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26. 元カレ
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「こんばんはー」
「あらん、薫ちゃんおひさしぶりぃ」
「五郎さん、どうもー」
「相変わらずお洒落ねぇん。今度、あたしの服も見立ててほしぃわぁ~」
「五郎さんはいつも服選びが上手ですよ。自分に何が似合うのかちゃんと分ってます。俺なんか必要ないですよ」
「んもうっ、いつもそうなんだからぁ」
「お、初めて見る子がいる」
そう言って僕を見つめた薫さんを見て、僕の胸はドクンと音を立てた。
あの時、高見と一緒にいた人だ……。
耳が隠れるくらいのミディアムカットの髪の毛は落ちついたブラウン色をしており、くっきりとした奥二重、スラッとした鼻筋、細マッチョなボディ。非の打ちどころのないようなイケメンだ。
「あ、僕、良太って言います」
「こんばんは。俺は薫」
「薫さんはすごくカッコいいですね」
「薫ちゃんはねぇ、モデルさんなのよ。物凄く有名ってわけじゃないけどぅ、ちょっとは名の知れたモデルさん」
「ちょっと五郎さん!もっと素直に褒めて下さいよ。これでも雑誌の表紙を飾ったこともあるんですから」
「あらん、ごめんなさぁい」
五郎さんはクスクス笑いながら言葉だけで謝った。
「良太、気を付けて。薫さんはイケメンでカッコいいけど、すぐ浮気するからね。こういう人を好きになったらしんどいよ」
「こら、カイ。まぁ、確かに今までは浮気することもあったけど、もう浮気はしない。一人にするって決めたんだ」
薫さんはカイの隣に座るとヒデさんにカクテルを注文した。
「一人にするって、また高見君に戻るの?」
高見という名前にぎゅううっと胸が締め付けられる。高見はこんなイケメンに言い寄られているんだ。僕なんて到底かなわないような気がした。
「うん。色々な人と付き合ってみたけどやっぱり高見が一番なんだもん」
「その言葉、何回目ですか?」
カイがむぅっと口をとがらせる。
「4回目、いや5回目かな?」
「高見さんと付き合って浮気して別れて浮気男と付き合って戻る。高見さん結構しんどいと思うんですけど。それに、高見さんって今、付き合ってる人いますよね?」
「ん~、でも祐也はいつも受け入れてくれるもん。この間、キスしたけど抵抗されなかったし。彼氏と別れるのも時間の問題なんじゃないー?」
薫さんの言葉が針の様になって胸に何本も突き刺さってくる。気が付けば僕は立ち上がっていた。
「僕、別れませんから……」
「へっ?」
皆の視線が僕に集まる。僕は薫さんを見つめてしっかりと言い切った。
「僕は高見と別れませんから!」
「えぇーっ!! 良太君の彼氏って高見君なのぅ?」
修羅場的な空気が漂ってお店の空気が固まった。
「ま、まぁ、まぁ、良太君も落ち着いて、一度座りましょうか?薫ちゃん、あなたは向こうででも飲んでなさいなっ」
「嫌です。せっかく祐也の今彼と元彼が揃ったんだし、俺はお話したいけどな」
薫さんの視線が僕を捉える。ここで断ったり、帰ったりすれば負けたことになるような気がした。
「そ、そうですね。飲みましょうか」
隣に座っていたカイが「やめとけよ」と僕に言ったが、僕はその言葉に首を振った。
「ずっと会ってみたいと思ってたんだよね」
薫さんはカイの服を引っ張って立ち上がらせるとカイを自分が座っていた席に移動させ、自分は僕の隣の席に座った。
「お店に連れて来てって頼んでも嫌だって言うし、本当に付き合ってる人がいるのかと疑ってたけど、本当にいたんだ」
薫さんは僕を上から下まで見て、くすっと笑った。
「薫さん、失礼ですよ」
ヒデさんが香さんの前にカクテルを置く。
「だって、普通なんだもん。不細工じゃないけど、イケメンでもない。靴はくたびれてるし、肌つやも良くないし」
「靴が傷んでいるのは営業さんだからですよ。仕事を頑張っている証拠です」
「お、ヒデさん、やっさしーっ。確かに良太は普通かもしれないけど、なんかいいんだよっ。俺は断然、良太派だね」
「カイ、うるさい」
薫さんは指で氷をかき混ぜたあと、その指を舐めた。そして、何か思いついたように僕を見た。
「ねぇ、僕たちがどんな風に付き合ってきたか教えてあげようか?」
聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが交錯するが、過去を聞いてしまえばもはや何の太刀打ちも出来なくなるような気がした。
「いえ、結構です」
「ふふん、俺たちの絆を知るのが怖い?」
「んもうっ、薫ちゃん、もうその辺にしておきなさい。こんなことしてたら高見君に怒られるわよ」
「怒らないよ。祐也は俺を怒ったりしないもん。俺のこと嫌いになれないってそう言ってたし」
「こ、怖くなんかないです」
精一杯の虚勢だった。目に涙が滲んで、視界がぼやける。頭が働かない。でも、何か言おうと口を開きかけた時、背後から目を塞がれた。冷やりとした冷たい手が熱くなった目に心地よい。
「ストップ。薫さん、それくらいにして下さい」
そのまま椅子をくるっと回されて、僕はヒデさんの腕の中にいた。
「もう、いいでしょう?こんなに追い詰めなくても」
「追い詰めてなんかないよ。俺、なにひとつ嘘ついてないし。丁度さ、今日、ここに祐也を呼び出してるんだよね」
もうすぐ来るんじゃないかな、薫さんがそう呟いた瞬間、カランと音がしてドアが開いた。みんなの視線が一斉に入り口に注がれる。
「ひぃいいい~、修羅場はやめてぇ~」
五郎さんの声も虚しく、お店に低い声が響いた。
「何やってるんですか?」
「あ、祐也」
華やかに手を振って笑う薫さんを無視して、高見は真っ直ぐ僕の方へ来た。
「ヒデさん、この手、離してもらえますか。この人、俺のなんで」
「嫌だと言ったら?」
「は?」
高見が不愉快そうに眉間に皺を寄せる。
「高見さん、薫さんとキスしたんでしょう? 良太さんが言っていましたよ。今までだって何度も薫さんとやり直してるんだし、今回も戻ったらどうです?」
ヒデさんの言葉は僕が避けて避けて、避け続けた言葉。怖くて口にできなかった言葉が高見の元へ届いてしまった。僕は高見の反応が怖くて、ヒデさんのシャツをぎゅっと握りしめていた。
「あらん、薫ちゃんおひさしぶりぃ」
「五郎さん、どうもー」
「相変わらずお洒落ねぇん。今度、あたしの服も見立ててほしぃわぁ~」
「五郎さんはいつも服選びが上手ですよ。自分に何が似合うのかちゃんと分ってます。俺なんか必要ないですよ」
「んもうっ、いつもそうなんだからぁ」
「お、初めて見る子がいる」
そう言って僕を見つめた薫さんを見て、僕の胸はドクンと音を立てた。
あの時、高見と一緒にいた人だ……。
耳が隠れるくらいのミディアムカットの髪の毛は落ちついたブラウン色をしており、くっきりとした奥二重、スラッとした鼻筋、細マッチョなボディ。非の打ちどころのないようなイケメンだ。
「あ、僕、良太って言います」
「こんばんは。俺は薫」
「薫さんはすごくカッコいいですね」
「薫ちゃんはねぇ、モデルさんなのよ。物凄く有名ってわけじゃないけどぅ、ちょっとは名の知れたモデルさん」
「ちょっと五郎さん!もっと素直に褒めて下さいよ。これでも雑誌の表紙を飾ったこともあるんですから」
「あらん、ごめんなさぁい」
五郎さんはクスクス笑いながら言葉だけで謝った。
「良太、気を付けて。薫さんはイケメンでカッコいいけど、すぐ浮気するからね。こういう人を好きになったらしんどいよ」
「こら、カイ。まぁ、確かに今までは浮気することもあったけど、もう浮気はしない。一人にするって決めたんだ」
薫さんはカイの隣に座るとヒデさんにカクテルを注文した。
「一人にするって、また高見君に戻るの?」
高見という名前にぎゅううっと胸が締め付けられる。高見はこんなイケメンに言い寄られているんだ。僕なんて到底かなわないような気がした。
「うん。色々な人と付き合ってみたけどやっぱり高見が一番なんだもん」
「その言葉、何回目ですか?」
カイがむぅっと口をとがらせる。
「4回目、いや5回目かな?」
「高見さんと付き合って浮気して別れて浮気男と付き合って戻る。高見さん結構しんどいと思うんですけど。それに、高見さんって今、付き合ってる人いますよね?」
「ん~、でも祐也はいつも受け入れてくれるもん。この間、キスしたけど抵抗されなかったし。彼氏と別れるのも時間の問題なんじゃないー?」
薫さんの言葉が針の様になって胸に何本も突き刺さってくる。気が付けば僕は立ち上がっていた。
「僕、別れませんから……」
「へっ?」
皆の視線が僕に集まる。僕は薫さんを見つめてしっかりと言い切った。
「僕は高見と別れませんから!」
「えぇーっ!! 良太君の彼氏って高見君なのぅ?」
修羅場的な空気が漂ってお店の空気が固まった。
「ま、まぁ、まぁ、良太君も落ち着いて、一度座りましょうか?薫ちゃん、あなたは向こうででも飲んでなさいなっ」
「嫌です。せっかく祐也の今彼と元彼が揃ったんだし、俺はお話したいけどな」
薫さんの視線が僕を捉える。ここで断ったり、帰ったりすれば負けたことになるような気がした。
「そ、そうですね。飲みましょうか」
隣に座っていたカイが「やめとけよ」と僕に言ったが、僕はその言葉に首を振った。
「ずっと会ってみたいと思ってたんだよね」
薫さんはカイの服を引っ張って立ち上がらせるとカイを自分が座っていた席に移動させ、自分は僕の隣の席に座った。
「お店に連れて来てって頼んでも嫌だって言うし、本当に付き合ってる人がいるのかと疑ってたけど、本当にいたんだ」
薫さんは僕を上から下まで見て、くすっと笑った。
「薫さん、失礼ですよ」
ヒデさんが香さんの前にカクテルを置く。
「だって、普通なんだもん。不細工じゃないけど、イケメンでもない。靴はくたびれてるし、肌つやも良くないし」
「靴が傷んでいるのは営業さんだからですよ。仕事を頑張っている証拠です」
「お、ヒデさん、やっさしーっ。確かに良太は普通かもしれないけど、なんかいいんだよっ。俺は断然、良太派だね」
「カイ、うるさい」
薫さんは指で氷をかき混ぜたあと、その指を舐めた。そして、何か思いついたように僕を見た。
「ねぇ、僕たちがどんな風に付き合ってきたか教えてあげようか?」
聞きたい気持ちと聞きたくない気持ちが交錯するが、過去を聞いてしまえばもはや何の太刀打ちも出来なくなるような気がした。
「いえ、結構です」
「ふふん、俺たちの絆を知るのが怖い?」
「んもうっ、薫ちゃん、もうその辺にしておきなさい。こんなことしてたら高見君に怒られるわよ」
「怒らないよ。祐也は俺を怒ったりしないもん。俺のこと嫌いになれないってそう言ってたし」
「こ、怖くなんかないです」
精一杯の虚勢だった。目に涙が滲んで、視界がぼやける。頭が働かない。でも、何か言おうと口を開きかけた時、背後から目を塞がれた。冷やりとした冷たい手が熱くなった目に心地よい。
「ストップ。薫さん、それくらいにして下さい」
そのまま椅子をくるっと回されて、僕はヒデさんの腕の中にいた。
「もう、いいでしょう?こんなに追い詰めなくても」
「追い詰めてなんかないよ。俺、なにひとつ嘘ついてないし。丁度さ、今日、ここに祐也を呼び出してるんだよね」
もうすぐ来るんじゃないかな、薫さんがそう呟いた瞬間、カランと音がしてドアが開いた。みんなの視線が一斉に入り口に注がれる。
「ひぃいいい~、修羅場はやめてぇ~」
五郎さんの声も虚しく、お店に低い声が響いた。
「何やってるんですか?」
「あ、祐也」
華やかに手を振って笑う薫さんを無視して、高見は真っ直ぐ僕の方へ来た。
「ヒデさん、この手、離してもらえますか。この人、俺のなんで」
「嫌だと言ったら?」
「は?」
高見が不愉快そうに眉間に皺を寄せる。
「高見さん、薫さんとキスしたんでしょう? 良太さんが言っていましたよ。今までだって何度も薫さんとやり直してるんだし、今回も戻ったらどうです?」
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