【完結】スーツ男子の歩き方

SAI

文字の大きさ
7 / 42

7.男二人のクリスマス

しおりを挟む
 仕事を終えた高見が家に来たのは日付も変わった午前1時だった。

「クリスマス終わっちゃいましたね」

テーブルの上にはアスパラとチーズを春巻きの皮で巻いて揚げ焼きにしたスティックやじゃがバター、塩キャベツ、卵焼きが並んでいる。どれも高見がササっと料理したものだ。

「僕そんなに日にちに拘りないし、いいんじゃん。そういえば美佳もイベント日に拘ってたなぁ。あ、美佳ってこの間振られた元カノなんだけど」

クリスマスは僕の仕事の関係でどうにもならないこともあったが、誕生日やバレンタインデーなんかは絶対だった。会えないとなるとすこぶる機嫌が悪くなるものだから、僕もその日だけはと時間の確保に必死だったのだ。

「きっとそれはイベント日にっていうよりも、特別な日を好きな人と一緒に過ごすことに拘ってたんだと思いますよ」

「え?」
「クリスマスっていう特別な日を好きな人と一緒に過ごしたかったんじゃないかな」
「なんか、お前……女心まで分かるなんてずるいっ!」
「女心っていうわけじゃないんですけどね……あ、羽山さん、飲み過ぎじゃないですか?」

3本目の缶チューハイを開けながら、大丈夫大丈夫、と答える。

「こんなにおいしい料理が並んでるんだもん。久しぶりだし、今日は飲ませてよ。そうだ、お前がケーキがどうのって言ってたから、買っておいたぞ」

「本当ですか?」

「うん、どこにも寄らずに真っ直ぐ来いって言った手前な。コンビニのケーキ、半額になってた。ほら、ちゃんとクリスマスだろ?」

サンタクロースが真ん中に乗っているクリスマスケーキをテーブルの上に置くと高見が目を細めた。

「クリスマス、したかったんだろ?」

一緒にケーキでも食べませんか、ということはクリスマスをしたかったに違いない。
クリスマスをしたいなんて高見も案外子供っぽいよな、そう思いながら購入したのだ。

「羽山さん、それ、ずるいです」
「何が?」

高見は立ち上がるとそのままテーブル越しに僕の顔に顔を近づけてくる。少し傾いた高見の顔。
イケメンってどんな角度でもイケメンなんだなぁ。
そう思っていると高見の唇が僕の唇に触れた。

「んっ……」
しっとりとした少し冷たい高見の唇が僕の熱を奪って少し離れる。

「キス、上手くなりたいんでしょう?」
ん、と呟くと高見の手が僕の後頭部に回った。

「口、開けて」
素直に従ったのは僕が結構酔っていたからだと思う。

僕が開けた唇に重なろうとする高見の唇。うっすらと開いたその唇の中から舌が覗くと妙にエロい気分になる。そのまま重なり、高見の舌が僕の舌を追いかけ撫でる。高見の飲んでいた缶チューハイの桃の味が僕の口の中に広がって甘い。

「ん……甘い」
唇を離すと二人の間に糸が引いて、それが一段とエロくてフワッとした気持ちになった。

高見もキスうまっ。

「もっと練習します?」
そう言ってほほ笑む高見は魅惑的過ぎて、僕は何が何だか分からないまま頷いていた。


 昼すぎ。
背中、あったかい……。

布団の中が温かくてもう少し潜ろうと布団を引っ張ろうとして自分のお腹の辺りにある温もりに気が付いた。
そうだ、高見がいるんだ。どうして一緒のベッドに寝ているのかも、なぜ高見に背中を抱きかかえられるようにして眠っているのかも分からないが、昨日高見とお酒を飲んだことは覚えていた。それと、キスをしたことも。

お腹にある高見の手をそっとどけると寝返りを打った。高見と向き合う形になる。

まつ毛、長っ。鼻筋もすっとしてるし、髪の毛もサラサラだ。唇も……。唇、この唇とキスしたのか……。
後頭部に置かれた手の強さ、高見の舌の感触……。結構覚えてる、僕。

「どうしたんですか? 真っ赤な顔して」
「た、高見!?」

びっくりして声が裏返る。

「起きてたのかよ」
「えぇ、まぁ。昨日の練習でも思い出しました?」

「れん……んっ」
高見が体を起こしたかと思うとそのまま僕の唇を奪う。

「復習です」
高見の顔が僕の真上に来て、まるで押し倒されたかのような体勢でキスが深くなった。ピチャ、ピチャっと口内に濡れた音が響く。

昨日もこんなに音してたっけ?
やばい……なんか煽られる。

ようやく解放されると高見の体をぐいっと押しのけた。

「ちょっと、それ以上は……ひゃっ」
顔を反らすと鎖骨にキスをされて変な声が漏れる。

「だ、だぁーっ!! ちょっと、トイレ!」
背後からクスクスと笑う声が聞こえた。

あいつ、エロい。イケメンは経験豊富っ。
僕はトイレにこもるとすっかり立ち上がったソレを鎮めるのに全集中する羽目になった。




「高見、今日の予定はー?」
「特にないですね。しいて言うなら、ゆっくりゴロゴロですかね」
「奇遇だな、僕もだ。映画でも観るか?」

「俺、ここにいていいんですか?」
「別にいいよ。邪魔にならないし、ご飯も作って貰えるし、僕からしたら有難いしかないけど」
「じゃあお言葉に甘えて」

「映画何がいいかなぁ」
「羽山さんはどんな気分ですか?」
「ん~。馬鹿みたいに笑いたい。なーんも考えないで」
「それなら映画っていうよりはお笑い動画の方が良くないですか?」
「確かに」

ベッドを背もたれに並んで座り、一つの布団にくるまってテレビに映した動画を見た。

「ヒーッ、ウケる。ぷっ、くくくく」

爆笑する僕の横で意外にも高見は真顔で、反対に僕が笑わない場面で高見が爆笑する。そしてお互いの笑いのツボの違いに二人で爆笑して、眠くなると高見に寄り掛かって寝た。

「羽山さん起きて下さい。ご飯できましたよ」
「あ……うん」

軽く体をゆすられて目を開けると近くに高見の顔がある。
あぁ……キスか。
高見の首に手を回して体を起こしながら少し首を伸ばして高見の唇に触れた。

「おはよ……うっ!」

驚いた顔をした高見を見て一気に覚醒した。

「あ、悪い。完全に寝ぼけてた」
「いや、いいですけど。羽山さんからしてくれると思わなかったのでびっくりしました」
「あ……そう?」

ヤバい。たった一日で高見とキスをすることに随分慣れた気がする。男同士だし、恋人同士でもないのに。

この休みの過ごし方が今まで一緒に過ごした誰よりも恋人っぽい過ごし方だったことに気が付いたのはこの日から数日たってからだった。




しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

オッサン課長のくせに、無自覚に色気がありすぎる~ヨレヨレ上司とエリート部下、恋は仕事の延長ですか?

中岡 始
BL
「新しい営業課長は、超敏腕らしい」 そんな噂を聞いて、期待していた橘陽翔(28)。 しかし、本社に異動してきた榊圭吾(42)は―― ヨレヨレのスーツ、だるそうな関西弁、ネクタイはゆるゆる。 (……いやいや、これがウワサの敏腕課長⁉ 絶対ハズレ上司だろ) ところが、初めての商談でその評価は一変する。 榊は巧みな話術と冷静な判断で、取引先をあっさり落としにかかる。 (仕事できる……! でも、普段がズボラすぎるんだよな) ネクタイを締め直したり、書類のコーヒー染みを指摘したり―― なぜか陽翔は、榊の世話を焼くようになっていく。 そして気づく。 「この人、仕事中はめちゃくちゃデキるのに……なんでこんなに色気ダダ漏れなんだ?」 煙草をくゆらせる仕草。 ネクタイを緩める無防備な姿。 そのたびに、陽翔の理性は削られていく。 「俺、もう待てないんで……」 ついに陽翔は榊を追い詰めるが―― 「……お前、ほんまに俺のこと好きなんか?」 攻めるエリート部下 × 無自覚な色気ダダ漏れのオッサン上司。 じわじわ迫る恋の攻防戦、始まります。 【最新話:主任補佐のくせに、年下部下に見透かされている(気がする)ー関西弁とミルクティーと、春のすこし前に恋が始まった話】 主任補佐として、ちゃんとせなあかん── そう思っていたのに、君はなぜか、俺の“弱いとこ”ばっかり見抜いてくる。 春のすこし手前、まだ肌寒い季節。 新卒配属された年下部下・瀬戸 悠貴は、無表情で口数も少ないけれど、妙に人の感情に鋭い。 風邪気味で声がかすれた朝、佐倉 奏太は、彼にそっと差し出された「ミルクティー」に言葉を失う。 何も言わないのに、なぜか伝わってしまう。 拒むでも、求めるでもなく、ただそばにいようとするその距離感に──佐倉の心は少しずつ、ほどけていく。 年上なのに、守られるみたいで、悔しいけどうれしい。 これはまだ、恋になる“少し前”の物語。 関西弁とミルクティーに包まれた、ふたりだけの静かな始まり。 (5月14日より連載開始)

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

経理部の美人チーフは、イケメン新人営業に口説かれています――「凛さん、俺だけに甘くないですか?」年下の猛攻にツンデレ先輩が陥落寸前!

中岡 始
BL
社内一の“整いすぎた男”、阿波座凛(あわざりん)は経理部のチーフ。 無表情・無駄のない所作・隙のない資料―― 完璧主義で知られる凛に、誰もが一歩距離を置いている。 けれど、新卒営業の谷町光だけは違った。 イケメン・人懐こい・書類はギリギリ不備、でも笑顔は無敵。 毎日のように経費精算の修正を理由に現れる彼は、 凛にだけ距離感がおかしい――そしてやたら甘い。 「また会えて嬉しいです。…書類ミスった甲斐ありました」 戸惑う凛をよそに、光の“攻略”は着実に進行中。 けれど凛は、自分だけに見せる光の視線に、 どこか“計算”を感じ始めていて……? 狙って懐くイケメン新人営業×こじらせツンデレ美人経理チーフ 業務上のやりとりから始まる、じわじわ甘くてときどき切ない“再計算不能”なオフィスラブ!

【完結】君を上手に振る方法

社菘
BL
「んー、じゃあ俺と付き合う?」 「………はいっ?」 ひょんなことから、入学して早々距離感バグな見知らぬ先輩にそう言われた。 スクールカーストの上位というより、もはや王座にいるような学園のアイドルは『告白を断る理由が面倒だから、付き合っている人がほしい』のだそう。 お互いに利害が一致していたので、付き合ってみたのだが―― 「……だめだ。僕、先輩のことを本気で……」 偽物の恋人から始まった不思議な関係。 デートはしたことないのに、キスだけが上手くなる。 この関係って、一体なに? 「……宇佐美くん。俺のこと、上手に振ってね」 年下うさぎ顔純粋男子(高1)×精神的優位美人男子(高3)の甘酸っぱくじれったい、少しだけ切ない恋の話。 ✧毎日2回更新中!ボーナスタイムに更新予定✧ ✧お気に入り登録・各話♡・エール📣作者大歓喜します✧

【完結】※セーブポイントに入って一汁三菜の夕飯を頂いた勇者くんは体力が全回復します。

きのこいもむし
BL
ある日突然セーブポイントになってしまった自宅のクローゼットからダンジョン攻略中の勇者くんが出てきたので、一汁三菜の夕飯を作って一緒に食べようねみたいなお料理BLです。 自炊に目覚めた独身フリーターのアラサー男子(27)が、セーブポイントの中に入ると体力が全回復するタイプの勇者くん(19)を餌付けしてそれを肴に旨い酒を飲むだけの逆異世界転移もの。 食いしん坊わんこのローグライク系勇者×料理好きのセーブポイント系平凡受けの超ほんわかした感じの話です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

Take On Me

マン太
BL
 親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。  初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。  岳とも次第に打ち解ける様になり…。    軽いノリのお話しを目指しています。  ※BLに分類していますが軽めです。  ※他サイトへも掲載しています。

完結|好きから一番遠いはずだった

七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。 しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。 なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。 …はずだった。

処理中です...