お姉様と私の婚約者が駆け落ちしたので、お姉様の代わりに辺境伯に嫁ぎます。

山葵

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ザイザル辺境伯領地へと入ると、噂通り緑が多く空気が清んでいた。

それから走ること1時間、無事にザイザル辺境伯邸へと到着する。

馬車が着くと、執事のカムリや大勢の使用人が出迎えてくれた。

「遠路遙々良くお越し下さいました。旦那様は、仕事で只今出掛けておりますので、お戻りになるまでお部屋でおくつろぎ下さい。こちらがアイリス様付きなります侍女のエルザです。何か御座いましたらエルザにお申し付け下さい」

エルザに案内され、部屋へと向かう。

旅の汚れを落とす為に直ぐに湯浴みをし、着替えを済ませて、ザイザル辺境伯様の帰りを待っていた。

エルザから、ザイザル辺境伯様が戻ったと言われ、緊張しながらアンナと共に応接室へと向かう。

部屋に入ると窓辺に男性が立っているのが見えたが、逆光で顔が良く見えない。

「モイス伯爵令嬢、遠い辺境の地に良く来てくれた。私がジルフィード・ザイザルだ」

「ザイザル辺境伯様、お初にお目にかかります。モイス伯爵家が娘アイリスと申します」

頭を上げるように言われ、ザイザル辺境伯様にソファーに腰かける様に言われる。

近くで見るジルフィード様は、シルバーアッシュの髪に青色の瞳の美丈夫だった。

この方が、ザイザル辺境伯様?
とても14歳上には見えないのだけれど。
なぜ今まで、結婚もせずに独身だったのだろう?
はっ!それよりも、まず謝らなければ…。

「ザイザル辺境伯様…」

「ジルフィードだ。ジルと呼んでくれて構わない」

「では、ジル様。この度は、姉であるカトリーヌではなく、わたくしが嫁ぐ事になってしまい大変申し訳御座いません」

「モイス伯爵から謝罪の手紙は受け取った。アイリス嬢も大変だったな…その、私は構わないが、君とでは私は随分と歳が離れているだろう?それでもアイリス嬢は本当に良いのだろうか?」

「ジル様が受け入れて下さるなら、わたくしは このままでお願いしたいと思っております。それからわたくしの事はアイリスとお呼び下さい」

ジル様は、少し考えてから「では婚約期間を設け、少し様子を見てみてはどうだろうか?王都から来るご令嬢には辺境の地が合わない方もいるからね。急ぐ婚姻でもない。構わないだろうか?」

そういえば、お姉様の婚約が白紙になった頃に、ジル様も婚約を解消されたとお父様が言っていた。

前の婚約者のご令嬢は、辺境の地が合わずに実家に帰ってしまったのだろうか?

私は、ここを出る事になったら修道院に行くと決めている。

「畏まりました。ジル様、どうか宜しくお願い致します」

「じゃあアイリスは、まずその固くるしい話し方を止める事にしようか?どうも敬語はむず痒い」

そう笑って話すジル様が眩しくて、私はドキッとしてしまった。
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