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第六章
赤の月
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それからしばらくして、アイリスはあることに気づいた。
ここってもしかして、いやもしかしなくてもそうだ。
自分は元いたあの城塞都市から見上げていた、赤と青と銀色の月。
そのうちの一つにいるんじゃないの? と。
「何よそれ……。ボケ女神、ちゃんと仕事しなさいよ……」
無作法とは思うが、まあ許されるだろう。
あの大きな緑色のやつは、自分がいた惑星だ。
惑星? そんな名称で良かったかしら?
ぶつぶつと言いながら、もっと高いところをと探して苦労しながら左手にあった砂丘の山に登ると、それは案外、くっきりと全容を現した。
「うーん。うん、そうね。ここは赤の月で……あの端から上がって来たのが銀と青の月。なるほど」
緑の惑星には頂点にでっかいそれも緑色の、うっすらと星の全体にかかっている雲のうすぼんやりとしたものを突き抜けたあるものが見えていた。
それはアイリスの住んでいた西の大陸シェダの頂点というか、極北のどこかにあると言われているやつ。
「世界樹って本当にあったのねー。いや、面白いわ」
その一言に応じるように、砂がずるっと動いた気がすると、アイリスの髪をこれまでなかったものが揺らしていく。
風がたなびいた。
苔桃色の束ねられた髪を重たそうに揺らしたそれは、砂塵をまといどこかに吹き抜けていく。
幻と言われたり、伝説と言われたり、神話の産物、偶像と言われたものがそこにある風景は異様で偉大だったけど、同時に何か奇妙な予感にアイリスは包まれた。
風が起きた、と。
闇の境界線が明瞭になって、二つの月も後を追いかけて来た……足りないのは?
「太陽?」
上には雲も見えてきたし、虹色の何かが幾層も天空を覆いつくし始めていた。
音の無かった世界には弦楽器が鳴らすような奇妙な胎動が響き始めていた。
緑の色は見えず、水気も特に感じない。
しかし、真っ赤な生命の塊のようなそれは緩やかに緩やかに、死の危険を帯びるようにして容赦なく光の世界を始めようとしていた。
湧き上がるのは嫌な予感で、砂漠でもし太陽の下に居たらどうなるの……、とそんな奴だ。
そうなると思いつくのはひりつく肌を焼く太陽光と熱波と、この肉体で耐えれるのそれ?
炎の女神の司祭は、曲がりなりにも火を扱う身としてある程度の耐火というか、人間の耐えれる温度くらいの当たりはつけれられる気でいたから、ここにいれば待っているのは良くて乾燥しミイラとなる自分の未来だけだ。
「今度は凍てつかせてやるわ、あの駄女神。助けに来なさいよ」
もしこのまま二度目の死を迎えたら。
今度は炎とは対極にいるとされる氷の大聖霊にでも魂を売り飛ばして、サティナを永久に凍土に封印してやる。
そう決めたアイリスはとりあえずどこか身を隠せる場所――と周囲を見渡し、これまたあるものを目にしてここに来てから一番大きなため息を漏らした。
それまであんなものは無かった。
絶対になかった。
なのに、光を受けたらそこにあるなんて――歩けば十数分の距離。
でかでかとした派手な看板に、チカチカと安っぽい灯りがいくつもの色をともなって灯る小さな小屋が、砂丘の裾向こうに姿を現していた。
ここってもしかして、いやもしかしなくてもそうだ。
自分は元いたあの城塞都市から見上げていた、赤と青と銀色の月。
そのうちの一つにいるんじゃないの? と。
「何よそれ……。ボケ女神、ちゃんと仕事しなさいよ……」
無作法とは思うが、まあ許されるだろう。
あの大きな緑色のやつは、自分がいた惑星だ。
惑星? そんな名称で良かったかしら?
ぶつぶつと言いながら、もっと高いところをと探して苦労しながら左手にあった砂丘の山に登ると、それは案外、くっきりと全容を現した。
「うーん。うん、そうね。ここは赤の月で……あの端から上がって来たのが銀と青の月。なるほど」
緑の惑星には頂点にでっかいそれも緑色の、うっすらと星の全体にかかっている雲のうすぼんやりとしたものを突き抜けたあるものが見えていた。
それはアイリスの住んでいた西の大陸シェダの頂点というか、極北のどこかにあると言われているやつ。
「世界樹って本当にあったのねー。いや、面白いわ」
その一言に応じるように、砂がずるっと動いた気がすると、アイリスの髪をこれまでなかったものが揺らしていく。
風がたなびいた。
苔桃色の束ねられた髪を重たそうに揺らしたそれは、砂塵をまといどこかに吹き抜けていく。
幻と言われたり、伝説と言われたり、神話の産物、偶像と言われたものがそこにある風景は異様で偉大だったけど、同時に何か奇妙な予感にアイリスは包まれた。
風が起きた、と。
闇の境界線が明瞭になって、二つの月も後を追いかけて来た……足りないのは?
「太陽?」
上には雲も見えてきたし、虹色の何かが幾層も天空を覆いつくし始めていた。
音の無かった世界には弦楽器が鳴らすような奇妙な胎動が響き始めていた。
緑の色は見えず、水気も特に感じない。
しかし、真っ赤な生命の塊のようなそれは緩やかに緩やかに、死の危険を帯びるようにして容赦なく光の世界を始めようとしていた。
湧き上がるのは嫌な予感で、砂漠でもし太陽の下に居たらどうなるの……、とそんな奴だ。
そうなると思いつくのはひりつく肌を焼く太陽光と熱波と、この肉体で耐えれるのそれ?
炎の女神の司祭は、曲がりなりにも火を扱う身としてある程度の耐火というか、人間の耐えれる温度くらいの当たりはつけれられる気でいたから、ここにいれば待っているのは良くて乾燥しミイラとなる自分の未来だけだ。
「今度は凍てつかせてやるわ、あの駄女神。助けに来なさいよ」
もしこのまま二度目の死を迎えたら。
今度は炎とは対極にいるとされる氷の大聖霊にでも魂を売り飛ばして、サティナを永久に凍土に封印してやる。
そう決めたアイリスはとりあえずどこか身を隠せる場所――と周囲を見渡し、これまたあるものを目にしてここに来てから一番大きなため息を漏らした。
それまであんなものは無かった。
絶対になかった。
なのに、光を受けたらそこにあるなんて――歩けば十数分の距離。
でかでかとした派手な看板に、チカチカと安っぽい灯りがいくつもの色をともなって灯る小さな小屋が、砂丘の裾向こうに姿を現していた。
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