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本編

ep05_だからギラギライケメンは遠慮しますって。

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 この世界に来てよかったなーって思うこと。そのいち。
 女の子のお洋服、めっちゃかわいい。

 男のひとは――特に、お城で働くひとには制服みたいなのがあるらしくて、役職とかできめられた服を着ているんだけどね? 女もの制服なんて当然ない。
 で、あたしは晶精の愛し子さまっていう大層な肩書きのおかげで、かなり仕立てがいい服を着せてもらってます。
 ふつーにテンションアガる。
 なんていうの? ロリータ? ミリタリーロリータ……っていうの? 
 膝までのフリルたっぷりのスカート。でも、甘すぎなくて、ちょっと制服っていうか軍服っぽいの。
 この日はワインレッドと濃いグレーのワンピ。着てみると思いのほか軽くて、コルセットもそんなに締めないでよかった。

 もっとコルセットぎゅうぎゅうにされるかと思ってたーって言ったら、またギリアロさんが信じられないって顔してた。
 ガキができてたらどうするんだって。
 あ、あたしにできてる前提じゃなくて、一般論ね。一般論。
 お腹締めすぎ注意、ってこと。つまりこの世界での女のひとの役目って、そういうことなんだろうね。って思うと、ちょっとしょっぱい気持ちになるけど。
 ちなみに年齢があがると、スカートの丈も長くするみたい。あたしは今のひざ上ギリくらいが動きやすくっていいなあ。


 で、この世界にきてよかったこと、そのに!
 街が、めっちゃ面白い。めちゃくちゃ異国。雰囲気カワイイし、写真撮りたくなる。
 ……スマホの電源、入らなかったんで、あきらめたんだけどね。
 カメラらしきものはあるらしいから、今度用意してもらえるって。で、今日はしかたないから目に焼きつける。
 カンカンカンって、どこかしらから金属音聞こえるの、うるさいっちゃうるさいけど。でもそれはそれで雰囲気あるし。

 今日はね、護衛を何人かつけてもらって、ちょっとレトロな車に乗せてもらって街の散策してるんだ。ギリアロさんはお仕事ーって、朝からさっさと逃げちゃったけど。
 昨日聞いた話だと、あたしの役目って晶精さんたちのご機嫌取りみたいなところあるらしいし。観光とお勉強とお仕事全部取りってかんじ?

 目をこらすと、昼間でも晶精がふわふわ浮いてて。あたしと一緒にお散歩楽しんでくれているみたい。
 そうしていろんなところ歩き回ることで、街全体の活気が出たらいいなってのが目的なんだって。
 つまりあたしのお仕事イコール観光するってことかな!?
 えっ、最高じゃん?

 で、その街なんだけどね。
 さすが〈鉄と鋼、そして空の街〉だっけ? 街にキャッチフレーズあるとか、いいよね。日本みたいで安心しちゃう。
 街全体から鉄の匂いっていうか、雰囲気する。あちこちに晶精エネルギー溜め込んだタンクみたいなのがあったり、管がのびてたりするし。
 煙突もいっぱいあってね。でも、そこから出てくるのは煙とか水蒸気じゃなくて、晶精の光なんだよね。ちなみに、あたし以外のみんなには見えてないっぽい。
 ちなみに、晶精エネルギーの仕組みとかは、街に来るときに軽く教えてもらったんだけど、ぜんぜん理解できなかった。オーケー、考えてもわかんないから感じるよ。ダイジョウブ。

 あと、見るからに工場感つよすぎて街のニオイとかヤバそうだなーって思ってたけど、そこも大丈夫だった。
 空気が澄んでいるのは、根本的にエネルギーがちがうからかもしれないね。
 でも、そんな晶精エネルギーの効率が悪くなっているっていうのはほんとの話みたいで、エネルギーが足りないせいで機械が動かなくなったとか、あちこちで不具合が出ているみたい。

 で、そんなこんなで街の様子を観察しつつ、おつきのひとたちと一緒に、一日街の観光を楽しみましたとさ。
 あ、ちゃんと女のひともいたよ? 市場で買い物してた!
 みんな監禁されてる……とかじゃなくてよかったーっ。そこも安心したよ、正直。


 ――なんだけどね。
 事件? っていうか面倒ごとは、あたしが城に戻ってきてから発生した。

 車から降りて、お部屋にもどろーって時に、前からきたイケメンに話しかけられたんだよね。なんか、あたしのこと待ってたっぽい。

「愛し子どの、奇遇ですね」

 奇遇とは、って聞きたくなるけど。まあいいよ。はい、ぐーぜんぐーぜん。

 ……にしても、このひと見たことある気がするけど、誰だっけ?
 イケメンで見たことあるってことは、あれだ。つまり、召喚の時いたときの誰かな気がする。

 あたしの目の前にいるのは赤髪をオールバックにした、おにーさん。
 この世界のひと背が高いひと多いけど、このひともそう。脚がすらって長くって、モデルさんみたいだよね。
 制服というか……軍服? ギリアロさんが着てたのとは形がちがうから、軍人さんの方だな。勲章とか飾緒を見るかぎり……そこそこエラいひとっぽい。

「ええと」
「お話しするのははじめてですね、愛し子どの。私、空軍第一部隊大隊長ヴィリオ・ジ・ティーガと申します」
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