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第七章 宇宙でひとつの、ラブ・ソング ~樹里~
第七章 宇宙でひとつの、ラブ・ソング ~樹里~ ③
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私は自分の頬に触れる。そんなこと言われても、自分の顔は自分では見えない。
「どういう事?」
「ふっきれたというか、覚悟を決めたというか……」
「なんか、樹里ちゃん……綺麗になった?」
「えぇっ!? まさか、そんなに褒めないでよ」
顔が熱くなっていくのを感じていた。恥ずかしくて、ちょっと胸が疼く。
「何よ~。私たちが心配してる間、樹里ちゃんはかっこいい人と一緒だったの?」
「違うけど。あの……でも、私、出会っちゃったかも」
いつも私の背中を押してくれていた人。声しか聞いていないけれど、私はもうはっきりと言える。さっきの彼が、あのノートの相手だという事を。
奇跡のような出会いに、私の胸はざわめきたっていた。体中が熱くなって、もう何だってできるような気がしてきた。真奈美ちゃんも杏奈ちゃんもそれが不思議な様子で、お互いに顔を見合わせていた。
「ま、いいや。行くよ、そろそろ準備しないと」
「そうそう!」
杏奈ちゃんが先を歩き、真奈美ちゃんが私の背中を押して歩く。私の目の前はパッと明るく広がり、もう何も怖くないような気がしてきた。
「そうだ、聞いてよ樹里ちゃん」
「ん? なあに?」
「学校祭、うちの兄貴誘ったんだ。あ、一番上のね」
「あぁ……」
私に作曲を教えてくれたお兄さんの事だ。でも、真奈美ちゃんの声は少し沈んでいる。一番上のお兄さんの事、慕ってしたと思うのに、どうしてだろうと首を傾げていると、真奈美ちゃんはまた深くため息をついた。
「お兄ちゃん、バカ兄貴にもうちの高校が今日学校祭なの教えちゃって……私のクラス見に来たんだよ~ありえなくない?」
「でも、優しいお兄さんじゃない? そうやって妹の学校祭来てくれるなんて」
「二番目の兄貴、バカだからさ~。もうやだ! 樹里ちゃんのステージも見る気だったし、うちのクラスでもなんかバカ騒ぎしていくし……もう最悪!」
「そう? 随分楽しそうに兄貴じゃない、三原のお兄さん」
「もう!」
三人でケラケラと笑いあう。体育館には、すぐについてしまった。私は舞台袖で杏奈ちゃんに髪型を直される。どうしてだろう? 二人の方が緊張しているみたいで、顔が青白くなっている。
「大丈夫だよ、何とかなるって」
「わかってるよ! ステージに上がるの私じゃなくって樹里ちゃんだし……私たちが緊張したって意味ないってこと! でも、もし何かあったらどうしようって」
真奈美ちゃんは不安げにうつむいた。私はその肩を、ポンと優しく触れる。
「何があっても大丈夫だよ」
「でも……」
「失敗だって、無駄じゃない。私が歩きてきた道に、無駄なものなんてないんだから」
「それ、なあに?」
「ふふっ! 【合言葉】!」
学校祭の実行委員に名前を呼ばれる。私の出番が来たらしい。
「じゃ、行ってくるから」
「う、うん! 私たち、ちゃんと見てるからね!」
「まあ、頑張ってきなよ」
「はーい」
私は今までにないくらいの、満面の笑みを見せる。緞帳が降りたステージの上には、電子ピアノが一台、ポツンを置かれている。
いつも一人だと思ってた。ピアノを弾いているときも、学校にいる時も。でも、そうじゃないと気づかせてくれた人が、この広い宇宙に一人だけいたのだ。たった一人だけ、それは星を掴むような奇跡に違いない。私はこれから、その星を掴みに行く。この歌がその人に届くように、そして新しい未来に向かって歩き出すために。
幕が上がる。緞帳の隙間から光が漏れていく。新しい私も心から始まるのだと思うと、胸がドキドキと跳ね上がった。緊張ではなく、新しい日々が始まることへのワクワクが胸に広がっていく。
これは……今から私が歌うのは、この宇宙でたった一つしかないラブ・ソング。たった一人に「ありがとう」を伝えるための歌だ。
「どういう事?」
「ふっきれたというか、覚悟を決めたというか……」
「なんか、樹里ちゃん……綺麗になった?」
「えぇっ!? まさか、そんなに褒めないでよ」
顔が熱くなっていくのを感じていた。恥ずかしくて、ちょっと胸が疼く。
「何よ~。私たちが心配してる間、樹里ちゃんはかっこいい人と一緒だったの?」
「違うけど。あの……でも、私、出会っちゃったかも」
いつも私の背中を押してくれていた人。声しか聞いていないけれど、私はもうはっきりと言える。さっきの彼が、あのノートの相手だという事を。
奇跡のような出会いに、私の胸はざわめきたっていた。体中が熱くなって、もう何だってできるような気がしてきた。真奈美ちゃんも杏奈ちゃんもそれが不思議な様子で、お互いに顔を見合わせていた。
「ま、いいや。行くよ、そろそろ準備しないと」
「そうそう!」
杏奈ちゃんが先を歩き、真奈美ちゃんが私の背中を押して歩く。私の目の前はパッと明るく広がり、もう何も怖くないような気がしてきた。
「そうだ、聞いてよ樹里ちゃん」
「ん? なあに?」
「学校祭、うちの兄貴誘ったんだ。あ、一番上のね」
「あぁ……」
私に作曲を教えてくれたお兄さんの事だ。でも、真奈美ちゃんの声は少し沈んでいる。一番上のお兄さんの事、慕ってしたと思うのに、どうしてだろうと首を傾げていると、真奈美ちゃんはまた深くため息をついた。
「お兄ちゃん、バカ兄貴にもうちの高校が今日学校祭なの教えちゃって……私のクラス見に来たんだよ~ありえなくない?」
「でも、優しいお兄さんじゃない? そうやって妹の学校祭来てくれるなんて」
「二番目の兄貴、バカだからさ~。もうやだ! 樹里ちゃんのステージも見る気だったし、うちのクラスでもなんかバカ騒ぎしていくし……もう最悪!」
「そう? 随分楽しそうに兄貴じゃない、三原のお兄さん」
「もう!」
三人でケラケラと笑いあう。体育館には、すぐについてしまった。私は舞台袖で杏奈ちゃんに髪型を直される。どうしてだろう? 二人の方が緊張しているみたいで、顔が青白くなっている。
「大丈夫だよ、何とかなるって」
「わかってるよ! ステージに上がるの私じゃなくって樹里ちゃんだし……私たちが緊張したって意味ないってこと! でも、もし何かあったらどうしようって」
真奈美ちゃんは不安げにうつむいた。私はその肩を、ポンと優しく触れる。
「何があっても大丈夫だよ」
「でも……」
「失敗だって、無駄じゃない。私が歩きてきた道に、無駄なものなんてないんだから」
「それ、なあに?」
「ふふっ! 【合言葉】!」
学校祭の実行委員に名前を呼ばれる。私の出番が来たらしい。
「じゃ、行ってくるから」
「う、うん! 私たち、ちゃんと見てるからね!」
「まあ、頑張ってきなよ」
「はーい」
私は今までにないくらいの、満面の笑みを見せる。緞帳が降りたステージの上には、電子ピアノが一台、ポツンを置かれている。
いつも一人だと思ってた。ピアノを弾いているときも、学校にいる時も。でも、そうじゃないと気づかせてくれた人が、この広い宇宙に一人だけいたのだ。たった一人だけ、それは星を掴むような奇跡に違いない。私はこれから、その星を掴みに行く。この歌がその人に届くように、そして新しい未来に向かって歩き出すために。
幕が上がる。緞帳の隙間から光が漏れていく。新しい私も心から始まるのだと思うと、胸がドキドキと跳ね上がった。緊張ではなく、新しい日々が始まることへのワクワクが胸に広がっていく。
これは……今から私が歌うのは、この宇宙でたった一つしかないラブ・ソング。たった一人に「ありがとう」を伝えるための歌だ。
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