蜂蜜まみれのオレに彼女が教えるこの世に生きる喜び、そして哀しみのこと

付和雷象

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「国際養蜂協会連合、タンピコ事件、古い聖書、青森、あなたの話」

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「おきた?」

 目を開けると、あたりの闇は薄くなっていて、鳥たちの声が遠くに聞こえた。

 夜明け前のダムの上、オレはプリキュアなんとかの衣装を着た女の膝をまくらにして横になっていた。

「・・・どうして?」
「ん?」
「ここが」
「あー。あたし、プロだから」
「何の?」
「honey」

 女がすべてを教えてくれた。それはとても長い話だった。



 国際養蜂協会連合って知ってる? アピモンディアっていうんだけど。

 世界49か国55の養蜂協会が加盟する会員数500万人以上の国際組織で、二年に一回国際養蜂会議ってのを開催して、ローヤルゼリーとかプロポリスとかミツバチの臨床基礎研究とか、まあミツバチに関するあらゆる分野に関連した研究をしている大学、製薬会社、企業を集めて、いろんな研究成果を発表したりするのが主な活動になっているのね。
 でも、ちょっとこの団体にはダーティーな噂があって、国際的な麻薬カルテルでもあるんじゃないかって言われてるの。でも誰も証拠なんか掴めなくて、あくまで噂レベルの話なんだけど。
 
 で、その噂ってのが1913年のメキシコ革命中に起こったタンピコ事件によるアメリカのベラクルス占領まで遡るのね。

 当時ベラクルスを占拠していたアメリカ軍歩兵第二師団第五旅団にいたある大尉が、現地の大地主でもある養蜂家の男に取引を持ち掛けるの。どんな取引だったのか詳しくはわかってないんだけど、その結果、大尉はメキシコ軍の蒸気機関車を奪取することに成功し、養蜂家の男は世界各地へのハチミツの販路を手に入れることになるの。
 記録として残っているのは、その時、養蜂家の男が国際養蜂協会連合の前身団体だった国際養蜂家会議に加盟したっていうことだけ。

 そして、その男がメキシコ麻薬カルテルの大元締めでもあったことから、この噂は始まっているの。
 つまり、彼の死後もカルテルを国際養蜂協会連合が引き継いでるんじゃないかっていうわけ。

 で、ここからあなたの話にちょっとだけ近づくんだけど、その養蜂家の男が1948年にタコスを喉に詰まらせて死ぬまでの間、国際養蜂家会議を取り仕切っていたのは実質彼で、当時会議は完全に彼によって私物化されていたの。
 というのは、彼はコアなキリスト教徒で、なおかつコアな聖遺物コレクターだったんだけど。彼は国際養蜂家会議とそのネットワークを使って、非合法なものも含めたありとあらゆる手段を用いた収集活動をしていたのね。もちろん表向きにはわからないようにして。
 で、第二次世界大戦が終わってしばらく経ったある日、彼はバチカンからやってきたブローカーの男にちょっとした骨董品のプレゼントとして古代ラテン語の古い古い聖書をもらうの。で、お家に帰ってなにげにその聖書を開いてみたら一枚のまた古い古い紙が入ってて、で、なんだろうって思うんだけど、それも古代ラテン語で書かれてあるから、自分でなんとか翻訳したら、そこに驚きの内容が記されていたの。

 日本にキリストの墓がある。

 そうゆうのは日本に限らず、昔から世界各地でよく言われていた話だったし、彼もあんまり気にはしなかったんだけど、そういえばあの時の、タンピコ事件のときの大尉が今ちょうど日本にいるな、と思って連絡をとってみたの。
 そのかつての大尉こそがダグラスマッカーサー。
 そう、彼も養蜂家なの。

 で、連絡を聞いたマッカーサーは大笑いした後、面白半分で部下に探させるんだけど、したら、あったの。キリストの墓。青森に。現地でそう言い伝えられている小さな塚がそれだって。

 で、また大笑いしたマッカーサーが冗談で、掘り起こしてみる? と国際養蜂家会議の例のボスに聞いてみたら、ボス今度はなんか本気になっちゃって、すぐに聖遺物収集の専門家を日本に送ってきたのね。
 まあ、しかたがないからマッカーサーは彼をGHQ所属の捜査員かなにかにして青森に行かせるんだけど、この専門家がおかしなヤツで、なんの根拠もないのに、現地に着くなり、これは本物だなんて大騒ぎして、彼以外のその場にいた全員がうんざりするなか、塚を掘り起こすことになっちゃったわけ。
 元々地元の人も真剣にキリストの墓だなんて誰も思ってないから、たいした妨害も反対もなく粛々と作業が続く中、運のわるいことに一本の骨が見つかっちゃうの。なんの骨だかわからない骨。でも、聖遺物収集の専門家はなんの根拠もなくキリストの骨だ! って大騒ぎして、で、東京に骨を持ち帰るのね。

 したら今度はその話を聞いたマッカーサーが俄然本気になっちゃって。骨を聖遺物収集の専門家から取り上げて、彼も強制送還しちゃったの。
 で、もちろんそれを聞いた国際養蜂家会議のボスはカンカンに怒るわけ。しばらく激しいやりとりがあった末、最終的にボスは泣きながらマッカーサーに取引を持ち掛けるの。骨と麻薬カルテルのすべてを交換しよう、って。

 でもその後、いろいろあって結局取引は行われずに、国際養蜂家会議のボスはタコスを喉に詰まらせて死んで、組織も国際養蜂協会連合に名前が変わって、しばらくたってからマッカーサーも死んじゃったの。

 でもね、ボスの遺言によって、今でもその取引の条件は無効化してはいない、っていうのが裏社会の通説なの。

 結局、骨はその後も、日本国内の米軍の医療施設で極秘に厳重管理されてはいたんだけど、そのうち、当事者もいないそんな話なんか、みんな忘れちゃって、ついには都市伝説みたいな話になりさがるわけ。
 でも、骨は確かに存在していた。数年前までは。

 ここからやっとあなたの話。
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