悔はしていないけれど、でも、こんな結末を望んでなどいなかった。望むはずもなかった。

ねぇ、ヴィー。こうして帰ってきてみんなに触れても、私は世界を許せない。
私は凄く酷い人間だから、世界よりもヴィーが大切なんだ。

私には優しくされる資格なんてないのに、みんなが私を甘やかす。それが嬉しくて、申し訳なくて、でも幸せだと思うのに、それでも私は、

「ヴィー。」

貴女のいない世界が、辛い。







次の日に届いた王様からの手紙には、私のパレード参加の旨が記されていた。
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