いつかの白のお姫様

由井

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一章

祈り

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祈りは天へと空高く、

想いは深く海のよう、

けれども愛は夢の如く、


儚く散りゆく華の雫は落ちてゆく。


誰にも拭われぬままに、






※※




お姫様は怯えつつも、何処かで王様はお妃様と同じく愛し合っているのだと信じておりました。

「お母様、お母様は昔歌姫様でしたの? お父様がお母様はそれは美しい歌姫様だったと教えてくださいましたの。何かお歌を歌ってくださいませ。」

無邪気なお姫様は、お妃様に可愛らしいおねだりをしました。

しかしそのおねだりを聞くとお妃様は一瞬驚いたかと思うと、何処か憂いた笑みを浮かべそっとお姫様を撫でながら諭すように言いました。

「可愛いお姫様、どうか許しておくれ。私はもう歌など歌えないの、歌などであの人は私を愛してはくれないわ。あぁ、可愛らしいお姫様。どうかそんな悲しい顔をしないで頂戴。」

お姫様はお妃様が歌ってくれないことよりも、お妃様をそんな悲しい顔にさせてしまったことに涙が溢れてきました。

「お母様ごめんなさい、もう歌をせがんだりしないわ。そうだ、お母様覚えてらっしゃる? 私もうすぐ16になるわ、そしたらお母様の愛を半分分けてくださる約束でしたでしょう?」

「ええ、勿論覚えているわ可愛いお姫様。 そうね16になる朝、日告げ鳥の鳴く前に私の塔へいらっしゃい。そこで約束を果たしましょう。」

「本当?! まぁ、それは楽しみだわ!早起きしなくてはいけないわね、それでねお母様!お母様が私に半分愛をくださるでしょう?だからね、お母様には私の愛を半分あげるわ。素敵だと思わない?」

ワクワクと抑えきれない興奮を、お姫様はお妃様に抱きつき提案した。

その提案にお妃様は憂いた瞳に僅かな雫を浮かべ、微笑みつつ抱き返した。

「それは素敵な贈り物だわッ・・・! 可愛い貴女の愛を私に貰えるだなんて、待ちきれないほど楽しみだわ。」

お妃様の言葉にお姫様は王様の言葉を忘れ、16になるのが待ち遠しくなりました。

そんなお姫様の様子を見て喜びを隠しきれない背にお妃様は、透き通るほどの優しい声音でそっと呟きました。




「ああ、わたしの可愛いお姫様・・・どうかその愛で私を癒してちょうだい。私は愛の中で生きていきたい、せめて貴女を愛したままの私でいられたらそれで構わない。」


一つの祈りと共に、一筋の雫が月明かりに反射した。
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