金髪巨乳妹の胸の谷間に手を突っ込むことで地球を救う話

七色春日

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エピローグ

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「お兄ちゃん。マカデミアンナッツって精力つくらしいよ」

 日も暮れた夜。
 晩飯までの静かなひととき。

 脱力してリビングのソファーに身体を沈めていると、エプロン姿のクーナが今日もわけのわからないことを言いだした。

 ピンクのオシャレグラサンにアロハシャツで帰宅したミーナはハワイでこんがり小麦色になっていたので、憤ったクーナとひと悶着起こしたが、お土産のチョコの力で我が家は平穏を取り戻した。

 俺は新聞を広げ、東スポの『巨大隕石! 地球とお見合いしたが好みではなく結局帰宅した模様』という記事を読んでいた。

 相変わらず俺好みの奇抜なセンスだ。

「ねえ、お兄ちゃん。ツッキーは一回母星に帰るらしいよ」
「マジでか」

「うん。タコとイソギンチャクと降伏したイカを強制送還するみたい。また先輩は戻ってくると思うけど」
「……そうか、先輩も触手まみれの宇宙旅行とは大変だな」

 アダムスキー型のレトロな宇宙船に乗る先輩を想像してみた。

 円盤に丸い粒々がついたインチキUFOの見本みたいなものだが、一回でいいから俺も宇宙船とやらに乗ってみたい。

 奇怪な生き物ばっかに接触してるだけでスペースアドベンチャー的な満足感がないし。

「ちなみにどんな宇宙船で戻ったんだ? 俺も乗ってみたかったな」
「えっ? 乗ったじゃん」

「乗ってねえよ。てか、どんなの?」
「先輩の家がそのまま飛ぶよ」

 想像する――先日訪れた古風な日本家屋にジェット噴射によって飛翔するその姿を。
 うーん。ありかなしかでいえば、なしだな。
 シュールすぎるし。

「なんで大気圏の摩擦係数とか気にしないんだ?」

「どうでもいいじゃんそんなの。それよりも今日はどうする? お風呂にする? ご飯にする? それともチュー?」

 身をくねらせながらじりじりと寄ってきて、逃げ腰の俺の膝元にまたがり、キスの雨を降らせようとガバッと襲いかかってきた。
 くいくいっと頭を移動させて隙を見つけようとするので、両手でガードしながら反抗した。

「やめろ。迫ってくるな。無理やりキスするな!」
「いいじゃん! もう私たちって既に性的接触をした仲じゃんっ!」

 じたばたすると、やたらとすべすべの太ももがこすれてくる。

 胸部もぽよんぽよんとして跳ねてるし、理性にひびが入る前に拒絶を示さなければ兄の威厳が失われる。

「変な言い回しをするな! 兄妹だからな。そういうことはいけないんだからな」

「ふっふっふ……それはどうかな。今回の大王イカ騒動が片付いたらお兄ちゃんはJGGから最高の報酬をもらえるのを忘れちゃったのかな? お兄ちゃんがもっとも望んだことだよ」
「あっ?」

 リモコンを手に取り、クーナはスイッチを押した。
 液晶テレビが映る。狙いすましたかのようなニュース報道。
 テロップは『自由婚関連法案が衆議院で可決』と書かれている。

<これにより同性婚だけでなく、驚くべきことに二親等以内の婚姻が可能になりました。これにより兄妹や姉弟といった異姓婚も法的に許可される形になります。評論家の間では意見が分かれ、なぜこのような形で強引に決議されたのか不明のままあり、倫理道徳に接触すると野党側は紛糾しております>

「……えっ?」

 近親婚が許されちゃってる――何それ?
 いや、どの角度で考えてもだめだろ。
 誰だよ、この法案に賛成して通したやつは。

「よかったねお兄ちゃん。愛の障害がぶっ飛んだよ。大体、お兄ちゃんは改造人間なんだし、遺伝的に問題ないんだから気にすることなんてないんだよ。でも、建前を気にする気持ちはわかるから、よかったね」

 脱力のあまり、ずるずると身体がソファーに横たわった。
 豹のごとき目つきのクーナが俺にまたがったまま胸板に両手を置き、舌をぺろりと舐めまわしている。
 嗜虐感にまみれた極上の笑顔。
 悦楽な境地に向かう女の顔。獣じみた獰猛ささえ感じさせる。

「待ってくれクーナ。俺はお前を愛してるといったが、それはあくまで妹に対する愛情表現であってな」
「ごめん、そういうのいいから」
「ここでお兄ちゃんの愛を否定するの?! それに今が一番大事な場面だからな! っておいおいおい!」

 ぬっと顔が近づいてきたが唇に向かうことはなく、俺の横にすとんと収まった。
 戸惑っていると、寄り添うように倒れ込んでくる。
 スッと静かに腕が首に回され、足が絡められて抱きしめられはしたが、禁断の領域にまで進撃するかと思って身構えていた俺は拍子抜けした。

 ふぅっと熱い吐息が耳元をなでる。
 ぞくりとしながらも視線を投げかけたが、クーナは急に穏やかさを取り戻していた。

 そして、子供の頃。
 繰り返し見ることができた可愛らしい妹の顔がそこにあった。
 一緒に布団で眠った頃の愛らしい無邪気な横顔だ。

「だからさ、そういうのいいの……大丈夫だよ、お兄ちゃん。私たちを阻むものはなんにもなくなったし、ゆっくりでも、激しくでも……つらくても、楽しくても、いいの。どうせ、私がこの先も無茶しないようにお兄ちゃんはずっと見守ってくれるってわかってるし、それだとただ受け取るだけだけになっちゃうから、ちょっとそれが申し訳ないから、こんな些細な許しのプレゼントをあなたにあげるだけだよ」

 ◇◆◇



 緋村家一階。
 廊下を四足歩行するシャムネコの一郎丸は深夜になるとヒゲをぴくぴくさせ、洗面台の下の収納棚を肉球で器用に開いた。

 四隅が銀板で覆われた小部屋は内蔵されたエレベーターだ。

 最下層へ向かうスイッチを押し、四足から二本足になり、壁が出現したロボットアームによって自動的に黒服を身にまとう。

 スチャっとブラックサングラスをかけた一郎丸は――<リトル・カーネル>へと変身した。

 音も浮遊感もなく地下三百階に到達したリトル・カーネルは葉巻を咥え、扉の向こうのJGG銀星市支部の地下ホールを歩きだした。

 地球の周辺を回遊する衛星から送られた映像が大型のモニターに映し出されている。
 フロアでは近所の猫たちが段上に設置されたお魚モニター型を凝視しながらキーボードをタッチし、それぞれのメガネを擦ったり、毛づくろいをしながらも仕事に取り組んでいる。

 地球は様々な異星人が入り込むようになった。

 それらの入港を選別し――多くの外来生物は阻止するが――地球の先住民族であるニャンコ族に利用価値にある者は受け入れることにしている。

「<リトル・カーネル>」
「ミィリンか。ワイハはどうだったかね?」

 緋村家次女にしてミーナはJGGのオフィシャル・スーツの黒服を身にまとい、サングラスこそかけていないが敬礼してきた。
 病弱な白肌は小麦色の染まった肌へと変化し、健康的な美を備えている。

 ひきこもり気味で病気療養の成果は出ているようで安心するとともに、胸ポケットから猫じゃらしの穂先が出ているのを油断なき瞳で捉える。

<リトル・カーネル>は彼女に猫じゃらしを振られるがたまらなく好きだったが、仕事中はそうした愛猫精神を出してはならないことを理解していたので、葉巻を口から離し、顔を背けることで衝動による身震いをこらえた。

「最高でしたが、やはり命令とはいえ、兄と姉を差し置いて避難するのは気が引けました」
「代わりに私が処置した。問題はなかった。ハーフ・ヒューマンのエージェント二人もそれなりに使えるものだ。いずれ君と同じく選ばれし者にしてもいい。先史時代よりも地球を支配していた我々のことを知る数少ない人類に」
「光栄ですが、兄と姉はあのままにしてあげてください。幸せなままに」
「ニャンコ族に忠誠をつくすのが人類の不幸と思わんでもらいたい。彼らの文明の発展には我々が寄与した。共存共栄こそ、我らが精神。人類では勝利できぬ異星人を排除できているのは我々のおかげでもある。もっとも、銀河警察連邦が介入してきたのは少々気に入らなかったが……我々の力は示せただろう」
「そうだニャン」
「ミィリン、サバ缶欲しいニャン」
「五郎、アレクサンダー」

 虎猫と三毛猫の二匹が二足歩行で声をかけてきた。
 エンジニアらしくゴーグルと作業服を着た二匹は普段は気ままな野良猫だが、反重力バッドを製作してくれた恩人……いや、恩猫でもある。

 紀元前以前よりも生きてきたニャンコ族は本当は知能は高い。それなのに人類の前では低能なふりをし、だらけている。

 それは可愛がられることで、人につくさせる戦略を取っているからだ。
 ふぅっとため息をついたミーナはポケットからプルタブ式のサバ缶をぺこんっと音を立てて開封し、二匹の前に置いた。

「にゃあ!」
「にゃっ」
「にゃああああぁん」
「だめっ! 一郎丸っ! それは五郎とアレクサンダーのっ!」

 本能をむきだしにして四足歩行に戻って争いだした三匹を制止し、一番大きな声を出した<リトル・カーネル>こと一郎丸は情けなく「ふゃにゃああん」と鳴く。
 慰めるために猫じゃらしを向けると、彼は猫パンチを繰り出し始めた。

「にゃ、にゃ、にゃっ!」

「……リトル・カーネル。銀河警察連邦のシップことですが、兄の友人となりましたので撃墜しないようにお願いします」

「にゃにゃあ……わっ、わかっている。にゃぁん……や、止めたまえ。そんなに私の猫心をくすぐるのはっ!」

「ほーらほらほら」

「にゃぅうううううううううん」

 しゃがみこんで本格的に猫じゃらしでリトル・カーネルをもてあそぶミーナは人類の未来よりも兄のことで頭がいっぱいだった。

 ついに兄と妹の婚姻が許された。
 裏に手を回したかいはある。自分をも縛るカセは外れたのだ。従順にJGGに従っていたかいがある。
 愛の障害はもうどこにもない。
 青い地球の映し出された巨大モニターに不敵な顔を向ける。

「お姉ちゃん。自分の思い通りになってると思ったら大間違いだよ。にいちゃんはあたしのものだからね」

 緋村次女の緋村ミーナはJGGのエージェントにしてちょっぴり腹黒い<ラブリー・キャット>の称号の持ち主である。

 彼女は猫のように盗み取ることは得意なのだ。
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