主人公なんかに、なってほしくはなかった

onyx

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私は、君を、目覚めさせる

めが、さめる

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ざわり。
空気が変わる。
身体が酷く重くなり、地面へと強制的に押し付けられているような感覚に、私は動くことが出来ない。
私はこの感覚を知っている。けれど何故今、この感覚を覚えたのだろう。
分からない。
だってこれは、この感覚は。

黒い蔓が解かれていく。
そしてそれは禍々しい、黒い玉座へと変貌した。
ヴィーは眠ったままそこに座らされている。
嫌な予感が私を襲う。

「ヴィー…?」

震える声で名前を呼ぶとヴィーの瞼がぴくりと震えた。
それからゆっくりと開かれていき、瞳が現れる。
まるで、血を固めたような、赤黒い瞳が。
違う。
ヴィーの瞳はこんな色じゃない。
驚き目を見開く私の事など視界に入っていないように、 彼女はゆっくりと口を開いた。

「私を目覚めさせたのは誰?」

だれか、嘘だと言ってほしい。

「魔王…?」

誰かの声が聞こえた気がした。
もしかしたら私の声だったのかもしれない。
でも、そんなことどうでもよくて。
私は目の前の光景を受け入れることが出来ない。

「まだその時では無い筈だけれど。…あぁ、勇者が目覚めたのね。」

これは夢だ。それもとびっきりの悪夢。

「でもこんなに早く目覚めるなんて想定外だし、勇者もいないじゃない。どういうこと?」

お願い。冗談だよって、笑ってよ。

「まぁいいわ。」

ちょっとふざけただけだって。

「さぁ、遊びましょうか。」

ねぇ、

「最期まで、楽しんでね?」

ヴィー。

















「«魔王の咆哮»」



















全ての音が消える。
気がついた時には私は吹き飛ばされ、壁に全身を打ち付けていた。

「っ、ゔぁ…。」

痛みに薄れゆく意識の中で最後に私が見たのは、

つまらなそうに笑うヴィーと、

打ち捨てられる私の右手だった。
























ねぇ、私頑張ったんだよ、ヴィー。
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