処刑されるはずが、目覚めたら敵国の隻眼王子の妄愛に囚われていました

浅岸 久

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1巻

1-2

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 何年も会わないうちに、随分と雰囲気が変わった。
 彼が右目を失ったあの事件の後、彼と会ったことはなかった。でもその後、線の細かった彼がすっかり様変わりしたとは聞いていた。
 今や、黒の辺境王子。イッジレリア国からこのノルヴェン王国を守る守護神とも呼ばれる防衛の要だ。
 真っ黒な髪に同じ色の瞳。どの女神の祝福も授かっていないな存在。
 生きとし生けるものは、ごくわずかでも必ず魔力を宿している。にもかかわらず彼は、それを持たない唯一の人間だ。率直に言えば、どうやって生きているのか謎なくらいだった。
 イッジレリアとノルヴェン、両方の国の王族全部集めても、魔法を使えない人間はただ一人。このアーシュアルトだけだ。
 そんな彼は、これまで魔法なしでイッジレリアの進軍を止めてきた。
 とんでもない制約を撥ねのけ、ノルヴェンにこの人ありと武勇を轟かせたのだ。

(すっかり武闘派王子の呼び名にふさわしい風貌になっちゃって)

 ニコリくらいすればいいのに、表情筋は死滅しているらしい。
 なによりも、目が。目が怖いのだ。
 黒く、なにを考えているかわからない瞳。もはや暗殺者の目ではないだろうか。敵国の王女絶対殺す、の誓いを宿しているのではないだろうか。
 もともと長身の上、しなやかな筋肉を纏った美丈夫ではあるけれど、それよりも殺気が恐ろしい、が先に来る。彼の元来の顔の美しさを愛でる余裕なんて、今の私にはない。

(自爆は免れたとしても、拷問で情報を引き出されて処刑、の流れよね、これ)

 だらだらだら、と汗が流れ続ける。
 借りてきた猫よりも従順に、私はカッチコチに固まったまま、審判の時を待った。

「君は――」

 アーシュアルトの声が響く。
 身体がぶるりと震えた。一体、なにを言い渡されるのか。緊張でますます体が強張る。

「君は俺が保護した。以後、君は俺のものだ。わかるな?」

「は?」という声は、かすれて空気に溶けてしまった。
 わかるな、と言われてもわからない。予想しなかった言葉を聞かされて、一瞬思考が止まる。
 ただ、保護という言葉が聞こえたことで、彼が自分を助けてくれた事実だけは理解した。

(人質として、ってことかな? うん。そう、だね……?)

 わからないなりに必死でこくこくと頷くと、黒い片眸がほの暗く光った。
 ならば、と短く口にした後、しばしの間が空き、彼は決意したように切り出した。

「君には俺の妃になってもらう。今、この時からだ」
「え?」

 思いがけなすぎて、すぐに頭に入ってこなかった。
 いや。だって。――彼はなんと言った?

(きさ、き……?)

 馬鹿みたいに口を開けたままアーシュアルトを見つめ返すが、彼は険しい顔をさらに厳しくするばかり。
 ただ、次の瞬間。彼の影で視界が暗くなったかと思うと、唇に熱いものが落ちてきた。

「んん……っ!?」

 ガブリと噛みつくように唇を塞がれる。
 驚いて唇を閉ざすよりも、彼が舌をねじ込むほうが早かった。歯列をなぞってなぶるように舌を絡められる。
 じゅうりんするという言葉がぴったりだった。息つぎをする隙もないほどピッタリと唇を合わせたまま、彼の厚い舌が縦横無尽に暴れまわる。

「んっ、んんっ、ン――っ!!」

 息苦しくてバンバンと彼の胸を叩いたけれど、鍛えられた身体はビクともしなかった。
 むしろ抵抗する私に仕置きをせんとばかりに、ますます強く唇を吸う。
 角度を変えたわずかな隙に息を吸おうとして、口を開く。すると溜まっていた唾液がドロリとこぼれ落ち、頬を汚していった。
 呼吸すらできず、涙目になる。頭がぼーっとしそうになったところで、ようやくわずかに唇が離れた。

「っ、こんな。……私、はじめて、なのに」
「奇遇だな」

 アーシュアルトは感情の読めない瞳でこちらをにらみつけつつ、言葉を紡ぐ。

「俺もだ」
「は?」

 ぽかんと口を開けたのも束の間、すぐに再び唇を奪われる。
 頭がまったく回らない。
 なぜ? どうして? と疑問が浮かぶものの、それ以上の思考ができない。
 じゅうりんという言葉がふさわしいほど口腔内を隅々まで犯され、息も絶え絶えになった。

「アーシュアルト、殿下、これは……」
「アーシュだ」
「なにを」

 言っているのか。目をまん丸にする私に対し、彼は真剣に言ってのけた。

「君の夫となる男だ。アーシュと呼べ」

 夫。

(え? いや。いやいやいやいやいやいや……)

 待て待て待てと、首を横に振る。
 だって私は敵国の人間で、平民出身の末端王女。今や祖国にも切り捨てられ、めとったところで意味なんてない。
 しかもこの首には自爆の首輪がめられているのだ。いつこれが発動するのかわからないのに、留め置く理由なんてない。むしろこの首輪が発動する前に殺してしまうべきなのに。

「待ってください! 意味が、よく」

 頭がまともに働かなくてちゅうちょしていると、アーシュアルトの表情はますます険しくなった。かと思うと、ガッと顔を寄せ、額をくっつけてくる。

「危ないです! これ、自爆の首輪――」
「大事ない」
「いや、そんなわけな……あっ」

 彼の大きな手がするすると下へ這っていく。やがて、しゅるりとネグリジェのリボンを解かれる。
 前をリボンで結ばれただけの衣装は、あっという間に脱がされてしまった。
 部屋の中は暖かくしてあったけれども、心許なくて、手が宙を掻く。
 一方のアーシュアルトは、私の胸に直接触れた。
 自分で言うのもなんだけど、そう自慢できるような大きさではない。気恥ずかしくて逃げようとしたが、ガッチリと覆いかぶさられ、身体が固定されてはままならない。
 指の腹で頂きを撫でられると、恐怖で背筋がゾクゾクと粟立つ。乳首を摘まれた刺激で、無意識に身体が仰け反った。

「ずいぶんとせているな」
「それは……っ」

 仕方がないことだ。王女ではあったけれど、後ろ盾はない。むしろ煙たがられていたせいで、慎ましい生活しかさせてもらえなかった。他の兄姉たちに目をつけられまいと、贅沢しないようにしていたという理由もある。
 アーシュアルトが力を込めたら私の身体なんて簡単に折れてしまいそうだ。
 私がビクッと震えると、アーシュアルトは不機嫌そうにギュッと眉根を寄せた。
 これから彼がなにをしようとしているのか、わからないはずがない。
 名実共に妃に、つまり強引に処女を奪うつもりなのだ。
 イオネル王家が私を養子にして取りこもうとしたのと同じ。私ではなく、この赤の祝福が欲しいだけなのだろうけど。

(ここまでする……!?)

 私はいい。どうせ死ぬはずだった身だ。それを助けたアーシュアルトになにをされようと、抗えるものではない。
 ――でも。

(こんなの、アーシュアルト殿下は望んでない、でしょう……?)

 彼は目的のため、国のために、望まぬ行為をしようとしているのだ。
 今だって、脱がせてみたら肉付きの悪い魅力のない女だったから、がっかりしたのだろう。

「殿下、いい、です。無理にしなくても、私は……っ」

 正直なところ、イッジレリア国のことなど知ったことではない。
 私はあの国に捨てられたのだ。
 だから、ノルヴェン王国が私を取りこもうとするのに抵抗するつもりはない。
 これでも人生二十一年、長いものには巻かれろの事なかれ主義でやってきた。その長いものがイッジレリアからノルヴェンに替わるだけ。むしろイッジレリアなんてこっちからお断りだ。
 こうなった以上、ノルヴェン側に鞍替えする心づもりはある。

「あなたの役に、んん……っ」

 わざわざこんな行為をする必要なんてない。そう伝えたいのに、言い終える前に唇を塞がれた。
 彼は険しい表情のまま、手を止めることはない。ネグリジェを全て剥ぎ取ると、私の小ぶりな胸を揉みしだいた。

「あっ、んぅ……や」

 申し訳なくて、泣きたくなる。
 感じたくないのに、身体の芯に熱が灯るのがわかった。
 アーシュアルトの唇が徐々に下へ移動していく。首にも、胸にも、彼は力いっぱい吸いつき、印を残していった。

「あ、まっ、こんな……殿下っ」

 痕をつけるなど、なんの意味もない行為だ。なのに、どうして? 
 居たたまれなくてイヤイヤと首を振るけれど、彼が動きを止めてくれることはなかった。
 いつの間にか彼の頭が、私の腰の辺りにある。

(まさか、これって)

 腿を両手でガッチリと押さえ込まれた。股を開くように持ち上げられる。
 ひんやりした空気が秘所に触れたのも束の間、ぬめりを帯びた生温かいなにかが、そこに押し当てられた。

「っ、待って! 駄目……っ」

 抵抗しても、無駄だった。
 先ほどまで私の身体の至るところに押し当てられていた唇が、問答無用に私の下の口をんだ。

「――――ッ!?」

 にゅる、と生温かい舌が花芽を舐めとったかと思うと、ナカに侵入してくる。ベロリと入り口付近を往復し、彼はわざと音を立てながら吸いはじめた。

(あっ、これ、ヤバ……っ)

 さっきまでのキスの感触とはまるで違う。
 直接的な刺激が恐ろしくてつい逃げそうになった腰をガッチリと掴まれ、容赦なく吸い上げられる。下半身から一気に快楽が駆け上がり、身体がぶるぶると震えた。

「あ、ぁ……っ!」

 快感と共に魔力がブワッとこみ上げてくる。
 この感覚、駄目だ。絶対に駄目。だって、今の私は自爆の首輪をめている。この首輪はめられた者の魔力に反応する仕組みになっているはず。
 つまり、うっかり私が魔力を放出したが最後、大爆発を引き起こす。

(まずい)

 このままでは、アーシュアルトもろともあの世行きだ。
 いや、被害が私とアーシュアルトだけで済んだら御の字。私の魔力が根こそぎ注がれたら、この建物ごと破壊してしまってもおかしくない。

「ぁあっ、殿下、やめて……っ」
「アーシュだ」
「っ、殿下、首輪が……っ!」

 どうしてやめてくれないのだろう。

(嘘でしょ? アーシュアルトは私の首輪がなんなのか、わかっていないの?)

 いや、いくら魔力がなくても、彼は優秀な王族だ。知らないはずがない。
 自分はいい。もう死んだような身だ。でも、アーシュアルトは絶対に巻き込みたくない。
 快楽から逃げようと身体を強張らせるものの、下ではアーシュアルトが容赦ない愛撫を続けていて、いよいよ御しきれなくなった。

「駄目です。魔力が、首輪に反応して……このままじゃ、爆発……っ」
「気にするな」
「しますっ!」

 どうして冷静でいられるのか。イヤイヤと首を横に振るが、彼は止まるつもりはないらしい。
 口でなぶられるのと同時に指で花芽を摘まれ、今まで我慢していたものが一気に決壊した。

「ああああ――――っ!」

 ぶわあっ、と、身体の奥から一気に魔力が吹き出す。
 首輪の作用か、強引に魔力を外に放出させられる。抑え込んでいた努力も虚しく、制御できないほどの魔力が噴き出した。

(駄目……!)

 どれだけ止めようと踏ん張っても、首輪を媒体にズルズルと引き出されていく感触。
 赤の祝福が、身体から抜けていく。どうしようもなく、絶望が意識を塗りつぶしていく。
 せめてアーシュアルトだけでも助けなければ。
 一縷の望みをかけて、私は彼を突き飛ばそうとした。
 でも、彼にガッチリ腰を掴まれて、離れることは叶わない。
 魔力と共に快楽が駆け巡り、ぐるんと胎内を一巡りした。
 もう駄目だ――身体が強張る。
 ――でも。
 恐れていた事態にはならなかった。
 ふわりと身体が軽くなる。

(あれ……?)

 おかしい。
 自分でも、なにが起こったのか、ちっともわからない。
 放出されたはずの魔力が、綺麗さっぱり消えていた。

「アーシュアルト、殿下……?」

 どういう理屈なのかはわからない。放たれた私の魔力は、どこかへ霧散したようだ。

「あ……」

 身体中の熱が一気に引いて、心地よさだけが残る。その感覚に身をゆだねながら、私はぼんやりと目を開いた。

(無事、だった……?)

 少なくとも、アーシュアルトを巻き込むことはなかった。
 しかし安心している暇はない。ホッとしたのも束の間、先ほどから弄られていた場所に今度は彼の長い指が突っ込まれた。

「あっ、ぁぁっ」
「濡れているな」
「んんっ、待って……」

 一度達したらしい身体は隅々までゾッとするほど敏感になっていた。ギュッと己の身体を抱き締めると、アーシュアルトの眼光が鋭くなる。

「力を抜け」

 容赦なく指を出し入れされ、奥から蜜が溢れはじめる。それを潤滑油代わりに、彼は指を二本に増やした。
 にゅちっ、にゅちっ、と淫らな音が響き渡る。それがますます私の肌をらせ、同時に不安定な気持ちにさせた。なにかにしがみつきたくて、あてもなく両手を伸ばす。

「ん。俺を掴んでいろ」
「はっ、ああっ……」
「そうだ。もっと強く掴んでも構わない」
「殿下……っ」

 アーシュだ、と彼は繰り返す。
 その主張を聞く余裕なんてなかった。ただただ膣内でバラバラに動く彼の指に翻弄されるばかりだ。

「少し、柔らかくなってきたな」
「ふ、ぅっ……」

 ふるふると睫毛が震える。アーシュアルトのキスが降ってくる。
 もう彼のなすがままだった。少しでも寄る辺がほしくて縋るように身体を擦りつけると、彼が驚いたように目を見張る。
 瞬間、ガンッと彼の表情が強張って、乱暴なキスをされた。
 身体が熱い。蕩けそうなほどに。甘い蜜が腿を流れ落ち、シーツを汚す。
 そろそろか、と彼が漏らした言葉を拾い、私は目を細めた。
 いつの間にか彼はコートを脱ぎ捨て、シャツのボタンも外していた。
 ガッチリした筋肉に覆われた彼の胸元が見える。軍人らしい、逞しい彼自身に釘付けになってしまう。

(しなやかで、綺麗――)

 私とは根底から身体のつくりが違うらしい。
 無意識のうちにしがみつくと、くつり、と喉の奥で笑うような音が聞こえた。

「いい。どこでもいいから、俺に触れていろ」
「ん……」
「できればしっかり腕を回しておけ。幾ばくか痛むはずだ」

 とろけたままの瞳で見ると、彼はカチャカチャとベルトを外している。

(え……)

 間もなくズボンをくつろげた先に現れたモノを目の当たりにして、私は息を呑んだ。
 あまりに太くて逞しい猛り。しなやかな彼の肢体に、あんなものが隠されていただなんて。

(待って? 待って待って?)

 血管がボコボコと浮き出た、あまりに生々しい彼の屹立。凶悪な、という表現がピッタリなほどに禍々しく、長く反り返ったそれに言葉を失う。
 無理だ。挿入るはずがない。
 った意識に、一気に冷水が浴びせられたような感覚だ。
 けれど私の腰が引けるよりも早く、彼はその猛りを蜜口に押し当てた。
 ぐっと力を込められてからは一瞬だった。
 圧倒的な質量を持ったそれが、一息に私を穿つ。

「――――っ!」

 奥の奥まで一気に突き立てられた。
 どすん、という深い衝撃。呼吸することすらできず、身体がのけ反る。無意識に彼の背中に腕を回し、爪を突き立てた。

「っ、っ、っ……!」

 破瓜の痛みで、言葉にならない声が漏れた。彼も彼で苦しそうに息を吐きながらも、猛りを抜こうとはしない。
 あまりの熱におぼれそうになり、意識を繋ぎ止めるため腕に力を込める。彼も同じように強く抱き締め返してくれたから、縋るようにその逞しい胸元に顔を埋めた。

「あ、……は、ぁ……っ」

 奥まで突き立てられてしばらく。ようやく呼吸が整ってきた。

「うっ、うう……っ」

 ひどい。
 こんなに深く、重いものを。
 処女だったのに、問答無用であんなとんでもないモノを受け入れさせられるなんて。

「殿下……っ」

 力いっぱい抱きついて、彼の胸に顔を擦り寄せる。
 こんなにも痛くて苦しい思いをしたのだから、彼の身体で安心する権利はあるはずだ。
 少しでも痛みを誤魔化すための行為なのに、なぜか私の中に突っ込まれた彼の熱杭が、ムクムクと存在感を増していった。
 いや。待て。待ってほしい。スッと意識が冷えていく。

「待っ、殿下……!」

 訴えるように呼びかけると、なぜか彼はすっと視線を外して端的に告げた。

「少し、動かす」
「えっ」
「動かす」

 だから待って。という制止は間に合わない。
 完全に決定事項として宣言すると、彼はそのまま腰を振りはじめた。

「あっ、んんんっ!?」
「ライラ……!」

 ずるずるずるっ、と抜かれ、すぐにまた、ばつんっ! という重たい衝撃が走る。
 彼のモノが大きすぎるせいか、少し動いただけでも膣壁が強く擦られ、身体が跳ねる。
 少しでも気をゆるめたら意識が弾け飛んでしまいそうで、私は必死に彼に縋りついた。

「もっと。もっとだ。強く掴んでいろ」
「んっ……」
「腰をもっと押しつけて。そう、それでいい」

 締まるな。そう呟いた彼は、苦しそうに息を吐きながら抽送を始める。
 バツッ、バツッと容赦なく肉がぶつかる音が部屋中に響いた。
 身体の中を異物が行き来するのがわかる。そのたびに、私も意味を伴わない声を漏らした。
 嬌声、と言っていいものだろう。自分でさえ聞いたことのない甘い声が漏れ、アーシュアルトの眉根が寄る。彼の瞳には真剣さが強く滲み、より深く私を穿った。

「あ、ああっ」

 彼のモノが私のナカの一点を擦る。より強い快楽をもたらす場所を見つけたらしい。彼はねちっこいくらいに、そこを重点的に攻めてくる。
 快楽と共に、魔力がかき混ぜられ、身体が強い熱を発する。
 駄目。このままだと、また魔力が放出されてしまう。

「あっ、ああっ。や、そこっ……」
「ああ。ここだな。君が良い声で鳴く」
「んっ、……きもち、いっ……」

 自然とこぼれ落ちた言葉のせいか、アーシュアルトは満足そうに口の端を上げた。

(あ、笑って、る……)

 アーシュアルトが、満足そうに。
 それは初めて見る表情で、心の奥底がジワリと熱くなる。
 この行為に合意したつもりはない。でも、彼の満足そうな顔を見るのは嫌ではなかった。

「ライラ……くっ、ライラっ」

 彼が苦しそうに息を吐きながら、何度も何度も私の名前を呼ぶ。
 その深い響きの中に、どうしてか甘さを拾ってしまい、はらの奥底がずくりとうずいた。
 応える代わりに、私も腕に力を込める。余裕なんてあるはずがなく、ふぅふぅと息を吐いた。
 深い。彼の猛りが奥の奥に押し当てられるたび、意識が飛びそうになる。
 身体がばらばらになりそうなほど深く穿たれ、いよいよ視界が瞬いた。

「ああ……っ!」
「くっ、イクッ……!」

 はらの奥に脈動を感じるのと同時に、私の意識も流される。
 魔力の制御なんてできるはずがない。
 流されるままに、全てを放出し――
 ――放出した先から、アーシュアルトに吸収されていった。

(きもち、いい……)

 知らなかった。魔力を放出するのが、こんなに気持ちがいいなんて。
 身体が蕩けて、このまま溶け合ってしまいそうだ。
 私はうっとりしながら、汗ばむ身体を彼に押しつけていた。
 彼もまた汗を滲ませながら、私にもたれかかるようにしてベッドに倒れこんだ。もちろん、繋がったまま。

「はっ、はぁっ……はぁ、はぁっ」
「マズイな。よすぎる」

 そう言いながら、彼は私を両手で抱き込み、体勢をひっくり返した。
 アーシュアルトの筋肉をベッドに、今度は私のほうが覆い被さるかたちになる。それが妙に心地よくて、安心するように身体を預けてしまった。
 多分、本能のままだったのだと思う。彼の胸元に鼻をすり寄せ、すんすんと匂いを嗅いでいた。
 深くて、ほろ苦いような大人の香りがする。これが、雄という生き物なのだろう。
 ギュッと抱き締められるのが心地よくて、気がつけば彼の胸にキスを落としていて。

(――あれ?)

 後から、自分の意識が追いついてくる。

(私、今、なにを……?)

 無自覚にとんでもないことをしていないか。と気づいても、もう遅い。アーシュアルトがビクッと震え、私のナカで熱を取り戻していく。

「あ、あの、殿下……?」

 これはまずい。どう考えても私が持たない。――それなのに。
 アーシュアルトは気まずそうに視線を逸らしつつ、はっきりと告げる。

「君が、煽るからだ」
「あお――!?」

 そんなつもりはない! と言い返そうとしたのに、下から突き上げられた衝撃で言葉にならなかった。

「あっ!?」

 今度は最初から全開だった。
 ガツッ、ガツッと容赦なく突き上げられ、呼吸ができない。
 一度達した身体は敏感になっていて、あっという間にぶるぶると震えだす。
 ナカに出された彼の精液と破瓜の血とが混じり合い、溢れ落ちていく。お互いの腿をぐちゃぐちゃに汚しながら、それでもアーシュアルトは止まる気などないらしい。

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