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因縁の復讐
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ユウキを媒介に“存在”がその姿を現した。
破壊剣に仕込んだ“破壊”を司る複数のデバフをユウキに仕込んだ事でユウキを媒介として召喚される“存在”にもその影響が繁栄される。
そして、艦を呑み込み“存在”がその姿を現した。
全長100mほどの巨体に獅子のような躯体に尻尾が蛇になっており、頭は竜を模しており、額には金の杯のエンブレムが刻印され、コウモリを思わせる1対の翼が生えた獣だ。
「貴様か……このオレ、創造神レヴィアタンを辱めたのは……」
「えぇ、わたしですよ。薄汚いゴミ虫」
レヴィアタンを名乗る“存在”は炯々な眼差しでシュウに憎悪を向ける。
少なくとも戦闘の回避は不可能だ。
どちらかが敗北するまで戦いは終わらない。
「総員。レヴィアタンが逃げないように包囲しなさい」
「ちょっと、待って!あなただけでやる気なの?」
マナの戸惑いにシュウは答える。
「これはわたしの復讐です。だからこそ、わたしが蹴りをつけないとならない。こればかりは譲りつもりはありません。なので、お願いします。奴を確実に仕留める為に協力して欲しい」
シュウのこれまでにないと言えるほどの真摯なお願いだった。
彼は基本的に私的なお願い等しない。
あくまでお願いする事があってもそれは職務的な事であり私的な理由でその言葉は使わない。
だからこそ、彼がどれだけこの瞬間を切望しているか悟るにあまりあった。
「分かりました。シュウさんご武運を!」
カナの言葉を合図にまるで全員が同意したようにレヴィアタンの周りを包囲して逃げ道を多方面で封印した。
これで転移等の手段は全て封印された。
各機体の強化も合わさって高度な術式が構築される。
「よもや、このオレがお前如きに逃げるとでも思っているのか?」
「お前など所詮はモンキーに過ぎません。モンキー如きがこのわたしに勝てるとでも?」
「驕るな!人間風情が!」
レヴィアタンは雷鳴魔術“ライトニング ジャベリン”を無数に展開しそこに因果魔術を併用して“原因と結果”を逆転させ放った。
つまり、命中後にジャベリンを発射した事になる。
並の方法ならまず、避けられない。
だが、避ける必要はない。
無数のジャベリンはグランゲートに直撃した。
しかし、“障壁”に防護され、ジャベリンは霧散する。
「その程度でこのグランゲートを止められるとでも?」
「少しはやるようだな……ならばこれはどうだ!」
レヴィアタンは時空魔術を使用し辺り一帯の時間を止めた。
「いくら強かろうと時間が止まれば無意味よ!」
シュウが仕掛けた破壊のデバフで本調子とは行かないがそれでも並みの存在ではこの攻撃は防げない。
レヴィアタンは咆哮を轟かせたと共にシュウに突進しコックピットに獅子の爪を突き立てる。
そして、接触したと同時に時間停止を解除する。
そのようにしないと時間が止まっている相手に対して無限に等しいエネルギーを与えないとダメージが通らないからだ。
本来のスペックならそれに近い事もできたが、シュウの破壊デバフでそれもできない。
だが、それでもゼウスやハーデス、ポセイドンと言った矮小で低俗な邪神を屠るには十分な力だった。
と……思われた。
突如、レヴィアタンの左前脚が切断された。
「!」
レヴィアタンは一瞬で飛びのき、シュウから距離を取る。
そこには破壊剣を振り切ったシュウの姿があった。
「馬鹿な……何故、反撃できる」
「お前が時間停止した以上、必ず接触時に時間停止を解除する。その隙を狙っただけに過ぎません」
「そんな刹那の合間を縫ったというのか!」
「なに、86回ほど斬る暇はありましたよ」
シュウは似たような技をかつてグンから喰らっていた。
それからあの技に対抗すべく研鑽を重ね、魔王の取り込んだ事で並を超える剣士に化けた事で彼の剣はリリーシャほどではないが超人の域に達していた。
「ふん……確かにお前は強者だろう!だが、所詮は人間!我には勝てん!今から放つ技は人智を超えたモノと思え!ジャガーノート・ゼロ!」
レヴィアタンは自身の概念魔術である“ジャガーノート・ゼロ”を放った。
この技は口でこの技を唱えるだけで自身のSWNが伝播する全ての範囲にいる運動エネルギーや動作、WNを発生させる意志の起伏、つまり意志の力すらゼロにする技だ。
その射程は銀河全てを覆うほどであり避ける事はまずできない。
その技を喰らったマナ達の動きが止まった。
「無駄です」
シュウは声を発したと共に反理の魔眼を展開しそれを無効にした。
「馬鹿な……この力すら寄せ付けないだと!」
「その程度の力で何かできると思ったのですか?」
シュウは虚無の魔眼でジャガーノート・ゼロを無効にしたリリーシャにGCメンバーを回収しエンパシーがある宙域まで後退するように指示を出した。
シュウはこの間にレヴィアタンを拘束する術を既に展開した。
「世界展開!魔を支配する王の世界」
シュウは言葉に応じて世界が塗り替わった。
自分が望むがままに世界を塗り替える。
自分が最も願い易い根源的な世界を展開した。
少し前まで邪神が使う概念魔術を施した道具でなければ展開できなかった“世界具現”の魔術をアーリアの神がスキルを使った技として汎用性と使い易さを追求し完成させた奥義だ。
魔神となった事で初めて会得する事に成功いたこの術はまさに白井 修也と言う人間の心象を映していた。
辺りには夜の闇と満月の月明かり、その月からは大地に向かって何かが足り下げられていた。
それは無数の鎖だ。
鎖の柱にはまるで自由を奪われたように何かが磔られ、月光が強まる毎に呻きを挙げる。
それはシュウが倒し束縛した邪神やヘルビーストの群れ、エネミーの群れで構成されておりそれはまるで奴隷たちの呻きであった。
白井修也を害した者達が白井修也の奴隷となりその一生を以て責めさいなまれると言うシュウの心象と覚悟を体現した世界となっていた。
「レヴィアタン。ようこそ、わたしの世界へ」
シュウは恍惚に嗤って見せた。
この戦いはシュウにとって決して負けられないだからこそ、本気を出すのだ。
この世界はその現れである。
「世界を展開したか……だが、良い気になるな。多少は有利になるだろうがそれでも決定打にはならんわ!消えてしまえ!」
“存在”と呼ばれる悪魔はその力だけで絶対であり全知全能の神とすら双璧を為す。
その力を“意志を示しただけで敵を消す”くらい造作もなくやってのける。
シュウに「消えてしまえ」と言ったのはまさにそれである。
「そのままお返ししますよ」
シュウは神言術を作動させ、レヴィアタンの言葉を反射させた。
それによりレヴィアタンの左頭部の半分が消えた。
「流石ですね……全損はしませんか」
「おのれぇぇぇぇぇ!まさか、これほどの……」
「この程度の力を持たずしてわたしがあなたの前に現れるとでも?」
終焉の女神から受け取った莫大な経験値がシュウにこれだけの力を与えた。
終焉の女神と創造神レヴィアタンは本来、同格だっただろう。
だが、実際の強さは終焉の女神が遥かに凌駕していた。
アイカは侵食される最中、それに抵抗した事で莫大な力を得た。
その力が経験値と言う形でシュウに還元されたならシュウの力はノーマルモードの終焉の女神に迫るのだ。
それでもアイカには勝てる気がしないが……。
レヴィアタンは睨みつけるようにこちらを見つめる。
その間に失った左脚は再生し左頭部も治りかけていた。
恐らく、再生できているところを見るとシュウが仕掛けた破壊のデバフはもう攻略され無力化されている。
ここからは本気モードの創造神レヴィアタンとなるだろう。
「まさか、このオレが本気で挑まねばならないとはな!」
レヴィアタンは口を大きく開けて天を仰いだ。
その瞬間、力が迸った。
莫大な力の奔流……世界……否、銀河や宇宙その万物すら凌駕するほどの圧倒的な力が奔った。
その力が巨大な力場を造り出しレヴィアタンの周囲に集い、圧倒的なまでの力場の防壁を形成した。
技の溜めが大きいがその代わりに発動までの間は使用者に絶対防御の防壁を展開する技と言えるだろう。
まさしく、チートに相応しい技だ。
この防壁の前ではシュウでも突破できない。
「なるほど……これが“存在”の力ですか!」
その力を前にしてもシュウは笑っていた。
寧ろ、興奮していた。
これほどの相手を最終的に討ち取った時に自分はどれだけの幸福感を得て……そして、失ったモノを取り戻せるか……これだけの敵を倒す事で初めて自分は今まで確かに『努力』してきたと認める事ができる。
そのように心から思えるほどの強敵を前にシュウは歓喜せずにはいられなかった。
それもそうだ。
レヴィアタンが造ったエネルギーの球体は既に宇宙誕生とかの比ではなく、シュウの“世界具現”の中でなければ、NOの世界を含めた銀河や宇宙すらも破壊しても可笑しくないレベルに達していた。
しかも、その大きさは強化したグランゲートのセンサー類などを駆使すると3兆光年並みの大きさがあった。
並の神など塵芥になりそうなほどの圧倒的な力だ。
「喰らえ!インフェニティ!フラッシュ!!!!!!!!」
レヴィアタンはまるで獣の咆哮を放つように天に上げた口を一気に振り下ろし天に留まった球体がレヴィアタンの咆哮に合わせてその莫大なエネルギーを光線のようにシュウ目掛けて1点に注いだ。
「受けて立ちますよ!黒雷砲!完全開放!」
シュウは漆黒のライフルを取り出し黒雷を全力で発射した。
レヴィアタンの光線と黒雷の球が激しくぶつかり合う。
その衝撃は凄まじく、2つの技が干渉した衝撃でその狭間から新たな宇宙が創造された。
間違いなくNOの世界で放っていい技ではない。
仮に放っていれば今の宇宙が消し飛び、新たな宇宙が創造されても可笑しくないレベルだった。
だが、その勝負も光線が黒雷を押し始め、シュウが劣勢になり始めた。
「くっ!」
流石にシュウも苦悶の表情を浮かべる。
これほどの力は流石にソロで相手をするにもキツイ。
いくら、終焉の女神のお陰でレベルアップしたとは言え、パワー的な意味ではシュウはレヴィアタンに劣っているのだ。
「なら、ジョーカーを切らせて貰います!」
シュウは敢えて黒雷を放ち、維持するリソースを減らしイグニスビットを展開した。
それにより敵の光線がシュウの目前まで迫る。
だが、同時にシュウの秘策とも言える術が発動した。
「ぬうっ!こ、これは!」
レヴィアタンは異変を感じた。
レヴィアタンの意志が支配されつつあった。
それはシュウが展開したイグニスビットの“神力吸収”のパスを通じてシュウがレヴィアタンに干渉しているのだ。
シュウはパワー勝負では勝ち目がないと判断しレヴィアタンの支配を画策した。
“存在”や邪神は忍耐力のパラメーターが比較的に低い為に魔術的な防御に弱い。
故に対を為す神格の魔術の干渉には弱い傾向があり、パワーで負けているシュウでもテクニックならレヴィアタンに対して有利に動けるのだ。
「舐めるな!この程度の小細工!ねじ伏せてやる!」
レヴィアタンは繋がったパスを利用して逆にシュウを支配しようとした。
そう、支配しようとしたのだ。
それがシュウの策略だと気付かずに……。
「この時を!待っていた!」
シュウはエクストラ スキル 支配の狩人を発動した。
ただ、ただの支配の狩人ではない。
魔神になった事によりある特殊能力を得ていた。
それは“魔”の力を“神霊”の力に変える力だ。
つまりはSWNをZWNに変換するのだ。
SWNをZWNに変換するスキルに“浄化”があるがこのスキルでは10対1の比率でSWNをZWNに変換する。
しかし、この魔神の能力は10対10でSWNをZWNに変換できる。
つまり、創造神レヴィアタンのSWNによる支配干渉は全てZWNに変換されZWNを使うシュウの力をその分、増強され、エクストラ スキルを発動するZWNも増加するので支配の狩人のスキルの能力が余計に強化されてしまうのだ。
レヴィアタンはシュウの支配の狩人のスキルを知っている。
だが、それは過去のデータだ。
魔神になった事で強いZWNを得た事でSWNを媒介として情報を得ているレヴィアタンでも魔神になった以降のシュウの情報は一切知認できていない。
加えて、”世界具現”の効果でその効果が向上している事も知らない。
知認していれば、このタイミングで逆にシュウを支配しようとはしない。
支配の狩人があっても支配できると踏んだから支配しようとしたのだ。
そのように思い込まされた時点でレヴィアタンはシュウの罠にかかった。
シュウにとって魔神になったのは本当に誤算だった。
だが、結果的にただ殺すよりも残酷な復讐が可能となった。
ゴッドアイテム真・支配の羈絏の能力があれば、支配と言う復讐も選択できた。
だが、選択できただけで魔神にならなければ、支配と言う選択を取れず別の手を考えていたかも知れない。
まさに“支配の狩人”“魔神”“真・支配の羈絏”の3つが揃ったからこそ、この復讐を為せたと言える。
そして、レヴィアタンは支配された。
「……」
レヴィアタンの光線の力が弱まり彼は黙した。
そして、光線が消える。
「賭けはわたしの勝ちですよ。レヴィアタン」
「……」
「僅かに反骨心を残しているようですが、時間の問題です。あなたが嫉妬を司る馬鹿で本当に良かった。わたしの力に嫉妬しそれを服従させようと支配でわたしに対抗しようとした。本当に間抜けですね」
「……」
レヴィアタンは何も語らない。
語らないがそこには激しい憎悪が見えた。
「えぇ、そうです。わたしは最初からこれを狙っていた。わたしではあなたを仕留めるのは難しい。ですから、命を奪って復讐する手段は最初から捨てていました。なので、わたしはあなたをわたしの永遠なる奴隷にする事で復讐とする事にしました。それはある意味で死ぬより残酷で中々、良い趣向ではしょう」
シュウは「くふふふ……」と嗤った。
レヴィアタンは何も言わないが目つきだけは悔しそうに激しい憎悪を滲ませていた。
シュウにとってこれほどの賛美は無かった。
「では、反骨を燃やすあなたの残りカスのような意志は邪魔なので消しますね」
シュウは弱り切ったレヴィアタンが完全に支配下にすべく真・支配の羈絏のシステムを完全稼働させ”封印”のコマンドを押した。
それによりレヴィアタンは更に弱り始めた。
しかし、流石、“存在”と言われるだけありまだ、抵抗しようと蛇の尻尾の先から雷鳴魔術を発射しようとしていた。
それだけでも太陽クラスの威力があった。
「やれやれ……支配されてもなお、自分の意志を貫くのは嫌いではありませんよ。ですが……これでチャックメイトです」
レヴィアタンの力の殆どを掌握したシュウは膨大なSWNをそのままZWNに転用した。
そして、ロジカライズシステムによりその膨大なZWNに見合う機体に機体が変化し始めた。
それは蒼白粒子を全身に纏い、徐々に変化した。
背後の五光を思わせる背部装置はその姿を変え、分割され両腕部に搭載され、新たに背部からは五光のような装置が展開された。
しかし、その色は黄金と漆黒を基調とした光沢感を帯び、神霊が魔を従えているようだった。
そして、全身の肢体が肥大化した機体に完成された。
「あぁ、良いですね。これがグランゲート エターナルですか」
“無限の魔の支配”を象徴する魔の化身がここに誕生した。
「さぁ、わたしに服従するが良い」
シュウは空間収納から破壊剣を取り出し右手に構え、背部装置のスラスターを全開にして肉迫して上段から振り翳した。
「レヴィアタン、これでお別れです」
レヴィアタンの頭部が輪切りにされ、レヴィアタンの肢体が地面に落ちた。
そして、その体は霞のように消えた。
「これでわたしの復讐は完遂されました」
シュウの長い復讐はこうして幕を閉じた。
破壊剣に仕込んだ“破壊”を司る複数のデバフをユウキに仕込んだ事でユウキを媒介として召喚される“存在”にもその影響が繁栄される。
そして、艦を呑み込み“存在”がその姿を現した。
全長100mほどの巨体に獅子のような躯体に尻尾が蛇になっており、頭は竜を模しており、額には金の杯のエンブレムが刻印され、コウモリを思わせる1対の翼が生えた獣だ。
「貴様か……このオレ、創造神レヴィアタンを辱めたのは……」
「えぇ、わたしですよ。薄汚いゴミ虫」
レヴィアタンを名乗る“存在”は炯々な眼差しでシュウに憎悪を向ける。
少なくとも戦闘の回避は不可能だ。
どちらかが敗北するまで戦いは終わらない。
「総員。レヴィアタンが逃げないように包囲しなさい」
「ちょっと、待って!あなただけでやる気なの?」
マナの戸惑いにシュウは答える。
「これはわたしの復讐です。だからこそ、わたしが蹴りをつけないとならない。こればかりは譲りつもりはありません。なので、お願いします。奴を確実に仕留める為に協力して欲しい」
シュウのこれまでにないと言えるほどの真摯なお願いだった。
彼は基本的に私的なお願い等しない。
あくまでお願いする事があってもそれは職務的な事であり私的な理由でその言葉は使わない。
だからこそ、彼がどれだけこの瞬間を切望しているか悟るにあまりあった。
「分かりました。シュウさんご武運を!」
カナの言葉を合図にまるで全員が同意したようにレヴィアタンの周りを包囲して逃げ道を多方面で封印した。
これで転移等の手段は全て封印された。
各機体の強化も合わさって高度な術式が構築される。
「よもや、このオレがお前如きに逃げるとでも思っているのか?」
「お前など所詮はモンキーに過ぎません。モンキー如きがこのわたしに勝てるとでも?」
「驕るな!人間風情が!」
レヴィアタンは雷鳴魔術“ライトニング ジャベリン”を無数に展開しそこに因果魔術を併用して“原因と結果”を逆転させ放った。
つまり、命中後にジャベリンを発射した事になる。
並の方法ならまず、避けられない。
だが、避ける必要はない。
無数のジャベリンはグランゲートに直撃した。
しかし、“障壁”に防護され、ジャベリンは霧散する。
「その程度でこのグランゲートを止められるとでも?」
「少しはやるようだな……ならばこれはどうだ!」
レヴィアタンは時空魔術を使用し辺り一帯の時間を止めた。
「いくら強かろうと時間が止まれば無意味よ!」
シュウが仕掛けた破壊のデバフで本調子とは行かないがそれでも並みの存在ではこの攻撃は防げない。
レヴィアタンは咆哮を轟かせたと共にシュウに突進しコックピットに獅子の爪を突き立てる。
そして、接触したと同時に時間停止を解除する。
そのようにしないと時間が止まっている相手に対して無限に等しいエネルギーを与えないとダメージが通らないからだ。
本来のスペックならそれに近い事もできたが、シュウの破壊デバフでそれもできない。
だが、それでもゼウスやハーデス、ポセイドンと言った矮小で低俗な邪神を屠るには十分な力だった。
と……思われた。
突如、レヴィアタンの左前脚が切断された。
「!」
レヴィアタンは一瞬で飛びのき、シュウから距離を取る。
そこには破壊剣を振り切ったシュウの姿があった。
「馬鹿な……何故、反撃できる」
「お前が時間停止した以上、必ず接触時に時間停止を解除する。その隙を狙っただけに過ぎません」
「そんな刹那の合間を縫ったというのか!」
「なに、86回ほど斬る暇はありましたよ」
シュウは似たような技をかつてグンから喰らっていた。
それからあの技に対抗すべく研鑽を重ね、魔王の取り込んだ事で並を超える剣士に化けた事で彼の剣はリリーシャほどではないが超人の域に達していた。
「ふん……確かにお前は強者だろう!だが、所詮は人間!我には勝てん!今から放つ技は人智を超えたモノと思え!ジャガーノート・ゼロ!」
レヴィアタンは自身の概念魔術である“ジャガーノート・ゼロ”を放った。
この技は口でこの技を唱えるだけで自身のSWNが伝播する全ての範囲にいる運動エネルギーや動作、WNを発生させる意志の起伏、つまり意志の力すらゼロにする技だ。
その射程は銀河全てを覆うほどであり避ける事はまずできない。
その技を喰らったマナ達の動きが止まった。
「無駄です」
シュウは声を発したと共に反理の魔眼を展開しそれを無効にした。
「馬鹿な……この力すら寄せ付けないだと!」
「その程度の力で何かできると思ったのですか?」
シュウは虚無の魔眼でジャガーノート・ゼロを無効にしたリリーシャにGCメンバーを回収しエンパシーがある宙域まで後退するように指示を出した。
シュウはこの間にレヴィアタンを拘束する術を既に展開した。
「世界展開!魔を支配する王の世界」
シュウは言葉に応じて世界が塗り替わった。
自分が望むがままに世界を塗り替える。
自分が最も願い易い根源的な世界を展開した。
少し前まで邪神が使う概念魔術を施した道具でなければ展開できなかった“世界具現”の魔術をアーリアの神がスキルを使った技として汎用性と使い易さを追求し完成させた奥義だ。
魔神となった事で初めて会得する事に成功いたこの術はまさに白井 修也と言う人間の心象を映していた。
辺りには夜の闇と満月の月明かり、その月からは大地に向かって何かが足り下げられていた。
それは無数の鎖だ。
鎖の柱にはまるで自由を奪われたように何かが磔られ、月光が強まる毎に呻きを挙げる。
それはシュウが倒し束縛した邪神やヘルビーストの群れ、エネミーの群れで構成されておりそれはまるで奴隷たちの呻きであった。
白井修也を害した者達が白井修也の奴隷となりその一生を以て責めさいなまれると言うシュウの心象と覚悟を体現した世界となっていた。
「レヴィアタン。ようこそ、わたしの世界へ」
シュウは恍惚に嗤って見せた。
この戦いはシュウにとって決して負けられないだからこそ、本気を出すのだ。
この世界はその現れである。
「世界を展開したか……だが、良い気になるな。多少は有利になるだろうがそれでも決定打にはならんわ!消えてしまえ!」
“存在”と呼ばれる悪魔はその力だけで絶対であり全知全能の神とすら双璧を為す。
その力を“意志を示しただけで敵を消す”くらい造作もなくやってのける。
シュウに「消えてしまえ」と言ったのはまさにそれである。
「そのままお返ししますよ」
シュウは神言術を作動させ、レヴィアタンの言葉を反射させた。
それによりレヴィアタンの左頭部の半分が消えた。
「流石ですね……全損はしませんか」
「おのれぇぇぇぇぇ!まさか、これほどの……」
「この程度の力を持たずしてわたしがあなたの前に現れるとでも?」
終焉の女神から受け取った莫大な経験値がシュウにこれだけの力を与えた。
終焉の女神と創造神レヴィアタンは本来、同格だっただろう。
だが、実際の強さは終焉の女神が遥かに凌駕していた。
アイカは侵食される最中、それに抵抗した事で莫大な力を得た。
その力が経験値と言う形でシュウに還元されたならシュウの力はノーマルモードの終焉の女神に迫るのだ。
それでもアイカには勝てる気がしないが……。
レヴィアタンは睨みつけるようにこちらを見つめる。
その間に失った左脚は再生し左頭部も治りかけていた。
恐らく、再生できているところを見るとシュウが仕掛けた破壊のデバフはもう攻略され無力化されている。
ここからは本気モードの創造神レヴィアタンとなるだろう。
「まさか、このオレが本気で挑まねばならないとはな!」
レヴィアタンは口を大きく開けて天を仰いだ。
その瞬間、力が迸った。
莫大な力の奔流……世界……否、銀河や宇宙その万物すら凌駕するほどの圧倒的な力が奔った。
その力が巨大な力場を造り出しレヴィアタンの周囲に集い、圧倒的なまでの力場の防壁を形成した。
技の溜めが大きいがその代わりに発動までの間は使用者に絶対防御の防壁を展開する技と言えるだろう。
まさしく、チートに相応しい技だ。
この防壁の前ではシュウでも突破できない。
「なるほど……これが“存在”の力ですか!」
その力を前にしてもシュウは笑っていた。
寧ろ、興奮していた。
これほどの相手を最終的に討ち取った時に自分はどれだけの幸福感を得て……そして、失ったモノを取り戻せるか……これだけの敵を倒す事で初めて自分は今まで確かに『努力』してきたと認める事ができる。
そのように心から思えるほどの強敵を前にシュウは歓喜せずにはいられなかった。
それもそうだ。
レヴィアタンが造ったエネルギーの球体は既に宇宙誕生とかの比ではなく、シュウの“世界具現”の中でなければ、NOの世界を含めた銀河や宇宙すらも破壊しても可笑しくないレベルに達していた。
しかも、その大きさは強化したグランゲートのセンサー類などを駆使すると3兆光年並みの大きさがあった。
並の神など塵芥になりそうなほどの圧倒的な力だ。
「喰らえ!インフェニティ!フラッシュ!!!!!!!!」
レヴィアタンはまるで獣の咆哮を放つように天に上げた口を一気に振り下ろし天に留まった球体がレヴィアタンの咆哮に合わせてその莫大なエネルギーを光線のようにシュウ目掛けて1点に注いだ。
「受けて立ちますよ!黒雷砲!完全開放!」
シュウは漆黒のライフルを取り出し黒雷を全力で発射した。
レヴィアタンの光線と黒雷の球が激しくぶつかり合う。
その衝撃は凄まじく、2つの技が干渉した衝撃でその狭間から新たな宇宙が創造された。
間違いなくNOの世界で放っていい技ではない。
仮に放っていれば今の宇宙が消し飛び、新たな宇宙が創造されても可笑しくないレベルだった。
だが、その勝負も光線が黒雷を押し始め、シュウが劣勢になり始めた。
「くっ!」
流石にシュウも苦悶の表情を浮かべる。
これほどの力は流石にソロで相手をするにもキツイ。
いくら、終焉の女神のお陰でレベルアップしたとは言え、パワー的な意味ではシュウはレヴィアタンに劣っているのだ。
「なら、ジョーカーを切らせて貰います!」
シュウは敢えて黒雷を放ち、維持するリソースを減らしイグニスビットを展開した。
それにより敵の光線がシュウの目前まで迫る。
だが、同時にシュウの秘策とも言える術が発動した。
「ぬうっ!こ、これは!」
レヴィアタンは異変を感じた。
レヴィアタンの意志が支配されつつあった。
それはシュウが展開したイグニスビットの“神力吸収”のパスを通じてシュウがレヴィアタンに干渉しているのだ。
シュウはパワー勝負では勝ち目がないと判断しレヴィアタンの支配を画策した。
“存在”や邪神は忍耐力のパラメーターが比較的に低い為に魔術的な防御に弱い。
故に対を為す神格の魔術の干渉には弱い傾向があり、パワーで負けているシュウでもテクニックならレヴィアタンに対して有利に動けるのだ。
「舐めるな!この程度の小細工!ねじ伏せてやる!」
レヴィアタンは繋がったパスを利用して逆にシュウを支配しようとした。
そう、支配しようとしたのだ。
それがシュウの策略だと気付かずに……。
「この時を!待っていた!」
シュウはエクストラ スキル 支配の狩人を発動した。
ただ、ただの支配の狩人ではない。
魔神になった事によりある特殊能力を得ていた。
それは“魔”の力を“神霊”の力に変える力だ。
つまりはSWNをZWNに変換するのだ。
SWNをZWNに変換するスキルに“浄化”があるがこのスキルでは10対1の比率でSWNをZWNに変換する。
しかし、この魔神の能力は10対10でSWNをZWNに変換できる。
つまり、創造神レヴィアタンのSWNによる支配干渉は全てZWNに変換されZWNを使うシュウの力をその分、増強され、エクストラ スキルを発動するZWNも増加するので支配の狩人のスキルの能力が余計に強化されてしまうのだ。
レヴィアタンはシュウの支配の狩人のスキルを知っている。
だが、それは過去のデータだ。
魔神になった事で強いZWNを得た事でSWNを媒介として情報を得ているレヴィアタンでも魔神になった以降のシュウの情報は一切知認できていない。
加えて、”世界具現”の効果でその効果が向上している事も知らない。
知認していれば、このタイミングで逆にシュウを支配しようとはしない。
支配の狩人があっても支配できると踏んだから支配しようとしたのだ。
そのように思い込まされた時点でレヴィアタンはシュウの罠にかかった。
シュウにとって魔神になったのは本当に誤算だった。
だが、結果的にただ殺すよりも残酷な復讐が可能となった。
ゴッドアイテム真・支配の羈絏の能力があれば、支配と言う復讐も選択できた。
だが、選択できただけで魔神にならなければ、支配と言う選択を取れず別の手を考えていたかも知れない。
まさに“支配の狩人”“魔神”“真・支配の羈絏”の3つが揃ったからこそ、この復讐を為せたと言える。
そして、レヴィアタンは支配された。
「……」
レヴィアタンの光線の力が弱まり彼は黙した。
そして、光線が消える。
「賭けはわたしの勝ちですよ。レヴィアタン」
「……」
「僅かに反骨心を残しているようですが、時間の問題です。あなたが嫉妬を司る馬鹿で本当に良かった。わたしの力に嫉妬しそれを服従させようと支配でわたしに対抗しようとした。本当に間抜けですね」
「……」
レヴィアタンは何も語らない。
語らないがそこには激しい憎悪が見えた。
「えぇ、そうです。わたしは最初からこれを狙っていた。わたしではあなたを仕留めるのは難しい。ですから、命を奪って復讐する手段は最初から捨てていました。なので、わたしはあなたをわたしの永遠なる奴隷にする事で復讐とする事にしました。それはある意味で死ぬより残酷で中々、良い趣向ではしょう」
シュウは「くふふふ……」と嗤った。
レヴィアタンは何も言わないが目つきだけは悔しそうに激しい憎悪を滲ませていた。
シュウにとってこれほどの賛美は無かった。
「では、反骨を燃やすあなたの残りカスのような意志は邪魔なので消しますね」
シュウは弱り切ったレヴィアタンが完全に支配下にすべく真・支配の羈絏のシステムを完全稼働させ”封印”のコマンドを押した。
それによりレヴィアタンは更に弱り始めた。
しかし、流石、“存在”と言われるだけありまだ、抵抗しようと蛇の尻尾の先から雷鳴魔術を発射しようとしていた。
それだけでも太陽クラスの威力があった。
「やれやれ……支配されてもなお、自分の意志を貫くのは嫌いではありませんよ。ですが……これでチャックメイトです」
レヴィアタンの力の殆どを掌握したシュウは膨大なSWNをそのままZWNに転用した。
そして、ロジカライズシステムによりその膨大なZWNに見合う機体に機体が変化し始めた。
それは蒼白粒子を全身に纏い、徐々に変化した。
背後の五光を思わせる背部装置はその姿を変え、分割され両腕部に搭載され、新たに背部からは五光のような装置が展開された。
しかし、その色は黄金と漆黒を基調とした光沢感を帯び、神霊が魔を従えているようだった。
そして、全身の肢体が肥大化した機体に完成された。
「あぁ、良いですね。これがグランゲート エターナルですか」
“無限の魔の支配”を象徴する魔の化身がここに誕生した。
「さぁ、わたしに服従するが良い」
シュウは空間収納から破壊剣を取り出し右手に構え、背部装置のスラスターを全開にして肉迫して上段から振り翳した。
「レヴィアタン、これでお別れです」
レヴィアタンの頭部が輪切りにされ、レヴィアタンの肢体が地面に落ちた。
そして、その体は霞のように消えた。
「これでわたしの復讐は完遂されました」
シュウの長い復讐はこうして幕を閉じた。
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