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本編
ep09_モテ期到来してた!? でもあたしには旦那さまがいるので……。
しおりを挟むよーし。お昼食べた。ギリアロさんの部屋にいこー!
ギリアロさんの部屋はちゃんと壁が見えるようになって、整理用の棚を追加で入れてもらえた。
お気に入りのソファーは撤去するのかわいそうだったからそのままだけど、窓はキレーにして無事開けられようになった。
大きな出窓なんだけど、開けたらきらきらきらーって、なかに晶精入ってきてさ。うれしそうに飛んでるの。
部屋のなかでふわふわ楽しそうにしてる晶精はじめてみたよ。
なんだかんだ、やっぱりギリアロさん気に入られてるんじゃないかな。もともと晶精眼の持ち主だったって言うしね。
そんなわけで、正直掃除はほとんど終わってるんだけど、でも、相変わらず通ってるってかんじ。
来るたびに軽く部屋全体の埃キレーにして、ついでにギリアロさんのお仕事の邪魔してる……って、言いかた悪いかな。ギリアロさんのお仕事見学してる。
ギリアロさんてば、さすが〈晶精技術認可省大臣〉ってだけあって、晶精エネルギーをつかった機械にめちゃくちゃ詳しいんだよね。
お仕事だから好きなモノばっか扱ってるわけじゃあないみたいだけど、興味のある機械の設計図とか見てるとき、ちょっと体起こしたりしてるもん。そういうとき話しかけると、嬉々として教えてくれるんだよね。ほんっと男の子みたいなとこあるじゃんね。
あたしも、その話題に乗っかって、もとの世界の機械とか電気とか――あんまり詳しくないけど、こういうのあるよーとかって話してみると、めちゃ話聞いてくれるし。
真剣に聞いてもらえるってなると、あたしも、なんか面白い話提供しなきゃって思うわけでしょ?
だから、お掃除の延長で、こうしてギリアロさんのお仕事の邪魔をしに行くってわけ。
なんか迷惑がられてもないしね。
……うん、そうなの。自惚れとかじゃなくて、ふつーに迷惑がられてない気がするんだっ。すごいね? 押しかけ効果???
で、この日も食堂からぱたぱたーって、そこそこ遠いギリアロさんの執務室向かってたら――――おおお? 前から見たことあるイケメンならぬ赤髪のギラメン到来なんだけど。
「愛し子どの、奇遇ですね」
いやいやいや、奇遇ですね、2回目。
そういうこと言うヤツは大抵奇遇じゃないってあたし思ってるんだけど。ってか……ヤバ。名前……えーっと、なんだっけ。
あ! そうそう、ヴィリオ・ジ・ティーガ! ティーガ家の次男坊だ!
この赤髪のおにーさん、こないだ話してけっこーショック受けてたと思うけど、復活した?
……って。ちがうか。
さすがにあたしとギリアロさん、夫婦っぽさはまだないからさ。あたしの嘘に気がついちゃった、とかかなあ。はあ……。
「この世界には慣れましたか?」
「あ、はい、まあ」
うぁー……きらっきらオーラ出してるけどぜんっぜん目が笑ってないよ?
「それはよかった。心配していたのです――どうも、あなたが掃除夫の真似事をしていると」
掃除夫……まあ、たしかに事実なんですけどね?
いろいろ言い返したい気持ちもありつつ、このひととあんまり長く話していたくない。
「どうも、あなたがノウトに邪険にされていると聞きまして」
わざとらしい心配そうな顔される。
ギリアロさんとはだいぶ打ち解けてきたつもりあるんだけど、周囲からみると冷たくあしらわれてる説も浮上してきたっぽいもんね。知ってる。
「素直じゃないとこあるだけです。やさしーですよ」
「優しい? あれが?」
わ。
……やだなあ。その目。
っていうか前よりももっと怖いんだけど。
あたし、この世界きて、そこそこいろんな人にあったけどさ。なんだろ……男のひとでたまに、こういった目をしてるひとに会うんだよね。
いろんなひと、見下してる感じの。
奥さんがいるからこそ、得意になって見下しているひとと、いないからこそ、自分のほうが優秀なのにって、拗らせてるタイプのひと。
ちなみにこのヴィリオってひとは、拗らせてるタイプね。
「それはあなたの勘違いですよ。もう落ち目の、ろくな男ではない」
心配してる感出してるつもりかもしれないけどね、逆効果だから。
あのねえ。あたしの旦那さまのことだよ? 悪口いわれて、あたしが頷くって思ってるとことか、マジでないからね。
「一生懸命、愛し子の使命を遂行なさってるあなたとはちがう」
……これで褒めているつもりらしい。
なんか、あたしのことも、自分のものになって当たり前って顔してるっていうか。
正義感だかプライドだか拗らせてて、あたしをギリアロさんから助けよう、てきな感じで話もってこうとしてる?
「お仕事で街を回られているそうですね? 今度、私もご案内させてください。自慢の飛行機で、ご案内しましょう」
寝言言いながらこっちに近づいてきたから、ふつーに鳥肌たった。
いやいやいや、無理。無理だから。
でも、目がめちゃくちゃ怖くて、あたしは焦る。
ってか、このあいだテキトーにあしらったせいか、ちょっと強引になってきてない!?
これ、断って大丈夫なかんじ? って、周囲の護衛くんたちをみたら……あ、キリッとした顔をして警戒してる。オッケー。断って大丈夫。
「ありがとうございますー。でも、ティーガさんの手を煩わせるわけにいかないので、ダイジョブですっ」
ヴィリオ、なんてぜったい呼ばないからねっ。苗字便利だよねっ。距離感大事。
「あのっ。このあと、旦那さまと約束があるのでっ!」
旦那さまは強調する。
にっこり微笑んで、ぺこっと頭下げて、話かけんじゃねーオーラ出して。
護衛のひとたちがちゃんと間に入ってくれて、あたしはくるりと反転する。遠回りになるけど、別のルートいこっ。無理無理。
なにか言おうとしてるけど、逃げるが勝ちでしょっ。
ってなわけで、とっとと逃亡して――。
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