【完結】スーツ男子の歩き方

SAI

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24. セックスレス

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 誘う……。誘う……。自分から誘う……。
そう心の中で唱えながら高見を家に招き入れたのが20時すぎ。風呂に入ると言わないところを見ると高見は22時には帰るはずだ。現在21時。誘うならば今だ。

「高見、たまにはマッサージでもしようか?」
「いいんですか?」
「うん、疲れてるだろうし」

高見をベッドにうつぶせに寝かせて、背中に跨る。背骨に沿ってぎゅううっと親指で押していくと高見が気持ちよさそうに息を吐いた。

「気持ちいい?」
「うん、すごく……気持ちいいです」

高見の体にこうして触るのは久しぶりのような気がする。この体に僕は抱かれているのか……。この腕に抱きしめられて、この指でアナルをかき混ぜられて……って何考えてんだ、僕。変なことを考えたせいで僕の中心に熱が集まり始めた。

やばっ……。なんか立ってきた。

恥ずかしくなって中心が高見に触れてしまわない様に腰を高くしてマッサージを続けていると「俺もマッサージしますよ」と高見が体を起こした。

「あ、うん。頼む」
立った中心を悟られない様に慌ててうつ伏せに寝ると高見の少し骨ばった手が僕の背中を押した。

「痛くないですか?」
「うん、大丈夫」

肩甲骨の辺りから指圧しながら高見の手が下がり腰を押す。僕の敏感になり始めた部分がベッドに押し付けられ、マッサージとは別の気持ち良さに吐き出す息に熱がこもってしまう。

「気持ちいいですか?」
さっき僕も高見にかけた言葉だ。だが今の僕はその言葉にさえ煽られてしまう。

やばい……。僕だけ別の意味で気持ち良くなってきた。高見に知られたら……いや、でもいいんじゃないか?マッサージで高見をその気にさせるつもりだったから計画とは少し違うけど、今なら誘えそうな気がする。

「た、高見ぃ」
振り向いて高見を呼ぶ。したい、とは口に出せなくても僕の精一杯のお誘いだった。

「あ、俺、そろそろ帰らないと。羽山さん、じゃ、また」
高見は僕に軽くキスをすると、荷物を掴みそそくさと帰っていった。

「え、えぇーっ!!」

僕の計画は成功していたはずだ。なぜなら、高見を誘おうと体を起こしたとき、しっかりと反応していた高見のソコを僕は見たからだ。それなのに、何もせずに帰るなんて。しかも、時間はまだ21時半だ。

飽きられた?

1か月前に告白した時はあんなに喜んでくれたのに。いや、でも帰り際にキスはしてくれたし、エインの回数も着信の数も少しは減ったけど……。減ったけど、ゼロじゃない。会った時の優しさは全然変わってない。

飽きたのは僕とのセックスに、だったりして。
え、嘘……。

自分で思った言葉に呆然とした。




セックスレス……日本性科学会によると「病気など特別な事情がないのに1か月以上性行為がないカップル」と定義されている、らしい。

昨日、ショックのあまりについネットで検索してしまった。ついでにいえば、同じページにセックスレスは浮気や不倫に繋がることが多いという記載も目にしてしまい、僕の心中は穏やかではない。

セックスをしなくなってから今日で1か月と1週間。これは本格的にヤバイんじゃ……。そんな考えが鎌首をもたげたある日、それは突然やってきた。




「山下会長、本日はありがとうございました」
「おぉ~、いやぁ、今日も楽しかったよ。羽山君はいいお店を知っているねぇ」
「お楽しみ頂けて良かったです。またお誘いさせてください」
「わーった、わーった」

酔っ払いの山下会長をタクシーに押し込んでタクシーが見えなくなるまで頭を下げた。

ふぅ、やっと終わった……。
21時か。高見は用事が出来て家に来られないって連絡があったから、久しぶりに映画でも観て帰るかな。明日は休みだし。

アクションにしようか、サスペンスにしようか、いや、コメディがいいかも。そんなことを考えながら映画館へ向かっていると少し離れたところの人影が目に入った。シルエットが高見によく似ていたからだ。二人とも長身で、高見によく似ている方は服装まで高見によく似ていて、もう一人はモデルのようなお洒落な着こなしだ。お店から出てきたその男たちは仲良さげに会話をし、モデル風の男が高見に似ている男にキスをした。

やべー、これは見てはいけないやつだ。

慌てて目を反らすも、男同士でキスってことは僕と同じかと思うと妙な親近感が湧く。そしてどんな人か興味も湧く。

高見に似ている男はキスをされても動じず、ぽん、と相手の男の頭を撫で、もう一人の男はその手を掴むとお店の中に引っ張った。僕と男たちの距離が近づく。

え……高見……?

お店の灯りで見えた横顔は確かに高見だった。どおりで服装も似ているはずだ。高見は立ち止まる僕に気付かず、モデル風の男に引っ張られるようにして店の中に入っていった。


高見が浮気?
そうだよ、どう考えたって浮気だろ?

映画を観る気など起きず、呆然としたまま家に着いた。今見てきたとこがまだ信じられない気がする。だが、脳裏にはしっかり高見が男とキスをする姿が焼き付いていた。

高見、嫌がったりしてなかった。抵抗してないってことは、キスしてもいい間柄なのだろう。一瞬、外人説も考えたが挨拶のキスはほっぺだし、何よりもう一人の男はちゃんと日本人だった。

でもきっと何か、どうしようもない理由があって……とかさ。いや、キスしなきゃいけない理由って何だよ。

「はは……なんか、必死に間違いだっていう理由を探してる。馬鹿みたい」

『出会ってしまったら仕方ないじゃん』
こんな時に亨さんの言葉を思い出す。

僕よりもっと好きな人に出会ってしまった。でも高見は優しいから別れを言い出せなくて、そんな状態でセックスをできるはずもなく……ってそういうことなのかもしれない。エインの減少も、連絡したい相手が他にできたから。考えれば考えるほど辻褄が合うような気がした。


「どうしよう……僕。どうしたらいいんだろう……」


お酒を流し込んでもなかなか寝付けず、そんな日に限って高見からのエインもない。今もあの男と一緒にいるのだろうか。何度かエインをしようとしては、決定的な何かが送られてきたらなどという考えが浮かんで、携帯を置いてしまう。

結局寝たのは朝になってからだった。


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