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旅に出よう、彼女の元へ、行けるように
しゅくふく
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クスクスと笑う声が聞こえる。
目を開けば、ライラが私の目の前に居た。
「ライラ。」
前回同様、息が出来る。声が出る。分かっていたけれど、やっぱりどこか不思議で喉に手をあてれば、ライラが真似をして私の喉へとその小さな手を添える。
柔らかな、優しい手だ。
「まりー、いたい?」
耳のすぐ近くで聞こえた声に、私は目をぱちりと瞬いた。
鈴を転がしたような綺麗で可愛い声。その声が翳り、私に届く。知らない声の筈なのに、聞いたことがある気がするのはどうしてなのだろう。
「まりー、いたい、わたし、いや。」
「…ライラ?」
たどたどしく、しかしはっきりと聞こえる声に、私は目の前の存在の名前を呼んだ。分からない。分からないけれど、彼女の声だと、そう思ったから。
喉に手をあてていたライラは、私の問いかけにこくりと頷き、そして頬にキスをしてくれた。
「ライラ、喋れるようになったの?あ、えっと違くて、ええっと、人間の言葉を話せるように、なったってこと?」
どう言っていいか分からない私に、ライラはクスクスと笑いながらもう一度頷く。
「まりー、ゔぃー、わたしのかわいいこ。ことば、まりーのため。」
ライラは私とヴィーを気に入ってくれていた。それはライラのお母さんも言っていて、現にこうして楽しそうに笑うライラを見ればわかる。
ライラが言う私の可愛い子、とはどんな意味を持つのかは分からない。けれどその言葉が嬉しくて、なんだかくすぐったくて、特別なんだと思った。
「私のため?」
ヴィーは精霊の言葉が分かるみたいでライラと会話出来ていた。私は分からなかったから、ライラに初めて会った時はヴィーが通訳をしてくれて、前回会った時はライラが身振り手振りで私に話しかけてくれていた。ライラのお母さんは、まだまだ勉強中だと言っていたけれど。
「わたし、まりー、はなす。まりー、ことば、しらない。わたし、おぼえた。まりー、ゔぃー、わたし、いっしょ。はなす!」
「ありがとう、ライラ。私もいつか、ライラの言葉を勉強したいな。」
私とヴィーと話したいから人間の言葉を覚えたのだと言うライラに嬉しさが溢れる。
だからいつか、ヴィーを取り戻したその後にもし許されるのならば、ライラの、精霊の言葉を覚えたいと、そう思った。
「まりー、はなす?わたし、おしえる!まりー、ゔぃー、わたし、いっしょ!」
「うん…!」
目をキラキラとさせたライラが私の周りを宙返りしながら飛び回る。
嬉しいのだとそう伝えてくれる幸せに、私も頬が緩む。
ライラはヴィーが居ない今も、帰ってくるのだと信じているとわかったから。
「あのね、ライラ。今日はライラのお母さんがくれた祝福について聞きたかったの。」
「しゅくふく?」
「うん。この間、ライラのお母さんが私にくれたって言ってた。」
「しゅくふく。まりー、しあわせ。わたしたち、おくる。」
ライラにお母さんの真似をして、私の額にキスをする。
「幸せ?」
「まりー、いきる。しあわせ、だいじ。しゅくふく、いっかい、しあわせ、つかう。」
「?えっと、私が生きるのに幸せは大事なことで、祝福は幸せのために1回だけ使えるもの、ってこと?」
「にてる。…まりー、おねがい、いっかい、つかう。しゅくふく、きえる。」
ふるふると首を振ったライラが、少し考えた後に言葉を重ねた。
お願い。1回。使う。祝福。消える。
ライラの言葉をそのまま受け取るとしたら…、
「私の願いを1度だけ叶えてくれる…?」
恐る恐るそう口にすれば、ライラは頷いて大きく宙返りをした。
「まりー、おねがい、しあわせ!てだすけ、いっかい!」
「私が自分の幸せのために願うことに対して、ライラのお母さんが手助けしてくれるってこと?」
慣れてきたのか、ライラの言いたいことがちょっとずつ分かってきたように思う。
ライラの言葉を文章として繋げていけば、ライラは笑って頷いた。
「うん!なんでも、しあわせ、いっかい、てだすけ。」
「幸せの為の願いなら、なんでも1回だけライラのお母さんが叶えるための手助けをしてくれる…。」
それは、奇跡と呼ばれるものでは無いだろうか。
驚き震える私に、ライラはその小さな手で、私の指をギュッと握った。
「わたし、ちいさい。おおきい、すぐ、まりー、ゔぃー、しゅくふく、あげる。まりー、ゔぃー、だいすきよ。」
大きくなったら、私とヴィーに祝福を授ける。そう言って胸を張るライラに、私は、ただただ頷いた。
だって、こんなにも嬉しい。
とてつもない力を手にしてしまった恐怖はある。けれど、これは結局私の使い方次第だ。
私の幸せ。
それは、ヴィーが居てくれること。
だから、きっと、大丈夫。
「まりー、しゅくふく。いらない?」
悲しそうなライラに、慌てて首を振る。
「…ありがとう。ありがとう、ライラ。私もヴィーもライラが大好き。」
嬉しそうに大好きだと繰り返してキスをくれるライラに、私もそっとキスを贈る。
今度はヴィーと2人で会いに行く。その時は、ライラとヴィーとライラのお母さんと私で甘いものをお腹いっぱい食べよう。
そう決めて、私はゆっくりと水面の方へと上った。
ライラはふわりと笑って、私に手を振る。それから妖精の言葉で何かを呟いた。
いつかきっと分かるだろうか。彼女の言葉の意味が。
その日が来る事を、祈る。
『マリー、私の愛しい子。貴女の未来に幸あれ。』
目を開けば、ライラが私の目の前に居た。
「ライラ。」
前回同様、息が出来る。声が出る。分かっていたけれど、やっぱりどこか不思議で喉に手をあてれば、ライラが真似をして私の喉へとその小さな手を添える。
柔らかな、優しい手だ。
「まりー、いたい?」
耳のすぐ近くで聞こえた声に、私は目をぱちりと瞬いた。
鈴を転がしたような綺麗で可愛い声。その声が翳り、私に届く。知らない声の筈なのに、聞いたことがある気がするのはどうしてなのだろう。
「まりー、いたい、わたし、いや。」
「…ライラ?」
たどたどしく、しかしはっきりと聞こえる声に、私は目の前の存在の名前を呼んだ。分からない。分からないけれど、彼女の声だと、そう思ったから。
喉に手をあてていたライラは、私の問いかけにこくりと頷き、そして頬にキスをしてくれた。
「ライラ、喋れるようになったの?あ、えっと違くて、ええっと、人間の言葉を話せるように、なったってこと?」
どう言っていいか分からない私に、ライラはクスクスと笑いながらもう一度頷く。
「まりー、ゔぃー、わたしのかわいいこ。ことば、まりーのため。」
ライラは私とヴィーを気に入ってくれていた。それはライラのお母さんも言っていて、現にこうして楽しそうに笑うライラを見ればわかる。
ライラが言う私の可愛い子、とはどんな意味を持つのかは分からない。けれどその言葉が嬉しくて、なんだかくすぐったくて、特別なんだと思った。
「私のため?」
ヴィーは精霊の言葉が分かるみたいでライラと会話出来ていた。私は分からなかったから、ライラに初めて会った時はヴィーが通訳をしてくれて、前回会った時はライラが身振り手振りで私に話しかけてくれていた。ライラのお母さんは、まだまだ勉強中だと言っていたけれど。
「わたし、まりー、はなす。まりー、ことば、しらない。わたし、おぼえた。まりー、ゔぃー、わたし、いっしょ。はなす!」
「ありがとう、ライラ。私もいつか、ライラの言葉を勉強したいな。」
私とヴィーと話したいから人間の言葉を覚えたのだと言うライラに嬉しさが溢れる。
だからいつか、ヴィーを取り戻したその後にもし許されるのならば、ライラの、精霊の言葉を覚えたいと、そう思った。
「まりー、はなす?わたし、おしえる!まりー、ゔぃー、わたし、いっしょ!」
「うん…!」
目をキラキラとさせたライラが私の周りを宙返りしながら飛び回る。
嬉しいのだとそう伝えてくれる幸せに、私も頬が緩む。
ライラはヴィーが居ない今も、帰ってくるのだと信じているとわかったから。
「あのね、ライラ。今日はライラのお母さんがくれた祝福について聞きたかったの。」
「しゅくふく?」
「うん。この間、ライラのお母さんが私にくれたって言ってた。」
「しゅくふく。まりー、しあわせ。わたしたち、おくる。」
ライラにお母さんの真似をして、私の額にキスをする。
「幸せ?」
「まりー、いきる。しあわせ、だいじ。しゅくふく、いっかい、しあわせ、つかう。」
「?えっと、私が生きるのに幸せは大事なことで、祝福は幸せのために1回だけ使えるもの、ってこと?」
「にてる。…まりー、おねがい、いっかい、つかう。しゅくふく、きえる。」
ふるふると首を振ったライラが、少し考えた後に言葉を重ねた。
お願い。1回。使う。祝福。消える。
ライラの言葉をそのまま受け取るとしたら…、
「私の願いを1度だけ叶えてくれる…?」
恐る恐るそう口にすれば、ライラは頷いて大きく宙返りをした。
「まりー、おねがい、しあわせ!てだすけ、いっかい!」
「私が自分の幸せのために願うことに対して、ライラのお母さんが手助けしてくれるってこと?」
慣れてきたのか、ライラの言いたいことがちょっとずつ分かってきたように思う。
ライラの言葉を文章として繋げていけば、ライラは笑って頷いた。
「うん!なんでも、しあわせ、いっかい、てだすけ。」
「幸せの為の願いなら、なんでも1回だけライラのお母さんが叶えるための手助けをしてくれる…。」
それは、奇跡と呼ばれるものでは無いだろうか。
驚き震える私に、ライラはその小さな手で、私の指をギュッと握った。
「わたし、ちいさい。おおきい、すぐ、まりー、ゔぃー、しゅくふく、あげる。まりー、ゔぃー、だいすきよ。」
大きくなったら、私とヴィーに祝福を授ける。そう言って胸を張るライラに、私は、ただただ頷いた。
だって、こんなにも嬉しい。
とてつもない力を手にしてしまった恐怖はある。けれど、これは結局私の使い方次第だ。
私の幸せ。
それは、ヴィーが居てくれること。
だから、きっと、大丈夫。
「まりー、しゅくふく。いらない?」
悲しそうなライラに、慌てて首を振る。
「…ありがとう。ありがとう、ライラ。私もヴィーもライラが大好き。」
嬉しそうに大好きだと繰り返してキスをくれるライラに、私もそっとキスを贈る。
今度はヴィーと2人で会いに行く。その時は、ライラとヴィーとライラのお母さんと私で甘いものをお腹いっぱい食べよう。
そう決めて、私はゆっくりと水面の方へと上った。
ライラはふわりと笑って、私に手を振る。それから妖精の言葉で何かを呟いた。
いつかきっと分かるだろうか。彼女の言葉の意味が。
その日が来る事を、祈る。
『マリー、私の愛しい子。貴女の未来に幸あれ。』
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