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引き返しザイザル領に向かう馬車の中でカトリーヌは考えていた。
「ジルフィードが、あんなに美丈夫なんて誰も教えてくれなかったじゃないっ!…ちょっと待って、彼はあんなに格好良いのに何で何回も婚約解消されてるのかしら?何か問題でもあるとか?はっ!ま、まさか不能……な訳ないわよね…その前に令嬢達に婚約解消されてるものね…暴言?暴力?……まさかドケチとか?」
いくら考えても答えは出ない。
ならばと一緒に馬車に乗る人に聞いてみる事にした。
「ねぇザイザル辺境伯は、横暴君主とか噂で聞いたのだけれど?」
「はぁ!?誰がそんな嘘を言っているんだ!?領主様は、俺達平民にも分け隔てなく接してくれて領民の事を大切にしてくれる御方だ。どうせ、逃げ出した貴族のお嬢ちゃん達が自分の保身の為に根も葉もない噂を流したんだろうよ!あんたもザイザル領に住みたいなら、そんな嘘の噂を信じない方が良いぞ。領民は、皆、領主様に感謝し慕っている。変な事を言えば村八分で生活出来なくなるぞっ!」
馬車に乗って居たザイザル領の者は、誰も辺境伯を悪くは言わなかった。
寧ろ皆、辺境伯に感謝し崇拝していた。
「やっぱりジルフィードは私に相応しい人だわ。
ザイザル辺境伯も当主としての執務を勉強し、社交界での立ち回りも出来る私を知れば、アイリスよりも私の事を選ぶはずよ。彼に何としても会って、本当の婚約者は私なのだと話さなければ。」
心をウキウキさせながら、ザイザル辺境地に辿り着くのを楽しみにするカトリーヌ。
馬車がザイザル領地に着いたのは夕刻だった。
ジルは、ガイルと共に馬車が着くのを待っていた。
ロイを伴わなかったのは、先程の事が有り警戒されては行けないからだ。
勿論、待ち構えていたと思わせず、偶然そこに居たと思わせる様に、到着場所の通りを挟んで向かいでガイルと話している様に見せ掛ける。
馬鹿なあの女は俺を見付け駆け寄って来るはずだ。
そして言うのだ。
「貴方はアイリスに騙されているのです。貴方の本当の婚約者は私なのです。」と。
アイリスが悪女の様に言い、自分は陥れられたとでも言うのだろう。
「いいかジル、カトリーヌがアイリスを貶める様な事を言っても、直ぐに切れるなよ!お前に不敬な行動をするまで我慢するんだぞっ!分かったか?あ、到着した様だ。くれぐれも上手くやるんだぞ。」
「何度も言わなくとも分かっている。お前は俺を何だと思っているのだ?お前こそ上手くやってくれよ。」
停留所に目を向ければ、カトリーヌが降りてくるのが見えた。
2人は、カトリーヌに気が付かぬ振りをして話していた。
「ジルフィード様?まあジルフィード様じゃ御座いませんか?先程は大変失礼致しました。わたくしはアイリスの姉でカトリーヌ・モイスと申します。」
「おや、これはカトリーヌ嬢。確か王都に帰ったのではなかったか?」
カトリーヌは、ジルフィードが先程とは違い自分に紳士的な態度で接している事にホッとしていた。
「実は、ジルフィード様にお伝えしなければと思い引き返して来たので御座います。わたくしの妹のアイリスなのですが、お恥ずかしい話なのですが、わたくしの物を何でも欲し、手に入れれば直ぐに飽きたら捨てるという癖が御座いまして…わたくしとジルフィード様との婚約が決まると、自分の婚約者であるアルベルトを押し付けてきたので御座います。アルベルトと婚約したのも、アルベルトがわたくしに好意を寄せている事に気が付いて欲しくなっただけ…あの子は、人の気持ちを弄び楽しんでいる悪女なのです…わたくしは、ジルフィード様が傷付けられるのを見たくは有りません。悪女からお救いしたく戻って参りました。」
ジルもガイルも憤慨する心を殺し耐えていた。
「アイリスが悪女?そうは見えないが?」
「ジルフィード様は騙されているのです。あの子は人の心を弄び悪魔…。貴方の婚約者は、わたくしなのです。それをあの子が無理矢理奪い取って。考えて下さいませ。わたくしは、伯爵家の当主となるべく教育されております。お父様が、どちらがジルフィード様に相応しいと嫁がせるか…お分かりになりますよね?」
「うむ…」と悩むジルフィードに、あと一押しと思ったカトリーヌは、ジルフィードの腕に縋り付いた。
「無礼者!平民であるお前がモルト伯爵家の名を語り、許しもなく我が身に触れるなど言語道断!ガイル、この者を捕らえよっ!」
「えっ?ジ、ジルフィード様!?」
「誰の許可を得て我が名を呼んでいるのだ?俺はお前に名前を呼ぶ事を許可していない。それに我が婚約者アイリスを侮辱するなど、この場で断罪したい所だが……ロイっ!手配は済んだか?」
待ってました!とばかりにロイがヒョコっと顔を出した。
「ドレバラ修道院には先触れを出してあるよ。馬車も手配済み!あんたさぁー素直に王都に戻っていればドレバラなんかに送られなくて済んだのに。馬鹿だよねー。」
暴れるカトリーヌをガイルが縛り上げると、ロイは手配していた馬車に放り込む。
「じゃあねぇー。死ぬまでにちゃんと心を入れ替えるんだよ!」と言って手を振り扉を閉める。
カトリーヌが送られるドレバラ修道院は、この国で1番厳しいと言われる修道院。
極寒の地でもある為、裕福な生活に慣れた貴族令嬢は生きて出てくる者が少ないと聞く。
「ジルフィードが、あんなに美丈夫なんて誰も教えてくれなかったじゃないっ!…ちょっと待って、彼はあんなに格好良いのに何で何回も婚約解消されてるのかしら?何か問題でもあるとか?はっ!ま、まさか不能……な訳ないわよね…その前に令嬢達に婚約解消されてるものね…暴言?暴力?……まさかドケチとか?」
いくら考えても答えは出ない。
ならばと一緒に馬車に乗る人に聞いてみる事にした。
「ねぇザイザル辺境伯は、横暴君主とか噂で聞いたのだけれど?」
「はぁ!?誰がそんな嘘を言っているんだ!?領主様は、俺達平民にも分け隔てなく接してくれて領民の事を大切にしてくれる御方だ。どうせ、逃げ出した貴族のお嬢ちゃん達が自分の保身の為に根も葉もない噂を流したんだろうよ!あんたもザイザル領に住みたいなら、そんな嘘の噂を信じない方が良いぞ。領民は、皆、領主様に感謝し慕っている。変な事を言えば村八分で生活出来なくなるぞっ!」
馬車に乗って居たザイザル領の者は、誰も辺境伯を悪くは言わなかった。
寧ろ皆、辺境伯に感謝し崇拝していた。
「やっぱりジルフィードは私に相応しい人だわ。
ザイザル辺境伯も当主としての執務を勉強し、社交界での立ち回りも出来る私を知れば、アイリスよりも私の事を選ぶはずよ。彼に何としても会って、本当の婚約者は私なのだと話さなければ。」
心をウキウキさせながら、ザイザル辺境地に辿り着くのを楽しみにするカトリーヌ。
馬車がザイザル領地に着いたのは夕刻だった。
ジルは、ガイルと共に馬車が着くのを待っていた。
ロイを伴わなかったのは、先程の事が有り警戒されては行けないからだ。
勿論、待ち構えていたと思わせず、偶然そこに居たと思わせる様に、到着場所の通りを挟んで向かいでガイルと話している様に見せ掛ける。
馬鹿なあの女は俺を見付け駆け寄って来るはずだ。
そして言うのだ。
「貴方はアイリスに騙されているのです。貴方の本当の婚約者は私なのです。」と。
アイリスが悪女の様に言い、自分は陥れられたとでも言うのだろう。
「いいかジル、カトリーヌがアイリスを貶める様な事を言っても、直ぐに切れるなよ!お前に不敬な行動をするまで我慢するんだぞっ!分かったか?あ、到着した様だ。くれぐれも上手くやるんだぞ。」
「何度も言わなくとも分かっている。お前は俺を何だと思っているのだ?お前こそ上手くやってくれよ。」
停留所に目を向ければ、カトリーヌが降りてくるのが見えた。
2人は、カトリーヌに気が付かぬ振りをして話していた。
「ジルフィード様?まあジルフィード様じゃ御座いませんか?先程は大変失礼致しました。わたくしはアイリスの姉でカトリーヌ・モイスと申します。」
「おや、これはカトリーヌ嬢。確か王都に帰ったのではなかったか?」
カトリーヌは、ジルフィードが先程とは違い自分に紳士的な態度で接している事にホッとしていた。
「実は、ジルフィード様にお伝えしなければと思い引き返して来たので御座います。わたくしの妹のアイリスなのですが、お恥ずかしい話なのですが、わたくしの物を何でも欲し、手に入れれば直ぐに飽きたら捨てるという癖が御座いまして…わたくしとジルフィード様との婚約が決まると、自分の婚約者であるアルベルトを押し付けてきたので御座います。アルベルトと婚約したのも、アルベルトがわたくしに好意を寄せている事に気が付いて欲しくなっただけ…あの子は、人の気持ちを弄び楽しんでいる悪女なのです…わたくしは、ジルフィード様が傷付けられるのを見たくは有りません。悪女からお救いしたく戻って参りました。」
ジルもガイルも憤慨する心を殺し耐えていた。
「アイリスが悪女?そうは見えないが?」
「ジルフィード様は騙されているのです。あの子は人の心を弄び悪魔…。貴方の婚約者は、わたくしなのです。それをあの子が無理矢理奪い取って。考えて下さいませ。わたくしは、伯爵家の当主となるべく教育されております。お父様が、どちらがジルフィード様に相応しいと嫁がせるか…お分かりになりますよね?」
「うむ…」と悩むジルフィードに、あと一押しと思ったカトリーヌは、ジルフィードの腕に縋り付いた。
「無礼者!平民であるお前がモルト伯爵家の名を語り、許しもなく我が身に触れるなど言語道断!ガイル、この者を捕らえよっ!」
「えっ?ジ、ジルフィード様!?」
「誰の許可を得て我が名を呼んでいるのだ?俺はお前に名前を呼ぶ事を許可していない。それに我が婚約者アイリスを侮辱するなど、この場で断罪したい所だが……ロイっ!手配は済んだか?」
待ってました!とばかりにロイがヒョコっと顔を出した。
「ドレバラ修道院には先触れを出してあるよ。馬車も手配済み!あんたさぁー素直に王都に戻っていればドレバラなんかに送られなくて済んだのに。馬鹿だよねー。」
暴れるカトリーヌをガイルが縛り上げると、ロイは手配していた馬車に放り込む。
「じゃあねぇー。死ぬまでにちゃんと心を入れ替えるんだよ!」と言って手を振り扉を閉める。
カトリーヌが送られるドレバラ修道院は、この国で1番厳しいと言われる修道院。
極寒の地でもある為、裕福な生活に慣れた貴族令嬢は生きて出てくる者が少ないと聞く。
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