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23. 伝えたのちの迷子
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【ホールの隣の公園で待ってる】
高見にエインを送って1時間が過ぎた。仕事が長引いているのだろう。22時の公園は人気がなくひっそりとしていた。街灯がやんわりと当たるベンチに座って高見がいる轟ホールを眺めている。途中、なんとなく一緒に飲もうと思って買ったコーヒーはすっかり常温になってしまった。
ホールから走ってくる人影が見える。その影はザッザッと足音を立て僕の前に立った。
「羽山さんっ」
「おぉ、急に呼び出してごめん」
「こんな人気のないところにいたら危ないじゃないですか!」
「ははは、僕、男だよ」
「そんなこと……知ってますよ」
高見が下を向き、砂を踏みしめるように立ち直した。ザッと砂が鳴る。
「俺……別れたくないです」
「何言って……」
「羽山さんが俺のこと好きになってくれるように頑張りますから」
あぁ、もう。
なんで僕、こんなこと高見に言わせてるんだよ。
「好きだよ」
「え?」
絞り出すように別れたくないと呟いた高見を見て胸が痛くなった。
「高見のことが好きだ。付き合うって決めた時から、いや、本当はその少し前から高見のことが好きだ。今でも」
「……本当ですか?」
「こんなこと嘘でいう程、性格は悪くないつもりだけど」
高見はふぅ、と息を吐くと僕の隣に座った。
「良かった……。本当に良かった」
視界に入った高見の手が微かに震えている。
「俺、羽山さんを脅して付き合ってもらってたから、別れたいって言われるのだとばかり思って……ははは」
僕はたまらなくなって高見の手を握った。
「ごめん。言葉足らずだった。僕、ずっと高見に自分の気持ちを伝えたとばかり思いこんでいて。ずっと不安だったよね?」
高見が僕を見る。唇が動いて何かを話そうとしたのに言葉が声にならなくて、泣きそうに表情を歪めてほほ笑んだ。
「もう不安にならなくていいから。」
「……はい」
僕は高見が落ち着くまでずっと手を握っていた。
「コンビニでも寄って帰ろうか?」
「一緒にいていいんですか?」
僕が好きだと告げてから高見は体のいたるところが柔らかくなったみたいになって、いつもの頼れる自信に溢れた男とは正反対だ。
「僕が一緒にいたいんだ」
「……夢だったらどうしよう」
「じゃあ、目が覚めるたびに言う」
「なんか、今日の羽山さん、変です」
「ん~どこが?」
「いつもは可愛いのに今日はかっこいい」
「むぅ、僕だってカッコいい日もあるんだよ」
大きな通りを避けて人通りの少ない道を選んで手を繋いだ。コンビニで水と高見の下着を買って家に帰ると、もう日付が変わろうかという時間帯だった。
「高見、明日は何時から仕事?」
「明日は13時です。高見さんは?」
「9時。だから8時には家を出なきゃだ。高見は家でゆっくりしててもいいよ」
鍵、持ってるだろ? と続けると高見は嬉しそうに頷いた。
二人で軽くシャワーを浴びている間、高見はいつものようにエロエロになることもなく、その代わり目が合うたびに何度もキスをした。お風呂から上がればお互いの髪の毛を乾かし合って、こんなに穏やかな日は付き合って初めてかもしれない。
「あれ? 缶コーヒー、珍しいですね」
鞄から取り出して、テーブルに置いた缶コーヒーを見て、高見が言う。それもそうだ。外出先でコーヒーを飲むことはあっても、家で僕がコーヒーを飲むことはあまりない。
「あぁ、今日、公園で高見と飲もうと思ったんだけど渡しそびれたやつ」
「告白してくれた時ですか?」
「そう。よく考えたら自分の分までコーヒーにすることなかったのに、なんか焦ってて。これあげるよ。明日でも飲んで」
「ありがとうございます。ねぇ、羽山さん」
「ん~?」
「今日は抱きしめて眠ってもいい?」
「どうぞ」
高見に向かって両手を広げる。
「ぷぷぷ、やっぱり、羽山さんは可愛いです」
「なんだよ、もう」
高見は僕に近づくとお姫様抱っこで僕を持ち上げた。
「お姫様抱っこって……。重くないのかよ」
「重いですけど」
「重いんかいっ」
「でも、それ以上に愛おしい」
「ばっ、何言って」
ベッドに下ろされて高見の唇が迫ったのが見えて、目を閉じた。このまま、もしかして……という僕の予想は見事に外れ、高見の唇がそっと離れる。
「おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
高見にちゃんと思いを伝えてから1か月。4月になり仕事も忙しくなり始めたが、高見のご飯のお陰で胃の調子も良い。忙しいながらも時間を見つけては高見と会っており、交際は順調と言える。たったひとつを覗いては。
「で、今日はどうしたって?」
「想いを伝えて上手くいったんですけど」
「……なんだ。上手くいったのか」
亨さんはチッと舌打ちをした。
「もう1か月もセックスしてないんです~。前はあんなにしてたのに、ど、どうしてですかね?」
「あぁ~ん、そんなの分かんねぇよ」
「……なんか、亨さん、今日は冷たくないですか?なんか雑な気がする」
「そりゃ雑にもなるでしょー。下心盛り盛りで相談に乗れば上手くいったようだし、しかも今度は1か月セックスしてないって悩みだなんて。もうさ、自分から誘ったらいいじゃん」
「自分から……誘う?」
「そうだよ。誘ったことないの?」
「ないっ、ないっ。そんなの無理っ」
「女性の時は?自分から誘ったりしなかったの?」
「…してない。積極的な子だったし、その頃はそんなに欲もなくて」
「へぇー、今は違うんだ?」
亨さんの言葉にカっと顔が熱くなった。
「良太ってネコでしょ?」
「ネコ?」
「入れられる方ってこと」
入れられる、という言い方に高見の声が重なって落ち着かなくなってビールを飲んだ。
「あーあ、やっぱ良太は可愛いなぁ。なんかエロいし。今の彼と別れて体が寂しくなった時は僕が突っ込んであげるね」
「突っ込……、亨さんっ!! わ、別れたりしませんからっ」
「分からないよ~。絶対なんてないんだから。出会っちゃったらどうしようもないでしょ」
「そんな怖いこと言わないでくださいよ」
「ちょっとした意地悪だよ。だってなんだかんだ幸せそうじゃん。俺だって幸せになりたいの」
高見にエインを送って1時間が過ぎた。仕事が長引いているのだろう。22時の公園は人気がなくひっそりとしていた。街灯がやんわりと当たるベンチに座って高見がいる轟ホールを眺めている。途中、なんとなく一緒に飲もうと思って買ったコーヒーはすっかり常温になってしまった。
ホールから走ってくる人影が見える。その影はザッザッと足音を立て僕の前に立った。
「羽山さんっ」
「おぉ、急に呼び出してごめん」
「こんな人気のないところにいたら危ないじゃないですか!」
「ははは、僕、男だよ」
「そんなこと……知ってますよ」
高見が下を向き、砂を踏みしめるように立ち直した。ザッと砂が鳴る。
「俺……別れたくないです」
「何言って……」
「羽山さんが俺のこと好きになってくれるように頑張りますから」
あぁ、もう。
なんで僕、こんなこと高見に言わせてるんだよ。
「好きだよ」
「え?」
絞り出すように別れたくないと呟いた高見を見て胸が痛くなった。
「高見のことが好きだ。付き合うって決めた時から、いや、本当はその少し前から高見のことが好きだ。今でも」
「……本当ですか?」
「こんなこと嘘でいう程、性格は悪くないつもりだけど」
高見はふぅ、と息を吐くと僕の隣に座った。
「良かった……。本当に良かった」
視界に入った高見の手が微かに震えている。
「俺、羽山さんを脅して付き合ってもらってたから、別れたいって言われるのだとばかり思って……ははは」
僕はたまらなくなって高見の手を握った。
「ごめん。言葉足らずだった。僕、ずっと高見に自分の気持ちを伝えたとばかり思いこんでいて。ずっと不安だったよね?」
高見が僕を見る。唇が動いて何かを話そうとしたのに言葉が声にならなくて、泣きそうに表情を歪めてほほ笑んだ。
「もう不安にならなくていいから。」
「……はい」
僕は高見が落ち着くまでずっと手を握っていた。
「コンビニでも寄って帰ろうか?」
「一緒にいていいんですか?」
僕が好きだと告げてから高見は体のいたるところが柔らかくなったみたいになって、いつもの頼れる自信に溢れた男とは正反対だ。
「僕が一緒にいたいんだ」
「……夢だったらどうしよう」
「じゃあ、目が覚めるたびに言う」
「なんか、今日の羽山さん、変です」
「ん~どこが?」
「いつもは可愛いのに今日はかっこいい」
「むぅ、僕だってカッコいい日もあるんだよ」
大きな通りを避けて人通りの少ない道を選んで手を繋いだ。コンビニで水と高見の下着を買って家に帰ると、もう日付が変わろうかという時間帯だった。
「高見、明日は何時から仕事?」
「明日は13時です。高見さんは?」
「9時。だから8時には家を出なきゃだ。高見は家でゆっくりしててもいいよ」
鍵、持ってるだろ? と続けると高見は嬉しそうに頷いた。
二人で軽くシャワーを浴びている間、高見はいつものようにエロエロになることもなく、その代わり目が合うたびに何度もキスをした。お風呂から上がればお互いの髪の毛を乾かし合って、こんなに穏やかな日は付き合って初めてかもしれない。
「あれ? 缶コーヒー、珍しいですね」
鞄から取り出して、テーブルに置いた缶コーヒーを見て、高見が言う。それもそうだ。外出先でコーヒーを飲むことはあっても、家で僕がコーヒーを飲むことはあまりない。
「あぁ、今日、公園で高見と飲もうと思ったんだけど渡しそびれたやつ」
「告白してくれた時ですか?」
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「ありがとうございます。ねぇ、羽山さん」
「ん~?」
「今日は抱きしめて眠ってもいい?」
「どうぞ」
高見に向かって両手を広げる。
「ぷぷぷ、やっぱり、羽山さんは可愛いです」
「なんだよ、もう」
高見は僕に近づくとお姫様抱っこで僕を持ち上げた。
「お姫様抱っこって……。重くないのかよ」
「重いですけど」
「重いんかいっ」
「でも、それ以上に愛おしい」
「ばっ、何言って」
ベッドに下ろされて高見の唇が迫ったのが見えて、目を閉じた。このまま、もしかして……という僕の予想は見事に外れ、高見の唇がそっと離れる。
「おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
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「で、今日はどうしたって?」
「想いを伝えて上手くいったんですけど」
「……なんだ。上手くいったのか」
亨さんはチッと舌打ちをした。
「もう1か月もセックスしてないんです~。前はあんなにしてたのに、ど、どうしてですかね?」
「あぁ~ん、そんなの分かんねぇよ」
「……なんか、亨さん、今日は冷たくないですか?なんか雑な気がする」
「そりゃ雑にもなるでしょー。下心盛り盛りで相談に乗れば上手くいったようだし、しかも今度は1か月セックスしてないって悩みだなんて。もうさ、自分から誘ったらいいじゃん」
「自分から……誘う?」
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「ないっ、ないっ。そんなの無理っ」
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「ネコ?」
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