宇宙でひとつの、ラブ・ソング

indi子/金色魚々子

文字の大きさ
15 / 32
第四章 はじめての【友達】

第四章 はじめての【友達】 ④

しおりを挟む


「中々協力できなくて、ごめん。中身飲むの時間かかっちゃって」


 佐竹は眼鏡を直しながら小さく微笑む。

「ううん! こっちこそ助かったよ~! 良かった~今俺が爆発させちゃったから、材料無くなってたんだよ!」

「うん、見てた」

「え? あれ見てたの?」

「そりゃ、楽しそうにやってるとこ見てたら……僕だって気になるよ」


 あれが、佐竹には楽しそうに見えたらしい。視点が変われば、感じるものも変わる。そういう事だろう。


「やべーとこ見られちゃったな~。ま、これからまた頑張って作るからさ、応援してくれよな!」

「あ、あのさ!」


 三原の言葉を遮るように、佐竹は大きな声を出す。思わず二人で目を丸めて彼を見ると、耳まで赤くなった佐竹は、ゆっくりと口を開いた。


「僕も、それやってもいいかな?」

「え?」

「だから、ペットボトルロケット、作るの……」


 三原と僕は顔を見合わせる。そして、三原が腕で大きく丸を作る。


「もちろん! 全然オッケー! てか、人が増えたらすげー助かるよ。な、野々口」

「う、うん」

「三人でがんばろーぜ、佐竹!」

「うん! もちろん」


 佐竹はキラキラとした目を僕たちに向ける、楽しくて仕方がない様子だ。佐竹がやるなら僕は抜けてもいいか? なんて聞きづらい雰囲気だ。


「それで、何からやればいい?」

「野々口が知ってる」


 僕はカバンの中から設計図を取り出そうとする。しかし、ふとあることに気づいた。


「あ、取りに行くの忘れてた」

「え?」

「前書いたメモ。あれがあった方がわかりやすいと思ったんだけど……」


 作り方を書いたメモの事をすっかり忘れていた。あれ以降、残りのメモやインターネットの情報を元に制作を進めていたせいでもある。


「ああ、あれ。まだ取りに行ってなかったのか」

「今度行く、今日はもう疲れた」

「まあ、せっかく作ったもの爆発しちゃった疲れるだろうね……いいな、次打ち上げる時は僕も呼んでよね」

「モチロン! でも、佐竹、よくやる気になったな。結構面倒だぞ、これ」

「面倒だろうけど……実は、ちょっとやってみたかったんだ」

「なんだよ! それなら早く言えって!」


 三原の意見に同感だ。佐竹が早く手をあげてさえくれれば、僕だってこんな面倒な事しなくても済んだ。


「だって、雰囲気的に手上げづらかったし。それに、すぐ三原と野々口君に決まっちゃって、口挟む暇もないというか……」

「そんなこと、気にしなくてもいいのにな!」


 三原が僕に同意を求めるので、深く頷いた。

「それなら、続きはまた今度。その間に子ども図書館】寄って、メモ探してくる」

「【子ども図書館】?」

「野々口がよく行くんだって。そこにペットボトルロケットの本があって、前調べるのに使ったんだよ」

「へぇ~、ねえ、野々口君。僕もそこ一緒に行ってもいい?」

「え? まあ、いいけど……」

「え! それなら俺も行く! てか今日行っちゃおうよ! 野々口、道案内よろしく!」

「……はあ」


 三原も佐竹も、何だか旅行に行く前のようにウキウキしている。何がそんなに楽しいのか僕にはさっぱり分からないまま、僕はその二人について行った。佐竹は自転車を使っていないため、僕たちは自転車を押して【子ども図書館】に向かっていた。


「じゃあ、作るのはほとんど野々口君がやってたの?」

「まあ……三原はすぐミスするから」

「俺、ペットボトル回収と発射係」

「発射係良いな、僕もやりたい」

「じゃあ、今度やらせてやるよ。あ、でも本番は俺な」

「ちゃんと飛べる機体が完成したらな」


 僕がくぎを刺すと、三原はいらずらめいたような笑みを浮かべる。先ほどの反省していた態度はどこに行ったのか……仲間が増えて嬉しくなって、消えてしまったようだ。


「野々口君、器用だね。僕でもできるかな」

「そんなに難しいものじゃないから、大丈夫だと思うけど。ただ、出来るだけ丁寧に作って欲しい。雑に羽を付けたりテープ貼ったりすると空気抵抗が発生するから……本物のロケット作ってる気持ちで」

「本物のロケット!?」


 口から滑り出した言葉を、佐竹はするっと簡単に拾う。笑われるものだと思って「冗談だ」と付け足そうとすると、佐竹は満面の笑みを浮かべて「うん!」と頷いた!


「いいね、本物のロケット! そう思うことにする!」

「何? 佐竹ロケットとか好きなの?」

 三原がそう聞くと、佐竹はキラキラとした瞳を三原に向ける。


「うん! だからペットボトルロケットとかもやってみたくてさ……かっこいいよね~、僕一度だけ、衛星の打ち上げ観に行ったことがあるんだ」

「……種子島で?」

「そう! すごかったよ~、思ったよりも大きかったし。それに、発射台からすごい離れてるのに、エンジンの熱風とか音とかがぶわっと押し寄せてくる感じ。あれは一度経験しておいた方がいいよ!」


 佐竹の語り口に力がこもっていく、本当に好きなんだなっていうのが僕にも伝わってきた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ループ25 ~ 何度も繰り返す25歳、その理由を知る時、主人公は…… ~

藤堂慎人
ライト文芸
主人公新藤肇は何度目かの25歳の誕生日を迎えた。毎回少しだけ違う世界で目覚めるが、今回は前の世界で意中の人だった美由紀と新婚1年目の朝に目覚めた。 戸惑う肇だったが、この世界での情報を集め、徐々に慣れていく。 お互いの両親の問題は前の世界でもあったが、今回は良い方向で解決した。 仕事も順調で、苦労は感じつつも充実した日々を送っている。 しかし、これまでの流れではその暮らしも1年で終わってしまう。今までで最も良い世界だからこそ、次の世界にループすることを恐れている。 そんな時、肇は重大な出来事に遭遇する。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ヤクザに医官はおりません

ユーリ(佐伯瑠璃)
ライト文芸
彼は私の知らない組織の人間でした 会社の飲み会の隣の席のグループが怪しい。 シャバだの、残弾なしだの、会話が物騒すぎる。刈り上げ、角刈り、丸刈り、眉毛シャキーン。 無駄にムキムキした体に、堅い言葉遣い。 反社会組織の集まりか! ヤ◯ザに見初められたら逃げられない? 勘違いから始まる異文化交流のお話です。 ※もちろんフィクションです。 小説家になろう、カクヨムに投稿しています。

皆に優しい幸崎さんは、今日も「じゃない方」の私に優しい

99
ライト文芸
奥手で引っ込み思案な新入社員 × 教育係のエリート社員 佐倉美和(23)は、新入社員研修時に元読者モデルの同期・橘さくらと比較され、「じゃない方の佐倉」という不名誉なあだ名をつけられてしまい、以来人付き合いが消極的になってしまっている。 そんな彼女の教育係で営業部のエリート・幸崎優吾(28)は「皆に平等に優しい人格者」としてもっぱらな評判。 美和にも当然優しく接してくれているのだが、「それが逆に申し訳なくて辛い」と思ってしまう。 ある日、美和は学生時代からの友人で同期の城山雪の誘いでデパートのコスメ売り場に出かけ、美容部員の手によって別人のように変身する。 少しだけ自分に自信を持てたことで、美和と幸崎との間で、新しい関係が始まろうとしていた・・・ 素敵な表紙はミカスケ様のフリーイラストをお借りしています。 http://misoko.net/ 他サイト様でも投稿しています。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

処理中です...