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隠れ家を探す二日目の午後
姫大将って呼ばれていました
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俺は堀下を見上げて、彼と目を合わせた。
彼は俺と目線があっただけで嬉しそうに頬を緩めた。
俺の胸にも温かいものが広がった。
でもこの温かみは、九曜の前に立つ男達に俺が抱いているものと同じ信頼と友情でしかない。
「空くん?」
「店長、ごめん。俺はあの馬鹿が大事なんだ。」
「俺は君を傷つけてしまった、からね。」
「あなたには感謝しか無いですよ、俺は。あなたは優しかった。俺はあなたのお陰で生き延びて来られたと思っています。」
「じゃあ、アルバイトを続けてくれないか?俺は君がいないとインスピレーションが湧かないんだ。」
「俺の恋を認めてくれるなら。」
堀下は目を瞑って俺から顔を背け、そのまま空を見上げるように顎を上げた。
彼の目尻から一粒涙が零れた。
それから彼は目元を簡単に拭うと、俺を再び真っ直ぐに見返し、そして、俺に右手を差し出した。
彼の緑がかった瞳は透明で美しかった。
「……ごめん。やっぱり、しばらく君に会えないね。俺は君を思い切ることができないから。でも、君の友人で居続けたいと思っている。俺が立ち直ったら君を呼びたい。そしたら、また、働きに来てくれるかい?」
俺は堀下の手を握った。
「光栄です。」
本当に光栄だ。
俺はどうして守られる事をみじめだと思い込んでいたのかな。
大きく息を吸うと、俺は九曜に大声を上げていた。
「九曜!中堅、副大将のそいつらを倒さねば、こいつらが守る俺という大将に辿り着けないぞ!その二人は柔道の段持ちだ!一先ず逃げろ!」
「君が、……大将?」
「ええ、一度も戦わせてもらえなかったけど。」
俺の突然の大声に驚いたのは店長その人で、俺のストーカーは全く驚くどころか俺に片眼を瞑ってから微笑んで見せた。
胸がときめいた自分が悔しい。
そして、俺の高校時代の友人達の癇にも障ったのだろう。
桜井と桃園は九曜に技を掛けようと手を伸ばしたのだ。
団体戦では白帯の俺に対戦させないようにと、中堅と副大将のあいつらだけで五人抜きをしていた馬鹿野郎どもだぞ?
俺の高校時代も調べていたんだろう?
どうして九曜は逃げない?
ただし、今度は俺の方が吃驚とさせられていた。
九曜はまるでダンスをするようにして、俺の守りの盾を簡単にいなしてしまったのである。
「畜生!九曜!お前こそ段持ちかよ!」
「そう!合気道!」
「段持ちが素人押さえつけて縛ったりしていたのかよ!」
俺は俺に酷い事ばかりをしてきた恋人に怒り心頭だ!
彼は俺と目線があっただけで嬉しそうに頬を緩めた。
俺の胸にも温かいものが広がった。
でもこの温かみは、九曜の前に立つ男達に俺が抱いているものと同じ信頼と友情でしかない。
「空くん?」
「店長、ごめん。俺はあの馬鹿が大事なんだ。」
「俺は君を傷つけてしまった、からね。」
「あなたには感謝しか無いですよ、俺は。あなたは優しかった。俺はあなたのお陰で生き延びて来られたと思っています。」
「じゃあ、アルバイトを続けてくれないか?俺は君がいないとインスピレーションが湧かないんだ。」
「俺の恋を認めてくれるなら。」
堀下は目を瞑って俺から顔を背け、そのまま空を見上げるように顎を上げた。
彼の目尻から一粒涙が零れた。
それから彼は目元を簡単に拭うと、俺を再び真っ直ぐに見返し、そして、俺に右手を差し出した。
彼の緑がかった瞳は透明で美しかった。
「……ごめん。やっぱり、しばらく君に会えないね。俺は君を思い切ることができないから。でも、君の友人で居続けたいと思っている。俺が立ち直ったら君を呼びたい。そしたら、また、働きに来てくれるかい?」
俺は堀下の手を握った。
「光栄です。」
本当に光栄だ。
俺はどうして守られる事をみじめだと思い込んでいたのかな。
大きく息を吸うと、俺は九曜に大声を上げていた。
「九曜!中堅、副大将のそいつらを倒さねば、こいつらが守る俺という大将に辿り着けないぞ!その二人は柔道の段持ちだ!一先ず逃げろ!」
「君が、……大将?」
「ええ、一度も戦わせてもらえなかったけど。」
俺の突然の大声に驚いたのは店長その人で、俺のストーカーは全く驚くどころか俺に片眼を瞑ってから微笑んで見せた。
胸がときめいた自分が悔しい。
そして、俺の高校時代の友人達の癇にも障ったのだろう。
桜井と桃園は九曜に技を掛けようと手を伸ばしたのだ。
団体戦では白帯の俺に対戦させないようにと、中堅と副大将のあいつらだけで五人抜きをしていた馬鹿野郎どもだぞ?
俺の高校時代も調べていたんだろう?
どうして九曜は逃げない?
ただし、今度は俺の方が吃驚とさせられていた。
九曜はまるでダンスをするようにして、俺の守りの盾を簡単にいなしてしまったのである。
「畜生!九曜!お前こそ段持ちかよ!」
「そう!合気道!」
「段持ちが素人押さえつけて縛ったりしていたのかよ!」
俺は俺に酷い事ばかりをしてきた恋人に怒り心頭だ!
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