【R18】処刑されるはずが、目覚めたら敵国王子の推し活包囲網にとらわれていました

浅岸 久

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冤罪で処刑されることになりました(2)

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 三日三晩、両手両足首を縛られたまま国境まで輸送されて、今。
 私は自爆の首輪を嵌められて、戦場にうち捨てられた。

 乾いた大地が広がる国境の平原。向こうに砂埃が巻きあがっているのが見えた。
 騎馬の大軍。率いるのは黒の辺境王子――ノルヴェン王国第二王子アーシュアルト・サヴィラ・ノルヴェンだ。
 あの男が国境を守っているからこそ、我がイッジレリア国はこれ以上北へ領土を広げることができなかった。最強とも言われる軍人王子を、カッシムはずっと目の敵にしていた。

 私とアーシュアルト。邪魔な存在を同時に屠ることができると、カッシムは今頃ほくそ笑んでいるだろう。

(アーシュアルト殿下、ごめん)

 こんなことに巻き込んでしまって。
 赤の神の祝福を受けた私だ。自爆の首輪で暴走させられたら、大爆発が起こるだろう。いくら無敗の辺境王子といっても、助かるはずがない。

(ごめん、ごめんなさい……)

 嫌だった。
 アーシュアルトだけでも助かってほしかった。

 幼い日の記憶がチリ、と甦り、私は砂を掴む。
 いくら敵国の王子とは言っても、彼を傷つけたくなんてない。

 アーシュアルトが近付いてくる。自ら先頭に立ち、軍を指揮する彼。そんな彼の姿が眩しく思える。

 涙でにじんで、前が見えなくなる。
 麗しい黒髪。意志の強い黒曜石の瞳が真っ直ぐ前を見据えている。でも、右の瞳は眼帯で隠れていて――ああ、駄目だ。もっと。もっと、彼の姿を目に焼き付けたいのに、もう終わりだ。

 カッチリと嵌められた自爆の首輪。そこに、問答無用で魔力が吸い取られていく。
 呼吸が、できない。苦しい。嫌だ。死にたくない。巻き込みたくないのに。

 アーシュアルトと目が合った。
 私が転がされていることに気がついているのか、こちらを真っ直ぐ見つめている。
 きっと、私の向こう――イッジレリア軍とぶつかるつもりで、速度を上げているのだろう。
 あの勢いで踏み潰されたら、助かるはずもない。

 青毛の馬が目の前に迫って。
 その後の記憶は、ない。





 ――――ただ、目を覚ませばそこが、敵国王子のベッドの上だったというだけで。
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