17 / 61
本編
ep08_4
しおりを挟む「なんです、……これ?」
我ながらすごい声出た。
ギリアロさんもヤッベエエエエみたいな見たことない顔してるけどさ。いやいや、これは、ない。
「えっと? 大臣のお部屋って、お掃除は入らないかんじですか?」
「いや……それは、その、だなあ……」
あ、どもった。
これは言いにくいほう。――つまり、本来なら入るけど、入れてない、てきな?
「奥さま。よくいらっしゃいました。見ての通り、閣下ってば外部から人を入れたがりませんので。これが落ち着くーっておっしゃって、いろいろそのままで」
「マーキさんも、これでよく仕事できますね?」
「あっはっは。私の部屋は隣です。こんななか、まさかまさか」
マーキさんだけじゃない。あたしの護衛のひとたちもうんうん頷いててさ。
ははーん、なるほど。この部屋だけ、こんななのか。で、下手にエラいひとだから、手が出せないとか?
エドアルド殿下がどうしてあたしにここにくるの勧めたのか、わかったよ?
なるほど、多分コレ、殿下的にはゴーサイン出てると見ていいよね?
あたしのセンサーは優秀だからね。読み間違えてないはず。――だったら。
「ここにもあたしの仕事見つけました。マーキさん、このあとのギリアロさんの予定は?」
こういうときは本人じゃなくて、周囲をかためないとね。
「通常勤務ですよ」
「急ぎの仕事は?」
「今はないですね」
にっこり笑顔いただきましたー。はい、オーケーサイン。
「お……おい……」
ギリアロさん、嫌そうな顔しても無駄だってば。
「お掃除、しましょう。ギリアロさん」
ちょーっと部屋のスペースに対して物が多すぎる。のわりに、大部分を占める本はまったく読んでいる形跡がないから、片づけていいんじゃないかな。
本さえなんとかしちゃえば、あとは書類関係まとめて……機材は、ギリアロさんがどうにかしないといけないけど、整理くらいは普通にできそう。
とにかく埃だよ! この埃は、ない。
この埃と、使わない荷物、それからゴミ関係をなんとかしないとっ。
というわけで、この日からあたしは、ギリアロさんの執務室お掃除大作戦を決行することにした。
初日バタバタしてたら、エドアルド殿下がのぞきにきてくれて、わっざわざギリアロさんの目の前で許可くれたしね! 掃除してよろしいって!
ふふふ、ギリアロさんもエドアルド殿下には逆らえなかったみたい。
とはいっても、ずっと居着くとギリアロさんの邪魔になるから、日をわけて少しずつ。
街へ出る日は避けて、あたしがお城で勉強している日の午後、だいたい1時間半ずつって決めた。
実際あの部屋は重要な書類が多いらしくって、人を入れにくいってのもあるらしいけどね。……どこまでほんとか嘘かはしらないけどさ?
でも、よーくわかったよ。
ってか、同じ部屋で一緒に生活してるときも、うっすら気がついてたもんね。
ギリアロさんは基本的に整理整頓がまったくできない人間だった! ってか、生活能力ゼロ。皆無!
ただ、頭はいいっぽいんだよね。大臣なんだから、そりゃそうかって感じだけど。
めちゃくちゃ速読だし。いちどながめた書類は内容完璧に覚えてるみたいだし。
いわゆるカメラアイなんじゃないかな。はっやいはっやい。
だから一回読んだ本とか書類は、もう読む必要ないって感じで放置されてたんだね……。いやいや、かたづけなよ……。
で、普段は執務机の奥にあるソファーでゴロゴロしながら、寝転がって仕事してるっていう体たらく……。そりゃ、毎日お洋服くしゃくしゃにして帰ってくるわけだよ……。
それでよくお仕事まわってるなーって思うよ。マーキさん曰く、やっぱり優秀なひとみたいなんだけど。
本気出したらお仕事なんて一瞬で終わるらしいんだけど、やる気になるまでが長いんだってさ。……まあ、あと、この部署自体、全体的な仕事量は多くはないらしいけど……。
それで許されてるあたり、日本とはぜんっぜん世界がちがうなーって思うけど。でも! ですね!!
「さすがにこの部屋に長時間いたら、ビョーキになるからねっ」
ってのが、一番の主張。
別にそこそこ散らかってても、あたしはいうほど気にならないけどさ。
空気は澱んでるし、埃の量ハンパないし、なんか所々カビはえてそうだしさあ。ハウスダストやばいって。
人間、なんだかんだ体って大事なの。
急になにが起こるかわからないんだからね!?
だから、ちまちま掃除に行って、お片付けして――でも、ギリアロさんってば、マーキさんとあたし以外は部屋に入れたがらないから、あたしがひとりで頑張ってるって感じ。
あ、図書館から借りっぱなしの本とか、同じように借りてた機材関係は、みんなに返却しに行ってもらってるよ。もちろん、目録はつけてね。
そんなかんじで、ギリアロさんのお部屋をキレーにするのに一生懸命になってたら、なんかギリアロさん、あたしが勝手にぱたぱた動いているのになんにも言わなくなった。
うん。その方がいいな。
一緒にいるのに慣れてもらえるのは、素直にうれしい。そう思うんだ。
それにあたしもあたしで、ギリアロさんと前より仲良くなれた気がする。
あたしの敬語も、いつの間にかとれていったし。
うん、これで仲良しだねっ。
応援ありがとうございます!
23
お気に入りに追加
1,137
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる